歌帖楓月 |
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ガイガー(25歳 男): こんにちはー! それでは続きをどうぞ! ::::: 「書類の取り合い」その10
「あーあーあーあー」 ここ、情報管理課に響く、呑気な声。 「なーにやってるかなあ? ゼルクベルガー君は。僕としては、あのカルテが無事ならそれでいいんだけど……どうやら引き出しにしまわれて、ロイエル君に破られたりしそうにないから、いいんだけど。これは……どうしょっかなー? ここで颯爽とロイエル君を助けに行ったら、僕ってロイエル君に『ありがとう! 助けてくれて! 管理官って、なんて頼れる人なの! 』とか言われていい感じになる?」 へへへ、と笑う管理官。 ゴホン、と、男性職員の一人が、上司のうわ言に咳払いで対応した。 「なりませんよ。馬鹿なことおっしゃらないでください」 もう一人、モニタを見に、女性の職員がやって来た。 「やだ。これ、セクハラですか?」 うん。と、管理官は頷いた。 「そうなのよ。ぶたれるよね? これは。今までの法則からいくとね。こっぴどくね。フフフ。ちょっと楽しみ」 男性の職員は同意せずに首をかしげる。 「ぶたれますかね? そうですか? ちょっと無理なんじゃ。ほら、手を上げようにも、手は日記でふさがってますし。押さえられてますし……」 「無理そうよね」 女性職員が、頷いた。やや渋い顔になっている。 「ねえ。なんだか、卑怯よね」 管理官も頷いた。 「うん。でもきっと、手を放したら最後だね」
「中、将……っ」 唇が離れてようやく口がきけるようになったロイエルは、怒りととまどいと驚きの表情で、そう言って中将を見返すが、 「日記を放しなさい。そうしたら、私も放すよ」 と、にっこりと、笑いで返された。 ロイエルは憮然とした。 「嫌。中将が、放して」 「ロイエル」 ぴし、と、中将の目が細められる。 「それは私の物なんだよ今は。そして、約束破って取っただろう? 駄目だよ、さあ返しなさい」 「嫌」 「……。そうか」 無表情で、中将はロイエルの両腕を掴んでロイエルを持ち上げた。 「!」 あっさり持ち上げられて、ロイエルは愕然とする。無力、という単語が、脳裏をかすめた。 「いや。中将、降ろして!」 中将は何も返答せずににっこり笑って、ロイエルを持ち上げたまま、椅子のそばに行った。 そして、口を開いた。 「返す気になったかい?」 「……嫌」 「開けないから返しなさい」 「嫌。中将、そう言ってさっき開けたでしょう? だから返さない」 「……、わかった」 中将が、笑った。 「いやーっ!」
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ガイガー: 僕たち登場。のぞき見がお仕事なのよ。軍の全部の情報、知るのが仕事だし。
ブルックリン: お邪魔します。あれは、職場の皆、開いた口がふさがらない状態になってましたね。
ガイガー: おお、いらっしゃい。そうね。漫然と仕事してたのが、あれ視聴した瞬間、すっきり目が覚めたよね。
ブルックリン: 漫然と仕事していたのは、管理官お一人です。皆いそがしいんですから。
ガイガー: でも皆、ちょっと楽しそうだったじゃないのさ。
ブルックリン: 逆です、呆れてたんですよ。
ガイガー: そうなの? 僕おもしろかったから、てっきり皆の本心も同じかと思っていたのに。 ということで、今日はここまで。 次回も僕たちが出てきます。それでは! |
(74)投稿日:2004年05月23日 (日) 13時04分
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