歌帖楓月 |
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ガイガー(25歳 男): 三日月国の儀式が書けない猫好きの足は、子猫二匹にじゃれられて、 引っかき傷が絶えないそうだ。 まあそんなことは置いておいて。続きをどうぞー!
::::: 「書類の取り合い」その6
ロイエルは、目を落とさんばかりに丸くした。 「……な、持って、るの……? 中将が……?」 これが仰天するという顔なのだな、と、中将はロイエルの表情に感心して見入った。こんなに驚くとは。 「見るかい?」 再び問うと、ロイエルは数度瞬いた。 何かを口にしそうになって、ロイエルはさっと口をつぐみ、急いで首を横に振った。 「う、ううん。いいの! だって、あれはドクターが大切にされてた物で、何かお考えがあって、ずっと私には見せてくださらなかったのだもの。駄目、あたし、見ない」 そう言うと、中将から一歩離れた。 世界一の美女であらせられるオウバイ様に、日に最低4度は賛美の祈りを捧げるべし、とか、オウバイ様以外の女性を讃えてはいけない、とか、そんなことしか書かれていなかったが……。と、中将は内心で大きなため息をついたが、この少女は、あれには崇高な事が書かれていると信じているのだろう、と思った。それなら、なおさら見ないに越したことはない。 「……」 ロイエルの信仰心に満ちた、(信仰の対象がどうであれ)敬虔な姿を見て、中将は少女の純粋さには響くものを感じたが、どうもあの対象とこの少女の振る舞いとの落差に、まるでつまらない芝居を見させられているような気分にもなる。 ふう、と、中将は息を吐いた。 何かの当てつけのようにも聞こえる吐息だったため、ロイエルは、はた、と、中将の方を見た。 なんだろう今のため息は? 私が何かした? もし……オウバイ様とドクターの件でなら、何が理由でも私は絶対に謝らないけれど。 「中将……」 ロイエルの呼びかけの途中で、何も言わずに、中将は、「本」を手にとってめくった。 「あ!」 日記! 見ないって言ったのに! ロイエルの全身から、血が引いた。 「駄目! やだ何するの? 駄目!」 無理やり、ロイエルは中将の手から自分の日記を引ったくることに成功した。ちょっと頭の中で「こんなに簡単に取れるなんて、奇跡だ」という自分の声が掠めた。絶対取らせてくれないと思っていたのに。 「中将、見ないって言ったでしょ!」 きっ、と、中将を見上げると、中将は、にっこりと人好きのする笑みを浮かべ、 「気が変わったよ」 と言った。 :::::
ガイガー: てなわけで、続きはまた来週!……あれ? これって月一更新だったんじゃなかったっけ? ああそうか。三日月国を書けない猫好きのせいで、週更新なのね。 そうかそうか。 それでは皆様、また来週!!
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(68)投稿日:2004年04月18日 (日) 22時12分
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