歌帖楓月 |
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ガイガー(25才男 情報処理課管理官): こんばんは。 今日は渋くいってみたいと思います。 秋の夜長、僕は趣味の読書に興じつつ、人生について考えます。 ……ああ、もう駄目。続きの言葉が思い浮かばない。 やっぱり素直にいきましょう。 今日はアケビを食べ放題で、5つ食べちゃった! 口が筋肉痛です! いやー幸せな痛み! では、〔IF〕の続きをどうぞー! :::::::::::::::::::::::::
キャラクター入れ替え編『もしもロイエルとエミリが逆だったら・・・』
DEEP METAL BATTLE [IF]1 第9話
夜も更けてきた。医師の家では、エミリとローズとドクターが、話し込んでいた。アンネ准将たちは、あれきりで領主の館へと帰ってしまったらしい。 「ドクター、あなたさえよろしければ、私、領主の家を捨てて、あなたと結婚したいのです。」 「いいえ。だめですよ、エミリ。私は明日、軍に捕まるに決まっているのです」 エミリはうつむいた。 「では、ドクターへの戒めが解けるまで、ずっと私、お待ちしています。あなたがお嫌でなかったら」 ドクターは首を振る。 「そんなことは無駄です。おやめなさい。なぜなら、私は、きっと、もう帰ることはないのですから」 「そんな……」 悲しそうな顔になったエミリは、しばし沈黙した。 ローズがそんな姉に、気をとりなおすように言う。 「ほらー、ね? もういいじゃん? 姉さん若いんだからさ? ドクターのお言葉通り、別のいいなずけ見つけようよ!」 妹のその言葉が終わると同時に、エミリはすっくと立ち上がった。今まで消沈していたエミリが急に機敏に動いたので、ドクターとローズは少なからず驚いた。 「ど、どうしたのよ? エミリ姉」 「エミリ? 一体、」 エミリは、二人をきりっとした態度で見下ろすと、 「いいえ。だめよ。村の為につくしてきたドクターが捕まるなんて、私、納得できないの。だから、ゼルクベルガー中将様に、話をしてみます。あの方、話のわかりそうなかたでしたもの。ドクターのひととなりを話せば、罪を軽くしてくださるかもしれません。それでは、善は急げだわ。ローズ、私は今から帰るけれど、あなたはここで待っていて。あとで使いをよこすからね、夜道は危ないから、決して一人で帰っては駄目よ。じゃ、」 さらさらと、一気に言い終えると、エミリはドクターの家を駆け出して行った。 「ああ! お姉様? ……あー、行っちゃったよ……」 いきなりの姉の行動に、呆然となるローズ。 ドクターも驚きで目を丸くしていた。 「エミリ……。私のために、そこまでしてくれるとは……」
「ただいま帰りました! ゼルクベルガー中将様はどこに? さあ教えて!」 息せききって、館へと駆け込んで来たエミリの鬼気せまる迫力に、館の使用人らは、驚きながらも、「地下牢にいらっしゃいます」と教えてくれた。 エミリは走る。 彼に話せば、もしかしたら聞き入れてもらえるかもしれない! だって、ドクターは穏やかで優しくて、いつも村のことを大切にしてこられた、それは立派な人なのよ! 罪を犯したとはいえ、それは自分の為にではなく、村のことを思ってされたことなのよ。 「ゼルクベルガー中将!」 地下牢へと降りる階段のところで、エミリは中将を見つけることができた。 「おや、エミリ。どうしました? あなたは、うちの准将と一緒にドクターの家へ行っていたはずでは?」 首をかしげる中将に、エミリは、息を切らせてはあはあ言いながら、返事をする。 「アンネ准将でしたら、ずっと早くに、具合を悪くされて戻って来てらっしゃるはずですわ。私は今帰って参りましたの。中将にお話があって」 「私に話? その前に……アンネ准将は元気だったはずだが……」 エミリは、複雑な表情になった。 「ええ……。ドクターが、ロイエルを許してほしい、と頼まれたら……准将は大変取り乱されて、兵士の皆さんに連れて戻られましたの」 それを聞いて、中将は同情しているような、呆れたような顔になった。 「……。そうですか。わかりました。ではエミリのお話しを聞きましょう。私に何か用でしょうか?」 ええ、と、エミリは、相手の目をしっかり見つめて、うなずいた。 「ドクターのことなのです。……あの方は、本当に良い方なのです。紛争の首謀者として捕らえられるのでしょうけれど、……許してくださいとは言えませんが、少しでも罪を軽くしていただけるならと思って。中将様に話を聞いていただきにきたのです。ドクターは悪くないのです、あの人は、心の底から村の為を思って、そうされたのです」 確かに、と、中将は控えめに相槌をうった。 「あのドクターは、村人に限らず、兵士の間でも評判が良いですね。私は彼と直接話してはいませんが、表立っては悪い人間ではなさそうだ」 表立っては……という言葉に、エミリは引っ掛かるものを感じた。 「ゼルクベルガー中将、ドクターは本当に村の事を思ってらっしゃるかたなのです。人々に対して、別け隔て無い思いやりを持てるかたなのです。ですから、私の父もドクターのことを、ゆくゆくは領主にと、望んだのですわ。私の話では不十分だと思われるのならば、どうぞ、是非、ドクターと直接お話しなさってください。そうすれば、あの方のひととなりがわかっていただけると思います」 エミリの真剣な表情に、ゼルクベルガー中将はわずかに考えを改めたようだ。 「なるほど。それほどおっしゃるのならば、捕らえる前に、彼と話し合う必要はありますね。」 そして、中将はほほ笑んだ。 「ですが、エミリはドクターを案じるあまりに、忘れているようですね。捕らえられた後には、必ず裁判が行われます。そこで、今のように証言すればいいのです。あなたや、ドクターの世話になった村人たちが、寛大な処分を願うのならば、ドクターの罪は軽くなるかもしれません」 「本当に?」 エミリの顔が輝く。 「では私、村の皆さんにお願いしてみます。それから、お父様とお母様にも、婚約の解消をやめていただかなきゃ」 そんなエミリのうれしそうな顔を見て、中将も笑った。 「あなたはドクターのことを大層思っているのですね」 そう言われて、エミリはにっこり笑ってうなずいた。 と、そんな、暖性の雰囲気漂う中に、湿性の寂しげなすすり泣きが割って入った。 「うううっ……なんて、お気楽なお嬢様ですの……。この冷たい石牢には、ドクターにもてあそばれた、幼なじみである私が、罪を着せられて、打ちひしがれ、涙に濡れてますのに…………。なんて冷たいエミリなの。ロイエル、悲しい」 「ロイエル?」 二人が立っている階段からは姿が見えないが、ロイエルは石牢の中から、か細い声で泣いている。か細いとはいっても、二人のいる所からロイエルのいる牢までは結構な距離がある。その上でなお、聞こえるということは、「これみよがしの大声」という表現の方が、正しいかもしれない。 「そう、ロイエルですわ。あなたの幼なじみの、ロイエルですわ。ううっ……ここは冷たいわ……、寒いわっ……そして、さきほどは、今そこに立っていることは間違いないゼルクベルガー中将から、いわれのない誹謗中傷その他色々の精神的苦痛を受けましたし、ううっ、身も心もずたずたのロイエルは、ここでもう、自害してしまいそう……」 と、すらすらと、か弱げな声だが流暢に、そして、離れた相手に聞こえるようにはっきりとそう言う。 「ロイエル……」 気になったエミリは、階段を降りて、石牢のロイエルのところへやって来た。 「ううっ……来てくれたのね、エミリ……」 ロイエルは、鉄格子のそばに泣き濡れて立ち尽くしていた。 「私……お風呂に落とされたのに、暖かい服一つもらえませんでしたのよ。この木綿の服一枚だけですわ、ああああ……なんて寒いの凍えそう……」 「ロイエル、今は夏よ?」 「……(ちっ、余計な突っ込みを冷静に入れやがったわ)。ううっ、エミリにはわからないでしょうね、石牢は夏でもひんやりなんですわ。ああ、ドクターとオウバイ様の奸計によって、私の人生はめちゃくちゃにされてしまいますのね……ううっ」 ロイエルがそう言った瞬間、エミリの、それまでそれなりに同情的だった表情が一変した。 「馬鹿おっしゃい! ぜんぶあなたが仕組んで来たんでしょ? あなた私に言ってたじゃないのずっと! 『ほほほ! ドクターなんてこの私にかかれば簡単に操れちゃいますわ! 』とか、『オウバイ様も案外間抜けよね! 私が湿地の水なんか不味くて全然口にしてないこと、気づいてないようよ! 』とか、私は覚えてるわよ!」 「げっ!」 自分にとってに不利な証言をされて、ロイエルは引きつった。しかし、心外そうに、強く言い返した。 「まあああ! あなたまで私を陥れる気ね? ひどいわ、……幼なじみなのに、私を、罪人に仕立て上げるのね? ああっ、なんてひどいの!」 「幼なじみだからこそ、あなたの所業なんて全部知ってるんじゃないの!」 「まあっ、なんですって?」 ロイエルが、本当のことを言われて怒った。 「生意気! あなた! 金持ちだからって、いばってるんじゃないの?」 「……は? 何言ってるの……って、あ、痛い、やめなさい!」 檻の中から腕を出したロイエルが、エミリの髪の毛を思いっきり引っ張った。 「いた、いた、痛いっ、やめなさいよっ! ロイエル!」 「ホホホ! 私が何のために檻のそばに立ってたか、わかったかしら? あんたを陥れるためよ! ついでに、首も絞めちゃうわ! オーホホホホ! ……うっ、痛い、このっ! あんた何よ! 抵抗するって言うの? 金持ちのくせに!」 エミリもお返しに、ロイエルのほっぺたを思い切り引っ張ってみた。 「金持ちとかそういうの関係ないわ! ロイエル! あなたの、その、ねじ曲がった根性、たたき直してあげるわ……、ちょっと、何するの? う、苦しいっ、」 「ほほほ! 私に勝とうなんて、思い上がったわね、エミリ! さあ、それ以上余計な言葉を紡ぐ前に、楽になるのよ!」 ロイエルが、本気でエミリの首を絞めた。右腕でエミリの首を引っかけて、鉄格子を利用して締め上げる。 「ちょっ、冗談、」 「冗談? さあ、これは冗談かしらねえ? ホホホホホ!」 「いいかげんにしなさい!」 中将がロイエルからエミリをはぎとった。 「げっ……! 中将!」 ロイエルはエミリとの戦いに集中するあまり、中将が石牢へ戻って来たことにすら気づかなかった。 「はぁはぁはぁはぁ……ありがとうございます、中将、……死ぬところでしたわ」 息も絶え絶えで、本当に命が危なそうなエミリ。中将に抱えられるようにして支えられている。 「あっ、なんですの! ひどいわ! 中将! ……どうして、檻の中にいて不利な私よりも、その金持ちで説教好きのエミリなんてかばうんですの? 不公平すぎるわ……なんて、不憫なの? 私……」 中将がすかさず返す。 「君こそ、何故、檻の中にいる身でそこまで有利な立場に立てるんだ? 見なさい、エミリがぐったりしてるじゃないか!」 「私が有利? そんなこと気のせいですわ? む……。ちょっと、中将、何を、他人の婚約者を、抱きかかえたまんまにしてるんですの?」 中将はロイエルを無視した。そしてエミリを別の名で呼ぶ。 「ロイエル……」 熱を帯びた相手の表情に、エミリは怪訝な顔をした。 「……? 違うわ、あたしは、エミリです……ってば、」 「医師の婚約者であれば、君とドクターは、うまくいっていたのかもしれないな……」 自分を抱き上げた中将に、エミリは抵抗した。 「……中将っ。だからあたしはエミリだってば」 「ロイエル、」 少女の長めの前髪をかきやりつつ、彼は顔を寄せていく。 「や……、」 「ロイエルは私でしょっ!」 エミリ、もとい、ロイエルが鬼のように怒った。 「何いちゃついてんですの! 中将、あなた、相当いい度胸されてるのねえ? この、あたくしの前で、よくも堂々と……」 中将は、笑って返した。 「堂々? でなければ君が情報をつかんでるわけがないだろう?」 冷笑するゼルクベルガーと、敵意あふれる笑みを浮かべるロイエル。二人の間に見えない火花が飛び散る。 「ふっ! わかりましたわ! あなたをたらし込んで味方につける作戦はちょっと変更しますわ! 代わりに、あなた以外の兵士を、私の魅力で引き込んで、可哀想な美少女の身の上に情状酌量させて、とりあえず無罪放免を狙いますわ! あなたを私の夫にするのは、その後ですわ! フフフフフ!」 びしっと、中将を指さして、高らかに言い放ったロイエル。対するゼルクベルガーは、非常に意地の悪そうな笑みを浮かべた。 「考えが浅いな、ロイエル。たとえ兵士が信じたとしてもだ。私と、君に落書きをされた女性たちは、決して君を許さないよ」 「んまああ! これほど優雅で繊細で可憐な私が、ただのありふれた女達に負けるなんて思ってらっしゃるの? ホーホホホ! 浅いのは中将かもしれませんことよ?」 ロイエルの高笑いに、エミリは眉をひそめた。 「ロイエル、あなたって子は……私、あきれて物が言えないわ」 「行こうか。エミリ」 「はい」 はあ、と、二人はため息をついて、地下牢を去った。 「ちょっと! なに呆れてるんですの? あなたがた、こんな私を見て、可哀想だとは思えないんですの?」 声だけは可愛らしいロイエルの声が、深夜の地下牢に響き渡った。
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ガイガー: ゼルク君とロイエルエミリちゃんとエミリロイエル君が一同に会しました。 ……どっちがどっちだかわかりにくね。 ゼルク君とエミリとロイエルが集まったってことだね。 入れ替えるとこうなっちゃうんだよねぇ。 もはやギャグだよね? あっはっはっは。笑っとこ。
それでは、また!
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(104)投稿日:2004年10月24日 (日) 20時31分
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