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GoGo!小説

小説を完成させる自信の無い方、または小説を書く練習をしたい方、そしていつも作品が完成しない無責任なしんかー進化(笑)、等々気軽にこの板で小説をどうぞ!

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[39] ぶっ殺し屋が世界を正す
ロキ - 2007年12月09日 (日) 21時37分


僕が最近見た小説で、とても面白いweb小説がありました。
そんな小説を書いて見たい、書いてみたいけれども……
僕の力では無理だろうな、そんな感じで誠に申し訳ないな……だけれど書きたい。だからパクってしまおう。

つまりは、そういうことなのです。

しかし、さすがの僕でもパクるといってもまんまを写すわけでなく……
なんていうのでしょうか。
その、僕が感銘を受けたweb小説を書かれた作者様の設定・考え方(?)を借りるようなもので、盗作……ではないと思うのです。
ですがさすがにそういうのを公にするのもまずいだろう、ということでこちらの掲示板で書かせていただくのですが
大丈夫なのかな……大丈夫だろうな……とおっかなびっくり書きつつ、前書きとさせていただきます。

猟奇的・暴力的な描写があります。ご注意ください。

[40] 1
ロキ - 2007年12月09日 (日) 21時37分

 思い出せば、親父は腹を押えて蹲っていた。
顔が苦痛に歪み汗が滴っている。いつもの親父はもっと厳としていた。
 
 指と指の間から血がポトリ、ポトリと滴っていた。

 俺は自らの心臓を蹴り上げた。体は跳ね起きた。

 動いた体は、親父の手を踏み潰していた。
 関節が本来曲がるはずの無い方向へと曲がってしまっていた。

 感情は覚えていない。温かった様な、寒かったような、ジクソーパズルのように曖昧だった。

 俺が親父の死体に背を向けた直後だった。

 抉られた心臓が、行き絶え絶えに呪い言葉を発した。

  





「――心せよ」



「…闇を欲するのならば…」



「死は、確実に貴様を襲う」






 それが、親父の最後の言葉だった。















        1
















 白いコンクリートが、氷の結晶と共に光っている。
冬らしい寒さの中、部活生たちの声が聞こえるこの敷地内は活気に満ちていた。
花壇にはビオラやバンジーが色とりどりに咲かせており、冬を感じさせている。
校門をくぐると、十字路がありそこから三つの校舎が見えた。まだ生徒が所々残っているところを見ると、放課後からまだ間もないようだ。
 
 吹奏楽の音色が聞こえる。曲名は、チェリー。懐かしい音色だった。
 
 一階の…何かの部室だろうか。数人の青年達が座って談笑をしていた。片手には煙草がくわえられている。
ふと、アンプとエレキギターが目に入る。あの音響器具一つで、音を拡大させるというのだから、科学とはやはり人類に多大な影響を与えているのだなと再実感した。
 
 彼等は今、好きな人、彼女などの色恋話や嫌いな奴等の話をして盛り上がっているのだろうな。
私にもそういう時期はあった。しかしながら、あのように多い人数でしたことはない。
ジロジロと見ている私に気づいたのだろうか、1人が私を指差した。
一人が慌てて煙草を隠す。私は思わず失笑してしまうと、小さく会釈をしてその場を通り過ぎた。

 高等学校の一角、三つある校舎の丁度真ん中の校舎のトイレからは学校の雰囲気に似合わない悲鳴が聞こえた。
恐らく私の用がある人は、そこにいるのだ。

 渡り廊下から校舎に入る。廊下は綺麗に清掃されているが、私の革靴の足跡がそれを汚していた。
物々しい音が聞こえる。もうすぐそこだ。
私は身なりを整えた。ネクタイは寄れていないだろうか。スーツは皺になっていないか?…大丈夫だ。さあ行こう。そう自分に言った。

「おっさんだれ?」

 茶髪の男だった。私は、こういうものです、と名刺を渡した。

「いや、こんなん貰ってもこまるから。どっかいってくんない?」

そういって名刺を破り捨てる。見もせずになんという男だ。親の顔が見て見たい。

「俺ら今立て込んでんのよ。邪魔しないでくれる?」

「私も今ここで苛められている男に用があるんですよ」

「はぁ?あとにしてくんない?」

「困りましたね……急ぎの用、なのですが」

「なに?きめぇ。**んだけど。はやくどっかいけよコラ」

 大人に向かってその台詞はなんだよ。そう言いたかったが、口を噤んだ。
この程度で怒るのも大人気ない。

そしてまた、大きな音がした。やれやれ。節操のない苛めっ子達だ。

「なんか声がしてるけど誰よ?センコー?」

「や。違うべ。意味わかんねー変なおっさん」

 1人顔を出してきた男がいた。この男は金髪だ。髪をつんつんに立たせている。海栗を彷彿とさせる男だ。
男は私を人睨みすると、チッとしたうちをしてみせた。
よく見たら唇にピアスを開けている。

「消・え・ろ。おっさん」

「そこにいる少年に用があるんですよ」

「うっせぇよ。こっちが先だべ。いい加減しねぇと血ぃみんぞ?」

 よくもまぁ、そんな阿呆らしい言葉が吐けるものだ。
日本語の腐敗は若者によってどんどん進んでいるのだな。きっとそうだ。そうに違いない。

「いやあ恐ろしいっですがやはり私も仕事ですのでやはりそこの少年と会わせて欲しいのですがどうでしょうか」

「あぁ!?うぜぇつってんのがわかんねぇのかこら!」

「・・・」

 彼はそう言うと、拳を振り上げた。
唾が飛び、私のスーツにつく。大きく空けた口は薄汚く黄ばんでいた。
しょうがない、私は倦怠感に包まれた左手を動かすことにした。
 
 私の指が彼の頬を掴んだ。

「あがっ!?」

「……申し訳ありません糞餓鬼様。非常にうざったいのでこのような暴力的指導をさせていただきます」

「あっ…が…!?」

「ですが教師でもない私が指導できることは数少なくポギャブラリーも少ないものですから、一言ですませてしまいましょう。
 
 餓鬼は餓鬼らしく家で机にしがみついて勉強していなさい」

「ひ…ぎっ…」

「――わかりましたか」

「う…うわあああ!!」

 男は、私の腕を振り解いて何処かへ走り去ってしまった。
もう1人は慌ててその男を追っていった。
私は、若干乱れたスーツを正すとトイレの中を覗いた。壁に凹凸ができている。さっきの男達が威嚇したためにできたのだろうな。
そして私は、汚い地面に座った鼻血を出した男に言った。



「依頼主は、あなたですね」









     *








「…加賀里 武春っていいます」

 少年――いや加賀里は、やや気の抜けたコーラを両手で啜りながら言った。
ビジネスの話に、このような公園を使うのはどうかと思ったが、金が無いからベンチですませてしまっている。
冬さながらの冷たい風が、心地よく抜ける。若干肌寒い。

「高校二年生の生物学上男性であり部活は特に経験なし性行為はおろか恋愛も体験したことがなく、学校でも目立たないほうで回りの同級生からは酷く虐めを受けて、大変悩んでいる。これでよかったでしょうか」

「あ……はい」

加賀里は、スポーツができなさそうで、だからといって勉強ができそうにもないような、見た目的にひ弱な男だった。
話してもわかるが、かなり内気なようだ。
人と会話をしていて、目を見ることができない者というものは大抵そうなのだ。
 加賀里は何かを言い出そうとしながらも、おどおどとしている。
 ようやく、口を開いた。

「……ホントに、ホントなんですか」

「何がですか」

「……その」

いいにくそうに俯いた。少年は口をモゴモゴさせている。

「その……」

「確かですよ」

 私は、遮るように声を出した。
私は知っていた。彼が何を聞こうとしていたのか。それは彼が常識人であり正常であるが由縁だ。
加賀里は、落としていた視線を私に向けた。

「その依頼、確かに実行に移すことはできます」

「ホント……だったんですね」

「私は嘘は何よりも嫌いでして。私が嘘をつくのは地球が爆発してしまうのを防ぐときぐらいです」

「あっ…いえ!」

 慌てて首を振るが、動揺は隠しきれていない。

「その…まさか、ホントだったとは思わなくて…」

「今ならまだ契約していませんので、必要でないのなら正直に仰っていいんですよ」

 加賀里は、また俯いた。
染めたことのないだろう真っ黒な髪が静かに揺れた。

 迷いが、確かに見えた。

「でも……でも、このまま生きてたって…」

「しょうがない、と」

「え……?」

「なるほどなるほど。わかりますよ、ええ。あなたのような人生、恐らく排泄物が口からゲロッとでるくらいつまんないでしょう。しかしあなたには自殺という選択肢はありませんね。何故ならそれは絶対的な恐怖でそれを実行できるくらいならあなたは私を呼んでいないから」

「……その通りです」

 その言葉は、迷いだらけの彼の表情に確信が見えた。
この少年は自分に失望していることは、確かなようだ。
 
「ふむ」

「僕は…こんな人生、終らせたいんです」

「そうですか。止めませんよ。ええ。何故ならそのおかげで私は明日のご飯にありつけるのですからね」

「えっ」

 淡とした返事に彼はきょとんとした。
彼は恐らく親にもこんな話をしたのだろうと予測できた。そして、長ったらしい言葉で説得されたことも。 
 男は上品に優しく男に微笑んだ。

「それでしたらこの契約は成立してよろしいのですね」

 沈黙が起きた。依頼のこの瞬間、誰しもが作るこの沈黙。
人によってこの間隔は千差万別だ。
 
 ふと目に、黒が落ちた。彼は決心したのだろう。依頼をする者はこのように、必ず目が暗闇に染まるのだ。


「……はい。お願いします」


「…契約完了ですね」

「よろしく……おねがいします」

そう言って加賀里は頭を下げた。

「では契約内容を確認させていただきます」

もう一度、頭を下げる。
私はファミレスで注文を読み返す店員のように、快活に述べた。

「貴方を虐めていた者をぶっ殺すのを三人ぶーん。そして貴方を虐めていた者に貴方の目の前で謝罪をさせるのを10人ぶーん……で、よろしかったですか」

改めて聞いたからだろうか、加賀里は身震いをした。
自らの意志で行う犯罪におびえたのだろう。だが、もう戻れる位置になどにいはしない。
死を欲する者を縛る苦しみは、もう君を捉えた。


「あの…あなたはどんな仕事をしてるんですか」

「ふむふむ。それはまた、不思議な質問ですね」

「えっ…あっ、すいません…」

それもしょうがなかった。彼は私の素性を殆ど知らないのだから。
 立ち上がり、私は加賀里を見た。彼の顔が酷く不健康に見えた。

「探偵です」

「はぁ…」

「普通の、事務所を構えたただの一探偵です」

「でも探偵は……こんな仕事を受け持つんですか」

「私の場合は特殊なんです。」

「あ、そうなんですか」

「そうなんです」

「……」

 彼はどうやらインターネットで私の噂を聞きつけて私に連絡をつけたようで、最初の連絡は電話だった。
私のような存在は案外アンダーグラウンドでは有名なようで、困ったものなのだがそれのおかげで仕事が増えているのは確かだ。

「ではでは」

「……え」

「殺し方はいかがなさいましょう」

「えっ」

「撲殺銃殺刺殺溺殺火殺絞殺なんでもありますが」

加賀里は戸惑った表情で私を見ていた。
どう返事をしたらいいかわからない。そういった感じだ。

「ふむ。決めかねているようですので、私のその時の気分でよいでしょうか」

 加賀里は、震えた声ではい、と返事をした。

「では、明日の明朝に貴方の家に伺いますので」

「明日の……明朝ですか?」

「ええ。何かその時間にご予定がございますか」

「いえ、特にないですが……。あの、親にはできるだけ……」

「ああっ。それは大丈夫ですよ」

「そ、そうですか」

 加賀里は、どうして大丈夫なのか。それを聞かないようにしたらしい。
私ができるといったらできるのだ、と。彼は随分怯えているようだからそう受け取ったらしい。
どちらでも構わなかったのだが、余計な説明をしなくて楽だ。

 そうして私と彼は別れた。別れ際に彼は随分不安そうな顔をしていた。
私が大丈夫ですよ、と声をかけてもその表情は崩れなかった。
そのまま彼は苦笑いをして去っていく。



空が淀んで、太陽がオレンジ色を彩るようになる。
もうそんな時間なのか。そうか。お腹がすいたな。今日は金がないから買いだめしておいたカップヌードルだけれど。















To be continued...


[44] 2
ロキ - 2007年12月16日 (日) 22時18分













2











「さてさて、今日も今日とて仕事を頑張りますかね。はあー、これもお金のためー」

 男は、大きな鎌を持っていた。魔女が持っていそうなそれを彷彿させるその鎌の刃は丹念に磨かれていた。
真っ黒なスーツを着ていて、すっかりくたびれてしまっている。仕事ができないサラリーマンと烙印づけられてしまっていそうだ。
黒いスーツが闇に溶け込みながら、満月が輝く夜道をひたひたと歩く。

「あら」

コンビニエンスストアに人だかりができていた。
どうやらそれらしい格好をした少年達で、今にも盗んだバイクで走りだしそうだった。キレたナイフとも言う。
コンビニに入っていく他の客を威嚇し、怯えさせることで少年達は退屈な時間を楽しんでいるようだった。
よく見たら女もいる。

「どうもこんばんはー」

 そこに命知らずな男が飛び込む。男は笑顔で挨拶をした。
鎌を持ったコスプレまがいの格好をした男に、少年達は訝しい表情をした後で、ニヤニヤと笑い始めた。
肩まで髪を伸ばし、両耳にピアスを5個もつけた男が何かを言おうと口を開いた。

「あの、大変申し訳ないのですがこの写真の男を知らないですかね」

写真を少年達の前にだす。そして、口を開いたまま少年の1人の首に一筋の線ができ、そこから赤い体液が流れ、ずり落ちた。
ぼとりと地面に落ちる。首から赤い噴水ができた。周りの少年たちは微笑を浮かべたまま固まっていた。

「ありゃ、しまった」

男は落ちた首を拾い上げて、その首を接合部に無理やり突っ込んだ。肉がひしゃげ、気味の悪い音を発した。だが首はくっついた。

「よしよし、これでオールライト。つまりは大丈夫」

他の少年たちは固まったままだったが、ふと気づいたように慌てて逃げだした。
女は三人いたが、そのうち一人がその場で失禁していた。小さな水溜りができて、白めを向いていた。

「ありゃりゃ、どこ行くんですか」

男は猛烈なスピードで逃げていった男たちを追いかけた。2秒で追いついた。少年たちは何かを叫んでいたが、声になっていなかった。

「この男をー」

一人目の首を鎌切り取る。

「知りませんかー」

切り取った後、宙に浮かんだ生首を手にとり、それを他の男に目にとまらない速さ投げつけた。投げつけられた少年の頭が爆ぜた。

「知りませんかーえひゃひゃひゃ」

 そして男はひたすら走った。
鎌を振り回しながら走るものだから、気づかない間に逃げ出していた6人の男女を殺していた。
何度も何度も狂ったように鎌の刃を突き刺し、子どものようにはしゃぐ。
ようやく我に返ると、もはや刺しても手ごたえがまったくない状態になってしまっていた。

 男は首だけの少年に写真をだした。

「この男を知りませんか」

返事はない。

「やはり知りませんか」

やはり返事はない。
同様のほかの8人の生首に聞いたが返事は無い。ただの屍のようだ。

 失禁して気絶した女にも聞いてみたが返事はなかった。なかったのでとりあえず首を刈った。

もう一度聞いてみたが返事はなかった。

「ううむ。失敗しましたなぁ。悪い癖ですな」

 男はくるりと踵を返し、また夜道を歩き始めた。

「はあー、これもお金のためー。男の性ってやつですなー」

 一部始終を見ていたコンビニの店員が警察を呼んだのは、それから五分たった後だった。















 高校から電車で20分、駅から徒歩20分の距離にある葛城 俊の家は予想外に豪邸だった。
門から徒歩五分くらいにやっと本邸があり、隣には使用人たちが住んでいるような宿屋やしきものがあった。

「なるほどー。権力者だから先生に言ってもいじめは止められなかったわけですねー」

こういうことは漫画の世界だけじゃなく、現実でも起こりえるのか、と男は関心した。
関心しつつ、男は門を蹴飛ばした。鉄かなにかの硬い物質でできた門は数十m吹き飛び、車庫にあったベンツに当たった。ベンツはひしゃげた。
そしてひたひたと歩きはじめる。

 二、三分すると中々から黒服を着た男達が銃を構えてでてきた。

「何者だ!」

「なまものです。漢字で書くと生物です」

「止まれ!撃つぞ!」

「私が止まるのは、道路に納豆が山盛りにされているときだけです」

「撃てぇ!」

 ベレッタM9が火を噴いた。男の体に穴が開く。いや、貫通したわけではないのだが。

「ううむ。どうしましょうか。殺そうか殺すまいか、それが問題だ」

 男は弾丸の嵐を受けながらも、ケロっとしていた。

「うん、殺しましょう。それがいいそれがいい」

男は鎌を翳し、走り出した。子どものように。
乱射していたので、黒服たちの銃は弾丸が切れていた。弾倉を入れ替える。

「わーい」

すぱん、と三人分の生首が生産されると、他の黒服たちは銃を捨て逃げ惑った。

「わーいうひゃひゃひゃ」

 鎌をぶん投げる。黒服の背中に見事に突き刺さり、刃が貫通した。血が溢れ、切り口から内臓がはみ出た。
死体が突き刺さったまま、柄をにぎりそのまま振り回す。穴が開いたところから肉体が引き千切られる。
それでもおかまいなしに、次々に人間を刈っていった。

 狂ったように、生首を生産する。
ガードマンたちは20人といたが、その20人が全部物言わぬ生首になってしまった。

「そーいうわけでお邪魔しまーす」

 扉を蹴り飛ばす。その扉の向こうにも人間はいた。
戦う意志のないであろうメイドたちと、それと、家族。
高校生である葛城 俊らしき姿は見えなかったが、写真を若干老けさせたような顔が玄関奥に見えた。

 奥に見えた男は、大声で叫んだ。

「なんだお前は!!」

「おっと挨拶が遅れました。どうも初めまして。屠野 荒太郎と申します」

 スーツの胸ポケットから写真を取り出して、男に向けた。

「葛城 俊という少年を知りませんか。高校生で、少々やんちゃの」

屠野は優しげな笑みを作ったが、彼の服についている返り血をみればそれはほとんど意味のない行為だった。
 
 男は鋭い目で屠野をにらみつけた。

「息子になんのようだ」

「おや、あなたが父親様ですか」

「息子に危害を加えるつもりか。貴様、俺が誰か知らないはずもないだろう」

 屠野はまじまじと男を見る。ほほう、とひとしきり感心すると、頷いた。

「ふむ、あなたは……」

「知っているだろう。俺にこんなことをしてただですむと思うなよ」

「いえ、知りませんね。誰ですか」

「きさまあぶべ」

 屠野が男に問いかけた時、ごく自然に手が振られていた。
男の名前や役職を知る前に、男は地獄へと昇天した。
すぱりと首が飛ぶ。まわりのメイドも首が飛ぶ。妻らしい女も首が飛ぶ。犬は胴体が飛ぶ。
一瞬で、赤い噴水が何個もできた。生首大量生産だ。

「ありゃま」

 逃げようとしていたのか、一人のメイドの胴体は首を失っても逃げようとしていたが、二三歩歩くと倒れてしまう。

「またやってしまいましたなー。居場所がどこか聞く前に殺してしまうとは……失敗失敗」

「な……なんなんだよ、これ」

 ふと気づくと、玄関の正面に少年が立っていた。
写真の少年と酷似している。金髪に尖った髪。そして目の辺りまで垂れている前髪。
酷似というより、葛城俊本人だった。

「おっとっと、これは手間が省けましたなぁ」

「誰だよお前!お前がこれやったのか!」

「申し遅れました。屠野 荒太郎と申します」

「何が目的なんだよ!警察呼んだからな!俺を殺したって金なんかでてこないぜ!」

 動揺しているのだろう、少年が発する一つ一つの言葉が振るえ、短く切られた。
屠野は何から答えればいいかわからずに少し困惑するが、とりあえず言われた順番から答えることにした。

「うーむ、とりあえずこの方たちは私が殺して目的はあなたを殺すことで警察は私の脅威ではなくお金はあなたの体からでないことぐらい知っているので安心してください僕はあなたの血と脳と内臓各位が欲しいのです」

葛城は逃げ出した。一目散に。
手を降ればすぐに殺してしまえそうだった。だが、屠野は追いかけるだけに留る

「とおーりゃ」

「ぎゃあ!」

と思ったのだが我慢できずにドロップキックをどてっぱらにかます。少年は吹き飛んだ。
てんてんとサッカーボールのように跳ねて、地面に横たわった。
 
 葛城はかろうじて意識があり、屠野に向かって震えた声で懇願した。

「助けて!お願いだ!」

「えーとですね、加賀美さんという方からあなたを殺してくれと言われたのでそれはできませんね。どんな死に方がいいかは選ばせてあげれますけど、何がいいですか?」

葛城は「加賀美……」と気の抜けた声で言った。
なさけなく涙と鼻水を垂れ流し、股間は汚くぬれている。
体が小刻みに震えており、歯が噛み合わないようだ。

「嫌だ……嫌だ……死にたくない……助けて……」

「どうします?ここは無難に刺殺がいいですか?」

「嫌だ……助けて……」

「嫌ですか。じゃあ、ちょっとファンキーに撲殺とかいってみます?」

「助けて……嫌だ……まだ生きたい……」

「うーむ。撲殺も嫌ですか。では、焼殺は?」

「助けて……助けて」

「このままではらちが明きませんな……あら」

 いつの間にか少年の首は飛んでいた。
屠野の鎌を持った腕が動いていたから、きっと屠野が殺したのだろう。いや間違いなく。
ぼとりと首がおちるとともに噴水がつくりあげられ、びちゃびちゃと自らの首をコーディネイトした。

「ふむ、まあ結果オーライというヤツですな」

屠野は生首を拾い上げると、それをどこからか出したエナメルバックに押し込んだ。

「次は、高野 正平……ですか。遠いですねー。はあー、これもお金のためー」

 そして、屠野は暗い夜道にまた身を投じた。

 






















To be continued...

[50] 3
ロキ - 2008年01月05日 (土) 22時26分






3








随分寒々しい朝だった。気が付けば雪が降っている。
加賀里 武春は静かに覚醒を迎えた。
まだぼんやりとした意識のなか、彼は携帯のアラームを止めた。
ディスプレイを開くが、メールはここ最近来ていない。着信など問題外だ。
期待はしていなかったが、少し落ち込んだ。
だがいつもと違うのは、ディスプレイの隅にメモ帳のアイコンがあったことだ。

「……そうか。今日……か」

 屠野との契約の日。恐らく今日、色々な段取りを決めるのだろう。
手がどうしても震えてしまう。それもそうだ、殺人の手取りを決めるのだから。
そして明日には実行されている。恐ろしいことだ。
 その恐ろしいことの引き鉄を引くのは、加賀里なのだが。

「……ふぅ」

「おはようございます」

「え……うわあ!!」

 ベットの脇に屠野がサンタクロースが持っているような袋を持って立っていた。

「いやあー今日も寒いですね」

「え、あ、そ、そうですね」

「おでんが美味しいでしょうねぇ」

「あ、あの」

「今日はコンビニで買っていきましょうか」

「あのー……」

「あ、そうか。お金がなかったんでした。で、なんでしょう」

 気づいていたのに無視していたのか、と加賀里は呆れたが敢えて何も言わずに問うた。
屠野のところどころ赤いしみを作った袋を見ながら。

「あの、それで今日は何を決めるんでしょうか……?はやく決めてしまわないと母さんが……」

「やはりちくわですかね。あの穴にかすかについた汁を一緒に食べるのは絶品です。で、なんでしょう」

 加賀里は溜息をつくと、もう一度説明しようとした。
けれども屠野はこのタイミングを待っていたとばかりに笑顔で言った。

「お母さんは大丈夫ですよ。絶対にここにきません」

「え、どうしてですか」

 嫌な予感がした。屠野の端整な顔立ちにおまけとしてついてきたような黒い瞳は、その嫌な予感を感づかせた。
あの日、公園であった屠野はこんな目をしていなかった。
もっと、人間的な。いや、そんな抽象的な言葉でなくとももっと形容しやすいイメージを作っていた。
今の屠野は、獣が獲物を狩るときの……いや、違う。そんなものでは形容しきれない。
殺人鬼が何人もの人を殺すときの、ソレ?いや、違う。そんな大それた事実を加賀里は知らない。
ともかく屠野の目は、加賀里の知らない世界を見ていたはずだ。
その視線を通して見られていた加賀里は、恐怖した。

「あなたのお母さんはこの袋の中に入ってますから」

屠野は袋の中をまさぐっていた。
多くの何かが入っているらしく、びちゃびちゃだとか、ぐちゃぐちゃだとかそんあ音がした。

「うーむ……ないですね。むむむむ……おっと、これかな」

 ようやく目当てのものが見つかったようだ。屠野は笑顔でそれを取り出した。

「母さ……ん」

呟くだけ呟いて、その言葉は無責任に彼方へ消えた。
 加賀里を生んだ母は生首として、屠野の片腕によって浮かんでいた。
真っ青な表情だ。安らかな表情ではない。恐怖と驚きで形付けられていた。
目は白目を剥いていた。死してもなお、苦しんでいるのかと思わさせられるくらいだ。

「すいません。玄関から上がろうとしたら真っ先に目に付いてしまったので」

屠野は、くしゃみをするのと同じように平然と、言い放った。

「とりあえず刈り取ってみました☆」

 加賀里は震えた。足の爪先に感覚がない。頭のてっぺんは血が駆け巡りすぎて何がなんだかわからない。
いったい 何が 起こったんだ。

「あ……あああ……ああああああ」

「それでですねー」

「あああああああうあああああああああああああ」

「こちらが葛城 俊」

さらに生首を出した。腐敗が始まっており、右の眼球が無くなっていた。
血の気はなく、機械か何かのように無機質だった。

「こちらが工藤 正太郎」

「あああああああああああ」

「こちらが朝田 直樹」

「あああああああああああ」

「それで、すいません」

「あああああああああああ」

「三人分の生首の予定だったのですが、勢い余って全員殺してしまいまして」

「あああああああああああ」

「どうもすみません」

「あああああああああああ」

「後はもう以下略でいいでしょうか?」

「あああああああああああ」

「あああああ……というのは、つまり、いい、という意味ですよね?」

「あああああああああああ」

「ありがとうございます。助かります。それで」

「ああなななあななああなななんんでっででででででっで」

「報酬なんですけども」

「どどどどどうしっししてってててかかかさささあああんんあああささまあああああででで」

「とりあえずこれだけ働いたので、ってなんでしょうか」

 加賀里の首が、スパリと飛んだ。

目尻には涙が溜まっていた。宙に飛ばされた瞬間に頬を伝い、血の噴水に消えた。

まだ意識はあった。しかし首が飛んだということには気づかなかった。

加賀里の脳は、このショックに耐え切れなかった。許容できる範囲ではなかったのだ。

 そして、加賀里武春という存在は、虚無となった。







「ありゃ、またやってしまいましたね。……礼金は」

 生首となった加賀里武春を一瞥すると、すぐ辺りを見回した。

「……ありませんよね。当然。お金はまだ財布の中でしょうなぁ」

傍らに落ちてあった黒い皮財布を見つけるが、屠野は深く溜息をつくと泣く泣く加賀里の生首を袋の中にいれた。

「強盗は殺人鬼の信条に反しますしね……。したがって今日もカップラーメン、いや、もしくはうどんですか。いや、やきそばかもしれませんね」

 屠野は残念そうに唇を噛み締めると、窓から飛び降りた。

すぐ真下に先ほど皆殺しにしたガードマンの一人の胴体があり、それを粉砕する。腸が盛大に飛び出た。

とぼとぼと袋を引きずり、闇夜を歩いた、ずるずると、道路に血の線を引きながら。

 そんな屠野の隣を、清楚な黒髪の女性が通った。

大方屠野を失恋した一般男性と勘違いしたのだろう。少し不憫だといわんばかりに目を細めて屠野を見た。

「あ」

ふと、思い出したように屠野は言った。

「鎌、忘れましたね」

 振り返った瞬間に、女性の頭を掴んだ、

「え、え、え、え」

「どりゃー」

皮が捻れ、骨がミシミシと粉砕される音が聞こえる。

血が破けた場所から水鉄砲のように流れ始め、女は白めを剥いた。

そして屠野は全力で生首を投げ飛ばす。

生首は随分遠くへ飛んでいった。

「さて、行きますか」









[67] どうだっていい。あなたの存在など誰も気にしてはいないし、気にする価値もない。安心なさい。あなたはここに存在しない。
ロキ - 2008年03月27日 (木) 17時04分






 まだ20前後ぐらいの、顔は悪い青年がずかずかと事務室に入ってきたかと思うと率直に屠野に言った。
俺の依頼は、と小声で言うと

「世界中の女を殺してくれ」と比較にならない大声で叫んだ。

 ふうふうと鼻息を吹いていて、興奮しているようだ。

「さっき通りすがりに気持ち悪いと言われたッ!これが何回もあったッ!」

「はあ」

「電車に座れば女は一席分わざわざ空ける!」

「へえ」

「奴等は世界の害悪だッ!」

「ちくしょう!ちくしょう!」

「ほう」

「殺してくれ!頼むッ!」

 屠野はぽかんとその男を見ているしかなく、ただ男がわめき散らすのを終えるのを待っていた。
男の心の叫びはしばらく続きそうだ。
屠野はふあ〜と欠伸をし、先ほどから食べていたカップラーメンをずるずると吸う。
 そんな屠野の様子を見てか、男は人差し指を屠野に突きつけた。

「お前ッ!依頼主にそんな態度をとってべぶば」

 デスクにあったシャーペンを手に持ち、それをダーツのように額めがけて飛ばす。
思い通りそれは貫通して、後ろの扉に突き刺さった。
ぶばっと血が弾け、一部の脳が吹き飛んだのを皮切りに穴からとろとろと滴り落ちる。

「お昼は静かにしましょうね」

 立ち尽くした体を前に、屠野はちゅるちゅる麺を吸い続けた。







[68] そもそも個人の本質など他人に見分けることができるわけもなく、何も知らないでって知れるわけがないじゃないか。その人の行動で評価されるのは当たり前だろ。評価されたいのならそれなりの行動をしろ。
ロキ - 2008年03月27日 (木) 17時06分












「はぁ……“しっそう”ですか」

 血まみれぐちゃぐちゃ体が気になるのだろう。
依頼人、佐々木啓吾はただでさえ老化による皺ができているのに、口元辺りに真新しい皺を作っていた。
佐々木圭吾は64歳の定年退職した身だと言った。
淡い緑のジャケットはまさにその風貌を表していた。優しそうな顔をしている。

「……はい。二週間前からです。孫の拓弥が失踪したのは」

「ふむ。しっそうしたのであれば、これは一大事ですね」

「そうなんです。恥ずかしい話ですが、孫はヒキコモリでして。それを苦にして自殺をしたかも……」

 佐々木はひっきりなしに指を絡めあう。世話しなく、焦点はあっていなかった。

「元々と言えば……私が甘やかしたのが原因なのですかね」

「うーむ。確かなことは言えませんが、甘やかしたのが原因なのは確かですね」

「は、はぁ……」

 佐々木は、そわそわとした感じで落ち着きがない。
そもそも、屠野の事務所に来たら誰でもこうなってしまうのかもしれない。

 机を挟んで、客室用にボロボロのソファー、そして屠野用に学校にある教室用の椅子が置かれている。
部屋の角にはまたまた学校で教師が使っていそうな作業用デスク、及び椅子。
作業用デスクにはカップラーメンの食い終わったカップが数個と、プリンプッチン後のケースだけしか置かれていない。
そして棚には内臓(?)の標本(?)、お金持ちになる100の方法シリーズ(全53巻)など、使用意図もよくわからない物ばかり。
別室に繋がるであろう扉は血に塗れていて、入室厳禁の文字だけが唯一緑の蛍光色を発しているだけ。
一体どのような人間が、どのような住み方をしたらこんな風になってしまうのだろう。

「で、どんな子ですか。そのー、たくや君でしたっけ」

「あぁ、あの、すいません。写真は持ってきていないのですが……」

「はぁ」

「髪は茶色で、目は少しキリっとしていて……」

「ん? 」

「ダウンジャケットを着てました、ファー着きの……」

「んん?」

「って、わかりませんよね。すいません」

「んんん?」

「明日写真を持ってきます」

「あ、いや、ちょっと待ってください」

 屠野は、すっくと立ち上がり、入室厳禁と書かれた部屋に入った。
がちゃあーんだとかどかあーんだとか派手な大きい音が起きたかと思うと、屠野は2,3分程度で出てきた。
いつの間にか屠野は血まみれで、手には真っ赤な何かをひきずっていた。
 
 佐々木は目を凝らした。人間だ。髪の毛から血がぽたぽた落ちている。んん?待てよ。あれは。見たことあるぞ。おい。あれは。

 屠野は髪の毛を引っ張り、顔が鮮明に見えるように顔を上げた。

「もしかして、この人のことですかね」

「た、拓弥」

「すいません。元気にご友人とコンビニ店内で万引きしていたのでコンビニ丸ごと皆殺しにしてしまいました」

「あ、う、あ」

 佐々木は目を見開いた。生意気であったけれど、正直で優しい子であったあの拓弥が。んでいる。
腐敗し、蝿がたかられている。まるでゴミだ。屠野はぐりんぐりんと佐々木拓弥の頭を振りまわす。
何故だ。何故んでいるのだ。わからない。佐々木は動けない。あまりの出来事に、頭は止まる。

「体は、お返ししますね」

 よいしょ、と屠野は佐々木拓弥を地面に横たわらせた。
そして股を広げさせ、太股を両脇に挟んだ。
ジャイアントスイング、ぶんぶんと遠心力にして回る。回る。回る。

「うおりゃー」

 ぶおんっ、と飛んでいく。飛んでいく。佐々木圭吾の元へと。

「うあああぶべば」

顔面に直撃し、佐々木圭吾も地に伏せた。
衝突のショックで佐々木拓弥の顔面も潰れたトマトのようになってしまった。

 屠野はありゃま、と気の抜けた声を出すと、まぁいいかとそれらの体を、先ほど天に召した青年の上に重ねた。

「あ、そういえば……」

やかんにお湯が入っているかを確認する。入っていない。
思わず溜息をつく。三時のおやつが食べられない。カップヌードル。

「しっそう、ってどういう意味だったんでしょうか」










[69] 頑張ってるって自分で言う奴ほど頑張ってない
ロキ - 2008年03月27日 (木) 18時09分











 酷く鬱蒼とした室内は、じめじめとしていた。思わず鼻を摘んでしまうほどの臭気がただよっている。
丸くクシャクシャにされたティッシュがそこらに無造作に捨てられている。
ジャンクフードのかすや、飲料水の空き缶やらペットボトルやら。
ろくに掃除もしていないことが明白だ。
 カーテンは閉じたままで外からの光は一切遮断されている。
この室内で光っているのは待機状態になっているパソコンと、鮮やかな色彩で描かれたゲーム画面が映るテレビだけ。
テレビとゲーム機、パソコン機器は気持ち悪いほど十分に整っていてこの部屋には不釣合いだった。
 
 そんな先進国の人間が住むような場所かを疑わされるところを根城にしている男は、浅間 和輝という名であった。
 和む・輝く。
ほとほとこの男には似合わない名前だ。
男はそのことを自分でも知っていた。
和ませることはできず、輝くことも許されず、できるわけもなく。

 浅間和輝はひたすら手元のコントローラーを弄くる。
カチカチという音しか部屋には聞こえない。
目の前に広がる世界は自分の思い通りに動く。

 なんて素晴らしいのだろう。それに比べてこの世界は。


 皆僕が嫌いなんだ。誰も認めてくれない。頑張っているのに。僕は。

それがどうだ。よってたかって僕を蔑んだ目で見る。

僕だってこんな容姿で生まれてきたいわけじゃなかった。こんな出来損ないの能力だけなんて嫌だ。

けどこれからどうやっても逃げられない。整形なんて簡単に言うな。あの糞親の哀れな目を見るのなんて耐え切れない。

働けだと。さもそれが当然のように。僕にとってそれがどんなに大変なことかわかっているのか。

できるのならとうにやっているさ。彼女も作ってやる。子どももどんどん作ってやるさ。

だけど社会が僕を認めないから。頑張っている僕を認めないから。頑張ってるんだ。僕は。頑張れなんて言うな。頑張ってるんだ。

ゲームの中だったら僕はヒーローなんだ。

全てが合理的にできている。

もてあました時間を全てオンラインゲームに費やす。皆は僕をうらやむ。神として崇めるものもいれば、弟子にしてくれなどと言うものもいる。

ネット上では口は強いし、幸いにして絵も上手いし、2ちゃんねるでも僕は強い。優越感に浸れる。

誰も僕を否定することはできないんだ。

僕を認めないことがこの世界の罪だ。

僕を認めない世界こそが、悪なんだ。

僕は悪くない。

僕は正しい。

僕こそが、僕こそが僕こそが僕こそが僕こそが僕こそが僕こそが僕こそが。


「……死にたい……」

「じゃあレッツ死にましょう」

「えっ」

 
 浅間和輝が気づいた時、目の前は血まみれだった。

屠野が物干し竿で浅間和輝を滅多打ちにした。ひたすた打つ。

「打つべし!打つべし!打つべし! っていう台詞をどこかできいたことありませんか? 」

固まった笑顔でひたすらに続けた。当然返答はなかった。
 頭蓋骨が砕け脳がドロドロに垂れていて、眼球はつぶれ、腕は骨が飛び出てて、酷い有様だ。

 部屋のドア辺りにたたずむ2人の老夫婦がいた。このモラトリウムを延長しまくってひたすらに反則をし続けた糞人間の親だ。


「これで……よかったんだ……。この子は私達がいないと生きていけない……」

「……ええ……」


 2人は涙を流した。浅間和輝がまだ純粋な子どもの頃を思い出して、涙が溢れる。
親として、こんなみっともない手段を使った自分を情けなく思うあまり、涙が止まらない。


「えっ、なんですか?」

「うわっ」


 ぶおん、と物干し竿が老夫婦の頭上を通り過ぎた。


「「「……」」」


 何故か気まずい沈黙が起きた。
老夫婦はいたたまれなくなり、屠野から視線を外した。
屠野は悲しそうな目をして老夫婦を見た。
チワワのような円らな目をされては、どう反応すればいいかわからない。老夫婦は焦る。

 老婆が、気まずそうに話を切り出した。


「あのう……」


刹那、屠野は目を光らせた。


「えっ! なんですか!? 」


「うわあぶべあ」


 物干しさおが側頭部にあたる。首からちぎれた。ちぎれた頭が老父に直撃した。老父は死んだ。共に粉々に頭を粉砕されて死んだ。


「ふう……。やっぱりこうでないと! 」

 
 満足げな表情を浮かべて、そして気づいたように物干し竿を置いて死体を見た。


「……しまった。また依頼主を……。……今日もカップラーメンですね。いや、あるいはコロッケですか」


 窓を律儀に開けて、二階から飛び降りた。
今日も今日とて仕事を頑張る屠野。頑張れ屠野。給料がもらえるその日まで!






[115]
林檎 - 2009年06月07日 (日) 09時36分

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