[46] 小ボリとニパ 下の続き |
- 鬱系 - 2007年04月17日 (火) 22時13分
隊長が一人部屋で自分と奴が同室、そう聞かされ確信を深めた。
ベッドに入り辺りが静まり返ってから、敢えて声を掛ける。
「まだ起きてんだろ」
返事はない、背を向けているから顔も見えない。 だが呼吸の様子で寝ていないのは分かっているから、勝手に続ける。
「てめーまだ隊長に告ってねぇんだな」
短くはない沈黙の後。
「…何でそう思う」
聞き取り辛い小声が返ってきた。
「てめーが隊長の傍に居んのに楽しそうじゃねえっつったらそれしかねぇだろうが。あぁそれとももう振られたか?」
また少しの沈黙の後、振られてねぇよ、と聞こえてきた。
忍び笑いする。 無論、感付かれるのは承知の上だ。
「可哀想になァ。隊長がもう少しこういう事に察しが良けりゃそんな苦しまずに済むのによ」
勢いよく起き上がる音がした。 予想以上の過剰反応だ。
「オレが必死で隠してんだ!隊長はかんけ」 「ッと」
奴のベッドに飛び移る。 奴が身を引いた分だけ、身を乗り出す。
「オレなら言い訳をくれてやれるぜ?」
下から顔を覗き込む。
「てめーはオレに脅されてるから告れねーんだ、ってな」
「…どういう意味だよ」
「隊長に過去洗いざらいぶちまけられたかねぇだろ?」
息を吸う音が聞こえた気がした。 それくらいはっきりと顔色が変わった。
「そんな顔すんな、マジでぶちまける気なんてねぇよ」
金属の手で顎に触れる。 またびくりと身を竦める。
「オレはただ昔みてーに仲良くやりてぇだけだ」
「…昔みてーにって、お前そのナリでナニしようってんだ」
口調に先程の勢いは無くなっている。
「ンなもん何だっていいじゃねぇか。やることヤりてぇなら5年待てよ。死んだ人間5年も引きずったんだ、生きてる人間5年待つくれー訳無ぇだろ。なぁ」
「待てねぇよ、誰が待つかよ…馬鹿じゃねーの」
そう呟いて噛み締めた唇を、爪の先で解かせて撫でる。 金属から伝わっても変わらない、懐かしい感触。
その口から溜め息が零れたのを耳が拾った。
視線を上げる。 伏せた目からは、もう拒絶の色は感じられない。
やはりこいつも同じだと思った。
感情は誤魔化せても体が忘れていない。 本当は、愛されていた事を。
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