[152] 日本の理念と獨逸の理念 『行』 昭和14年10月号 巻頭言 |
- 童子 - 2014年10月04日 (土) 14時41分
八絋一宇の理念は、 一世界を一家庭化せんとするところの理念である。
一家庭化と云うことは全世界を併呑して了い、全世界の諸国家を存在せしめないようにして、世界を一国家のみにして了うと云う意味ではない。
それは全ての人々の個性をなくして了って家長一人の専肆の自由意志に屈服せしめると云うことが、本当にその家庭を健全に発達せしむる所以でなく、各家族一人一人の個性が尊重され、その各々の個性が完全な発達を遂げれば遂げるほど、その 『家』 全体が栄えるが如く、各国がその独立を保ちつつ、その個性を完全に発揮せしめ、その特長を発揮せしめつつ、而も互に各国家全体が完全に連絡と統制とを保っていて、全世界一家庭のような完全な調和の理想が全世界一ブロックなる八絋一宇の理念であるのである。
併し、近頃叫ばれており、世界の各部各部で、或る特殊関係ある国家相互に経済団結が結ばれようとしている経済ブロックなどと云うのは、そう云う八絋一宇 ―― 世界を一ブロックにする精神の十歩も二十歩も手前の、八絋一宇の準備時代、否試験時代の試みに過ぎないのである。
併し、何人も、幼児からして一躍して大人になる訳には行かない。 世界もそれと同じく、全世界が一宇となり一家庭となることも一時に成就する訳には行かない。
現象界への事物の顕現は時間的空間的過程を徐々に経過して、 『既に神の理念(ことば)に於て成れる事物』 が実現するのであるから人間も幼時から少青年期を通過して成年期に達するように、全世界も、各孤立国家としてバラバラの存在であったものが、徐々に盟邦相結びブロック化して行くことになるのは当然である。
併し、ヒットラーの失敗は一人の専恣の自由意志に各国の個性的独立を抹殺しようとしたところにある。
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