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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


ここは小説投稿掲示板だ。
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーまたはその他(アニメ、ドラマ)などでも、楽しそうな小説やストーリー、
詩、日記などがあったらとにかく書き込もう。
他人が見ておもしろいと思った内容、自分が思いついた内容があったら、とにかくどんどん投稿してみてくれい。

(注)最近ここをチャット代わりに使われている方がたくさんいます。
チャット代わりに使われますと、せっかく一生懸命小説等を書いた方の内容がすぐに流れて見れなくなってしまいます。
ここは小説やストーリー、詩、日記などを書くところですので、チャットはこちらにてお願いいたします。

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  勇者「おい賢者…テメェいい加減にしろよ…」part01 - 愛のVIP戦士 (男性) - 2008年06月08日 (日) 21時15分 [759]   
  賢者「えっ…あ、あの…あたし?」
勇者「あのさぁ、…マジなんでお前レベルあがんないの?」
賢者「そ、そんなコト言われても…」
勇者「もうさ、お前立派な賢者なワケじゃん?いつまでも遊び人気分でいられちゃ困るんだけど」
賢者「で、でも、あたしちゃんとした職業やるの初めてだし、まだちょっと要領とか…」
勇者「言い訳すんじゃねぇよ!!!!!!」

勇者「…」
賢者「…何で…ひっく…そんなの…ずるいよ…いまさら…」

僧侶「ま、まぁ勇者も落ち着いて、賢者ちゃんも泣かないで…」
賢者「僧侶ちゃん…ひっく…」

僧侶「その…賢者ちゃん…よく聞いてね…。…あたしも、レベル上がらない時期とかあって大変だった時あったんだけど、…その…」
賢者「うん…」
僧侶「…自分の中でね?意識変えないと、変わんないと思うよ?もう少し周りのみんなの役に立ちたいとか…わかる?」
賢者「…うん…」


武道家「わかってないよアンタは」
僧侶「武道家ちゃん!!!!」
武道家「わかったフリしてるだけだよソイツは。何もわかっちゃいないよ」
僧侶「武道家ちゃん、賢者ちゃんは頑張ってるよ、そんな言い方しちゃダメだよ」
武道家「わかるんだよ。甘えてるだけなんだ。もっと厳しくしてやれば嫌でも覚えるようになる」
僧侶「ちゃんと言葉で説明すれば理解できるよ、そんなコトしちゃダメだよ」
武道家「口で言ってもわからないさ。来い賢者!!性根叩き直してやる!!」
賢者「!!」


僧侶「ちょっと!!」
武道家「何さ?ああん?アンタあたしのコト止められるとでも思ってんの?」
僧侶「…武道家ちゃん…言っていいことと悪いことがあるでしょ…?」
武道家「…なにぃ…?」

勇者「…まぁとりあえず二人とも落ち着け」
武道家「…」
僧侶「…」

勇者「別にお前らが争うコトじゃない。…それに、僧侶だって賢者が今のままじゃよくないって思ってるんだろ?」
僧侶「…それはそうだけど、でも急にレベル上がるとかは無理だから、じっくり時間をかけて…」

勇者「…なぁ、賢者…」


賢者「…」
勇者「みんなお前がレベル上がらないことについては同じ意見なんだよ。上がってもらわないと困るんだよ。わかるか?」
賢者「…だけど…」
勇者「…」
賢者「…」
勇者「…だけど…何?」
賢者「…」
勇者「言いたいコトがあるなら、言ってくれよ」
賢者「…」
勇者「…黙ってたってわからないよ。なぁ…」



賢者「…あたしは…」
勇者「…」
賢者「…あたしは…別に賢者になんてなりたくなかった…」

勇者「…」
僧侶「…」
武道家「…」

賢者「…ずっと…遊び人のままでよかったんだもん…みんなに守ってもらいながら…踊って…」
ダンッ!!!!!!
賢者「!!」
勇者「…僧侶…」

僧侶「…ごめん。ちょっと一人にさせて…」

賢者「…あの…」

勇者「…」
武道家「…なぁ賢者…アンタ何様なの?」
賢者「え…?」

武道家「…僧侶はさ、前々から…賢者になりたがってたんだよ…」
賢者「あ…あ…」

武道家「勇者とモメてるの見なかった?ああそっか、アンタ踊ってたもんね。知らないよね。教えてあげるよ」
勇者「…」


武道家「悟りの書があるからさ、一人賢者になれるじゃん?でも勇者がベホマ覚えるまで待ってくれって。回復が中途半端にならないようにって」
勇者「…」
武道家「僧侶がベホマ覚えるまでには、賢者もある程度一人前になるから待ってくれってね」
勇者「…」
武道家「わかる?わからないよね?本音はあたしも勇者も半分どうでもいいんだよアンタのコトなんて。でも僧侶がかわいそうじゃん?早く賢者になりたいのに、おあずけ喰らってさ」
勇者「おいおい…」
武道家「何よ?この際はっきり言ってあげた方が本人の為よ」

賢者「…うぅ…」



武道家「何?泣けば済むと思ってんの?泣いてる間にやることあるでしょ?勉強しなさいよ!!!!僧侶に謝りなさいよ!!!!何が遊び人のままでよ!!!!ふざけるな!!!!」
賢者「ふぅえ…うっく…っく…」
武道家「早く僧侶のところに行ってきなさい!!!!」
賢者「…う、うぅ…」
タッタッタ…


武道家「…ふんっ」
勇者「…悪いな、悪者やらせちまって」
武道家「別に。思ったこと言っただけよ。…多少こたえてくれれば怒った甲斐があるんだけど、どんなもんかしらね」
勇者「…ありがとな」
武道家「…何度も言わせないで、勇者に礼を言われるコトじゃないわ」

賢者「…(あ…)」

僧侶「…」
賢者「…(うっく…謝らなくちゃ…うっく…涙が止まらない…)」

僧侶「…」
賢者「…(どうしよう…しゃっくりも止まらない…うっく…)」

賢者「ん…あの!…うっく」
僧侶「う…賢者ちゃん?」
賢者「あ…(僧侶ちゃんが泣いてる…)」
僧侶「…どうしたの…あたし…、…一人にしてって…」
賢者「あの…ごめんなさい!!あたし、僧侶ちゃんの気持ち全然…」
僧侶「…」
賢者「…ごめんなさい…お願いだから許して…お願いだから…」
僧侶「…賢者ちゃん」
賢者「!!はぃ…」
僧侶「…勇者から聞いたの?あはは…そっか…」
賢者「…本当にごめんなさい…」
僧侶「ううん、謝らなくていいよ!…それに、逃げたのはあたしの方だし」
賢者「ふぇ…?」


僧侶「…ごめんね。あたし、自分の中でどうしても押さえきれなくなって…」
賢者「そ、そんなことないよ!!…あたしが悪いんだもん…」
僧侶「ううん、違うの。…賢者になりたいなんて、あたしのワガママだってわかってるの。…だから、あたしがこらえなきゃいけなかったんだよ…」
賢者「ち、違うよ!!あたしが勉強しないから…」
僧侶「…ごめんね…つらかったでしょ…武道家ちゃんにキツく言われたでしょ…ごめんね…あたしが守ってあげなきゃいけなかったのに…」
賢者「僧侶ちゃん…ふえ…ふええぇぇぇぇん!!!!」


勇者「…あ」

賢者「…グスッ…」
僧侶「…ほら、しっかり!」

賢者「…あの…」
勇者「ん?」

賢者「その…今まで勉強とか…あまり…できなくて…ごめんなさい…うっく…」
勇者「できなくて、じゃなくて、やらなくて、だよな?」
賢者「はい…」
勇者「それで?これからはどう変えていくんだ?」
賢者「その…僧侶ちゃんに色々教えてもらいながら、順番に覚えていきたいと思ってます…」
勇者「…」
僧侶「あたしが賢者ちゃんに教えていきます」
勇者「…はぁ…」
僧侶「…」
賢者「…」

勇者「…まぁ、僧侶ならちゃんと教えられると思うし、大丈夫だと思う。…要領つかむまで、お願いしていいか?」
僧侶「はい!!」
勇者「賢者」
賢者「!!はぃ…」

勇者「僧侶にしっかり教えてもらうこと!!いいな!!」
賢者「はい!!」


武道家「…(全くあまあまだな…)」


翌日

僧侶「さて!!今日からしっかり勉強してもらうから、覚悟してね!!」
賢者「はい!!先生!!」
僧侶「先生って…な、なんか恥ずかしいけど、よーし!!頑張って、まずはホイミから覚えるよ!!」
賢者「はい!!」

勇者「……」
武道家「…!!…!!!!」

僧侶「なんだろ…勇者たち…モメてるのかな?」
僧侶「あ…こっち来た」


勇者「…今からアリアハンに行くぞ…」

アリアハンにて


僧侶「ちょっと勇者!!!!!!ちゃんと説明しなさいよ!!!!!!!!」
勇者「だから…」
武道家「勇者…お前最低だぞ…この間の件はともかくとしても、今回は許せん!!」

賢者「…あ、はは…」

僧侶「賢者ちゃんを外すってどういうことよ!!!!!!!

勇者「…」
僧侶「ハアハァ…ふ、ふざけないでよ!!!!!!何でよ!!!!!!!!ふざけるな!!!!!!!!」
賢者「そ、僧侶ちゃん…もういいよ…あたしは平気だから…ね?」
武道家「僧侶、落ち着け。あたしも同じ気持ちだから。とにかく勇者、説明しろ」
勇者「その…、ルイーダに新しい奴が入って、そのな、遊び人なんだが、既に賢者になれるレベルなんだよ」
僧侶「だから何なの!!!!!!その人入れて賢者ちゃん外すっていうの?!!!!!!」
勇者「…」
僧侶「ハアハァ…、…あ、呆れたわ。あなた、とんでもない外道ね。じゃあ昨日怒ったのは何だったのよ!!!!!!」
武道家「…勇者、まだ今なら間に合う。だからもう一度考え直せ。」
勇者「…」

賢者「あ、あの!!」

賢者「あたしは、いいです」
僧侶「賢者ちゃん…」
武道家「…賢者、アンタの気持ちはありがたいけど、アンタだけの問題でもないのよ?あたし達が許せないの」
勇者「…」

賢者「あの、それはそうなんだけど、その…あたし、外されるって聞いて、その…ちょっと、ホッとしたの」
僧侶「…」
武道家「…」

賢者「聞いた瞬間は頭真っ白になっちゃったけど、落ち着いて考えてみると、うん、しょうがないなって思うの」
勇者「…」

賢者「だから、気にしないで、ね?あたしは平気。みんなが魔王倒せるように、毎日祈ってるから。ね?」

僧侶「賢者ちゃん…」



勇者「本当にすまん…」
賢者「あ、謝らなくていいですよ、だってしょうがないし。あたしは大丈夫だから」
勇者「…すまん…」

新賢者「おやおやこれは、なにやらおとりこみ中のようですね」
武道家「!」
僧侶「ま、まぁ、男性でしたの?」
勇者「あ、あぁ、紹介するよ、もうダーマで転職も済ませてるけど…」
新賢者「改めまして、新賢者です。賢者になってまだ日が浅いので、ご指導ご鞭撻の方、何とぞよろしくお願いします」
武道家「…(ふんっ、チャラ男が)」
僧侶「え、えぇ。こちらこそ…」


賢者「…」

新賢者「では参りましょう勇者様。」
勇者「あ、ああ…」


賢者「…(…バイバイ…)」

ルイーダの受付「…賢者さん?」
賢者「…」
受付「賢者さーん」
賢者「…!は、はい!!」
受付「そんなところでボーっとされても困るわよ」
賢者「あ、は、ハハ…」
受付「まぁ最初は空虚感あるけど、そのうち慣れるわよ」
賢者「はい…」
受付「…控室なら、奥にあるけど、ずっと引きこもっててもしょうがないし、散歩にでも出かけたら?」
賢者「はぁ…」
受付「城壁の外は危険だから出ないでね」
賢者「…はい

賢者「…(ヒマだなぁ…これからどうしよう…)」

武器屋「ここは武器と防具の店だ。どんな用だい?」
賢者「え?あ、ち、違います。なんでもないです」
武器屋「ほかにも用はあるかね?」
賢者「はぅ…何もないです」
武器屋「ほかにも用はあるかね?」
賢者「無いですぅ(うぅ…いつもは勇者が断るからうまくいかない)」
武器屋「ほかにも…」
神官「何も用はないですよ」
賢者「あ…」


  第7章 1節:開発部門の日常 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月19日 (火) 17時19分 [756]   
 
 彼はアーヴィン=サンダース。25歳の独身。恋人なし。
 これでも開発部門の部門長。目にクマがあるのは今日が徹夜5日目だからである。充分な睡眠を取り、ヒゲを剃ればもう少し男前になるのだが、ライアンが幸か不幸か発明してしまったディテクターの、実験データの収集やらその改良やら量産やらコスト削減の試行錯誤やらでどんどん太陽が移動し、すでに地球を4周もしてしまった。
「さすがに、俺死ぬかも……」
アーヴィンが呻き声をあげながらソファに倒れ込む。
「アーヴィン部長〜、この仕事いつ終わるんですか〜?」
部下も同じく倒れ込む。開発部門の人間はみんなげっそりしていた。
「頑張れ、いつか終わるさ……」
「俺、このまま眠れるならもう目覚めなくていいです……」
もう一人の部下が辞世の句を残して墜ちた。
「寝るなよ〜。まだ仕事は山積みなんだぞ?」
「まぁ少しくらい寝かせてやれよ。お前だってもう70時間は起きっぱなしだろ。仮眠取っていいぞ」
「なに言ってんですか。部長なんてもう90時間はぶっ通しでしょ。俺たちだけ寝れませんよ」
ソファに顔を埋めたまま言う。
「それに今寝ちゃったら3日は起きない気がするんで」
「ははは、だな」
みんな苦笑する。
「それにしても本部長、またすごいもん作ってくれましたね」
「そう言うな。これで殲滅部門の奴らがずっと楽になる。それに、これが俺らの仕事だ」
開発部門には科学、物理学、材料学に始まり、哲学、心理学に至るまで、およそ学問と呼べるあらゆる分野のスペシャリストが集まっている。
様々な発明品で殲滅部門の任務をサポートする重要な、そして名実ともにWPKO一忙しい機関だ。過労・睡眠不足で倒れる人間も少なくない。
「殲滅部門といえば、新人が来たらしいっすね」
「…そうだった。そのことで本部長に呼ばれてたんだっけ」
アーヴィンがムクッと起き上がって温くなったコーヒーに手を伸ばす。
「あぁ、新人のデータ採取ですか?」
「そ」
「そういえば、マイヤちゃんも任務から帰ってきたらしいですね」
「マジで!?」
グテッと倒れていた男が突然起き上がる。
「後で見に行こ」
「何でだよ」
別の男が呆れ顔で言う。
「疲れた心に癒しを与えるんだよ。この間帰ってきたと思ったらすぐ任務行っちゃったもんな〜」
「この前メシに誘って断られたくせに」
「うっせ!」
「あのさ、そのマイヤちゃんと例の新入りがさっき一緒に部屋探してたよ」
『何〜〜っ!?』
意識の混濁していた男どもが一斉に飛び起きた。
「なんで入ったばっかの新入りがいきなりマイヤちゃんと館内デートしてんだよっ!?」
「さぁ。でもここに引っ張ってきたのはマイヤちゃんだって噂だよ」
「おのれ新入り…!いったいどんな男だ?」
「なんでも髪が真っ白らしい」
「じじい!?」
「マイヤちゃんて年上派だったの!?」
「いや、いくら何でもじいさん好きってこたぁねぇだろ」
「でも新入りじいさんがやってくるなり一緒に部屋を探すこの親密さ。こりゃわからんぞ」
「俺、ちょっとショック」
「はは、同い年だもんなお前。御愁傷様」
「うるせー!3回もデート断られたお前に言われたかねーよ!」
憶測の応酬が飛び交う。
「おいおいお前ら、マイヤのことで盛り上がる元気があるならこの書類の山片付けてくれよ」
アーヴィンが呆れ顔で言う。
「部長!部長はマイヤちゃんがそこらへんの馬の骨に持ってかれてもいいんですか!?」
「俺は知らん。それはマイヤの決めることだ。さぁ、仕事しろ仕事!」
アーヴィンがパンパン手を叩いてみんなを仕事に戻した。
「じゃ、俺ちょっと本部長のとこ行ってくるから、ここ頼んだぞ」
「はい、わかりました」
みんな仕事に手をつけるものの、話はマイヤのことで持ち切りだった。
アーヴィンは部屋を出る前に一同に向けて言った。
「おいみんな、現実的に考えろ。お前らじゃマイヤは落とせん」
バタンとドアが閉まる。
「……だよなぁ」
さっきまで盛り上がっていた男達はみな項垂れるのだった。


  第7章 2節:初任務 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月19日 (火) 17時51分 [757]   

「失礼します」
「は〜い、どうぞ〜」
ヨーロッパ地域本部に着いてから4日。アルトは司令室に呼ばれた。以前言われた、エターナル・フォースのデータ採取だろう。
「ここはもう慣れた?」
ライアンは常にコーヒーを飲んでる。この前廊下で見たときも、手にはコーヒーがあった。
「はい、たまに迷いますけど」
とにかく広くて高くて、未だに全体を把握してない。
「大きいからね〜。地下も15階まであるんだよ〜」
そんなにたくさんの部屋、何に使うのだろうか。
「そこに地下鉄もあってね、ミラノの駅に直結してるのよ」
「へ〜、駅が地下に…」
任務に出向く際はそれに乗って行く。警備員が言ってたのはそういうことだったのか。
「それで、用件はこの間言ってたデータ採取ですか?」
「あ〜それなし。データ採取はまた次の機会にね」
「じゃあ、いったい何です?」
「任務に行ってもらいたいんだ」
任務。正式にはこれが初任務になる。
「どこですか?」
「ルーマニア。奇しくも我が故郷だ。詳しい話はもう1人が来てからね」
「…もう1人?」
「そ。チームを組んで行ってもらうのよ」
「でも、この前は研修は必要ないって……」
「チームを組むのは、キミが新入りだからじゃなくて、相手がなかなか手強そうだからだよ」
それだけ被害者が出てるってことか。しかしそれなら今まで気づかなかったのはなぜだろうか。
「組むのは誰ですか?」
この4日間で何人かのターミネーターに会った。みんなアルトよりは10歳は年上の大人だった。
アルトやマイヤのように10代のターミネーターはあまり多くないらしい。
「ん〜そろそろ来ると思うんだけどね〜」
ライアンは悠長にコーヒーをすする
「マイヤはどうしてます?」
自分の部屋を決めたり、館内を案内してもらったりした日以来、顔を見てない。
「マイヤくんは今オーストリアで休暇中。家族に会いにね〜」
「そうですか」
念願の休暇というわけか。働き詰めだったみたいだし、家族とゆっくり過ごして欲しいものだ。
 突然扉が開いた。ノックはなかった。
入ってきたのは若い男だ。たぶんアルトとそう歳は変わらないだろう。
細身だが引き締まった体、漆黒の髪を後ろで結わえて、それは腰の辺りまで伸びている。マイヤといい勝負だ。
切れ長の目に鋭い眼光、そしてアルトが今まで見てきた誰より不機嫌そうな顔だ。
「任務か?」
司令室に入るなりぶっきらぼうにさっそく本題に入った。
「やぁ天峰くん。待ってたよ。今日はいつにも増して不機嫌だね」
「…あんたと漫才する気はない。さっさと任務内容を言え」
この男がアルトのパートナー。なんだかDICを消去する前にこの天峰に殺されそうだ。
「説明の前に紹介しとくよ。彼は天峰総一郎くん。キミと同じターミネーター」
天峰はアルトをチラッと見た。睨んだと言った方が的確かもしれない。
なぜそんなに不機嫌なのか、アルトは不思議に思った。
「で、こっちはアルト=ナイトウォーカーくん。ついこの間入った新人さん。任務はキミたち2人で行ってもらうからよろしく」
「新入りの研修なんかに付き合ってられるか。誰か別の奴に回せよ」
「アルトくんは研修免除だよ。アデル元帥の弟子でね。もう実戦にも慣れてる」
「元帥の…?」
ギラッとした眼光が再びアルトを射抜く。
初対面の相手をここまで睨み付けることができる人間も、そうはいないだろう。
「よ、よろしくお願いします」
天峰からの返答はなく、ライアンの方に顔が戻った。
「…だったらなぜチームを組む必要がある。俺一人で充分だ」
「まぁまぁ、今回の任務は一人じゃちょっとキツイと思うんだよね〜。数が数だし」
数?複数のDICがいるということか。
「おまけに友達の少ない天峰くんは、アルトくんとの親睦も深まる。一石二鳥ってやつだね」
「…くだらん。さっさと説明に移れ」
「場所はルーマニア。調査部門の調べによると、どうやらDICによる組織めいた集団が存在するらしいんだよね」
ライアンは山と積もった書類の中から引っ張り出した、報告書の束を見ながら話し始めた。
「組織…ですか?」
「そう。集団活動を行うのはかなり知能が発達してるDICだね。組織はルーマニアに限ったものなのか、それとももっと広範囲に根付いたものなのか、そこら辺はまだ何とも」
「…組織の壊滅が任務か?」
「キミたちの任務は、組織の規模、目的を調査し、かつルーマニア内のDICを殲滅すること」
「被害の数はどの程度なんですか?」
「犯行がDICによるものだと疑われるのは、約200件。この2年間でね」
「200…!?」
「ただ今までみたいに特定の区域じゃなく、ルーマニア全体が活動範囲になってる。だから調査部門も気づくのに時間がかかったってわけ。相手方の規模にもよるけど、殲滅だけじゃなく調査も伴う危険な任務だから、2人ともガッチリ協力してね〜」
協力、してくれるのだろうか。アルトの方は問題ないが、天峰は見た感じ協調性皆無だ。
「他に何か質問は?」
「…DICが組織を形成するのは今回が初の事例なのか?」
「………いや、他にいくつか事例があるよ」
気になる「間」だ。DICが組織を作る、というのは少なくともアルトは聞いたことがない。天峰も同様のようだ。
「…そうか」
「以上かな?じゃ、任務完遂に向けて、ボクからプレゼントをあげちゃおうかな〜」
そう言ってライアンが何かをポケットから取り出す。
「じゃ〜ん!DIC探索機器、通称『ディテクター』だよ〜」
「…またあんたのくだらん発明品か?」
「ひどいな天峰くん。ボクの発明にくだらないものなんてあった?」
「どうだかな。思い出すことすらくだらん」
「むむむ、でもこれは役に立つこと間違いなし!エターナル・フォースを駆使してDICのダークマターを感知する機械だよ」
「そんなことできるんですか?」
アルトのシックスセンスと同じ効果だ。
「もちろんさ。すでにマイヤくんに試作品を使ってもらって、それはもう絶好調。これもまだ改良途中なんだけど、充分使えるよ」
「へ〜、便利ですね。エターナル・フォースを消費するんですか?」
「まぁほんのちょっとね。でも戦闘に差し支えはないよ。ということで、二人とも仲良く頑張ってね〜」
天峰はまだ不満そうな感が満々だったが、任務と思って割り切ったのか、クルッとライアンに背を向けて扉へ向かった。
「…行くぞ銀髪。俺の足引っ張んなよ」
「アルトです。敵は多数なんですから二人で“協力”して頑張りましょうね」
“協力”の部分をしっかり強調して、にっこり笑いながらアルトは言った。
「…てめぇ、何様のつもりだ」
天峰の眼光がアルトを射抜く。
「天峰の仲間ですよ。よろしくお願いします」
「……ちっ」
「やれやれ、今からこの調子じゃ先が思いやられるね〜。あ、そうだ。長期任務になりそうだから、定期連絡を欠かさないでね〜」
天峰は司令室を出てズカズカと進んでいった。
「…いつもあんな気難しい性格なんですか?」
「まぁね。彼の機嫌が良いのは閏年より頻度が少ないね。でも殲滅者としての実力は折紙付きだよ。彼は世界最後の侍さ」
「さむらい…?」
敵も味方も厄介そうな発任務に、アルトは小さな溜息をついた。


  第7章 3節:たぶん - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月19日 (火) 17時55分 [758]   

 予定していた時刻に、予定していた場所に行ったが、ライアンと新人は影も形もなかった。
しばらく待ったが一向に来ない。いったいどうなっているのかと、司令室に行ってみると、ライアンは悠々とコーヒーを飲んでいた。
「本部長……」
「おや、アーヴィンくん。何か用?」
「何か用?じゃないですよ。新人のデータ採取の方はどうなってるです?」
「データ採取?…あぁ、それ中止になったの。彼には任務にね〜。言ってなかったっけ?」
「初耳です…」
(勘弁してくれよ。っていうか中止にした時点で俺に連絡しようとか思うだろ?普通)
などと上司に言えるわけもなく、アーヴィンはその件は忘れることにした。
「…任務って、どこですか?」
「ルーマニア」
ルーマニア。DICの組織によって200余人が犠牲になっているところだ。
「…そんな危険任務に入り立てのじいさんを送り込んだんですか?」
「…じいさん?やだなアーヴィンくん。アルトくんはまだ15だよ」
「…えぇ!?だってみんな白髪のじいさんだって…」
「はぁ〜、歳の判別もできないとはね〜。みんな働き過ぎ。早死にするよ?」
「誰のせいだと思ってるんですか……」
「さ〜、見当もつかないよ」
「…それより、大丈夫なんですか?新人をそんなとこにやって。DICの組織なんて、相当やばい任務だと思うんですけど」
「ん〜、大丈夫だと思うんだけどね〜。アルトくんの実力はかなりのものだそうだし、天峰くんも一緒だから」
「あの『白刃の天峰』が?…よくチームなんか組みましたね」
「ケンカしながら行ったよ。って言っても天峰くんが一方的に不機嫌なだけだけど。あの二人、けっこういいコンビになると思うんだよね〜。彼らに足りないのは信頼と友情さ!」
右手の親指を立ててアーヴィンに向けた。
(何?そのテンション。っていうか無理だろ。天峰だよ?)
「…その組織は、『ジハード』とは関係が…?」
「…どうかな〜。行動がちょっと雑だからね〜、関連はないと思うけど、もし何らかの形で繋がりがあるとすれば、危険かもね〜」
「かもね〜って……。総本部はこの件には何も言ってきてないんすか?」
「うん。『ジハード』が絡んでくれば、もう元帥クラスの任務だけど、今のとこ何もなし」
「じゃあ、そんなに心配することもないですかね」
「たぶんね〜」
「……たぶんっすか?」
「そ。たぶん」
(おいおい、大丈夫か…?)
アーヴィンは不安を隠せずにいた。

「なぁ、今ルーマニアが賑やかなの知ってる?」
「知ってるよぉ。デュートが裏で糸引いてるんだってぇ」
「へ〜。なんで?」
「知らな〜い」
「あいつ、暇人だな」
「ティックもでしょぉ〜?」
「はは、おっしゃる通りで」
「……どこ行くのぉ?」
「暇人なんでね。ちょろっとちょっかい出してくる」
「怒られるよぉ?デュートに」
「デュートじゃねぇよ。俺らを消そうとしてる奴らにさ」
「ふ〜ん。おみやげ買ってきてねぇ〜」
「了解、お姫様。……久々に、楽しめそうじゃん?」


  第6章 1節:最初で最後 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月07日 (木) 18時37分 [753]   
 
 イタリア北部、街中から少し距離を置いたミラノの外れ。
「ここがヨーロッパ地域本部か……」
縦にも横にも巨大な建物。何階建てだろう。思っていたより近代的だ。ヴァチカンの総本部が古典的すぎたのか。
人の手では開けられそうにない大きな扉。その前には警備の人間。ここら辺がいかにも軍事関連施設のようだ。そういう風に見せてるわけだが。
「身分証明書を」
近づくと警備の人に言われた。コートからヴァチカンでもらった手帳を出して見せる。
「少々お待ちください」
そう言って小さな無線機を取り出した。
「こちらゲート1、開門」
「了解」
無線機から返事が来る。扉が横に動き始めた。
「人が出入りするたびにこうやって開けてるんですか?」
警備を厳重にするのは結構だが、これはかなり面倒くさい作業だ。警備の人は笑って答えた。
「いえ、この扉は滅多に開きません。あなたがここを通るのも、たぶんこれが最初で最後ですよ」
「…?」
「さ、どうぞ」
扉が僅かな隙間を作って待っていた。



  第6章 2節:危険な決意 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月07日 (木) 18時40分 [754]   

「本部長、前2件の任務完了報告書です」
「朝早くからご苦労様〜」
昨日はライアンの顔を見る気にならなかったので、マイヤは翌の朝一番で持ってきたのだ。
「そろそろアルトくんが到着する頃だね〜」
「…そうですね」
やや怒気を含んだ声で適当に返す。
「あれ、まだ怒ってるの?やだな〜、ただのお茶目なのに」
「用がないならこれで失礼します」
「ところが、まだ用があるんだな〜」
「…何ですか?」
「アルトくんがこっちに着いたら中を案内してあげてよ」
「なんで私が……」
「なんでって、彼はキミの……とまぁそれは冗談で」
マイヤの殺気を感じたのか、ライアンはは口をつぐんで途中で切り替えた。
「まだ他のターミネーターは誰も帰ってきてないからね〜」
「それでも誰か他の人がいるでしょう?」
「いないね〜。開発部門はディテクターの量産でごった返してるし、情報管理部門だって毎日支部から送られてくる情報の管理で大忙し。会計部門も同じ。ボクは見ての通り、ここの誰よりも忙しいのよ」
そういって書類で埋め尽くされた部屋を見渡す。本当に忙しく仕事をしてるならこの現状はあり得ないはずなのだが。
「それにアルトくんとしても顔見知りの方が気が楽でしょ?」
「それは、まぁ、そうですが……」
「それとも、承諾できない何か深〜い特別な理由でもあるのかな〜?」
そう言ってニヤッと笑う。
「……わかりました。やります」
「よろしく〜。用件は以上。アルトくんが到着するまでは自由にどうぞ〜。今は任務もないしね」
電話の呼び出し音がする。デスクの上だ。
ライアンは書類に埋もれた電話機をガサゴソと引っ張り出し、受話器を取った。
「もしも〜し。…うん。…あ、そう、もう着いたの?」
どうやらアルトが到着したようだ。
「じゃあこっちに連れてきてくれない?…はいは〜い、よろしくね〜」
受話器を置く。
「アルトくん到着したってさ」
「そのようで」
マイヤが思ったより少し早かった。
「ちょっとここで待っててよ。この際、先に話をしてから館内デートと洒落込もうじゃないか」
(こいつは……。DIC殲滅の暁にはこいつも消し去ってやる…!)
マイヤは込み上げてくる怒りを必死に押さえ込んだ。
「…何を話すんですか?」
「ちょっとね。新入りくんの決意の程を聞いておこうと思って」
「…というと?」
「アルトくんは母親をDICに殺されたんだよね?今は家族もいない」
「はい。だからDIC殲滅に関して決意も強固ですよ。責任感も人一倍のようですし」
「そう、だからこそ彼のその強固な決意は、彼に危険を及ぼすかもしれない……」
「は?」
――コンコン
「失礼します」
入ってきたのは1人の少年。黒ズボンに黒コート。髪は輝く銀。
「いらっしゃい、アルトくん。待ってたよ」


  第6章 3節:大切なこと - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月07日 (木) 18時41分 [755]   

 とりあえず門はくぐったものの、どこに行けばいいのかわからず、受付らしきところへ事情を話したらどこかへ取り次いでもらい、そしてここに連れてこられた。
 まず目に入ったのは大量の書類。次にマイヤ。心なしか不機嫌そうだ。そしてデスクに腰掛ける男性。
なぜ白衣を着ているのかは不明だったが、この人がおそらく本部長なのだろう。
「ボクがここの本部長のライアン=クランツ。よろしくね〜」
「アルト=ナイトウォーカーです。こちらこそよろしくお願いします」
「マイヤくんはこの間会ったから知ってるよね?」
「はい」
「キミの部屋は後で好きなのを選んでね。たくさん余ってるから。この後マイヤくんが館内を手取り足取り愛情たっぷり込めて案内してくれるらしいから、ここに関するわからないことはその時聞いておくといいよ」
「はぁ…」
「本部長!真面目にしてください!」
「やだな、ボクはいつになく真面目じゃないか」
「いったいどこをそう見たらそうなるんですか!?」
マイヤはここではいつもこんなに苛ついてるのだろうかとアルトは思った。マイヤの質問には答えずライアンは続けた。
「キミにここへ来てもらったのは、ちょっと聞いておきたいことがあったからなんだ」
さっきまでとは声や目付きが変わった。
「…何でしょうか」
「キミはアデル元帥の下で修行を積んだそうだね」
「はい」
「マイヤくんの話を聞く限り、キミは殲滅者としてもう充分任務をこなしていける。パートナーを組んでの研修も必要ない」
新米は研修をするのか。知らなかった。
「そこでキミに質問だ。この殲滅者としての仕事をしていくにあたり、何が最も重要か、キミは知ってるかい?」
何が最も重要か。そんなことは誰が考えても明らかではないか。
「…DICの殲滅です」
そう、DICの殲滅。それこそが殲滅者の最も大事なこと、そしてそれがアルトの全て。アルトの使命。
「ふむ…まぁ、間違ってはいないね。それもとても重要だ。でもそれは最終的な『到達点』であって、その到達点に辿り着くために重要なことは、何だと思う?」
DIC殲滅のために重要なこと。
「…………」
「…質問を変えよう。例えば、DICがキミの力じゃ相打ちがやっとの強敵だったとしたら、キミは自分の命を落とすことになろうとも、DICを消去しようとするかい?」
「……はい」
退けば犠牲者がさらに増える。おめおめとしっぽを巻いて帰るわけにはいかない。何としてもDICは消去しなくてはならない。
「……最も重要なのは、『生きる』ことだ。戦いの果てにキミの『死』の可能性が見えるなら、キミは戦いを放棄して逃げるべきだ。DICはその後で応援を連れて改めて消去すればいい」
逃げる?DICも倒さずに?
「でもそれじゃ犠牲者が――…」
「…――増えるね。遅れた分だけ確実に犠牲者が増える。じゃあ仮にキミが相打ちでDICを消去したとしたら、その先はどうなる?そのDICに関しての犠牲者はそこで止まるね。でもキミが未来で消去するはずであろうDICは野放しだ。他の殲滅者が倒すにしても、そこには必ず遅れが生じる。僕らは先制してDICを倒すことはできないからね。その遅れをまた他の殲滅者が、そこでまた生じた遅れをまた他の殲滅者が……。遅れの連鎖が積もりに積もって、やがてキミが一旦退いて改めて倒した場合を遙かに凌ぐ犠牲者が積み上がるだろう。殲滅者が1人死ぬってことは、そういうことなんだ。キミの仕事は、DICを消去し、かつ生還することだ。DIC1体倒すために死ぬくらいなら、逃げてくれた方がキミもボクも、キミの仲間も、そして世界も助かる。おわかり?」
そんなこと、考えたこともなかった。考えたことなかったが、話は簡単だ。アルトはDICを倒さなくてはならない。この世界から消し去らなくてはならない。そのためには、生き続ける必要がある。DICを殲滅するその日まで。そういうことだ。
「はい、わかりました」
「よろしい。お話は以上。マイヤくんと楽しい楽しい館内観光を満喫しておいで」
「行こ」
マイヤがライアンに一睨み投げて、部屋のドアに向かって歩き出す。僕もそれに続いた。
「アルトくん」
「はい」
本部長がさっきの「おわかり?」の前までの真面目な顔で僕に呼びかけた。
「もう1つ覚えておいて欲しいことがあるんだよね。心の片隅にでも置いといてよ」
「何ですか?」
「『運命』っていうのは、神様が創って渡してくれるものじゃなく、自分で組み立てるものなんだよ」
わずかに微笑みながらそう言った。慈しむような、憐れむような、そんな微笑みで。

「本部長はすごい人ですね」
マイヤの横を歩くアルトが感嘆の声を漏らした。
「まぁ、ね」
認めるのは何となく癪に障るが、事実だ。
 頭はいい。仕事もやらないだけで、おそらくやれば何でもできるだろう。でもどこかチャランポランで、無責任で不謹慎な男だと、そんなふうにマイヤは思っていた。
それは表面上だけの張りぼてだったのか。今日はライアンの心の一端を覘いた気がした。悔しいが、ライアンはすごい人間だ。
「さて、それじゃまずアルトの部屋を選ぼっか」
「はい、お願いします。……あの、あんな人が本当に変人なんですか?」
「世界屈指のね。最近変態であることも発覚したわ」
「…?」
 何にしても、新たな殲滅者は、こうしてヨーロッパ地域本部にやって来た。



  第5章 1節:新たな家族 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月01日 (金) 13時48分 [747]   
 
 ここはイオニア海を進む船の上。ギリシャWPKO支部を後にして、アルトは総本部のあるヴァチカンへ行くために、マイヤは地域本部へ帰るために一緒に乗船した。
昨夜の雨雲もきれいさっぱり無くなり、空は快晴。海は穏やかで太陽に照らされキラキラ輝いている。頬を打つ海風が心地いい。
このまま順調に行けば、夕方にはイタリアの港に到着するだろう。
 港に着くまではデッキでマイヤと会話をしていた。
「エターナル・フォースは2タイプに分けられるんですねぇ。知りませんでした」
アルトの銃は「武器タイプ」、マイヤの水攻撃や、アデルのは「特殊タイプ」に分別されるらしい。
「そうなの?アデル元帥の弟子なんだからもう何でも知ってるかと思った」
エメラルドグリーンの目を丸くして、マイヤは意外そうな顔で言った。
「それがそうでもなくて…。むしろ知らないことの方が多いと思いますよ」
行く先々で修行を与えられ、それをこなして行くだけで精一杯だったし、アデルはWPKOのことはあんまり詳しく話してくれなかった。きっと面倒くさかったからだろう。
 修行中、アデルはフラッとどこかへ行き、そのまま1週間ほど帰って来なかったり(もしかして任務だったのか…?)、はたまたほんの数時間で多額の借金を生み出したり、とにかく波瀾万丈だった。
「へ〜、やっぱり元帥って大変なのね〜」
マイヤはなぜか感心と尊敬の声を漏らした。大変なのはアルトなのだが。
「ねぇねぇ、アルトはアデル元帥が戦ってるとこ、見たことあるの?」
「はい、何回か」
いくつもの街や村を巡るうちに、この間のように偶然DICに当たることは何度かあった。
アデルは「これも修行だ」とか言ってバックれるから、DICの探査から殲滅までほとんどアルトがやった。
でも時にはアルトの力じゃ敵わないDICだっていた。そんなときはアデルが戦線に立った。
「で?どうだった?」
マイヤは興味津々だ。
「どうって……すごい、ですよ」
「どうすごいのよ」
すごいとしか形容しようがない。何がどうなってるのか僕だってわからないのだから。
「気がついたらDICが消えてたって言うか……本当にもう一瞬で」
あれは反則だ。
「ふ〜ん、さすが元帥ってとこね」
「マイヤは水を操れるんですか?」
「まあね。水とエターナル・フォースを練り上げて武器化するの」
「なるほど、だから水でもDICが斬り裂けたんですね」
「そゆこと」
「いつからWPKOに?」
「8歳の時に適合者だとわかってWPKOに連れて行かれたの。それから殲滅者として戦っていけるように訓練を積んで、覚醒したのは13の時。それから4年間、ずっとこの生活ね」
そういえばアデルも、「適合」しても「覚醒」までには個人差があるって言ってたな。適合は、言わば繭の状態。覚醒して初めてエターナル・フォースが発動できる。
「家族と離れ離れなんですか?」
「父と母はオーストリア支部の会計部門に勤めてるの。適合者が見つかってその人に家族がいた場合って、家族には全部説明されるじゃない?WPKOのこととか。それを聞いたら『そんなところに娘一人送れるか!』って言ってWPKOに私と一緒に入っちゃったの」
マイヤはおかしそうに笑った。少し嬉しそうにも見える。
不安だったのだろう。恐かったのだろう。家族と離れることが。家族を失うことが。
「ターミネーターになって任務をこなすようになってからは滅多に会えなくなったけど、会えるだけまだマシね。WPKOは基本的に外部の人間と接触禁止だから」
「そうなんですか。いいお父さんとお母さんですね」
「アルトの家族はどうしてるの?」
僅かな沈黙。答えればきっとマイヤは気まずい思いをするだろう。答えなくても同じことになるか。
「僕、家族はいないんです。父は僕が生まれてすぐに事故で。母は、DICに……」
案の定、マイヤは気まずそうな顔をした。自分が家族を失うことを恐れるがゆえに、実際に家族を失ったアルトが一層かわいそうに映るのだろう。
「……そっか。ごめん、変なこと聞いて」
「気にしないでください。もう昔のことですし。それに、母は今でも僕に戦う力をくれますから」
そう、約束したのだ。常しえの眠りにつく母に。絶望に浸ることなく歩き続けると。悲しみを消すべく奔り続けると。
「……じゃあ、これからは私たちが新しい家族だね」
マイヤはにっこり笑ってそう言った。
「そうですね」
新しい家族、か。アルトは自分が笑みを浮かべているのに気づいたのは少し後になってからだった。



  第5章 2節:総本部 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月01日 (金) 13時49分 [748]   

 予定通り、日暮れにイタリア南部の港に到着した。列車に乗って中部まで行き、マイヤとはそこで別れた。
総本部のあるヴァチカンはローマ市内の小国で、ヨーロッパ地域本部は北部のミラノにある。
「いい?アルト。絶対ヨーロッパ地域本部に来るのよ?アフリカなんかにいったら承知しないからね」
「はい、わかりました」
苦笑しながらアルトは答えた。相当忙しいんだな。
 ローマ駅に降りたアルトは、ヴァチカンに向けて歩き出した。
 ヴァチカン市国。周囲を囲む高い城壁の中にそびえ立つのは、サン・ピエトロ大聖堂。かつてキリストの使徒ペテロの墓があったとされる場所の上に、被さるようにして建立された世界最大級の教会建造物。キリスト教のことはよくわからない。でもこの大聖堂の地下深くに、WPKO総本部が存在することは紛れもない事実だ。もちろん、来るのは今日が初めて。
 サン・ピエトロ広場は民間人にも開放されていてるらしく、夜だったがちらりほらりと人がいた。中央にある巨大なオベリスクを通り過ぎ、大聖堂の前まで来た。ここまで来ると本当に大きい。
「アルト=ナイトウォーカー様でいらっしゃいますね?」
男が後ろから話しかけた。白髪の老人で、執事の様な礼儀正しさが感じられる。いつからそこにいたんだろう。全然気づかなかった。
「はい、そうですけど…。あなたは?」
「WPKOの者です」
「あ、そうですか。元老院の方々に謁見賜りたいのですが、どこへ行けば…?」
「こちらへ」
そう言って老人はアルトを大聖堂の奥へといざなった。



  第5章 3節:恋愛疑惑 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月01日 (金) 13時53分 [749]   

 マイヤは出発したときとは打って変わって、かなり明るい気分でヨーロッパ地域本部に帰還した。それは念願の新入りのスカウトに成功したから。
新たな殲滅者が一人増えることは、他の殲滅者にとって大きな負担軽減となる。それにアルトはアデルの弟子で充分強いから即戦力として使える。
他のターミネーターと組んで1年間の研修を行う必要もない。もう素晴らしいの一言だった。
「本部長、任務完了しました」
マイヤは地域本部に入ると真っ先に司令室に向かった。もちろんアルトのことを教えて、こっちからも引き抜いてもらうためだ。これで完璧。
「や、マイヤくん。おかえり〜」
ライアンは相変わらず書類が散らかった部屋でコーヒーを飲んでいた。
「ディテクターの調子はどうだった?」
「便利でしたよ」
「でしょ〜?今さらながらに自分の才能にビックリしちゃうよ」
「本部長、そんなことよりお話したいことが」
「キミさらっとひどいこと言うね。ボクの大発明を『そんなこと』だなんて。それにできればボクのことは名前で呼んで欲しいな〜。『ライアン』ってね」
「…ぶっ飛ばしますよ」
「冗談だよ。で?何?」
「新しいターミネーターが見つかったんです。ギリシャで会って、今は総本部に着いた頃です」
「へ〜、よかったじゃない」
「本部長。この間、新入りが見つかったらこっちに引き抜くって約束しましたよね?」
「え〜、そうだっけ?」
「本部長!!」
「わ〜かりました。総本部へボクからもお願いしてみるけど、ギリシャで会ったんなら、マイヤくんのことだから説得やら勧誘やらしてきたんでしょ?」
「彼はヨーロッパにすると」
「へ〜、男なんだ。ふ〜ん」
「…何か?」
「いいえ別に〜。でも、本人がそう言ったなら別にいいじゃない、こっちから引き抜かなくても」
「とにかく!絶対引き抜いてくださいよ!?私最近ほとんど休み無いんですから!」
「は〜い」
(本当にやる気ないんだから、この男は!)
「名前はアルト=ナイトウォーカー。15歳です。あのアデル元帥の下で6年間修行したそうですから、即戦力になってくれますよ」
「ナイトウォーカー…?」
「はい。知ってるんですか?」
「…………ぜ〜んぜん」
両手を挙げてわからないという仕草をした。
「…じゃあ、お願いしますよ?」
「はいは〜い。…マイヤくん」
ライアンはいつになく真剣な顔でマイヤを呼んだ。
「何ですか?」
「……アルトくん、気に入ったの?」
今度はニヤッと笑いながら聞いてきた。
「はぁ?」
「だってそんなに一生懸命引き抜こうとするなんて、もしかしたらそういうことなのかな〜と思って」
「なっ、いい加減にしてください!」
「あ、別に上司の目は気にする必要ないよ?キミ達は恋愛盛りな年頃だし、組織内恋愛は大いに公認されてるからね〜。それにターミネーター間の子供ならその子もターミネーターになりそうじゃない?非常に興味深い」
「本部長!本気でぶっ飛ばしますよ!?」
マイヤは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「それにしてもキミは本当にひどいな。ボクという男が身近にいながらつい最近出会ったばかりの少年に心を奪われるとは」
とりあえず手頃な投げる物が無かったので、手に持っていたディテクターをライアンの額に撃ち込み、壊れんばかりの勢いで扉を閉めて出て行った。
「全く、何考えてるのあの男は!変人の上に変態だったなんて!」
 廊下をものすごい速さで歩きながら、マイヤは自分の頬が妙に熱いのを感じた。きっとこれは怒りだと、そう思うことにしておいた。
「私が出会ったばかりの、それも年下に恋!?確かに性格はいいし、ルックスも人並み以上だけど……って、ああぁ!!そうじゃない!!」
すっかり動揺するマイヤ。
「そんなこと、あるわけが……」
否定はするものの、頭の片隅にはアルトの顔が浮かぶのだった。



  第5章 4節:変わるもの 変わらぬもの - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月05日 (火) 20時21分 [751]   

 大聖堂の地下に案内されて、けっこうな深さまで降りた。よく秘密裏にこれだけ深く掘ったものだな。ヴァチカンの下に謎の組織本部、なんて民間人に知れたら大変だ。キリスト教崩壊の危機。そんなことを考えてるうちに、やって来たのは大きな扉。
「元老院の方々がお待ちです。どうぞ」
老人が促すと扉が勝手に開いた。眩しい。中で見えたのは7人のシルエットだけ。逆光で顔は見えない。
「よく来たな、アルト=ナイトウォーカー」
7人の中の一人が言った。音が反響して誰がしゃべってるかわからない。返答に困ったのでとりあえず黙っておいた。
「これからお前は、世を救済する殲滅者として闇の使徒を滅ぼす戦いに身を投じることになる」
「…はい」
「その覚悟があるか?」
「はい」
「その運命から目を逸らさず、前に進めるか?」
「はい」
「アルト=ナイトウォーカー。お前に、戦う“意志”はあるか?」
以前に聞いた、あの時と同じ質問。アルトの答えも変わらない。あの時と同じだ。
「…はい、あります」
「…そうか。ならば、これ以上言うことはない。今この時より、汝アルト=ナイトウォーカーを、世を救済する『殲滅者』として認可する」
ついになった。殲滅者に。
「正規な手続きを踏んだのち、希望する地域本部へ行き、DIC殲滅に努めよ」
「はい」
アルトは部屋を出た。手続きをして、大聖堂を出て、ヴァチカンを出た。
 WPKO機関員証明書を発行してもらい、晴れて正式なターミネーターになったわけだが、あまり感慨深い心情にはならなかった。まぁそれもそうだろう。
今までも、これからも、アルトには何も変化は無いのだから。心の中では6年前のあの日から、アデルに出会ったあの日から、アルトはずっと殲滅者だったのだから。
今日になってその肩書きを与えられただけ。
「さて、それじゃ行きますか」
ヨーロッパ地域本部へ。アルトの新しい家へ――。
 ――変わったことが一つあった。アルトには家族ができた。ともに戦い、ともに世界を救う、大きな家族が。



  続きです^^ - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月05日 (火) 20時23分 [752]   
ベールゼブブさん、お久しぶりですね^^
セミプロとか、すごいですね^^;
私も読んでみたいです^^
頑張ってください。
では


  第4章 7節:遭遇 - 翼無き天使 (男性) - 2008年01月20日 (日) 19時41分 [743]   
 
 単独捜査を始めてからすでに6日。未だに犯人の目星はつかず、虚しく時間だけが過ぎていった。
「あの銀髪小僧、やっぱり怪しい。あの日以来、真夜中の町を歩き回ってやがる」
ときどき耳を澄ますように立ち止まってはまた歩き出す。ロバートはそんなアルトを幾度となく目撃した。
しかし一方で、アルトでは犯行に「多少の」無理が生じるのもロバートは認めざるを得なかった。
「くそっ、忌々しい殺人鬼め。どこに隠れてやがる…」
 そんなときだった。見つけたのは人通りの少ない道に入り込んでいく男。フードを被っていて顔は見えなかったがまだ若いと思われる。
ロバートの直感が閃いた。まずは職質をかけて少し揺すってみるかと、後を追って男に声をかけた。
「おい、ちょっと待て」
男はゆっくり振り返る。若い男には変わりないが、虚ろな目で、ずいぶん顔色が悪い。
「こんなところで何をしている」
「…別に。散歩」
嘘だ、とロバートは思った。長年の経験と勘、がなくてもこの時間帯にこんな場所で散歩は不自然だ。
「こんな真夜中に散歩だと?もうちょっとまともな嘘をつけ」
男は特に取り乱す様子も見せなかったが、ずっと黙ったままだ。まさか一発目から当たりだったのだろうか。いや、まさか。
「まぁいい。ちょっと署まで来い。いくつか聞きたいことがある」
そう言って男の腕を引っ張ったが、男はピクリとも動かない。すると今度はブルブル震えだした。
「マだそンなに腹減ッてなイんだけドな。まァイいや」
「あ?何言ってんだお前」
男はロバートの手を振り払った。そして・・・。
ロバートは目の前の現実を疑った。
男はみるみる骨格が歪み、皮膚はしわくちゃになり、いびつな音をあげ、口からは牙が生え始めた。そして再び、さっきより一回りも二回りも大きな身体を形作る。
人型だが、人ではない「何か」に。赤い両眼がギラッと光る。
「な、何だ、お前は……」
「ケケケ、探さナくてモそっちカら食わレに来ルとハ、ツイてるな」
そう言うとロバートに突然腕を振り下ろした。風切り音が聞こえた。とっさに身体をひねり、辛うじて避ける。
深くえぐれた地面。どこかで見たことがある。鉤爪で引っ掻いたような傷跡。
「…やはりお前が犯人か!」
この化け物があの殺人鬼。しかも今度はロバートを殺そうとしている。
この状況なら間違いなく正当防衛になる。いや、そもそもこれはどう見ても人間ではない。化け物だ。殺人にすらなるまい。
ロバートは迷わず銃を抜き、狙いを定めて発砲する。狙いは違わず奴の心臓に当たった。
そう、確かに当たったのだ。しかし銃弾は化け物の黒い肉体から離れ、地面に落ちる。
もう一発撃った。結果は同じ。地面に落ちる。
「どうなってる…!?」
「ケケケ、そンなもんガ通用すルと思ッてンのか?」
港倉庫のあの不自然な現場。その原因がようやく理解できた。この化け物には銃が効かない。ロバートに勝ち目はなかった。
先ほどの発言から死体がないのも納得できた。この化け物は人間を食うのだ。
あまりに非現実的な事実が一度にロバートの頭に入り込み、ロバートはパニック状態に陥った。
思考ができない。体も動かない。呆然と立ち尽くすロバートに、化け物はどんどん近づいて来る。
 雨が降ってきた。濡れた化け物の身体は、さらに怪しく黒光りしていた。そして鋭く尖った指が生えてる腕を振り上げる。
(はっ、まさかこんなバケモンがこの世界に存在するとはな。ビックリだぜ。ここで俺は死ぬのか。まだ35歳。短い人生だったなぁ。結婚だってしてねぇのによ。
こんな化け物の腹に収まってくたばるのか。まったく、やってらんねぇぜ)
生を諦めかけたロバートの耳に入ってきたのは一発の銃声だった。
放たれた弾丸は、化け物が振り上げた手に命中した。
「ガァァァッ!!」
化け物は撃たれた手を押さえる。化け物に銃が効いた。ロバートははっと我に返り、弾が飛んできた背後に振り返った。
路地には誰もいなかった。しかし雨の音の中から少年の声が聞こえてきた。
「大丈夫ですか?」
声の主は屋根の上に立っていた。軽やかに屋根から飛び降りてロバートの眼前に立つ。
黒ズボンに黒コート。右手には口径の大きい銀の拳銃。雨に濡れた銀髪。
「銀髪小僧!!」
「どうも、警部さん。ご無事で何よりです。あと、僕の名前はアルトです」
アルトはにっこり笑ってロバートに話しかける。まるで今の状況をさっぱり理解できてないかのような気楽な顔だ。
「おい小僧!こんなとこで何してんだ!」
「やだな、警部さんを助けに来たんですよ」
変わらず笑顔で返す。
「あいつは銃も効かない化け物だぞ!お前みたいなガキが倒せるような相手じゃないんだぞ!」
「大丈夫ですよ。僕、これが本業なんです。さっき僕が撃った弾はちゃんと効いたでしょう?」
確かにそうだった。アルトの放った弾は化け物の手に傷を負わせた。ロバートは化け物を見る。
アルトはロバートの横を通り抜け、化け物と向かい合った。
「こんばんは、DIC。あなたを消去します」
アルトは化け物に話しかけた。
「ケケ、『殲滅者』だナ、オ前?」
殲滅者。耳慣れない言葉にさらに混乱するロバート。
「はい。世界の秩序を守るため、あなたには消えてもらいます」
「…調子ニ乗るなヨ。サッきは油断シたが、モうお前ノ攻撃ハ受けン」
「一発目が『核』じゃなくてよかったですね」
「ほザけ」
化け物が攻撃を仕掛けた。一足飛びで間合いを詰め、鋭い爪を繰り出す。
アルトは屈んでそれをかわし、下方から銃を撃つ。化け物も素早く回避する。一撃もかすることなく、両者しばし攻防を繰り返した。
化け物の手が、脚が、縦横無尽にアルトを襲う。しかしアルトもそれをかわし、捌き、隙を見つけては銃弾を撃ち出した。
1分弱の嵐のような攻防の中、ついに化け物の拳がアルトの顔に入った。アルトは後ろに吹っ飛んだが、ヒラッと身体を一回転させて着地した。
「ケケケ、この程度カ。興醒めダナ」
「…なかなか速いですね。それだけ人を殺したってことですか」
「何なんだこいつら……」
あの動き、あの銃捌き。15歳の少年のものではなかった。
ただでさえ非現実的な出来事だったのに、そこに15歳の少年が現れ、助けられ、今目の前で戦っている。
そんな光景を見てロバートはその場に座り込んでしまった。膝に力が入らないのだ。口もあんぐり開いたままだ。
やがて立ち上がった少年が再び銃を構えた。


  第4章 8節:邂逅 - 翼無き天使 (男性) - 2008年01月20日 (日) 19時50分 [744]   

(いったいな〜もう)
 雨のせいで足が滑り、一発もろにくらってしまった。
戦闘の際は天候を常に考慮しながら動けとアデルに教えられたのに。今のをアデルに見られたかと思うとアルトはゾッとした。
知能の方はまだ大したことないけど、身体能力の方はなかなか進化している。
口の中が切れていた。鉄分の味が口内に広がる。
今の弾速じゃ避けられる。このまま戦ってもラチが明かない。避ける暇など与えず、一撃で仕留める必要がある。
アルトは銃を構えた。
「そンなに遠クから撃っテ、当タるト思ッてるノか?」
ノーマルブレット、弾速Lv.4。
「避けられますか?超高速の弾丸を」
「ケケケ、何発だッて避ケてヤるヨ。お前ノ弾の速サにハもう慣レた」
「…無理ですね。あなたは僕の『フラッシュ・ショット』からは逃げられません。この一発で終わりです」
「ケ、さッサと撃ッて来っ――……!!?」
命中。弾丸はDICの核を貫通。DIC殲滅、完了。
 その直後、地面に崩れ落ちようとしたDICにいくつもの水の刃が襲った。水とわかったのは攻撃が当たってからだったが。
この攻撃でDICは微塵に斬り裂かれ、完全に消滅した。
今のは何だ?いったい誰が、どこから……。

 ディテクターの示す位置にマイヤが着くと、そこにはDICと2人の男がいた。マイヤは屋根から見下ろす。まだどちらも生きていた。
1人は30代くらいの背広の男。もう1人は、マイヤと大して歳の変わらなそうな銀髪の少年。
驚いたのは、その少年とDICが互角の戦いをしていたことだった。
 軽い身のこなしでDICの攻撃を捌き、手に持つ銀の銃で攻撃する。しかし銃でDICは倒せない。
少年にDICの拳が一発は入り、受け身をとって立ち上がった少年は、銃を再び構えた。
何やら会話をしている様だが、この位置からでは雨音に掻き消されて聞き取れなかった。
早く助けなければ少年が殺されてしまう。これだけ雨が降っていれば、大して力を使わなくても充分戦える。
――エターナル・フォース、発動。
“水よ、我が意に従い、我が力となれ”
雨水が集まり無数の刃を形作る。水はその圧力、撃ち出す速度によってダイヤをも断つ武器に変わる。
「斬り裂け、『飛水刃』!!」
 マイヤが攻撃を放った瞬間だった。少年の撃ち出した弾丸が、目にも留まらぬ程の速さでDICを貫いた。
動体視力には自信はあったが、弾道を微かに捉えただけだった。普通の銃弾は、初速が音速より僅かに速い程度。
しかし今のは何だ?音速なんてレベルではなかった。それに弾はDICを貫通した。あの少年、もしかして……。

 屋根の上に人が立っていた。どうやらさっきの攻撃はあの人のようだ。WPKOから派遣されたターミネーターだろう。
「WPKOのターミネーターの方ですか?」
屋根から降りてきた、意外なことに女性にアルトは尋ねた。すらっと細身で、長い黒髪の美人だった。
瞳は夜でも輝くエメラルドグリーン。歳はアルトの少し上と言ったところか。怒らせたら恐いかもしれない。
「そうよ。あなたも殲滅者ね?」
「はい。アルト=ナイトウォーカーです」
「どこの本部から来たの?」
「あ、いえ、まだ正式にターミネーターになったわけじゃなくて、これから総本部へ行くところなんです」
「ってことは、新入り?」
心なしか彼女の表情が明るくなった。
「はい。よろしくお願いします」
「でもその割にずいぶん強かったじゃない。それに、誰かしら付き添いのターミネーターがいるはずだけど…?」
「それが、6年間アデル師匠に鍛えてもらってたんですけど、3ヶ月前にターミネーターを名乗るのを許可してもらったのと同時にインドネシアで失踪しちゃって……」
アルトは苦笑する。
「1人で総本部へ行く羽目に……」
なってしまったのだ。推薦状はちゃんと総本部へ届いているのだろうか。
「アデルって、あのアデル=キースロード元帥!?」
「はい」
「すごい!あのアデル元帥の弟子だなんて!私、アデル元帥の大ファンなの!」
「……はい?」
信じられない。アデルを慕う人間がこの世にいたとは。
「7年くらい前に一度ヨーロッパ地域本部で見ただけなんだけど、今でもはっきり覚えてるわ。素敵な人よねぇ」
いったいどのあたりを素敵と感じたのだろうか。
「本当にアデル元帥の弟子なの?あの人が弟子を取るなんて今までなかったことよ?」
「はい、まぁ一応……。あの、あの人のどこら辺がお気に召したんですか…?」
「どこって、あの鋭くも優しいオレンジの瞳といい、渋い声といい、ウェーブのかかった黒髪といい、タバコを吸う姿といい、全てよ!」
マイヤの興奮はそれはすごいものだった。
「もちろん殲滅者としての実力も尊敬してるわ。同じ特殊タイプだしね」
「…はあ、そうですか」
まぁ、見解の相違というやつだろう。
「ふ〜ん、そうか新入りなんだ。どこの地域本部に行きたいとか、希望あるの?」
「いえ、特に」
そもそも希望できることを知らなかった。
「じゃあ是非ヨーロッパ地域本部に来てよ」
「…どうしてです?」
「忙しいのよ。ヨーロッパは特にDICの出現数が多いの。それなのに元老院の連中は、殲滅者の数は均等分散なんて言ってるからもう天手古舞いなの」
「そうなんですか」
地域本部はそんななのに、元帥であるはずのアデルがあんなで果たしていいものだろうか。
「だから、ヨーロッパ地域本部に来て!やりがいもあるし、世界中の地域本部で設備や環境は一番いいところよ。その分、任務も多いけどね」
忙しいのは別に構わない。DICの完全殲滅こそがアルトの人生で、夢で、約束だから。
だったらよりDICに多く巡り会えるところがいい。
「そうですね。それじゃあ、ヨーロッパにします」
「本当!?絶対よ!?」
「はい」
「これで仕事が少しは楽になるわ。私、マイヤ=キリサワ。よろしくね」
「こちらこそ。日本の方なんですか?」
「母がね。父はイギリス人。あ、そうそう、最初に言っとくけど、うちの本部長は変人だから覚悟しといてね」
「大丈夫です。変人には慣れてますから」
「…?」
アデル以上の変人は、世界広しと言えどそうはいまい。
 気づけば雨は、止んでいた。

  第4章 9節:未来への架け橋 - 翼無き天使 (男性) - 2008年01月20日 (日) 19時52分 [745]   

 いったい何がどうなってるのかさっぱりわからなかった。
ロバートは裏路地に入っていった普通の人間を追いかけていたはずなのに、実はそいつは銃も効かない化け物で、殺されるかと思ったら、そこに銀髪の少年アルトが入ってきた。
アルトがとんでもない化け物銃を撃ったと思ったら、今度は水が飛んできて化け物をズタズタに切り裂いた。そして次は少女マイヤの登場だ。
いったいこの子供達は何者なのだ?ターミネーターだの殲滅者だの、ディックだの元帥だの、わけのわからない会話が英語で盛り上がっている。
「おい、俺を無視すんな!説明しろ!」
「あ、すいません警部さん。すっかり忘れてました」
「わけがわからん!説明しろ!」
「わかりました」
「事後処理部門に連絡して記憶消去プログラムにかけちゃえば?」
「説明して理解してくれるに越したことはないですよ。過去は、消せませんからね」
「…まぁ、ね」
マイヤはロバートの方にさっと振り向く。
「いい?これから話すことは、あなたの常識をひっくり返すことになるけど、全て嘘偽りない事実だから。先入観抜きで聞きなさいよ?」
「常識だぁ?そんなもんとっくの前にぶち壊された!いまさら驚くことなんかあるか馬鹿め!」
「僕たちは――……」
そしてアルトとマイヤはロバートにに説明し始めた。WPKOという組織のこと。DICのこと。ターミネーターのこと。
途中で口を開かなかったのは、聞かされた言葉を理解するのに必死で、質問するどころではなかったからだ。
信じられたといえば嘘になる。あの化け物に会ってなかったら署に連れて行って説教かましてやるところだった。
「そんなことが、この世界で本当に起こっているのか……」
「驚くのも無理はないと思いますが、全て事実です」
この世界の命運が、こんな小さな子供たちの肩に乗っている。
「はは、俺は無力だな。人類が存亡の瀬戸際まで来てるってのに、何もできやしない」
「そんなことはありませんよ。警部さんだって世界を守るために頑張ってます。僕たちはDICを倒す。警部さんは犯罪者を倒す。それだけの違いです。それでいいと思います」
「……ふん、小僧め。言うじゃねぇか」
ロバートにDICは倒せない。ならばアルトやマイヤが余計なものに囚われずしっかり戦えるように、ロバートが犯罪者を捕まえればいい。
「小僧。いや、アルト=ナイトウォーカー」
「はい」
「助けてくれて、礼を言う。ありがとう」
この子供達は、今の世界から、未来の平和な世界に架かる「橋」の「要石」。最も重要な、なくてはならない存在。
ロバートはその周りを補う「普通の石」。だが、どっちが欠けても橋は崩れる。どっちもあって、橋が架かる。世界が、救われる。
そう信じたい。

 ――ヴァチカン・WPKO総本部、元老院。
「アデルから推薦状が届いたそうですな」
「ほう、もうかれこれ7年も定期連絡を怠っているあの馬鹿者がか。一応、任務はこなしているようだな」
「久しぶりに、新たな殲滅者を見つけたか」
「ああ、何でも生まれつきその身に神の力を宿す少年らしい。6年間直々に鍛えたので、殲滅者として認可して欲しいとのことだ」
「おもしろい。して、その107番目の殲滅者の名は?」
「アルト=ナイトウォーカー」
「ナイトウォーカー……?これはこれは」
「どうやら、ただの偶然ではないようですな」
「…ふふ、運命とは、皮肉なものだな……」
「全員、異論はないですな?」
「あるわけあるまい。誰であろうと、殲滅者は殲滅者。この世界を救う存在だ」
「アルト=ナイトウォーカー……か」

「やっと片付いた〜」
ギリシャ支部の事後処理部門への連絡を終えて、マイヤは大きく伸びをした。
「警部さん、大して混乱せずに理解してくれてよかったね」
「そうですね」
これから徐々に、みんながDICの存在を理解してくれるようになればいいのだが。そう簡単にはいかないだろう。
無理に広めようとすれば世界中で大混乱になる。長い年月が必要だ。
「アルトはこれから総本部まで行くんでしょ?」
「はい、明日の朝には出発するつもりです」
「じゃあ私も一緒に行くわ。どうせヨーロッパ地域本部も総本部もイタリアなんだし」
「そうですね。よろしくお願いします」
「もっとアデル元帥のことも聞きたいしね」
「ははは……」
「それじゃ、支部に行こっか」
「え?」
「支部よ。そこに行けば宿舎があるから」
マイヤはWPKO機関員だから、彼女と一緒にいれば支部を利用できる。旅費も全額WPKO持ちだ。
アデルは居場所がバレるのを嫌って支部にも立ち寄らなかったし、請求書も切らなかった。アルトにとっては甚だ迷惑な話だが。
全く、何を考えてるのか。いや、何も考えてないのかもしれない。
 こうしてアルトの寄り道殲滅戦は幕を閉じた。



  オヒサでし^^; - ベールゼブブ (男性) - 2008年01月25日 (金) 17時27分 [746]   
コメント改訂すると言っておいてなかなか改訂できなかったどころか、そのせいで止めてしまってすみません。
というのもいよいよセミプロ活動一歩手前(まだプロ活動ではない)状態なので、なかなか時間がとれないんですよーー;今年の暮れか来年までにどこかの雑誌に投稿予定なので、見かけたらよろしくお願いします・・・ってペンネーム違うから分からんわな・・・。

とりあえず一段落ついたところですかね。
でもまだ色々なやつがごろごろと出てきて大変なことになるのを期待しています^^
いや・・・しかし強いな・・・。マイヤさん・・・。
続きがんばってください^^







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