「ルックス」という言葉を考えついて、まっさきに思い出したのはミュージカル『コーラスライン』の、ヴァルのナンバー「ダンス10(テン)、ルックス3(スリー)」。 ミュージカルは結構好きで、「コーラスライン」はマイベスト2なのデス。劇団四季でその当時、ポールを演じたのが市村正親さんだった・・・というのは覚えている。ちなみに、マイベスト1は「オペラ座の怪人」。 物語の前半、オーディションの最終選考に残ったダンサー達が、一人ずつ自分を語る課題を演出から出される。その一人であるヴァルは語る。田舎町からNYへ出てきて、これまでにダンス・オーディションを何回も受けたんだけど、なぜか片っ端から落とされた。その原因がワカラナイ。で、ある日採点表を覗くと、まさにそのタイトルどおりだったというワケ。そこで・・・♪ダンス、テン☆ルックス、スリー?★と、リズミカルに唄い、踊るヴァル。 明るいナンバーだったが、同時に人生のほろ苦さも入っていた。なるほど、レオタード1枚で踊るノダ。大きけりゃいいというわけでもないが、出るトコ出てた方が見栄えするよね・・・で、アル。彼女は胸を大きく、ヒップもアップ、顔も直して・・・再出発。役もゲットできるようになって、自信もついた。 私は、十数人いたキャストの中で、ヴァルは結構上位で好きなキャラだ。整形?いいじゃん・・・ただし、それは彼女が「ダンス、10」だからだ。 これが「ダンス3、ルックス3」なら、話は違う。迷わずダンスをレッスン!と言うだろう。それから整形するかしないかは、本人の責任でどうぞ、だ。 昔、ある女優志望の娘さんに会ってやってくれと、義理で頼まれた事がある。その時、私は小さなアマチュア劇団にいたから。話はこうだ。 『私には才能がある。しかし、ブスだからなりたくてもなれない。』と。 才能の根拠が何もないのには恐れ入ったが、(日舞、バレエ、ボイストレーニングの経験無し、舞台など立ったこともない)ブスだからなれない・・・にはおおいにひっかかった。 「・・・で、どうするの?」「あ、大丈夫です。整形しますから。」 何を相談する必要があるというのだ。ブッツリ(堪忍袋の緒が切れる音)。 経験が無いのは問題じゃない。問題なのは、何もしていない・・・もしくはしようとしないのにまわりの人々が自分を大歓迎してくれるだろうという思い込みだ。 「コーラスライン」は、歌も振り付けも脚本も三拍子揃っていると思う。 「テーマ曲」「アット ザ バレエ」「ワン」・・・どれも珠玉だ。 この前ひさびさに見たら、心なしか色あせてみえた。少し、悲しかった。
|