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二つの国 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 17時40分 [651]
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ガント国。 元々隣のグース国とは一つの国であったが、前の王、つまりは今の両国の王の父親が領土を二分して双子の兄弟に与えたのだという。 ところが 最近この二つの国にある問題があるのだという。 その話をしてくれたのは酒場のマスターだった。 マゼンダはワイングラスを傾けながら聞いていた。 「・・・なるほど・・・。両国の政略結婚を、ガントの殿下二人とグースの王族が嫌がってるってわけね。」 「そうなんです。」 マスターはカクテルのシェーカーを振りながら答えた。 つまりこういうことである。 ガントの王子、アンドスに従妹であるグースの王女を娶らせ、妹のミランカ王女をグースの王子のもとに嫁入りさせることにより、両国の統合を図ろうということである。 「でも統合したところで一体なんのメリットがあるのかしら?元首が二人いることになるのよね?しかも兄弟姉妹従兄妹同士が同じ城に住むってこと?政治的混乱を招くことになるわよ。」 「そうなんです。実は・・・これは噂なんですけどね・・・?」 マスターは出来立てのカクテルを出しながら小声で言った。 「実はガントの王子と王女は、他に恋人がいるんじゃないかという話なんです。あくまで噂ですが。更には、グースの方ではルドンの王子を養子にとって、ルドンを統合する気らしいです。」 マゼンダはカクテルをくいと飲み干し、にやりと笑った。 ―――まだルーヌにプロポーズしてないのに――― クレメント王子の洩らしたつぶやきを思い出しながら。 「・・・いいカクテルだったわ。名前はなんだったかしら?」 「パラシオ・デ・ムヘレスです。」 「“女の宮殿”・・・いい名前ね。」
「というわけで、あなた達にはお城で働いてもらうわ。」 「どういうわけでですか?」 ルークが教師に尋ねる。 「まず私達がしなければならないことは、この石版の一部を探すこと。市長さんの話によれば、この国のどこかにあるはずよ。」 「・・・ハァ・・・。」 「そしてまだすべきことは二つ。」 マゼンダは指を二本立てて言った。 「一つは、この国とお隣のグースに潜り込んでロイヤルファミリーの内情を把握する!もう一つは、グースのルドン統合を止める!何か質問は?」 ルークとアーサーが手を挙げた。 「何?アーティー。」 無視されたルークは少し眉をしかめるが、とりあえず黙っておいた。 「どうやって二つのお城に潜入するんですか?二手に分かれるんですか?」 ルークが目を丸くしてアーサーの方を向く。 違う!!そこじゃないだろ!!と言いたげな目だった。 「そうね。その方が動きやすいわね。いざというときの連絡も取りやすいわ。ルルは?何か聞きたいことある?」 ルルはちょっと驚いたが、聞いた。 「また、ドジっ娘メイドやるんですか?」 「良い質問ね。今回は全員メイドやってもらうわ。」 『全員!?』 アーサーが思わず口を挟んだ。 「僕一応男ですよ!?」 「分かってるわよ。でも、女の子として入ってもらった方が相手も油断しやすいのよ。まあ、幸いアーティー違和感無いからうまく誤魔化せるんじゃない?」 アーサーは顔を赤くしながら俯いた。 「っていうより、いっそのこと全員同じ格好にした方が服の仕入れが楽じゃない。」 「でも・・・僕ぐらいの背丈の女性なんているんですか・・・?」 「アナタそれ自慢?別にいいわよ。アーティーの分ぐらいあたしが作るわ。裁縫だって得意なんだから。」 マゼンダはコホンと咳払いをした。 「それじゃ、そういうことでよろしく。」 「ちょっと待って下さいよ先生!!根本的なことがまず解決できてません!!何で親戚同士の国に首を突っ込まなきゃいけないんですか!?それと、グースがルドンを統合するってどういうことですか!?」 「じゃ、あんたとアーティーはグースに行ってきなさい。私は石版の欠片を探しつつガントの内情を探るわ。もちろんメイド服着るのよ〜♪」 「嫌だ〜〜〜〜〜!!」 ルークが頭を抱えて大声で抵抗した。
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ガント編 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 18時52分 [652]
「まずは、ルル。今回はドジっ娘じゃなくていいから、なるべく内情をうまく探るのよ。あたしはあちこちを調べ回って石版の欠片を探してみるわ。何か気になるのよ。これ・・・見たことがあるようなないような・・・。」 また例の薬で二人は同じくらいの年齢の少女になっていた。不意にルルがにやりと笑った。 「マゼンダさん。やっぱりなんだかんだ言ってメイド楽しんでるでしょ?」 マゼンダはレナからもらった石版を仕舞いながら、笑った。 「やっぱり分かる?今回はアドラスの家より楽しくなりそうよ。」
ルルは厨房に配属された。料理を運びがてら、もしかしたら国王に接触できるかもしれない。ルルにとっては好条件であった。 マゼンダは城の掃除を任された。幸い石版の欠片はレナの記憶通り城の倉に入っていた。しかし外から中の様子は確認はできるものの、鉄格子に厳重に鍵がかかっていて入ることは難しそうであった。 「・・・なんとかバレないようにこっそり開けましょうか・・・。やっぱりあたしって盗賊かしら・・・?」 「どうかしまして?」 不意に後ろから女性の声がかかり、マゼンダはぎょっとして振り返った。 上品にウェーブがかかった、長い亜麻色の髪に銀のティアラを戴き、淡いピンク色の豪華なドレスを着た少女。一目でこの国の王女と分かる出で立ちに、マゼンダは慌てて跪いた。 「いえ、なんでもございません!ミランカ王女様。」 王女は倉の中を覗き、右へ左へと目線を送った。 そして一点に視線を集中させる。そして彼女はつまらなそうにため息をついた。 「貴女変わってますわね。あんな石の板に見とれるなんて。」 マゼンダは内心ドキドキしながらはい、と頷いた。 「あれは父のガントミットが旅の行商人から大枚をはたいて買ったもの・・・。なんでも、大昔の魔王を封印する秘策が書いてある魔道書の一部なんですって。全く・・・。お父様も物好きで困りますわ。」 魔王の・・・・!?マゼンダは息を呑んだ。 「あんなたかだか石の板の欠片にそんなご大層な力があるわけないじゃない。・・・貴女もここには近づかない方がよろしくてよ。お父様の怒りを買う、というより時間の無駄ですから。」 王女はそのまま立ち去っていった。 魔王を封印する・・・!?それは重要じゃない!? マゼンダはじっと石版の欠片を眺めた。 「飛んだ収穫だったわよ・・・ルーヌ!」
この国ではダイニングで食事をするのはもっぱら王ガントミットと王妃のミリーナだけであり、王子と王女は自室で採るようにしているという。 隣国のグースとの政略結婚の話が持ち上がってから、王子と王女は極力両親と顔を合わせるのを避けているらしい。 ルルは王にスープを出し、二つ用意してあるスプーンのうちの一つで毒味をする。大丈夫なのを確認し、未使用のスプーンを王の右側に置いた。そして毒味用に使ったスプーンを近くのメイドに渡し、新しいスプーンを受け取った。続いて王妃のスープにも同様に毒味をする。 王妃はにこやかに話しかけた。 「貴女、若い割に手際がいいわね。ここに来て何年?」 「今日配属されたばかりです。でも、毒味をさせるなんて、何か毒を盛られるような思い当たる節でもあるんですか?」 その瞬間、ダイニングの空気が凍り付いた。 メイド頭のリタが大慌てでルルの手を引いた。 「いいのよ、リタ。気にしないで頂戴。新人さんなんだから・・・。面白いこと言うのね、貴女。でも、覚えておきなさい。王族たるもの、常に命の危険に曝されているの。ひとたび道を誤れば、それだけで敵は命を奪いに来る・・・。もし王族が居なくなれば、国は一瞬で滅びてしまうわ。そうならないためにも、信頼できる使用人が必要なの。」 王妃のエメラルドグリーンの瞳に、ルルの顔がしっかりと映りこんでいた。 「・・・本当はイケメンの男の子に毒味をさせたいんだけどねえ・・・・。この国にはメイドしかいないんだもの〜。ま、原因はアタシなんだけどさ。」 そういいつつ王妃はため息をついた。 「・・・はい?」 「あ、アンドスとミランカにも運んでやって頂戴。多分部屋にいると思うから。・・・・本当に何やってるのかしら・・・。あの二人は・・・。」 ルルはとりあえずお辞儀をして、厨房で王子と王女の食事を受け取った。 そしてそれらを運びながらにやりと笑った。 「・・・本当だ・・・。マゼンダさん。面白くなってきましたよ・・・。」
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グース編 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 19時51分 [653]
「なりゆきでこうなってしまいましたが・・・とりあえずどうすればいいんでしょう・・・?」 「私の知ったことか!!」 ルークとアーサーは慣れないメイド服に身を包み、困惑していた。まだアーサーは背が高いながらも端整な顔立ちと品のある気質のお陰で違和感がないものの、ルークの方は二の腕や足が思いの外筋骨隆々で、端から見ていれば少し無理があった。 「・・・・とりあえず僕たちがしなければいけないのは、この国のルドン統合を止めることです。・・・でもメイドの姿でどうやって・・・?」 「大体ルドン統合ってどういうことだ!?」 アーサーは考えてる最中にルークに横やりを入れられ、ややため息をついて向き直った。 「ルーヌ、分からない?グースがルドンを統合するということは、要するにグースの王女と、ルドンのクレメント王子を政略結婚させて実質ルドンを乗っ取る、っていうことだ。もしルドンが従わなければ、恐らく国同士の争いが起こるだろう。それと、前にマゼンダさんから聞いたんだけど、ガントはどうもグースを統合したいらしい。つまりは従兄妹同士の政略結婚だ。ところが、ガントの王子と王女はそれを快く思ってはいないから、ずっと自室に引きこもってる。だから、マゼンダさんとルルでガントの内情を探って、何故グースをそこまで統合したがるのか、何故王子と王女が政略結婚に納得できないのか、その真相を掴むんだ。で、僕たちはグースで内情を探って、何故ルドンを統合したがるのかを探って、あわよくばそれを止める必要がある。そうでなければ僕たちの帰る家がなくなっちゃうかもしれないよ?」 「で、だから私達にどうしろと言うんだ?ついでに言うと私はルークだ!!」 「だからそれを今考えてるんじゃないか。・・・とりあえず城に入ろう・・・。」
この国では新しく入ったメイドは何故か王子の目の前に出されることになっているらしい。 そういうわけでアーサーとルークも王子・ヴィルラマスの目の前に出された。 短い銀髪で、なかなか端正な顔立ちの王子は、品定めをするような目で二人を迎えた。 「ふむ・・・。なかなかスタイルが良くて綺麗なお嬢さんと・・・ちょっと体つきが逞しい割に幼さの残る顔つきのお嬢さんか・・・。名前を聞かせてもらおうか。」 王子の光る目に少し嫌なものを感じたが、アーサーは無理矢理笑顔を作って答えた。 「アミンタと言います。よろしくお願いします。」 「ルー・・・」 ク、と言いかけたところでアーサーからさりげなく背中を強くつねられ、 「ナ、です・・・。」 と心の中で泣きながら答えた。
「ねえ、見た?あの王子の嫌らしい目つき・・・!」 王子との面接が終わった後でアーサーがルークに小声で話しかけた。 「・・・・お前につねられた所が未だに痛くてそれどころじゃなかった・・・。」 「気をつけた方がいいよ・・・。あの目は獲物を狙うハイエナに近いから。」 アーサーはそう忠告を残し、掃除道具を持ってさっさとどこかへ行ってしまった。 ルークは鉄鋼と一通りの大工道具を持って王女の部屋へ向かった。 「・・・何に使うんだ・・・?これ・・・。」
「すっご〜い!!はっや〜い!!ルーナ、すごいのね!!」 王女・ミラルカはルークに拍手を送った。 「このお城に鉄鋼を扱えるメイドどころか、給仕もいないんだもの〜。お陰で全然できなかったの。」 「・・・で、この鉄の棚、何に使うんです?」 ルークは道具を仕舞いながら尋ねた。 「もう〜、ルーナったら〜!・・・でも、教えちゃおっかな♪」 王女は窓から隣の城を眺めた。 「ガントのアンドス王子って知ってる?」 「ハァ・・・。」 「彼、お兄さまにちょっとそっくりなんだけど、全然似てないの。すごくクールでカッコイイの!」 同い年かちょっと上、にしては幼い喋り方をするなぁ、とルークは思った。 「私、ガントの王子と結婚するって話を立ち聞きしちゃったの。叔父様がお父様と話しているのを聞いたのよ。その話が持ち上がったときはとても嬉しかったわ。・・・・でも・・・。」 王女は青い髪を後ろへ追いやり、頬杖をついた。 「私・・・ルドンの王子と結婚するんですって・・・。」 「何故?」 王女はくるっと振り返った。 「分からないわ。でも私、嫌よ!他の人と結婚するなんて、絶対嫌!ねえ、ルーナ、なんとかならない?一緒にお父様を説得して!!」 王女の涙の懇願に、ルークは思わず頷いてしまった。
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家政婦は見た!!(コメ) - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 19時54分 [654]
ふい〜・・・長かった・・・。 あ。ガントの王子出してねえ。ま、そのうちでてきます^^; まあ、ちょっとギリギリはまたあるんですけど、「あらいやだ。死んでる。」(家政婦のあの人風に)とか、年齢規制が入るような内容にはならないので、安心して下さいーー;
では。
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ついに^^; - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月04日 (火) 20時15分 [655]
ついにみんなメイドに〜^^;
なかなか複雑になって、きたのかな? 今後の物語の進展に期待大です^^
では
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