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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


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  TERMINATER〜正義の殲滅者〜 第1章 1節:普通な日の普通じゃないこと - 翼無き天使 (男性) - 2007年12月05日 (水) 00時14分 [725]   
 
 彼女の1日は、毎日が平和で平凡だった。
朝起きたらボサボサの頭を櫛で梳かして顔を洗う。そのあと朝食、パンとミルク、それにサラダなんかを口に運んで、務めている雑貨屋に出勤。
店長や従業員と会話をし、お客に屈託のない笑顔で接し、その日の売り上げの計算や後片付けをして帰宅。
家では夕飯を食べて、お風呂に入って、湯上がりにフルーツジュースなんかを飲みながら雑誌をめくる。眠くなったらベッドに入って就寝。
 24歳で独身の女性ならならごくごく普通のありきたりな生活。悪くはない。だが良くもない。
彼女だって恋人の一人くらい欲しいし、もっと遊びたい。おしゃれな服も欲しい。今の生活に満足してるわけじゃない。
でも人生、一度その線路に乗ったらそんな簡単に進路は変更できない。彼女の線路には分岐点が滅多にやってこないし、その分岐点で思い切って進路を変える勇気も、もしかしたらないのかもしれない。
 そんなことを悶々と考えながら、今日も仕事を終えて家に帰る途中の出来事だった。
男に声をかけられたのだ。すらっと痩身で背の高い男。暗い道でもうっすら光沢のある、肩に掛かる程度の銀髪。
最初は白髪の老人かと思ったが、よく見たらまだ幼い顔立ちだった。10代後半のように見える。
黒のズボンに黒のコート、白のシャツで首には赤いリボンタイという近頃の若い人間はあまり着そうにない紳士服だ。
黒基調の服装のせいで余計に銀髪が目立った。
そんな青年が、夜道に一人歩く彼女に声をかけた。彼女は訝しく思いながらも男の呼びかけに答えた。
「あの、突然すいません。ちょっとお尋ねしたいことがありまして……」
英語だった。学生の頃に多少習いはしたが、ペラペラしゃべれるほど彼女は教養高い女ではなかった。
「あの、私英語話せないんですけど…」
青年は彼女の言葉を理解したようだった。
「あ、そうですよね。すいません。ここにはついさっき到着したもので」
青年はにっこり笑って今度はフランス語で話し出した。この若さで2カ国語を話せることに彼女は驚いた。
「僕はWPKOの者です。ちょっとお尋ねしたいことがあるんです」
「はあ」
青年は手の平大の手帳を開いて彼女に見せた。薄暗かったのではっきりとはわからなかったが、十字架のようなものが見えた。
WPKO…?聞いたことがない。とりあえず何かの組織のようであることは彼女にもわかった。
「この街ではここ2ヶ月で7人の人間が姿を消していますよね。そのことについて何かご存じないですか?」
そう、この街ではすでに失踪者が7人も出ている。身代金要求や死体もないことから失踪と考えられているのだ。
警察も調べてはいるが、手がかりもなく、事件性にも乏しいから、彼女は別段気にかけていなかった。
この青年はそれを調べている。警察には見えない。しかも先ほどの会話からして外国人だ。
「…あの、警察関係の方ですか?」
「いえ、ちょっと違う、かな。『世界秩序維持機関』( World Peace Keeping Organization)ってご存じ…ないですよね」
「はい」
ちょっとどころではなかった。世界秩序維持機関。“世界”という単語からして国際組織の一種なのだろうかとも思ったが、こんな少年が?
「その、WPKO?の方が今回の失踪を調査してるんですか?」
たかだか失踪事件を自称国際機関の青年が調査?なんだか嘘くさいというか、現実離れして聞こえた。
「はい、そういうことです。なにかご存じないですか?」
「いえ…、7人の人が失踪していて未だに見つかっていないこと以外は何も」
「そうですか…」
「あの、ただの失踪なんじゃないんですか?」
「ええまぁ、そうかもしれませんが、そうでないかもしれません。もしかしたらDICが絡んでいるかも……」
「は?」
「あ、いえ、気にしないでください。こんな夜分にお手を煩わせてすいませんでした」
「いえ、別に」
「それではこれで失礼します。夜道は危ないですからね、気をつけてください」
「ご親切にどうも」
青年は去った。しばらく彼の銀髪を目で追っていたが、やがて目をそらして歩き出した。
それにしても不思議、というか胡散臭い青年だった。聞いたこともない謎の組織に属する青年。失踪事件を調査している青年。
しかし彼女には関係のないこと。もう会うこともないだろう。




  第1章 2節:襲来 - 翼無き天使 (男性) - 2007年12月05日 (水) 00時17分 [726]   
 やっと家に着いたと思った時だった。
彼女は突然後ろからものすごい力で腕を引っ張られた。思わず地面に倒れ込む。顔を上げるとまたも眼前に男が立っていた。
男は男だが、さっきの青年とは違った。見開かれた眼は血走ってるし、足は裸足。泥と覚しき汚れのついたボロ服。
こういうのはイカれた変人か犯罪者のどっちである。どうせなら変人であって欲しいと思ったが、どうやら後者のようだ。
 心は意外に冷静で今の状況分析を行っていたが、彼女の身体の方は恐怖で凍り付いてしまっているらしい。脳が逃げろと信号を送っても身体が受け付けない。
今まで犯罪とは無縁の生活だったんだから彼女には無理もない話だった。
男の眼は明らかに正気を失っている。彼女は心の底から身の危険を感じた。
 男が一歩こっちに近づいたとき、頭上を影が通過した。影の正体は男を蹴り飛ばし、華麗に着地した。月明かりに照らされて銀色の髪が光る。
さっきの青年だった。渡りに船とは正にこれのことを言うのだろう。
どうして去っていった方向の逆から跳び蹴りを食らわせたのかは、考えないことにした。
「こんばんは、DIC」
青年は発狂した男に話しかけた。
英語だったがかろうじて「こんばんは」と、耳慣れない「ディック」というのを聞き取った。ディックというのは、この男の名前だろうか?
今まで無言だった男が今度は話し出した。低くしゃがれた声だ。眼はさらに血走ってる。口からはよだれが滴っている。
「貴様…、『殲滅者』か」
「ええ」
青年は何とも爽やかな笑顔で男に答える。
「あなたをこの世から消去します」
低く曇った声の男と、淀みない声の青年の会話。彼女には完全には理解できない。
だが耳に留まったのは「消去」という単語。人間に使用する場合、これはおそらく、というか間違いなく「殺す」という意味だ。
「ちょっとあなた!どういうつもりよ!その男殺すの!?」
青年はこっちに振り向いた。
「先ほどはどうも。ケガしてませんか?」
彼女が接客で使うような品のいい笑顔。相変わらず爽やかな声で青年は私に尋ねた。もちろんフランス語だ。
「ああうん大丈夫…、ってそうじゃなくて!その男は犯罪者かもしれないけど、殺すことないじゃない!捕まえて警察に引き渡すのよ!」
「殺すんじゃありません。消去するんです。まぁ業界用語ですね」
「おんなじだっての!!」
「う〜ん、たぶん信じないと思いますから、あんまり言いたくはないんですけど、彼は人間じゃありません」
「はぁ?」
「人類に仇なす敵、暗黒知的生命体(Dark Intelligent Creature)。通称『DIC』です」
彼女の理性が人間の基準から大きく外れていなければ、この青年は極度の変人ということになる。
「あなた、何言ってるの?どっからどう見ても人間じゃない!?」
生活水準的には獣レベルかもしれないが、種族が人間であることは間違いないだろう。
「だから信じないって言ったじゃないですか」
青年は爽やかさを崩さず苦笑する。
「質問は彼を消去した後にしてください」
青年は男の方に向き直り、右手をそっと挙げた。
手の平に小さな光が生まれる。その光は野球ボールくらいの大きさになり、パッと破裂したかと思ったら、青年の手には髪と同じ銀色の拳銃が握られていた。
光に目をすぼめた瞬間の出来事だった。優しそうな顔立ちの青年と、ずしりと重厚感漂う拳銃。
なんとも不釣り合いな光景だが、それが逆に妙な現実味を帯びていて、彼女は思わず肌が粟立つのを感じた。
こんな青年がこの男を殺すのか?拳銃で?彼女はまるで夢を見ているような感覚に囚われた。
彼女が目の前の光景に混乱している内に、発狂男の方にも変化が現れた。ガタガタと震え、呻き声を上げ始めた。
「失礼ですが、お名前は?」
青年が私に尋ねる。
「…ソフィア」
「ミズ・ソフィア。危ないですから、ちょっと後ろに下がっていてくださいね」
その瞬間、発狂男は全身の骨格が歪み、皮膚はただれ、ボキボキっと鈍い音を立てながら、人間にあらざる存在に変化した。
黒く僅かに光沢のある金属のような身体、大きく裂けた口。その中には鋭い牙。眼には瞳がなく全部真っ赤だった。
「な、なに、こいつ……?」
ソフィアの身体は震えていた。
「これがDICです。まだ知能の低い初期段階ですけどね。ここ2ヶ月の失踪事件の犯人はこいつです。DICは殺害衝動が尽きることがなく、人間を捕食して進化します」
どこかのおとぎ話に出てきそうな話だ。目の前に「現物」がなければまず信じなかっただろう。
「すぐに片付けますから」
青年は、およそこの状況では作り得ないような優しい微笑みでソフィアにそう言い、銀の拳銃を構えた。
発狂男、いや、目の前の怪物も青年に飛びかかる。彼らの距離が縮まる。
そこでソフィアの視界は真っ暗になった。どんどん宙から落ちるように眠気が襲ってくる。
――どこかで、銃声が聞こえたような気がした。



  第1章 3節:夢のち現実 - 翼無き天使 (男性) - 2007年12月05日 (水) 00時19分 [727]   
 暖かい。日溜まりのように。毛布の感触が心地いい。今日も平凡な一日が始まるのだ。でも何故だろう。心なしか空気の匂いがいつもと違う。
 彼女は目を開けた。白い天井。消毒薬の様な匂い。病院だ。
「あ、ソフィアさん。目が覚めましたか」
看護婦がやってきた。知ってる顔だ。
「あの、私……」
「昨晩のこと、覚えてませんか?倒れたそうで、若い男性があなたを運んできたんですよ」
奔流のように記憶が押し寄せてきた。銀髪の青年、手の平から突然現れた拳銃、人間に化けていた怪物。
「…あの、運んできてくれたのは、銀髪の青年ですか?」
「ええ。お知り合いですか?あなたを運んだら帰っちゃいましたけど」
「いえ、知り合いというか……」
あれは……夢だったのか?しかし夢と考えるにはあまりに記憶が鮮明だった。
 ソフィアはふと、手に痛みを感じた。手には包帯が巻いてある。
思い出した。あの時、腕を引っ張られて地面に倒れ込んだのだ。いかれた男だと思っていた怪物に引っ張られて。
そしてそこに銀髪の青年が現れた。夢ではない。あれは、現実だった。

 もう一度医師に診察してもらい、問題ないとのことだったので、ソフィアはすぐに退院した。
幸い、今日は休日だったので無断欠勤にならずにすんだ。
 自宅に帰る途中にレストランに寄った。思えば昨日の昼から何も食べてない。
天気も良かったし、店外のテーブルで食べようと空いている席を探している時、目に入った。一人椅子に腰掛けて食事をしている銀髪の男の後ろ姿が。
ソフィアは迷わずそこに向かった。
「おや、ミズ・ソフィア。もう大丈夫なんですか?」
ソフィアを見た青年は、ミートボールにフォークを刺しながら流暢なフランス語で尋ねた。表情は昨晩と変わりなく爽やかだ。
ソフィアは彼の向かいに座り、質問には答えず重ねて質問した。
「昨日のあれは、夢じゃないんでしょ?」
「…はい、現実です」
「あなたは何者なの?」
「僕はWPKOの『ターミネーター』です。『殲滅者』と呼ぶ人が多いですけどね」
「ターミネーター…?」
「DICを倒す…倒すことができる人間です」
「超能力者?」
「ええまぁ、似たようなもんですね」
青年はおかしそうに笑った。
「WPKOって何なの?」
「世界秩序維持機関。DIC殲滅を至上目的とする、どの国にも属さない完全独立の秘密国際機関です。不可解な事件、失踪や殺人なんかを調査して、DICを見つけ出し、消去します」
「そんなの、聞いたことない」
「そうでしょうね。昨夜は身分を明かした方が怪しまれないと思ってWPKOだと名乗ったんですが、実際にこの組織を知っているのは各国政府や警察機構等の上層部だけです」
「フランス政府も知っているの?」
「はい。フランス政府もWPKO加盟国ですから。世界の9割以上の国がWPKOに加盟してます。加盟した国には僕たちWPKOの人間が派遣されてDIC殲滅に当たります。加盟と言っても、政府が行うのは資金援助くらいですけどね。加盟国がWPKOに干渉することはできませんし、WPKOも加盟国の主権に干渉しません。持ちつ持たれつ、DIC殲滅のみが目的です。WPKOの存在は極秘扱いなので民間人には知られていないんです。各加盟国に支部があり、世界を8つの地域に分けてそれぞれに地域本部が設置されてます。表面上はその国の軍事施設のように見せかけていますけど」
つらつらと語る青年の話を、ソフィアは簡単に信じるおとはできなかった。まるでファンタジー、空想、夢物語。
しかしその存在を決定づけるものを昨日見てしまったのだから、信じないわけにはいかないだろう。
「どうして私には話してくれるの?極秘なんでしょ?」
「極秘にしたくてしてるわけじゃないですからね。いつかは受け入れなくちゃならない。この真実を徐々に世界に浸透させていくのも僕たちの仕事です。ですから、このことは一切他人には口外しないでいただけますか?あなたのような冷静な方が一人で知る分には問題ないんですが、人間は集団になると必ず混乱を起こします。あなた一人の心に留めておいてください。脅かすつもりはありませんけど、言いふらしたりしちゃうとWPKOに連行されて…」
「…殺されるの?」
青年は驚いたような顔をした。
「まさか。連行されて、記憶消去プログラムにかけられちゃうんです」
「そうするとどうなるの…?」
「DICに遭遇した日の2〜3日前からの記憶が消えます。約束してくれますか?口外しないと」
「ええ、約束するわ。そもそもこんな話、誰も信じやしないし」
「そうですね。……DICは、僕たちが必ず殲滅します。だから、安心してください」
青年はにっこり笑って立ち上がった。皿は空になっていた。
「それではミズ・ソフィア、僕はこれで失礼します。お元気で」
そういって背を向けて歩き出した。
「待って。あなた、名前は?」
青年は振り返る。
「アルト。アルト=ナイトウォーカーです」
「アルト、助けてくれて、ありがとう」
再びにっこり笑って、彼は人混みの中に消えた。

 風のように現れて、彼女の命を救い、そして風のように去っていった銀髪の青年、アルト=ナイトウォーカー。
彼は、ソフィアの線路には滅多にやってこない分岐点で、彼との出会いは、彼女になかった分岐点で進路変更する勇気、のような気がした。
根拠は何もない。ただ、そう感じただけ。
 雲一つない良い天気だった。私は変われる、そうソフィアは感じた。



  再投稿^^; - 翼無き天使 (男性) - 2007年12月05日 (水) 00時23分 [728]   
お久しぶりです。
あまりに微妙すぎて気づかないかもしれませんが、色々修正してあるので再投稿します。
最新の話も再投稿が終わり次第載せていきたいですね^^
まだ出来てませんけど^^;
それでは、改訂版をお楽しみ(できるかな?)あれ^^




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