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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


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  第5章 1節:新たな家族 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月01日 (金) 13時48分 [747]   
 
 ここはイオニア海を進む船の上。ギリシャWPKO支部を後にして、アルトは総本部のあるヴァチカンへ行くために、マイヤは地域本部へ帰るために一緒に乗船した。
昨夜の雨雲もきれいさっぱり無くなり、空は快晴。海は穏やかで太陽に照らされキラキラ輝いている。頬を打つ海風が心地いい。
このまま順調に行けば、夕方にはイタリアの港に到着するだろう。
 港に着くまではデッキでマイヤと会話をしていた。
「エターナル・フォースは2タイプに分けられるんですねぇ。知りませんでした」
アルトの銃は「武器タイプ」、マイヤの水攻撃や、アデルのは「特殊タイプ」に分別されるらしい。
「そうなの?アデル元帥の弟子なんだからもう何でも知ってるかと思った」
エメラルドグリーンの目を丸くして、マイヤは意外そうな顔で言った。
「それがそうでもなくて…。むしろ知らないことの方が多いと思いますよ」
行く先々で修行を与えられ、それをこなして行くだけで精一杯だったし、アデルはWPKOのことはあんまり詳しく話してくれなかった。きっと面倒くさかったからだろう。
 修行中、アデルはフラッとどこかへ行き、そのまま1週間ほど帰って来なかったり(もしかして任務だったのか…?)、はたまたほんの数時間で多額の借金を生み出したり、とにかく波瀾万丈だった。
「へ〜、やっぱり元帥って大変なのね〜」
マイヤはなぜか感心と尊敬の声を漏らした。大変なのはアルトなのだが。
「ねぇねぇ、アルトはアデル元帥が戦ってるとこ、見たことあるの?」
「はい、何回か」
いくつもの街や村を巡るうちに、この間のように偶然DICに当たることは何度かあった。
アデルは「これも修行だ」とか言ってバックれるから、DICの探査から殲滅までほとんどアルトがやった。
でも時にはアルトの力じゃ敵わないDICだっていた。そんなときはアデルが戦線に立った。
「で?どうだった?」
マイヤは興味津々だ。
「どうって……すごい、ですよ」
「どうすごいのよ」
すごいとしか形容しようがない。何がどうなってるのか僕だってわからないのだから。
「気がついたらDICが消えてたって言うか……本当にもう一瞬で」
あれは反則だ。
「ふ〜ん、さすが元帥ってとこね」
「マイヤは水を操れるんですか?」
「まあね。水とエターナル・フォースを練り上げて武器化するの」
「なるほど、だから水でもDICが斬り裂けたんですね」
「そゆこと」
「いつからWPKOに?」
「8歳の時に適合者だとわかってWPKOに連れて行かれたの。それから殲滅者として戦っていけるように訓練を積んで、覚醒したのは13の時。それから4年間、ずっとこの生活ね」
そういえばアデルも、「適合」しても「覚醒」までには個人差があるって言ってたな。適合は、言わば繭の状態。覚醒して初めてエターナル・フォースが発動できる。
「家族と離れ離れなんですか?」
「父と母はオーストリア支部の会計部門に勤めてるの。適合者が見つかってその人に家族がいた場合って、家族には全部説明されるじゃない?WPKOのこととか。それを聞いたら『そんなところに娘一人送れるか!』って言ってWPKOに私と一緒に入っちゃったの」
マイヤはおかしそうに笑った。少し嬉しそうにも見える。
不安だったのだろう。恐かったのだろう。家族と離れることが。家族を失うことが。
「ターミネーターになって任務をこなすようになってからは滅多に会えなくなったけど、会えるだけまだマシね。WPKOは基本的に外部の人間と接触禁止だから」
「そうなんですか。いいお父さんとお母さんですね」
「アルトの家族はどうしてるの?」
僅かな沈黙。答えればきっとマイヤは気まずい思いをするだろう。答えなくても同じことになるか。
「僕、家族はいないんです。父は僕が生まれてすぐに事故で。母は、DICに……」
案の定、マイヤは気まずそうな顔をした。自分が家族を失うことを恐れるがゆえに、実際に家族を失ったアルトが一層かわいそうに映るのだろう。
「……そっか。ごめん、変なこと聞いて」
「気にしないでください。もう昔のことですし。それに、母は今でも僕に戦う力をくれますから」
そう、約束したのだ。常しえの眠りにつく母に。絶望に浸ることなく歩き続けると。悲しみを消すべく奔り続けると。
「……じゃあ、これからは私たちが新しい家族だね」
マイヤはにっこり笑ってそう言った。
「そうですね」
新しい家族、か。アルトは自分が笑みを浮かべているのに気づいたのは少し後になってからだった。



  第5章 2節:総本部 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月01日 (金) 13時49分 [748]   

 予定通り、日暮れにイタリア南部の港に到着した。列車に乗って中部まで行き、マイヤとはそこで別れた。
総本部のあるヴァチカンはローマ市内の小国で、ヨーロッパ地域本部は北部のミラノにある。
「いい?アルト。絶対ヨーロッパ地域本部に来るのよ?アフリカなんかにいったら承知しないからね」
「はい、わかりました」
苦笑しながらアルトは答えた。相当忙しいんだな。
 ローマ駅に降りたアルトは、ヴァチカンに向けて歩き出した。
 ヴァチカン市国。周囲を囲む高い城壁の中にそびえ立つのは、サン・ピエトロ大聖堂。かつてキリストの使徒ペテロの墓があったとされる場所の上に、被さるようにして建立された世界最大級の教会建造物。キリスト教のことはよくわからない。でもこの大聖堂の地下深くに、WPKO総本部が存在することは紛れもない事実だ。もちろん、来るのは今日が初めて。
 サン・ピエトロ広場は民間人にも開放されていてるらしく、夜だったがちらりほらりと人がいた。中央にある巨大なオベリスクを通り過ぎ、大聖堂の前まで来た。ここまで来ると本当に大きい。
「アルト=ナイトウォーカー様でいらっしゃいますね?」
男が後ろから話しかけた。白髪の老人で、執事の様な礼儀正しさが感じられる。いつからそこにいたんだろう。全然気づかなかった。
「はい、そうですけど…。あなたは?」
「WPKOの者です」
「あ、そうですか。元老院の方々に謁見賜りたいのですが、どこへ行けば…?」
「こちらへ」
そう言って老人はアルトを大聖堂の奥へといざなった。



  第5章 3節:恋愛疑惑 - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月01日 (金) 13時53分 [749]   

 マイヤは出発したときとは打って変わって、かなり明るい気分でヨーロッパ地域本部に帰還した。それは念願の新入りのスカウトに成功したから。
新たな殲滅者が一人増えることは、他の殲滅者にとって大きな負担軽減となる。それにアルトはアデルの弟子で充分強いから即戦力として使える。
他のターミネーターと組んで1年間の研修を行う必要もない。もう素晴らしいの一言だった。
「本部長、任務完了しました」
マイヤは地域本部に入ると真っ先に司令室に向かった。もちろんアルトのことを教えて、こっちからも引き抜いてもらうためだ。これで完璧。
「や、マイヤくん。おかえり〜」
ライアンは相変わらず書類が散らかった部屋でコーヒーを飲んでいた。
「ディテクターの調子はどうだった?」
「便利でしたよ」
「でしょ〜?今さらながらに自分の才能にビックリしちゃうよ」
「本部長、そんなことよりお話したいことが」
「キミさらっとひどいこと言うね。ボクの大発明を『そんなこと』だなんて。それにできればボクのことは名前で呼んで欲しいな〜。『ライアン』ってね」
「…ぶっ飛ばしますよ」
「冗談だよ。で?何?」
「新しいターミネーターが見つかったんです。ギリシャで会って、今は総本部に着いた頃です」
「へ〜、よかったじゃない」
「本部長。この間、新入りが見つかったらこっちに引き抜くって約束しましたよね?」
「え〜、そうだっけ?」
「本部長!!」
「わ〜かりました。総本部へボクからもお願いしてみるけど、ギリシャで会ったんなら、マイヤくんのことだから説得やら勧誘やらしてきたんでしょ?」
「彼はヨーロッパにすると」
「へ〜、男なんだ。ふ〜ん」
「…何か?」
「いいえ別に〜。でも、本人がそう言ったなら別にいいじゃない、こっちから引き抜かなくても」
「とにかく!絶対引き抜いてくださいよ!?私最近ほとんど休み無いんですから!」
「は〜い」
(本当にやる気ないんだから、この男は!)
「名前はアルト=ナイトウォーカー。15歳です。あのアデル元帥の下で6年間修行したそうですから、即戦力になってくれますよ」
「ナイトウォーカー…?」
「はい。知ってるんですか?」
「…………ぜ〜んぜん」
両手を挙げてわからないという仕草をした。
「…じゃあ、お願いしますよ?」
「はいは〜い。…マイヤくん」
ライアンはいつになく真剣な顔でマイヤを呼んだ。
「何ですか?」
「……アルトくん、気に入ったの?」
今度はニヤッと笑いながら聞いてきた。
「はぁ?」
「だってそんなに一生懸命引き抜こうとするなんて、もしかしたらそういうことなのかな〜と思って」
「なっ、いい加減にしてください!」
「あ、別に上司の目は気にする必要ないよ?キミ達は恋愛盛りな年頃だし、組織内恋愛は大いに公認されてるからね〜。それにターミネーター間の子供ならその子もターミネーターになりそうじゃない?非常に興味深い」
「本部長!本気でぶっ飛ばしますよ!?」
マイヤは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「それにしてもキミは本当にひどいな。ボクという男が身近にいながらつい最近出会ったばかりの少年に心を奪われるとは」
とりあえず手頃な投げる物が無かったので、手に持っていたディテクターをライアンの額に撃ち込み、壊れんばかりの勢いで扉を閉めて出て行った。
「全く、何考えてるのあの男は!変人の上に変態だったなんて!」
 廊下をものすごい速さで歩きながら、マイヤは自分の頬が妙に熱いのを感じた。きっとこれは怒りだと、そう思うことにしておいた。
「私が出会ったばかりの、それも年下に恋!?確かに性格はいいし、ルックスも人並み以上だけど……って、ああぁ!!そうじゃない!!」
すっかり動揺するマイヤ。
「そんなこと、あるわけが……」
否定はするものの、頭の片隅にはアルトの顔が浮かぶのだった。



  第5章 4節:変わるもの 変わらぬもの - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月05日 (火) 20時21分 [751]   

 大聖堂の地下に案内されて、けっこうな深さまで降りた。よく秘密裏にこれだけ深く掘ったものだな。ヴァチカンの下に謎の組織本部、なんて民間人に知れたら大変だ。キリスト教崩壊の危機。そんなことを考えてるうちに、やって来たのは大きな扉。
「元老院の方々がお待ちです。どうぞ」
老人が促すと扉が勝手に開いた。眩しい。中で見えたのは7人のシルエットだけ。逆光で顔は見えない。
「よく来たな、アルト=ナイトウォーカー」
7人の中の一人が言った。音が反響して誰がしゃべってるかわからない。返答に困ったのでとりあえず黙っておいた。
「これからお前は、世を救済する殲滅者として闇の使徒を滅ぼす戦いに身を投じることになる」
「…はい」
「その覚悟があるか?」
「はい」
「その運命から目を逸らさず、前に進めるか?」
「はい」
「アルト=ナイトウォーカー。お前に、戦う“意志”はあるか?」
以前に聞いた、あの時と同じ質問。アルトの答えも変わらない。あの時と同じだ。
「…はい、あります」
「…そうか。ならば、これ以上言うことはない。今この時より、汝アルト=ナイトウォーカーを、世を救済する『殲滅者』として認可する」
ついになった。殲滅者に。
「正規な手続きを踏んだのち、希望する地域本部へ行き、DIC殲滅に努めよ」
「はい」
アルトは部屋を出た。手続きをして、大聖堂を出て、ヴァチカンを出た。
 WPKO機関員証明書を発行してもらい、晴れて正式なターミネーターになったわけだが、あまり感慨深い心情にはならなかった。まぁそれもそうだろう。
今までも、これからも、アルトには何も変化は無いのだから。心の中では6年前のあの日から、アデルに出会ったあの日から、アルトはずっと殲滅者だったのだから。
今日になってその肩書きを与えられただけ。
「さて、それじゃ行きますか」
ヨーロッパ地域本部へ。アルトの新しい家へ――。
 ――変わったことが一つあった。アルトには家族ができた。ともに戦い、ともに世界を救う、大きな家族が。



  続きです^^ - 翼無き天使 (男性) - 2008年02月05日 (火) 20時23分 [752]   
ベールゼブブさん、お久しぶりですね^^
セミプロとか、すごいですね^^;
私も読んでみたいです^^
頑張ってください。
では



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