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RAGNAROK - 翼無き天使 (男性) - 2008年10月01日 (水) 00時41分 [763]
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人は、死後にその人生の行いについて神に裁かれる。最後の審判。 善いことを行った人生なら天国に行けるし、悪い行いをすれば地獄へ堕とされる。 しかし“出生の経緯”によっては、地獄行きが生まれながらに決まっている者もいる。 そんな者の一人が彼、ヴィンセント=トライガン。 彼は地獄行きがすでに決定しているらしい。しかし彼は天国に行きたかった。 「地獄?冗談じゃねぇ。なんでぶっ殺した奴がいるところに俺も逝かなきゃなんねぇんだ」 彼は吐き捨てるように言う。 「俺は天国に逝くぜ。神様とやらが俺に頭が上がんねぇくれぇ、悪魔どもをぶっ殺してな」 彼はデビルハンターとして世界を朱で染め上げる。紅く、紅く、悪魔の血で。
Report1:10月11日 夏の暑さも消え去り、少し肌寒くなってきた10月の夜。今夜は満月だった。 満月の夜は魔の力が高まる。今夜の獲物は少し手強いかもしれない。しかし彼に恐怖は微塵もなかった。むしろ愉快なことこの上ない。 口に笑みすら浮かべ、彼は悪夢を担いで目的地に向かった。 「今夜は本当にいい夜だな」 見上げればそこには丸い月。見る者を魅了するほど美しいが、自分一人では輝けない。まるで彼の悪夢のよう。 「そう思うだろ?なぁ、ナイトメア」
今は誰も使わなくなった廃工場。その中で男達の下品な笑い声が響く。 「今日も上玉が手に入ったなぁ」 男の一人がニタついた声で手足を縛られた女を見下ろす。女は恐怖に凍り付いた目をしている。 「まだ手を出すなよ。お楽しみは身代金をいただいてからだ」 「あぁ、わかってるさ。待ってろよ、金をいただいたらたっぷりかわいがってやるぜ」 ――ガコーン 工場の扉が突如開いた。 「誰だ!?」 コツン、コツン 月明かりに照らされた闇夜から現れたのは、身の丈ほどもある長大な剣を背中に担いだ彼だった。 「なんだてめぇ」 男達は銃を引き抜いて向ける。彼は、銃を向けられるとその場で止まり、辺りを見まわした。 「なんなんだこいつ、警察か?でけぇ剣なんかぶら下げやがって」 彼は胸ポケットに手を入れてタバコを取り出す。指をパチンと鳴らすと、タバコの先端にボッと火が点いた。 「ご機嫌麗しゅう。悪魔のみなさん」 男達の眉がピクッと動く。 「『な、何言ってんだお前!俺たちは善良な一般市民だぜ?あははは』とか不思議な言い訳は勘弁願うぜ。やる気がなくなる」 彼はタバコを一息吸って吐き出す。 「調べはとっくについてるんだ。お前らは今世間を賑わせてる連続誘拐殺人犯。女ばかりを拉致って金もらって殺すっつうなかなかの小悪党集団だ。うまく人間っぽく殺し回ってたみたいだが、わかる奴にはわかるもんなんだよ」 「てめぇ、教会の連中か?」 「残念はずれ。あいにくキリスト教は信じてない。それに、神なんてろくな奴じゃねぇぜ」 もう一度タバコを吸い、溜息も込めて大きく吐く。 「俺はデビルハンターだ。お前らは悪魔、俺はデビルハンター。よって、これから愉しい愉しいショーの始まりってわけだ。Okay?」 「は、ははははは!そうか、デビルハンターか。それでそのデビルハンターはどんなおもしろいショーを俺たちに見せてくれるんだ?」 そう言うと誘拐犯たちは“本来の姿”に戻った。おぞましく化け物じみた悪魔の姿に。その光景に女は悲鳴を上げた。しかし口を塞がれていて、それは声にならなかった。 「げひひ、せいぜい楽しませてくれるんだろうな」 「お前もミンチ肉にしてやるぜ」 彼は短くなったタバコを指でピンと弾き飛ばす。 「楽しいかどうかは、お前らしだいさ」 右手で肩にかかる長剣を掴む。クルクルとタバコは回転しながら宙を舞い、地面に落ちた。 「Show Time!」
今日は人生で最もついてない日だと断言できる。彼女はそう思った。 学校の帰り道、突然後ろから羽交い締めにされ、変な匂いのする布を顔に押しつけられた。そしたらどんどん意識が遠のいていって、気が付いたらこの工場にいた。 誘拐されたんだ。彼女は気付いた。犯人の男達は全部で8人。みんないやらしい目つきで彼女を見ている。 きっとこの男達が今騒ぎになっている連続誘拐殺人犯なんだ。きっと自分も殺されてしまうんだろう。そんな結末が目に見えた。 そんな時だった。一人の男が工場にいきなり入ってきたのは。 大きな剣を背に持って、何の怖れもない顔で悠然と足を進めてきた。闇夜のように真っ黒な髪。血のように紅い瞳。 自らをデビルハンターと名乗る彼は言う。彼女を誘拐したのは“悪魔”であると。 彼の言葉に誘拐犯たちのニタニタ笑いが消えた。そしてその後の光景に、彼女は気が狂いそうになった。 誘拐犯たちが化け物に変わったのだ。何にも形容しがたい、この世のものとは思えない化け物。これが悪魔なのか。 一人の男と8体の悪魔が対峙する。悪魔たちが一斉に彼に襲いかかった。 死ぬ。彼は死ぬ。彼女はそう思って目を瞑った。 きっとあの鋭い爪で、牙で、ボロ雑巾のようにズタズタに引き裂かれて、血液を、肉を、臓物を撒き散らし、無惨な姿で地面に投げ捨てられるんだ。 ほら、悲鳴が聞こえる。液体の飛び散る音。何かがグシャッと地面に落ちる。きっと腕とか脚だ。 また悲鳴。何かが空を斬る音。血が飛び散る。肢体が落ちる。悲鳴。悲鳴。悲鳴。悲鳴。悲鳴。悲鳴――。 体が震える。もう何が怖いのかわからない。死ぬのが怖いのか。あの男が殺されるのが怖いのか。血が怖いのか。千切れた手足が怖いのか。無惨な肉塊が脳裏に焼き付くのが怖いのか。飛び散った脳髄が怖いのか。潰れた目玉が怖いのか。 クラクラする。目を閉じた暗い世界がもっと深い闇になる。 「おい、大丈夫か?しっかりしろ」 頬をペシペシ叩かれる。 「ん…」 彼女は失いかけていた意識を踏み留めて目を開けた。 視界にあの男が入る。生きている。なぜ。だってあんなに悲鳴を上げていたのに。 男の向こうへと視線を送ると、そこには悪魔と呼ばれていたものの残骸が転がっていた。 ある肉塊は頭から股まで裂かれ、ある肉塊は左肩から右脇腹まで斬られ、ある肉塊は上半身と下半身が離れ、ある肉塊は五体を飛ばされ、ある肉塊は細切れにされ、ある肉塊は魚のように三枚におろされ、ある肉塊は頭から足まで等間隔でスライスされ、ある肉塊は腹部に大穴とあの長剣を心臓に突き立てられて、文字通り血の海の中に浮かんでいた。 「外傷はなさそうだが、ケガはないか?」 そう言いながら彼は口を塞いでいるガムテープを剥がし、手足を縛っているロープを解いた。 「あなた……いったい」 男は立ち上がり、ポケットから携帯電話を取り出した。 「…あぁ俺だ。目標殲滅完了。人質の女も無事だ。もう入ってきて大丈夫だぜ」 そんなことを口にするとすぐに複数人の足音が聞こえてきた。 新たに工場に入ってきたのは、彼女の両親と数人の警官だった。母親が血の気の失せた真っ青な顔で彼女の所に駆け寄る。 父親は目に飛び込んだ惨状に呆然としていた。 「あぁ!よかった!本当に無事でよかった!」 母親は涙を流しながら彼女に抱きつく。 彼は、親子感動の再会もどこ吹く風で、とっとと工場から去ろうとする。彼女は彼を呼び留めた。 「あの、助けてくれて、ありがとうございました」 深々と頭を下げる。 「礼を言われる筋合いはないぜ。俺は依頼をこなしただけだ。礼を言うなら、高い金払って俺を雇ったあんたの親に言うんだな」 そう言うと彼はまた歩き出す。 「お、おいあんた!」 今度は警官の一人が引き留める。状況を説明してくれといった顔をしている。 「見たとおり、アレは人外のものだ。死体も血も放っときゃ消える。後始末は任せたぜ」 警官の肩をポンと叩いて、彼は去っていく。警官は彼の背中越しに尋ねた。 「あんた、いったい何者なんだ」 彼が右手を地面に水平にあげる。すると悪魔に突き刺さっていた長剣が悪魔の肉塊から抜けて、彼の手にスッと収まるように飛んでいった。 工場にいる人はみんなマジックでも見ているかように唖然とその光景を見つめている。 「俺はヴィンセント=トライガン。デビルハンターだ」 主人に付き従う執事のように実しやかに飛んできたその剣を掴むと、それを背中にかけ、彼は工場を去った。
コツン、コツン、コツン――
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久しぶりだな〜 - 翼無き天使 (男性) - 2008年10月01日 (水) 00時57分 [764]
何ヶ月ぶりだろ、投稿するの^^; 気紛れでなんとなくその場の勢いで書きました^^; なんかデビルハンターを営む主人公が、天国に行くために悪魔をやっつける的な極めて曖昧な設定・・・ グダグダだ〜orz
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うをw - ベールゼブブ (男性) - 2008年10月01日 (水) 18時24分 [765]
新作ですな。設定が興味深いです。私オカルティスト見習いで魔術師見習いなもんでww(タロットカード1セット持ってます。) これから新主人公がどんな活躍を遂げるか期待してますよ〜(プレッシャー)
悪魔といえばもうすぐハロウィンですね。お店に行くと必ずジャック・オ・ランタンとか魔女の飾りが目を引きます。 ああ、一度は着てみたい黒マント・・・。
それでは☆
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