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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


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  (第8章)4節:月のように 星のように - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月09日 (日) 15時46分 [775]   
 
 銃口から放たれた高速の6連クイックドロウは、寸分狂わず振り下ろされたDICの右腕に命中した。
右腕は付け根付近から千切れ飛び、地面にドサリと鈍い音をあげて落ちた。
「がぁっ!?だ、誰だ!?」
アルトは後ろに飛び退いたDICと、少女の間に割って入る。
やはりできない。目の前で人が殺されそうになっているのに、それを見過ごすことなどできない。
「こんばんは、DIC」
例えリスクがあっても、後から後悔することになっても、今、たった今この場で苦しんでいる人を見捨てることなど、アルトにはできなかった。
「…あなたを、消去します」
「ちっ、殲滅者か……。予定より早いじゃないか」
バーストブレット、弾速Lv.3。
「……っ!?」
「『ブラスト・ショット』!!」
轟音と共に飛び出したプラズマのような銃弾。
核を狙った一撃だったが、DICはとっさに体をひねって避けようとし、左腕に命中した。弾は着弾後に爆発し、DICの左腕を吹き飛ばした。
「ぐぁぁっ!!」
「…僕、ちょっと自分自身に腹が立ってましてね。八つ当たりみたいで申し訳ないんですが、容赦しませんよ」
迷うことじゃなかった。揺らぐことじゃなかった。
でもアルトは迷い、揺らいだ。アルトの迷いのせいで、アルトの揺らぎのせいで、危うく少女の命を落とすところだった。
とどめを刺すべく銃を再び構えた。
「…両腕ふっ飛ばされたんじゃ、殺すに殺せねぇ。一旦退かせてもらうぜ」
「…逃がすと思いますか?あなたにはここで消えてもらいます」
「そいつは、どうかなっ!」
DICは口を大きく開くと、青紫の煙を吐き出した。
「毒…!?」
(まずい!後ろには…)
恐怖で身動きの取れない少女を抱え上げ、高所に跳び上がった。
霧が霧散してなくなると、DICの姿も消えていた。
逃がしたか。怒りに震える天峰が容易に想像できる。死ぬかもしれないとアルトは思った。
 少女はアルトにしがみついて泣いていた。少女の震えが、少女の嗚咽が、アルトの心に深く食い込んだ。
もう少しで彼女を冷たい骸にしてしまうところだった。
少女をそっと降ろす。まだ足に力が入らないのだろう。その場にペタンと座ってしまった。
「…すいませんでした」
しばらくして、ある程度落ち着きを取り戻した少女に、アルトが持つ言葉はそれしかなかった。
「…え?」
「……僕、あなたが襲われてるところ、ずっと見てたんです」
「……」
少女は何が何だかよくわからないといった顔をしてる。
「あなたをすぐにでも助けることができたのに、助けようとしませんでした。あなたの命が危ないとわかっていたのに、見て見ぬふりをしようとしました」
そしてあなたを、見殺しにするところでした。
「……本当に、すいませんでした」
「……どうして謝るんですか?」
少女は不思議そうな顔で訪ねた。
「え?」
「…事情はよくわかりませんけど、それでもあなたは、最後には私を救ってくれました。命の恩人です。私は、とても感謝してます」
「……ありがとう」
「変な人ですね。それはこっちのセリフですよ?」
少女の笑顔は、月のように明るく、星のように煌めいていた。


  5節:未来の可能性 - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月09日 (日) 15時52分 [776]   

 それにしても天峰はどこに行ったのだろうか。無線ではすぐに行くと言っていたのに。
アルトが作戦を無視して独断で少女を助けに入った後も、ついに姿を現さなかった。
少女に事の説明をしている間も来なかったし、彼女を家に送り、しばらく街を探したけど見つからない。無線も電源が切られてる。
天峰に何かあったのか?偶然他のDICに遭遇?いや、それはないか。
 空も白み始めた頃、ついに諦めて一度支部に戻った。
電源が切れてると言うことは、自ら無線が入らないようにしてるわけだから、襲われている可能性は低いだろう。
ライアンにも事の経過を報告しないといけない。ライアンだったらどうするのだろう。やはり天峰に賛同するのだろうか。
 借りていた一室のドアを開けると、鋭い眼光がアルトを貫いた。その眼は言葉にせずとも自らの怒りを雄弁に語っている。
天峰だった。ただ椅子に座ってるだけなのに、部屋には彼の憤怒のオーラが満ち溢れてる。
アルトはドアを開けたまま立ち尽くす。とてもこの空間に足を踏み入れる気にはならなかった。
(これは……死ぬ、かな?)
「…………………………で?」
押し潰されそうな無言のプレッシャーの後、天峰が口にしたのはその一文字だった。
「…すいませんでした。作戦を無視して被害者を助けに入り、DICは…取り逃がしました」
DICを取り逃がしたことは別として、少女を助けたことに、悔いはない。
「……お前のその行動が、任務完了を遅らせるかもしれないと、犠牲者をさらに増やすかもしれないと、思わなかったのか?」
声はいたって普通だった。でもそれが逆に彼の怒りの程を表している。怒鳴ってくれた方が幾分マシだったかもしれない。
「……思いました。でも――…」
それでも、そうなるかもしれないけど。
「…――僕には、目の前にいる人がDICに襲われているのを、見過ごすことはできません。断じて」
「…………」
「天峰の考え方は、正しいと思います。それでも僕にはできません。僕は弱くてわがままな人間ですから、未来の被害者を救うための、今の被害者の死に、耐えることができません。未来も今も、どっちも救いたいんです。どっちも守りたいんです」
未来は常に不確定。そしていくつもの分岐がある。狭く険しくても、アルトが望む道はきっとあると思う。
「…そうやって先のことを考えず、目前のことばかりに目を奪われ、今も未来もどっちも救うなんて手前勝手な儚い夢を追い求めてると、結局は屍だけを積み重ねることになるかもしれないんだぞ」
「…はい、そうなるかもしれません。でも努力してみるだけの価値はあると思います。それに、決して夢では終わらせません。僕は今も未来も救う『現実』を掴んでみせます」
そう、運命は神様が与えてくれるものじゃない。自分で組み立てるものなんだ。
「……だが現状は変わらん。作戦を放棄してまで戦ったにも関わらず、運良く逃亡してくれたDICも追跡しないで根城は未発見。お前の夢はすでに破れつつあるぞ」
反論の余地なし。そこは真摯に受け止めるしかない。
結局の所、少女が助かったことはアルトの心を満たしただけで、状況は悪化してる。
「…どうする気だ?」
「…それは、その……。どうしましょうか」
長い沈黙。天峰から溜息が漏れる。
「……もういい。聞くだけ無駄だった」
そういうと天峰は立ち上がり、依然として部屋と廊下の境界に立っているアルトの方へ歩いてきた。
いよいよ殺されるかと思ったが、あっさりアルトを通過して廊下を進む。
「…何ボーッと突っ立ってる。行くぞ」
「行くって、どこへです?」
「…DICの根城だ。他にどこがある」
アルトは耳を疑った。
「え、でも、さっき……あれ?」
話を要約すると、天峰はすでにDICの根城の場所をつかんだらしい。
「じゃあ、さっきのは嘘だったんですね」
「…嘘?」
「根城は未発見って…」
「…それはお前の話だ」
「え〜と、つまり?」
「ちっ、頭の悪い奴め。お前が消し損なったDICは俺が追跡した。お前が現れ、手傷を負ったことでかなり警戒してたがな」
「じゃあ、天峰はあの場にいたんですね?」
「…ああ。お前がDICに突っ込んだ後だがな。お前が作戦をぶち壊しにしたからと言って、俺までDICの前に顔を出す必要はない」
もっともな話だ。
「まぁその、結果オーライで何よりです」
「…勘違いするな。今回の結果はたまたま幸運が何度も重なっただけだ。こんなことが何度も起こるわけがない。俺はお前の考えは認めない」
「…………」
「…お前の考えはただの理想に過ぎん。机上の空論。絵空事。非現実的な阿保の考えることだ。俺はそういう奴が嫌いだ」
「そ、そこまで言いますか……」
しかし現段階では否定はできなかった。
「……だが、自分の信念すら貫けない奴はもっと嫌いだ。お前の理想、実現させて見せろ」
「はい、そのつもりです」
「…ただし、今度俺の足引っ張ったら即刻あの世に送ってやる」
「ぜ、善処します……」
なんとか首は繋がったようだ。
 すでにブカレストには朝日が訪れていた。少々冷や汗をかいたが、アルトは嬉しかった。
少女の笑顔を、失わずにすんだから。


  引き続き - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月09日 (日) 16時04分 [777]   

続編となります。
まぁここら辺は一度投稿してるんでサラーっと呼んじゃってください。
丁寧に読まれると何か綻びが出てきそうだし^^;

アルトの独断専行と天峰のプッツンです。
まぁなんとか目的は果たしてあーよかったねって感じですね。



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