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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


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チャット代わりに使われますと、せっかく一生懸命小説等を書いた方の内容がすぐに流れて見れなくなってしまいます。
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  第9章 1節:陰謀 - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月11日 (火) 17時32分 [778]   
  「それで?今どうなってるのよ」
暗い地下の部屋。今風の洒落た服装を着こなしている若い男が話しかける。
声の先にはコンピューター画面に向かっているもう一人の男。中年でスーツ姿。眼鏡をかけている。
見向きもせずにキーボードを叩き続けながら答えた。
「ああ、今のところ送り込まれてるのは2人だけだ。もっと大勢来るかと思ったが…」
苛ついた声で続ける。
「いったいどうなってる。勘付かれたか…?」
「ふ〜ん。で?どうすんのよ」
「もう少し様子を見る。計画では少なくとも10人は送り込まれるはずだった」
「これ以上待っても来ねぇさ。やっちまおうぜ?」
「相変わらず頭の中身は少ないようだな。計画は計画通りに進行するから意味があるんだ」
「はっ、そうですか。でも下っ端殲滅者の2人も10人も変わんねぇだろ?」
「殲滅者8人の差は大きい。そのために2年も前から頭の悪い馬鹿どもの組織を世話してきたんだ」
「デュート、お前ってホント暇人だな」
「黙れ。この計画がうまくいけば10人の殲滅者を一掃できる。ヨーロッパの連中の戦力は大きくダウンし、ひいては世界の戦力を削ぎ落とす。最終的な計画も楽になる」
「2人しかいねぇだろ。計画向こうにバレてんじゃねぇの?」
「黙れと言ってる。それよりティック、そもそも何故ここにいるんだ。軽率な行動は慎めとあれだけ言っておいただろ。お前は元帥と何度も接触して顔も割れてる。向こうからも徹底マークされてるんだ」
「大丈夫だって。尾行はないし、行動にも気をつけてる」
「ふん、この間のミテラッド=カスパーとの戦闘の後にそんな言葉を聞いても全く説得力がないな」
「だ〜か〜ら〜、あれは俺のせいじゃなくて、手下がヘボったんだよ」
「確かにお前の手下は頭が悪かった。だがカスパーに見つかって戦闘を始めるお前はもっと頭が悪い」
「へいへい、そりゃすいませんね。お馬鹿さんで」
「全くだ」
「でも勝ったぜ?」
「何が勝っただ。勝ってない。やつは生きてる。殺さなきゃ意味がないんだ。そのくらいわかれ」
「おいおい、元帥を瀕■に追い込んだんだ。ちょっとくらい誉めてくれよ」
「ああそうだったな。そしてお前は左腕と右脚を吹っ飛ばされて骨折18箇所に大量出血。あと少しで修復不可能な段階になるとこだった。それに、やつらは重傷を負ってもすぐに回復する。エターナル・フォースの力でな。どうせ■ぬなら殺してから■」
「■ぬかよ。次に会ったら必ず殺すさ」
「それをやめろと言ってるんだ。まだその時期じゃない」
「へ〜い」
――トゥルルルルル
携帯電話が鳴る。
「誰からだ?」
「…部下だ」
デュートが内ポケットから携帯を取り出す。
「俺だ。…ああ。…ああ。そうか、わかった。引き続き監視を続けろ」
「なんだって?」
「殲滅者2人が組織のこのアジトを嗅ぎ付けた。人数以外は計画通りだ」
「それって計画外なんじゃねぇの?」
デュートがティックを睨み付ける。
「わかったって。それで?どうすんのよ」
「ふん、まぁ見てろ。この際2人でかまわん」
「だから最初っから俺がそう言ってんだろ?」
「それに、これ以上引き延ばしてもう一つの計画に気付かれてもつまらん。この部屋も一緒に始末しないとな」
「何それ」
デュートはドアに向かって歩き出す。その後にティックも続く。
「なぁ、俺の出番は?もちろんあるんだろ?」
「そうだな、せっかく駒が増えたんだ。使わない手はないか…」
「誰が駒だよ」
「ティック、お前にぴったりの仕事がある。来い」
「…俺の話聞いてる?」



  2節:疑惑 - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月11日 (火) 17時33分 [779]   

――ヨーロッパ地域本部。
「そう、根城はもう見つかったの。さすが、早いね〜」
司令室で低反発の高級特注イスに寄りかかり、コーヒーを飲みながら本部長、ライアン=クランツは受話器に向かって話す。
「これから天峰と一緒に潜入して調査を行います」
受話器の向こうからアルト=ナイトウォーカーの声が聞こえてくる。声からは少し疲労が感じられた。
「疲れてない?」
「え?ああ、大丈夫です。心配しないでください。任務に支障はありません」
「初任務なのにこんな大仕事を任せちゃって悪いね〜。本当はもっと人員を増やそうと思ったんだけど……」
「…けど、なんです?」
「まぁ、色々あってね。2人に任せちゃう結果になったのよ。で、さすがに少ないかな〜とも思ったんで、1日か2日後にマイヤくんを応援に向かわせるから」
「そうですか。でもアジトは見つかりましたから、何とかなりそうです」
「…気をつけるんだよ」
「はい。それじゃあ」
電話が切れた。
窓の外を眺める。その顔にはどこか判然としない表情が浮かんでいた。
――コンコン
誰かが司令室のドアをノックする。
「ど〜ぞ〜」
入ってきたのは開発部門部門長、アーヴィン=サンダースだった。
「本部長」
「やぁアーヴィンくん。どうかした?」
アーヴィンを見るとライアンはまた窓へ視線を投げた。
「あの、俺が言うのも何なんですけど、ルーマニアの任務、やっぱりもっと人員を増やすべきですよ」
「…そう?」
「そこらへんの街一つならまだしも、規模は一国ですよ?それに、『ジハード』との関連性だって完全には否定できないし……」
ライアンはアーヴィンの方へ向き直る。
「具体的にどの程度の人員が必要だと思う?」
「最低でも、10人は」
しばらくライアンはまた窓の方を見ていたが、唐突に切り出した。
「……おかしいと思わない?」
「…?何がですか?」
「ボクらはこの組織の存在に気づかなかった。つい最近まで。全くね。この組織はWPKOの情報網に引っ掛かりもしてなかった」
アーヴィンは黙ったままだ。
「存在に気づいたのは、ここ最近の行動が煩雑で向こうがボロを出したから。もしこれがなければ過去2年間の事件も明るみに出ることはなかっただろうね」
「本部長、何が言いたいんですか?」
「まぁ詰まるところ、どうもはめられてる気がしてならないんだよね」
「罠ってことですか?なぜ?」
「この組織の隠密性はほぼ完璧だったんだよ。だからこそボクらに発見されることなく2年間も存在してきた。それがつい最近になって『たまたま』ボロを出して、殲滅者を2人送ったらたった2週間でアジトまで探り出した。これを疑わない人間がいるかい?」
よくよく考えてみたら確かにその通りだ。みんなDICの組織を発見したという一大事に浮かれて、そんなことにも気づかなかったのだ。
「つまり、DICが俺たちを誘き寄せているってことですか?」
「その可能性もあるかもしれないと思って、人員は2人の精鋭に絞ってみたわけ」
閃刃の天峰と新入りアルト。天峰の名前は、ヨーロッパに限らずその他の地域本部でもときたま噂される程だし、アルトは元帥の中でも最強ではないかと囁かれるアデルの弟子だ。
「このことは2人に?」
「いや、まだ伝えてないよ。確証もないし、妙な猜疑心で調査に支障が出るのは好ましくないからね。調査がもう少し進んでから、話すかどうか決めるよ」
「やっぱり『ジハード』が裏に絡んでるんじゃ…?」
「それもまだわからない。総本部には報告しておいたんだけどね。返答は未だになし」
「……大丈夫なんですか?本部長の期待もわかりますけど、強いって言ってもあいつらはまだ10代の子供ですよ?」
「殲滅者に年齢は関係ないよ。大事なのは心の強さだ。彼らはその切っ掛けこそ違え、世界を救いたいという強固な心を持ってる。きっと切り抜けるよ」



  3節:潜入 - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月11日 (火) 17時34分 [780]   
 DICの根城は、意外にも市街地の中に位置していた。もう誰の使っていない古びた廃ビル。
木を隠すなら森、そんなところだろう。
支部で天峰が手配した図面によると、上は10階、下は5階まである。だいぶ古くなっているらしく、近々取り壊される予定らしい。
なるほど確かにコンクリートはあちこち剥がれて鉄筋が顔を覗かせている箇所もある。窓もガラスがはまっている方が少ない。
フロアはゴミだらけ。タバコの吸い殻、空き缶、空き瓶。壊れたラジオ。酷い有様だ。
きっと夜は若者の溜まり場になっているのだろう。獲物を捕らえるには絶好のポジションだ。
十中八九、DICのアジトは日の光が入らない地下で、昼にDICがアジトの外に出てくることはまずないだろう。
だから明るいうちに廃ビルをガサ入れしようという寸法だ。最低でもビル内でのアジトの正確な位置は把握しておきたいし、調査、今回のようなケースでは盗聴になるが、その位置も確定させておきたい。
とりあえずは1階の捜索だ。手当たり次第にものをひっくり返す。これだけ散らかってれば誰も気づくまい。
「そうそう、天峰がツカツカ先に支部を出ちゃうんで、本部長には僕が報告しておきましたよ」
廃ビルの中を物色しながら思い出したようにアルトが言う。
「明日か明後日にはマイヤが応援に来るそうです」
「…あぁ、あの五月蝿い女か」
天峰が放置されたデスクの引き出しを下から順に調べながらボソッと呟いた。
「知り合いなんですね」
アルトはゴミ箱を倒して中身を探る。やはりゴミばかり。
「何度か会ったことはある」
「そうですか。……天峰はいつからWPKOに?」
「聞いてどうする」
「いえ、ちょっと気になっただけで」
「…お前に関係ない」
「そりゃまぁ、そうですけど」
予想通りの返答に苦笑しながら、アルトは不自然にちょこんと置いてある植木鉢に目を置いた。
茶色い安物の植木鉢。水の受け皿に乗っている。中の土は乾燥しきって植物は枯れ果てていた。
まさかこんな初歩的なことが……。
そう思いながら植木鉢を持ち上げると案の定、受け皿の上には真鍮性の鍵があった。
「おい、どこかに鍵があるはずだ。探せ」
いつの間にか姿を消していた天峰が戻ってきた。
「地下に行く扉に鍵がかかってる」
「鍵ならここに」
そう言って天峰の方へ鍵を放る。
「今回のDICは、知性が高い割にはレトロな思考回路みたいですよ」

地上とは打って変わって、地下の方の内装はかなり整備されていた。取り壊し寸前のビルとは思えない。
薄暗いが照明もちゃんとある。しかし電気が通っていることがそもそもおかしい。ここは廃ビルなのだから。
「鍵が閉まってるってことは、みなさんお出かけですかね」
人に擬態したDICがぞろぞろと街中を徘徊しているかと思うとゾッとする。
地下1階から徐々に下へ。最初は特に何もなかったが、地下4階から様子が変わってきた。
パソコンが置いてあるし、テーブルにイス、テレビまである。
生活感が出てきたのだ。あんな化け物たちが人間同様の生活を送っているとは。
「アジトはここで間違いなさそうですね」
「ああ」
天峰がパソコンの置いてあるデスクの引き出しを開ける。
アルトはテーブルやイスの下、見つかりにくい場所に米粒よりも小さい高性能盗聴器を設置していく。
「見ろ」
天峰が書類の束をテーブルに放る。
「これは……」
「人間を狩るマニュアルだ」
方法、場所、時間帯、その後の処理、組織内の連絡方法など、細かなことが指示されている。
「この組織は、何者かの命令で動いている…?」
書類から目を離さないままアルトが呟く。
「かもな」
「それしかないでしょう。でなきゃこんなもの作ったりしませんよ」
「決めつけるな。証拠はまだない」
天峰がパソコンの電源を入れる。
「…ちっ、パスワードが要るな」
「ちょっと貸してください」
そう言ってパソコンを自分の方へ向けてキーボードをカタカタ叩く。
「ハッキングして侵入します。2分ください」
「…殲滅者の上にハッカーだったとはな」
「悪用はしてませんよ?昔ちょっと銀行の預金口座を水増ししただけです」
アデルの借金を消すための苦肉の策だった。だからマフィアはやめておけと言ったのに。
「充分犯罪だ」
「逮捕するならアデル師匠にしてくださいね。でも天峰は警察じゃないですから大丈夫です」
「殲滅者は任務遂行上必要であるなら民間人・機関員を問わず最大3ヶ月間拘束する権限がある」
「ははは、まさか。……本当ですか?」
コンピューターへの侵入成功。
「メールを調べろ」
受信メール、やはり何者かからの指示が送られてきてる。
差出人は「Dute」。何者だ?人間か、それともこいつもDICか。
「証拠が出たな」
「そうですね」
「組織の目的がわかるようなものを探せ」
「え〜と、指示を伝えるメールばかりですね。日時、場所、目標とする人間、その人のデータ。差出人は全て『Dute』」
何かのコードネームだろうか。このデュートも組織の一員だろうか?だとしたらこいつがリーダー?それとも全く未知の存在なのか。
「相当な情報網を持ってるみたいですね、このデュートは」
これはもはや個人の領域ではない、一国の捜査機構にも匹敵するかもしれない。
かなり綿密な計画の下にこの2年間の犯行は行われてきたらしい。しかし、それならなぜ我々にバレた?
デュートが詳細な指示を組織に出す。組織がそれに従って計画的に人々を襲う。それを2年間。200件以上。
いったい何のために……?
「送信メールは、その報告です。その他にルーマニアに点在すると思われる仲間と連絡を取ってます」
「位置を割り出せるか?」
「はい、出来ますけど僕がやるより本部にデータを転送してやってもらった方が早いと思います」
「そうか。場所を特定したら各場所に暇な殲滅者を派遣するように伝えておけ。その方が犠牲者の数が少なくなる」
「わかりました」
「俺は他を見てくる」
言い終わるや否や天峰が足早に去って行った。
アルトは携帯電話を出してヨーロッパ地域本部にかける。
呼び出し音が2回。
「WPKOヨーロッパ地域本部です」
受付の女性の声が出た。透き通るような声だが機械的だ。
「殲滅部門のアルト=ナイトウォーカーです。至急本部長へ取り次いでもらえますか?」
「認証IDをお願いします」
アルトは機関員証明書に記載されている数字とアルファベットの羅列を読み上げる。
「認証しました。本部長に取り次ぎます。少々お待ち下さい」
数秒の沈黙の後、今度は聞き慣れた男の声が聞こえてきた。
「やぁアルトくん。なにか進展あった?」
「はい、まぁ色々と。アジトは報告した廃ビルの地下4階です。目的はまだ掴めていませんが、この組織は何者かからメールで指示を受けて行動してるようです。指示内容は綿密で、かなりの情報網を持っていますね。メールの差出人は全て『Dute』という者です」
「デュート……」
「送信メールからルーマニア各所に散らばったDICの居場所がわかりそうなので、そっちにデータを転送します。場所を割り出したら出来るだけ早急に殲滅者を派遣して欲しいんです」
「オーケー。じゃあ情報管理部門の端末に送ってよ。今何人か任務から戻ってきてるから、割り出し次第派遣するよ」
「ありがとうございます」
「アルトくん」
「はい」
「まだ確証はないからこれはボクの推論になるんだけど…」
ライアンはやや声をひそめて言う。
「今回の任務は、敵の罠かもしれない」
「罠…ですか?」
「そう、あまりにことが簡単に運びすぎている。今まで存在すら気づかなかった組織がひょっこり現れ、アジトはあっさり見つかり、その隠密性の高い行動とは逆に情報の管理は杜撰だ」
「確かに、そうですね。本部長は罠の可能性が濃いと?」
「まだ、わからない。でも妙だ」
「それで、どうしますか?」
「今は何も。ただ用心して行動してちょうだいよ」
「はい、それじゃあ」
アルトは電話を切ってポケットにしまった。
「罠、か」
確かに国一つの規模となったら普通はもっと多くの殲滅者で当たってもいい。
ライアンがあえて2人に絞ったのはそういう理由があったのか。
「な〜んだ。やっぱ気づいてんじゃねぇか」
突然後ろから声が聞こえた。振り向くと部屋の入り口に若い男が寄りかかって、サングラスを左手で弄んでいた。
誰だ?いつからそこに…?
カジュアルな今風の服装、DICのそれと似ている深紅の瞳、銀のピアスがキラリと光る。
「お目当ての連中はもう戻って来ないぜ?」
「あなたが…デュートですか?」
そう聞くと若い男は吹き出した。
「おいおいおい、あんな堅物と一緒にすんなよ。って見たことねぇか」
「じゃあ、あなたは何者ですか?」
「…さぁ、誰でしょうか…?」
男の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。



  4節:火柱 - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月11日 (火) 17時36分 [781]   
 世界鉄道・ルーマニア行き。
そこの特別待遇個室で殲滅者・マイヤ=キリサワがふくれっ面で座っていた。
「まったく、あのヘタレ本部長め。帰ってきて早々任務だなんて……」
久しぶりに両親と休暇を楽しんで帰ってきてみたら、さっそくライアンから指令が飛んできた。
今回の任務は、最近ルーマニアで発覚したDICの組織による大量虐殺の調査に先行した天峰・アルト部隊の援護。
「援護ったって、チームは総くんとアルト。何を援護するってのよ…」
DICの組織ということで、かなり異例の事態であるらしいが、あの2人に援護などいるのだろうか。
 アルトの実力は自分自身の眼で確かめた。もう一人に至ってはあの「閃刃の天峰」だ。
向かうところ敵無しといっても過言ではないだろう。
「あ〜あ、あと1日この走る鉄箱に缶詰か〜」
マイヤは退屈そうに伸びをする。
「これで無駄足だったらどうしてくれようかしら、本部長」
そう呪いの言葉をつぶやいて、しばし仮眠に入った。

アルトはエターナル・フォース「デスペナルティ」を錬成し男に向けて構えた。
なぜそうしたのか自分でも解らない。ただ、男の笑みにとてつもなく不吉なものを感じた。咄嗟の反応だった。
「あなたは何者なんです?なぜここに?お目当ての連中って、何か知ってるんですか?」
依然として不敵な笑みを崩さない男に、アルトは聞き直した。
「そんなこと聞いてどうすんだよ。それより少年、もうお仲間が一人いたろ?どこ行ったのよ」
「なぜそれを…!?」
知っていた。2人なのも、ここにいることも。
アルトは銃を握りしめた。手に汗を感じる。なぜだ?丸腰同然の男に銃を向けて、なぜこんなに緊張してる?
「ははは、俺を撃つのか?」
この男はどういう形であれDICの組織と関係があるのは間違いない。それともDICなのか?
「あなたはDICの仲間なんですか?」
「だから〜、なんでさっきからそんなどうでもいいこと気にすんだよ。少年たちはもうすぐ死ぬんだぜ?」
「どういうことですか?」
「そのままの意味だよ。もうすぐここは木っ端微塵。少年たちは地の底で御陀仏さ。だから少年のお仲間がどこ行ったのか知りたいんだけど?」
その時だった。
「!!」
突如現れた天峰が、男の背後から攻撃を仕掛けた。しかし寸前で気づいた男はサッと身を剃らせてかわす。
「おいおい、いきなり物騒だな」
男はさも楽しそうに言う。
「…こいつは何者だ」
男と距離を取った天峰が、視線は男から離すことなくアルトに聞いた。
左手には剣を持っていた。片刃で独特の反りがある日本古来の剣、「刀」だ。これが天峰のエターナル・フォース。
「わかりません。でもDICの組織と繋がりを持ってるのは確かです。って天峰、知らずに斬りかかったんですか?」
「直前の会話は聞こえてた。なんであろうと敵に変わりはない」
「ははは、敵は即斬る、か。少年のお仲間は、まぁこっちもまた少年だが、なかなか血の気が多くていいね」
男は服の埃を払いながら言う。
「だがお相手してあげられないのが残念だ。少年たちとドンパチ始めるとデュートのやつにどやされるんでね」
「この男はビルを爆破するつもりです」
「ビルに爆弾はない。仮にあるとしてもここにいたらお前も巻き添えだ」
「ご心配なく。ちゃ〜んと逃げるよ」
「逃がしませんよ」
アルトは照準を合わせる。
「いろいろ聞きたいことがありますからね」
「あ〜、いろいろ答えてあげたいところだが少年。時間だ」
男は腕時計を見ながら笑う。
「少年、目つきの悪い方ね。確かにここに爆弾はない。でも事実としてこのビルはもうすぐ爆発する。なぜでしょう?」
男は両手を広げながら天峰に問いかけた。
「ふん、知るか」
天峰は刀を構える。どうやら尋問は強制的に行うようだ。
「答えは、魔法陣だ」
瞬間、床が光る文様を描き出す。アルトと天峰はその「魔法陣」のど真ん中にいた。
「!?」
「Adios」

 炎は「破壊」の象徴。
破壊において、炎より速いものは存在しないからだ。人でも、物でも。
全てが灰燼に帰すその様を見て、人々は炎を畏れ、崇め、ときに神とさえしてきた。
 それは突然現れた。なんの前触れもなく、男の眼前に立ちはだかった。
もはや取り壊される寸前の廃ビル。灰色のこの建物は一瞬にして焔色の柱に変わった。
全てが、飲み込まれた。紅蓮の焔は留まることなく空へと駆け昇り、黒煙を噴き上げた。
いったい何が起こったというのだ。
これは現実か…?
「神よ…」
呆然とこの火柱を見つめる男は、これしか言うことができなかった。



  第9章です。 - 翼無き天使 (男性) - 2008年11月11日 (火) 17時43分 [782]   

もうドバッと。
次の10章で再投稿も大方終わりですねー。
思えば後半はだいぶ修正されてますね・・・。
ちょうど今辺りが・・・。

また暇な人はお付き合い下さい。
忙しい人が見るとキレたくなるような内容なので・・・
では



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