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RAGNAROK - 翼無き天使 (男性) - 2009年01月18日 (日) 05時55分 [850]
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Report2:10月17日 夏は過ぎ去ったものの、やはりまだ本格的な秋というわけではないらしく、その日の昼は実に麗らかだった。 彼は活動拠点として構えた事務所「KERBEROS」のだだっ広い部屋のソファで平和に昼寝をしていた。 先日の依頼の報酬はなかなかのものだった。やはり金持ちは違う。ここはひとつ、美味い酒でも買ってくるかなんて夢現で考えていた。 しかし、そんなささやかな至福を思考する脳裏には、どうにも晴らしきれない暗雲が漂っている。 その正体は明らかだった。そしてもうすぐヴィンセントの前に現れて落雷をお見舞いしてくれる。 ――ゴンゴン 事務所の扉がノックされた。 「……来たか」 報酬の入った後の来客は「ヤツ」と相場は決まってる。取りあえず、わずかばかりの希望に賭けてシカトを決め込むことにした。 ゴンゴンゴン 「…………」 ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン―― 「……はぁ」 ヴィンセントは溜息をついてのそっと起き上がり、玄関口に向かった。その間もノックは鳴り続ける。 「ステキでクールなヴィンセント君は現在留守ですが?」 そう言って開けた扉の先に立っていたのは、 「ステキでクールなヴィンセント君に伝えてちょうだい。キュートでセクシーなセシリー=ルーカスが来たったね」 セシリー=ルーカス。仲介兼情報屋だ。ヴィンセントに「その手」の仕事を持ってきてくれる。 真紅、という色彩表現がぴったりなしなやかな髪に、びしっと紺のパンツスーツで決め込んでいて、髪の紅がよく映えた。 「……そんな魅力的な女性の知り合いはいないんですがね」 「なかなかおもしろい冗談ね。最近はそういうもてなしが流行ってるの?」 「ああ。主に会いたくない客人を追い返すときに使用するな」 「笑えるわ。中に入っていいかしら」 セシリーは返事も待たずにカツカツと中に入っていった。ヴィンセントは溜息混じりに扉を閉める。 「相変わらず殺風景ねぇ。少しは部屋を飾ったらどう?」 さきほどまでヴィンセントが昼寝していたソファの向かいにセシリーは腰を下ろし、部屋をぐるっと見渡しながら言う。 「食って寝るだけの事務所だ。飾ってどうする」 ヴィンセントの事務所、KERBEROSは二階建ての建物で、一階は事務所、二階は寝室でどちらも広い空間が一つだけという非常に簡素な造りだ。 約30畳の一階にあるものと言えば、4人掛けのソファが2つ、そのソファに挟まれて置かれているテーブル。それに隅に冷蔵庫と、割と大きめのテレビくらいのものだった。 「それで、ご用はなんでしょうかセシリーさん」 ヴィンセントもセシリーの反対側に腰掛けた。 「なにって、決まってるじゃない。借金の取り立てよ」 セシリーはスーツの内ポケットからタバコを取り出して咥える。彼女の手がライターを探していると、ヴィンセントが指をパチンと鳴らした。 するとセシリーのタバコはにわかに赤く灯り、煙を立ち上げた。 「どうも」 「好きだな、あんたも」 「なにが?タバコ?」 「いや、金儲け」 「好き嫌いの問題じゃないわ。借金は無くなるまで取り立てるのが当然でしょ?」 「たまには無償の恵みを与えてみたらどうだ」 「嫌よ」 「即答だな」 ヴィンセントもタバコを取り出して火を点けた。一息吐いて続ける。 「あといくらなんだ、俺の借金は」 「そうね、この事務所の建設費用に、この土地の浄化・結界費用、あとDHA(Devil Hunter Association)加盟費、それにあなたが無理言って作らせた対悪魔用特注オリハルコン製50口径ハンドガン『パンデモニウム』の代金、プラス諸々の費用、締めて……5億くらいね」 セシリーは手帳を開いてつらつらと借金項目を読み上げる。 「ちょっと待て、そのドコサヘキサエン酸の加盟費とやらは先月払ったはずだぞ」 「デビルハンター協会よ。先月払ったのは労災保険の代金。基本加盟費は私が立て替えたままよ」 「あと5億か。長いな」 「そもそも資本金無しでビジネスを始めようとする方がどうかしてるわ」 「ビジネスか?」 「ビジネスよ。私がお金貸さなかったらどうするつもりだったの?」 「別の誰かから借りた」 「本当に行き当たりばったりね。まぁいいわ。いつも通り、仲介料として報酬の3割が私、5割があなたの取り分、残り2割が協会ね」 セシリーは電卓を叩きながら計算を始める。 「で、あなたの取り分から生活費と必要経費を差し引いて、残りを借金返済に充てるから……手許に残るのはこのくらいね」 そう言って電卓をヴィンセントに差し出す。 「……おい、これじゃ1週間保たないぜ」 「そうね。でも一週間も保たせる必要はないわ」 セシリーはバッグから茶封筒を取り出した。 「新しい依頼よ」 「ほう」 ヴィンセントは封筒を受け取って中身を取り出す。 「今回は大物よ。成功すればあなたの借金、半分は消えるわね」 「まだ半分なのか」 「獲物のランクはA(+)」 「A(+)?だったら協会直轄部隊様の出番だろ」 「ファルスは今手一杯なのよ。ファルスの手が空くまで待てって協会は渋ったけど、彼らに回されたら私の取り分が減るし、あなたに依頼を持ち込めば借金も返ってくるし。ごり押しで許可取ってきたわ」 セシリーはにっこり笑う。 「……協会の弱みでも握ったか?」 ヴィンセントが真面目な顔で尋ねた。 「失礼ね。私の今までの貢献あればこそよ。それにあなたに依頼したいって言ったら割とすぐオッケーしてくれたわ」 「そりゃまたなんで」 「色々問題はあるけど、なんだかんだであなたの実力には期待してるってことよ」 「もしくは、とっとと消えてもらいたいのかもな」 自嘲気味に呟いた。 「それでこの依頼、受ける?受けない?」 セシリーが灰皿に短くなったタバコを押しつけながら尋ねた。 「愚問だな」 ヴィンセントもタバコの火を消す。 「お引き受けしましょう。全ては借金返済のために」 そう言って手を差し出した。 「いい心がけね」 セシリーがその手を握る。 「詳しい話を聞かせてくれ」 契約成立の握手を終え、ヴィンセントが書類を流し見ながら言う。 「その前に、まずは借金の返済手続をしましょう」 「……忘れてなかったか」 「当然でしょ」
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いや〜 - 翼無き天使 (男性) - 2009年01月18日 (日) 06時07分 [851]
第2弾です。 また気紛れでダラダラ〜っと。 天国への道のりは遠いのです。
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こないだのやつですな - ベールゼブブ (男性) - 2009年01月18日 (日) 12時17分 [852]
この前の新作同時進行の続きが出た〜!! ドコサヘキサエン酸には不覚にも笑ってしまった^^; 同じ事思ったし。 っていうか借金がまるで自己破産もん・・・^^;
では☆
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借金すごっ!! - クロネコ (男性) - 2009年01月18日 (日) 16時08分 [857]
オリハルコン製の50口径のハンドガン(拳銃)が カッコよさそうですね!俺は剣も大好きですが、銃は もっと好きなんです! ヴィンセントの借金は致命的で呆れすぎて、逆になんか カッコイイです。 ファンタジーと現代が混ざったハードな世界観が相変わらず 素敵です! 続きを待っています!
では、ナーティス物語のキャラからのメッセージ
ライ 「オリハルコン製の銃・・・僕にも扱えるかな?」 ルビィ 「お前のレベルじゃまだ反動には耐えられないんじゃ ないのか?それよりも、あのヴィンセントって奴の 借金のほうがすごいぜ!」 リーナ 「借金地獄か・・・私の家はパパがゲーム会社の社長だから 裕福で、お金には困っていないから私じゃわからないわ・・・」 ケルス 「ヴィンセントの借金がルビィの言う通りに、マジで 致命的だな、大丈夫なのか?」
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