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Jealousy - ベールゼブブ (男性) - 2009年03月29日 (日) 12時50分 [899]
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白銀に輝く鎧と兜で武装したエルフの女王は玉座から一同を見下ろし、やや疑惑の眼差しを向けた後で語り始めた。 「人間ですか。ここはあなたがたがいるべき場所ではないはず。なぜここへ?」 「特にこれといった理由は・・・・・・。近くを通った際にこちらの兵隊さんを助けただけなんです」 女王はふうとため息をついて兜を取った。耳が長い。アーサーの話によれば、山岳系民族エルフの生まれだ。年は見た目は二〇代半ば辺りで、ウェーブがかかったプラチナブロンドの髪を持ち、雪のように白い肌だが凛々しい顔立ちで、鎧の重厚さがそれほどミスマッチではない。マゼンダは小声で二百年は生きてると思うわ、と見積もった。 「それで、あなた方はわたくしに『何故ニンフと争っているのか』とお聞きになりたいのですね? っつーか余計なお世話」 は、と四人は耳を疑った。女王は平然とした顔で続ける。 「ニンフの女王、カトリーヌが突然戦争を仕掛けてきました。理由はわたくしには分かりません。かといって理由を尋ねようにも問答無用と言わんばかりに暴れられたのでは流石に交渉の余地もないでしょう? っつーか絶対無理」 マゼンダは案内してくれた兵士にこっそりと、変わった口調ね、とつぶやき、兵士は乾いた笑いを見せた。 「それに今は国の兵隊を統率するガイル公爵が戦場に出ている間、わたくしが城に残った兵を統率しなければなりません。外に出るのもままならない状態なのです。っつーかマジ暇」 「そういうことでしたら私どもが直接ニンフの女王のもとに赴き、真意を確かめて参ります」 ルークがそう誓いを立てたのも束の間、女王の間の大扉を開ける影が現れた。長い銀髪が兜から流れ、大鎧を身につけた姿。その後ろには大勢の傷だらけの兵隊。女王は立ち上がって大鎧を歓迎した。 「ガイル公爵、戦況のほどを」 「我が軍の表面上の勝利です。双方死傷者は多数出ましたが、敵軍は尻尾を巻いて逃げ出しました」 そう言いつつ大鎧は兜を取り、女王の手を取って口づけをした。ルークはその流れる銀髪と白い肌、端正な顔立ちながら大柄な体躯に見とれてしまい、アーサーに睨まれた挙げ句杖で背中を突かれた。 「ですが、あのニンフの女王のことです。また策を練ってくることでしょう」 「そうですね。油断はなりません。ご苦労様でした。次の戦いに備え、休息をとるのがいいでしょう。っつーかバイバイ」 ガイルはそっと会釈をし、踵を返していずこへと去っていった。 「あの人、かっこいい」 ルルはその背中を追いながら、感嘆のため息を洩らした。 「そうなのよね。妖精界と人間界で美を競うコンテストをすると、ほぼ必ずエルフ族かニンフ族が上位に入るのよね」 その上強そうだ、とルークはマゼンダに続いて言おうとしたが、アーサーに蛇のような目で睨まれたままだったため、蛙のように硬直するしかなかった。
「さて、これからニンフの国まで潜入するわけだけど」 一同は城の客間を借り、作戦を練っていた。ふかふかの水色のソファに腰掛けながら、マゼンダは大テーブルに小さなメモ帳を置き、ペンで頬をつつきながら唸り始めた。 「先生、何か『潜入』という言葉を聞くと私の心の何かが警戒音を出すんですけど」 「気のせいよ」 マゼンダはルークの言葉を見事に蹴り倒し、眉間に皺を寄せていた。ルークが理由を尋ねた。 「弱ったことがあるのよ。流石にコロリスとガント、グースの時みたいにメイドに扮装して潜入するって手口が使えないのよね。エルフは山岳系と河川系に分かれてるから耳が短くてもあたしの幻術で誤魔化せないことはないんだけど、ニンフは全員耳が長いから誤魔化しがきかないのよね」 「前みたいにフェロモンをなんたらってのは出来ないんですか?」 無理ね、とマゼンダはため息をついた。 「人間のフェロモンとニンフのフェロモンじゃ違いすぎるもの。例え香水みたいにしてその場を誤魔化せても、内側から出てくる匂いは誤魔化せないわ」 「ですよね・・・・・・」 ルークも同じくため息をついた。 「ただね、ダークエルフって種族が魔物にいてね、そいつはエルフにもニンフにも似ているフェロモンを出すから、エルフとニンフ自体も結構騙されやすいみたいなのね」 「ダークエルフ・・・・・・」 ルークが目を泳がせたのを見ながら 「あんたって、本っ当に種族の話に疎いわね。何? 兵士長って常識が無くてもなれるものなの?」 と哀れな口調で馬鹿にし始めた。何かを言おうとするルークの言葉をアーサーが遮る。 「正しくはちょっと違うと思います。ルーヌ以外が頭悪すぎて国家試験に受からなかったのと、例えそこでうまくいっても兵隊に入っちゃえば頭鍛える暇がないから衰えていくばかりなんだと思います」 「失礼な!! 私は国で日々戦術を立ててどう動くかとか、どこを攻め落とすのが効率的か、とか、少ない戦力でいかに大軍を破るかとか考えて、結構頭使うんだぞ!!」 「成る程。知識が偏ってるだけだと言いたいんですね? 一般常識は必要ないと。それでエルフの兵士さんに怒られちゃ世話無いですよね」 アーサーのその笑顔にルークは、かつて感じたことのある寒気に襲われ、尋ねた。 「怒ってないか? お前」 それを聞いたアーサーは盛大に吹いた。 「いやですねえ、変に勘ぐって。別にルーヌがあのエルフの公爵様をどう思ってようが、僕には関係ないじゃないですか」 絶対怒ってる。ルークはその確信とともに青ざめていった。
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Fear - ベールゼブブ (男性) - 2009年03月29日 (日) 12時52分 [900]
うまく作戦がまとまらない。いつになくマゼンダが焦っているのが目に見えて分かる。マゼンダが夜が更けるのもお構いなしに客間でペンを片手に頭を悩ませている間、三人は空いた寝室で寝ることにした。 「うう・・・・・・またアーサーの機嫌が悪くなった・・・・・・血を見ないうちになんとかご機嫌とらないと・・・・・・。ってなんで私がアーサーの機嫌を取らないといかんのだっ!! 勝手に怒ってるのはアーサーの方じゃないかっ!!」 とベッドを殴りつけたものの 「・・・・・・って言えたらいいんだがなぁ・・・・・・」 と情けなくため息をついた。 「気分転換に水でも被ってくるか」 ルークは着替えとタオルを取りだし、部屋を出て沐浴場に向かった。 先客の長い銀髪を見、反射的にルークは植木に身を隠した。 「・・・・・・れ?」 ルークはそっと植木から顔を覗かせた。 流れる銀髪に白い肌、しかしその体躯は青年の細くしなやかなものではなく、大柄で筋肉質なものだった。 (アーサーじゃなかった・・・・・・よかった) 「話は女王陛下から伺った」 不意にそう言葉を出され、ルークはヒィと叫びながら反射的に身構えた。 「どうした? お前もここで精神を鍛えに来たのではないのか?」 「え? あ、いや・・・その・・・・・・」 振り向いた顔は仏頂面ではあったが、敵意が籠もっているようなものではなく、無関心と言った方が合っている。だが、余りにも美しすぎた。 「あの、いいんですか? わ、私は女扱いされるのは嫌いですが、一応女で・・・・・・」 「女扱いされたくなければ堂々と入ってこい。私は女に見られようが何も気にはしない」 私が気にするんだけどな、と思いながらルークはそっと水に足を浸した。 「お前、名前は?」 「え? はい?」 「名前だ」 ルークは公爵に気圧されて裏返った声で答えた。 「ル、ルークです」 「ルーク? 男みたいな名前だな。自分でつけたのか?」 はい、とルークは答えた。 「本名はルーヌなんですけど、何か気に入らなくて」 「ルーヌ(月)は女の象徴だしな。人間界でも同じか」 そう言いながら公爵は夜空の月を眺めつつ、腰を下ろした。ルークもやや距離を置いて座り込む。 「無理はしないほうがいいんじゃないのか?」 ルークはよく聞こえなかったため、聞き直した。 「お前無理して男っぽく振る舞おうとして、結局女から抜け切れてない気がするが。それでも背伸びして男を演じたい訳でもあるのか?」 「・・・・・・流石エルフの公爵閣下。お見通しみたいですね」 「話を聞かせて欲しい。お前がここにいる訳も、どこに向かっていくのかも、男と認められてどう満足するのかも」 ルークが黙り込んでしまったために、公爵はふと顔を見やった。少女の目に流れる涙。突然ルークは涙を拭きながら啜り泣きを始めた。 「私、本当は怖い・・・・・・」 顔を真っ赤にしながら泣き崩れる少女の横にいながらも、公爵は無関心を装った。続きを促して。 「今日ここにくるまでに、エルフとニンフの凄惨な最後を見ました。すごく怖かったです。でも、みんなは、平気だって言ってて・・・・・・十歳の女の子ですら!」 「お前は剣を持ちながら何かを斬ったことはないのか?」 「あります。でも、人に似た姿のものをほとんど斬ったことはありません。あれを見て、自分は恐ろしいことをしてきたんだと、国を守るというのは時として恐ろしい仕事だったんだと思い知らされました」 公爵はじっと黙り、顔にかかってきた髪を掻き上げた。 「人に姿が似ているものは斬れない、か。思えばそれが正常かもな。我々はどんどん殺戮に対して感覚が麻痺してきているようだ」 「いつか自分もああなるのか、それとも人形のように自分を押し殺されて殺戮を繰り返すことになるのか・・・・・・。どっちもイヤだ」 「でもしなければならない。戦いに生きる者の運命だ。恐れをいいわけに首を取られるか、首を理由に人としての感情を押し殺すか。選べと言われて喜んで選ぶものはエルフにだっていやしない」 いつしか、ルークの涙が止んだ。 「私がここへ来たのは、もっと巨大な勢力と戦うためでした。始めこそはその使命感に胸が躍る思いで、平和だった国で、本格的にしたこともない戦いと勝利を夢に見てきました。そしていざ戦いに明け暮れるようになって、数々の魔物を倒してきて、その中には人に近い姿をしたものもいました。けど殆どアーサー―――一緒に来てる魔導士なんですけど―――とかがとどめを刺す役で。今思うと何も考えないでエリミネーターを斬ったことがあったっていうのも恐ろしいです」 「もっと巨大な勢力、か。成る程な。怖くなるのも無理はない。この国で一番の剣の使い手である私だって、戦場に出る前は戦いが怖いのだ」 「公爵閣下も?」 公爵は真顔で続けた。 「お前と同じだ。明日死ぬか、今日死ぬか、ああ、なんとか今日は死なずにすんだ。今度の戦いでは生きてるだろうか、それの繰り返しだ」 だが、と公爵はルークに目線を移した。 「戦っている間はそんなことを考えている余裕がない。いや、もしかしたら私の中の武人としてのプライドが思考を妨げているのかもしれない。理性を持って生まれた存在として、心を無くしたように忘れて、置き去りにして、そのようにして私は最強の剣豪となっているだけかもしれない。もし戦場で私が少しでも自分の気持ちを考えることがあれば、おそらくは・・・・・・」 「・・・・・・ここにいられないんですよね・・・・・・」 静寂が戻ってきた。いや、かすかに木の葉が風に揺れる音が聞こえている。また月を見上げながら公爵は言った。 「それでもお前は女を捨てるのか? 泣くほど辛い戦いのために」 「私は守るべきものが他にあります。その人はまあなよなよしてひ弱でちっとも男らしいとはいえないんですけど、芯はしっかりしてて、絶対弱音を吐かないんです。っていうか力はないくせに無鉄砲で、その上怒ると怖い上にしつこくて、腹の虫が治まるまで話も聞いてくれないんです。今も何か機嫌悪くて困ってるところなんですよ。どうも嫉妬深いところもあるみたいで・・・・・・」 ここでルークは喋りすぎたことに気づき、口をつぐんだ後で謝った。公爵はいきなり笑い出し、ルークは呆気にとられた。 「悪い。余りにも分かりやすすぎて、つい笑ってしまった。それほどその男を好いていると見える」 ルークは顔が真っ赤になった。公爵がいきなり立ち上がったのでルークは顔を背けた。 「それだけ守りたい男なら守ってやれ。女を捨ててでも。それに疲れたらまたここに来い」 そう言い残して公爵は体を拭き、服を着て出ていった。 「・・・・・・不思議な人だ」 ルークはそう独り言をいいながら、くすりと笑った。
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Laughter - ベールゼブブ (男性) - 2009年03月29日 (日) 13時14分 [901]
女王にはモデルがいたりするのはナイショです^^; っつーか言えね〜し ついでに言うと私プロットついでにキャラデザも描いてあるんですけど、公爵のデザインを見たときはっとしまして。 え? 某セ○ィロス? みたいな。 というわけで肌の色を浅黒くしようと思ったら え? 某ア○セム? それとも某ゼ○ナス? みたいな。 白めならセ○ィロス、黒めならア○セム(ゼ○ナス)。どっちをとったものかと思いましたがBGMが決め手となって白い方に決めました。 まあ、ネットにパクって書くぐらいで文句つけてくるのは某ネズミ本家ぐらいなもんでしょうからいいよね☆ っていうか後の奴らは某ネズミ本家のキャラだった−□−; あぶねー
いつになくルーヌがしおらしいです。アーサーがとてつもなく怖かったみたいです。恐妻家? です。なんか妻に言い返せない旦那と同じ事言ってますし。
ではレス返し
>天使様
慣れは怖いです。時としてルーヌみたく、一度気づいちゃうと後の祭りながら泣きたくなることもあると思われます。 ところが心理学的見地から申し上げますと、宝くじで一億円当てた人と、当たったことのない普通の人、家が貧しい人に幸福度を聞いて回ったところ、その評価はほとんど違いがないそうです。 例え一億円当たっても、月日が経てば平常通りの幸福度。 例え貧乏になっても月日が経てば幸福度は元通り。
幸せってなんだろ〜?
まあ、私もFFは4しかやったことないし、せいぜいKHでキャラ見たってぐらいで、実質何も知らないのと同じです。 と思ったら今日新品の状態で保管されてたキューブとクリスタルクロニクルを発掘してやってしまいました。そういえばあったんだ。忘れてた。
では☆
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