|
アークブレード - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年03月31日 (火) 16時17分 [902]
| |
金属同士がぶつかり合う音、怒声、血の匂い。そして砂塵が舞う。どうやら此処は戦場のようだ。
「笑止。貴様らは本当に弱いなぁ!」
「あぁ確かに弱いかも知れない。だが俺はまだ諦めた訳ではない。そしてこの心も負けてはいない!例えこの身が滅ぼうとな!」
「心ねぇ。死にかけの貴様らに何ができる!いい加減諦めるのだな。」 「おのれ、カタストロフ…」
「心配するな!我がこの世界を正しき方向へと導こうではないか!フハハハハハ……!」
━━
戦争……そして支配…人々の心はすさみ、混沌とした世の中になっていた。人々は血塗られた歴史を繰り返そうというのか……
"悪"という言葉があるとすればそれは人の心なのかも知れない…
そして今日も…
「オイ、女何処見て歩いているんだ!」
「あら、ごめんなさい。」 「馬鹿にしやがって!」 此処は街から外れた人通りが極めて少ないところである。夜という事もあって男と女のもめている声が辺りにより一層響き渡る。
「ぶつかったから謝ってるの!それだけで罪になるっておかしいじゃない!」 ピンクのワンピースに白いブーツにメイプル色の髪の女が迷彩色の軍服を着た大柄の軍人らしき男ともめていた。
「女、ぶつかっておいて『ごめんなさい』はないだろう。もっとちゃんとした謝り方があるだろう。俺の女にな…」 軍人の男の顔面に強烈な一撃が入った。しかも回し蹴りである。蹴りで男はよろめいた
「嘗めやがって…。この場で成敗してくれる!軍人の男は鞘から剣を抜いた。
「しつこいわね。しつこいと嫌われるよ!」 そう言うと女は槍を構え様子を伺った。
すると男が先に距離を詰め剣を振り下ろし斬りかかってきたが動きが大き過ぎる為かわされた。そして女は後ろ蹴りで側頭部を蹴り飛ばし、槍で連続で突き最後に蹴り飛ばした。
「うへへへ。もっと楽しもうぜ!カモーン!」 攻撃をかなり喰らっているのにも関わらず男の顔はニタニタしていた。
(何なのあいつ。狂っている…)
男は剣を鞘に収め、何も持たずに走り出した。
女は槍で薙ぎ払おうとしたが男の動きは先程とは比べものにならないくらい素早くなり、薙ぎ払いをかわし女の背後に回り込んだ。そして背中に強烈な衝撃が走り女が振り向いた時にはもう遅かった。 蹴りで5、6メートルは飛ばされたのか女は受け身を取れずその場に倒れた。
「へへへ。お楽しみタイムはこれからだな。」 男は相変わらずニタニタしながら女にじわじわと近付いていった。
(痛い。でも立たなきゃ何されるか想像したくもない。…立て!立つんだ私!)
彼女は上半身を起こし槍で構え迫り来る男を突いたが回避され腹部には命中しないものの脇腹に刺さった。
「があっ!女、なかなかやるな。ますます気に入ったぜ!」 男は脇腹から出血してるにも関わらず顔色一つ変えずに言った。
「アンタに気に入られてもちっとも嬉しくないわ!」 彼女は相変わらず怒っている。そして体勢を立て直した。
「そんな事言わずに遊ぼ…」
ニタついている男に今度こそ槍が心臓目掛けて深々と刺さり貫通し、鮮血が滝のように流れ出た。
「黙りなさい!」 彼女は怒りながら槍を男の体から抜き取り鮮血を払った。
「ゆ、許さん!許サン!許サン!許サン!…許サナイ…うがぁ!」 元々おかしいが更におかしくなった。 だがそれは最早異常な迄である。目玉がギョロっと飛び出し頭からは生えるはずのない角が生え、体も衣服が破れみるみるうちに膨大し皮膚の色も変色し爪は長く鋭いものとなった。
「な、何よこれ…」 彼女の顔が凍りつき、やっと発せられたのはこの一言だった。
普通心臓を一突きすれば人間なら絶命してしまうが男は絶命せず化け物へ姿を変えた事は恐怖そのものだろう。
「怖イダロウ?モウスグソノ恐怖カラ君ヲ解キ放トウ!」 化け物化した男は禍々しくそう言いながら腕を振り下ろしたが彼女はなんとか回避する事ができた。
「チッ!逃ゲ足ハ速インダネ…」 そして更に連続で攻撃を仕掛けてきた。当たれば確実に次はない。 彼女は必死に回避した。
「ハァ、ハァ…」 必死に回避したせいか息が上がった。
「ジャ、鬼ゴッコデ遊ボウカ?俺ガ鬼デ君ガ逃ゲル。ソレデイイネ?」 「ハァ、ハァ、い、いいわよ。」 彼女は逃げたくてしょうがない。一分一秒でもその場から離れたかったので逃げれる為の口実なら何でも良かった。だから承諾したのである。
「1……2……」 化け物化した男は数え始めた。意外にも数えるのが遅いようである。彼女は出せる限りの力を振り絞り駆け出した。
(そうよ。これは夢なんだ。夢なら早く覚めて)彼女はそう願いつつ走る。
――ゴツン
『痛っ!』 彼女は逃げる事で精一杯だったので気が付かないうちに何かに当たった。しかも声がしたから回り込まれたと思ったがいきなり現れたのは別の男だった。 彼の顔からして歳は二十くらいだろうか、身の丈程もある剣を持ち歩き黒い軍服に身を包み髪の色はダークブラウンと言ったところである。
「ぶつかっておいて何もないのか…」 ぶつかった男から発せられた第一声がそれである。
「う、嘘でしょ…」 彼女の顔が再び凍りついた。無理もない。先程の化け物化した男も同じ様な台詞を吐いていたから彼も仲間だと思ったのだろう。
「すまない。冗談のつもりだったんだ。許してくれ。」
「ハァ?アンタこんな時によくそんな冗談言えたわね!」
「…来る。」 彼女の発言はスルーされ、迫り来る何かの気配を察し剣を抜いた。
そして…
「見〜ツ…」 化け物化した男が驚かそうとしたがいきなり斬りつけられ逆に驚かされる形となった。
「オヤ、大尉様ジャナイデスカ。コンナ夜更ケに彼女トデートデスカ。ザケヤガッテ!」 「フッ…孃ちゃんは下がっていろ。俺がやる…」
彼女は「アンタに命令されなくても分かっているわよ。」と言いたげに口を尖らせるも彼の言う通り現在いる場所から少し離れた所に移動した。
大尉と呼ばれた男はかなり間合いを取り何もないところでいきなり剣を振り下ろした。 一見無意味に見えるが遠距離から剣圧を飛ばしたのである。
化け物男は避けようとしたが左腕を掠めた。 掠めたとは言え腕からはかなり出血しているようだ。
「まだだ。」 大尉と呼ばれた男は立て続けに剣圧を連続で飛ばし化け物男が怯んでいるところに更に斬りつけ再び間合いを取った。
「グルルル…ヤツザキ…」化け物男はそう呟くと助走をつけて走り出した。
そして大尉と呼ばれた男は更に間合いを取りつつ何かを呟き詠唱し始めた。
化け物男は鮮血を滴らせながら大尉との距離をどんどん縮めて行く。
だが大尉と呼ばれた男は相変わらず何かを呟いている。
(駄目、もう間に合わない。) 後数センチというところ迄化け物男が大尉に迫っている。彼女は思わず手で目を覆ってしまった。
「大いなる風よ、裁きを!」 大尉は手を突き出しそう言い放つと化け物男の周囲から無数の真空の刃が発生し動きを捉え全身を切り刻む。其処に大尉が追い討ちをかけるかのように斬りつけ、両腕を斬り落とした。切り口からは鮮血が凄い勢いで吹き出しまるで噴水の様だ。
「…ウ、ウ、腕返セ…」 両腕を斬り落とされ表情が苦痛で歪んでいるのが息遣いなどで更に露呈されているのは言うまでない。
「嫌だね。それより遊びはこの程度にしておくか。」 大尉は不敵な笑みを浮かべ距離を詰めて行く。化け物男も脚を振り上げ回し蹴りを放つも回避されると同時に片方の脚を斬り落とされた。座り込み恨めしそうな顔で大尉を睨んでいる。そして傍らには斬り落とされた両腕と片足が虚しく転がっていた。
「大尉ハ何故ソンナニ強インダ」
「お前には解らないだろうが失ったものがあってそれによって心に大きな穴が開いた。そして俺はソルジャーになって、"強くなりたい"、"何者にも負けない力が欲しい"と願い闘い続けたからだと思う。」
「ソウカ。コンナ体ニナッテモ勝テナイノハ、ソウ言ウ事ダッタノカ…」
「フッ!死ぬ前に言いたい事はそれだけか。」大尉は剣の切っ先を化け物男の喉元に突き付け言い放った。
「イヤ、モウ思イ残ス事ナドナイ。サァ早ク殺ッテクレ…」
「…分かった。」 化け物男はそっと眼を閉じた。そして大尉はついに剣で頭部を斬り落とした。最後に火を放ちその場を後にした。
━━━
「待たせたな孃ちゃん。」
「も、もう終わり?」
「あぁ。彼奴は元々雑魚だったから楽勝だった。」
「…アンタよくあんな事平気でできるわね。」彼女は声のトーンを落とし言った。
「何故ああ言う風になったかは知らないがああなった人間を元に戻す事など今の化学や医学では不可能だ。だから俺達ソルジャーが見つけては倒してああするしかないんだ…。俺もこんな事は初めてではないが決して気味のいいものではない。」
「…そう。」
「民間人は首を挟むな。いいな?」 大尉は念を押すようにそう言った。
「そうはいかないわ。私はこんな世界は破壊したいの!だからこんな風にした彼奴らを許さない。」
彼奴らとは世界全体を支配しているカメリカと言う全てを力で捩じ伏せる超軍事国家の事である。兵士はありとあらゆる国に配置され常駐している。それだけならまだいいが支配している事をいい事に種々な卑劣な事を好き放題やりのさばっている。そして此処レギュウムもそうである。
「だったら俺よりも強くなるんだな。」
「アンタよりなんて絶ッ対無理。ってかさぁさっきのあの鎌鼬みたいなのなんて出せないし。何なのあれ。」 「あぁ魔術の事か。古代人が編み出した術の一つだな。だが故に戦争で使われ大量の人間が死んだ。そして生き残った人々は自分の有り余る力を封じ込め、平穏に生きる道を選び現在に至る。だから魔術を使っていた者の血を引いているのならば過酷な修行だが封印を解き魔術が使えるようになるかも知れないな。 そして俺も使えるようになったその一人だ。」 「そうなの。でも修行はまた今度にしておくわ。」
「そうか。それは残念だ。お前ならかなり強くなれる…。」 大尉は小さく溜め息を吐き本当に残念そうな顔をしていた。
「そう言えばまだ名前聞いていなかったわね。私はクレア=カトレーン、ヨロシク。貴方は。」
「俺は陸軍大尉アレン=エクスターだ。」
「へぇ、兵士なんだ。だからあんなに強いのか。」 彼女は納得しているようだ。
「最初から強い奴なんていない。俺は無くした何かを探して戦い続けているが一向に見つからない。そして何を探すのかも分からなくなるくらい充てもなく戦い続けた結果がこれだ…」
「じゃ、戦いを止めたらどうなるのよ。」
「…分からない。けどどんな事があっても探さないといけないものなんだ。」
「アンタさぁ、そんなに急いで探さなくても、もっとじっくりと探せばいんじゃないの。」 彼女はアレンを諭すかのように言った。
「じっくりな。分かった。」
「それで何でアンタは助けに来たの?」
「戦闘で何かを思い出したら怖いと思ったけど、君を助けたいって思いの方が強かったみたいだ。それに自分のせいで誰かが傷つくのは耐えられないからな。」
「ちょっと、助けに来るならもっと早く来なさいよ!」 アレンは助けに来たのに何故怒られるんだと思いつつ小さく溜め息を吐いた。
「けど、次は助けに来れないかも知れない。 精々カメリカ軍の兵士とぶつかるんじゃないぞ。じゃあな!」 アレンは踵を返し去って行った。
「ちょ、ちょっと待ちなさい…って聞いてないか。」 クレアはそう呟くと彼の姿はもう小さくなっていた…。そして彼女は帰路に就いた。
|
|
どうも - ベールゼブブ (男性) - 2009年03月31日 (火) 18時49分 [903]
初めまして☆ じっくり読ませて戴きました。ハイ。 世界観が引きつけられますね。これからどうなるのか非常に楽しみです。
これからもよろしくお願いしますね〜♪
それでは☆
|
|
どうも、初めまして^^ - 翼無き天使 (男性) - 2009年04月09日 (木) 22時59分 [907]
ここでは翼無き天使と名乗ってます。 よろしくお願いします^^
楽しく読ませていただきました。 続きを期待します^^
|
|