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時を超えて… - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月16日 (日) 13時24分 [1025]
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太古の昔突如として現れた「それ」は空から降ってきたとも元々住んでいた種族とも言われている。「それ」は自らを魔王と名乗り、魔王と呼ばれる存在が人々を支配し恐怖に陥れていました。勇気ある戦士達は果敢にも挑むも誰一人として生きて戻って来た者は居なかったと言う。やがて五人の若者が現れ魔王に挑みました。魔王の力は若者達を苦しめたが彼らは最後の力を振り絞り辛うじて封印する事しか出来なかった。しかしその封印も遠い未来で一人のある魔導士によって解かれようとしていた…
此所は塔なのだろうかローブを着て頭からスッポリとフードを被った魔導士らしき人物が入り口で何かを呟くと重い扉がそれに反応して開いた。扉が開くと中は漆黒の闇に包まれていて其所には奇妙なレリーフが施された壁と部屋の真ん中には厳つい魔物の像が安置されていてよく見ると像の土台の下部に何かを嵌め込む窪みがある。
「確か書の伝承によればこの像の何処かに窪みがあって其所にこのペンダントを嵌めるんだな…」 魔導士は漆黒の暗闇の中を手探りで窪みを探した。
「…あった、此だな。」 魔導士はそう言いながら手探りで見つけた窪みとペンダントの形状を確認し、ペンダントを窪みに嵌め込んだ。すると嵌めたペンダントが赤く光り、光が大きくなり閃光の如く迸りまるで道を示すかの様である。赤い光は階段の遥か上までを照らしていた。
「この光、此を辿って行けばいいのか…」 魔導士は赤い光に目を投げそう言うと階段を登り始めた。階段は螺旋状になっており登っても登っても目的地が見えて来ないし自分が何処まで登ったのかすら分からなくなる程の階段である。 大分汗をかきへとへとになりながら長い長い螺旋階段を登りきり一つの扉が眼前に飛び込んで来た。余りにも疲れていて幻影を見ているのかと錯覚を引き起こしてしまいそうだが一歩ずつゆっくりと近付き扉に触れる。扉は固く重く冷たいと言う感覚が指先を伝って感じる事が出来、扉が本物である事が証明されたのである。
「扉が開かん。此所にも窪みか…」 魔導士は面倒臭そうにペンダントを窪みに嵌め込むと扉が開き中へと進んで行った。中へ進むと翼の生えた人間の様な像があり、まるで生きているかの様な姿勢で今にも動き出しそうな程の躍動感溢れる姿勢であった。
「おぉ、これがかの時代に生きたと言われている『魔王』か…!」 魔導士は思わず興奮し声を上げた。
「いかんいかん。私とした事が…」 魔導士は冷静さを取り戻し像を眺めると台座の部分に何か字が彫られているが此ばかりは触っただけでは何て書いてあるのか分からないので何か呪文の様な言葉を唱えると掌が白く光り翳すと闇を照らし其所に彫り込まれた字を読む事が出来た。
そこにはこう書かれていた。
「我々五人は魔王シャルゼートを完全に倒す事は出来なかった。しかし最期の力を振り絞り力を合わせて奴を石の中に封じ込めた。我々五人の子孫が封印の鍵を持つ限りシャルゼートの封印が解かれる事は未来永劫訪れる事は無いだろう。」
「っ!此所まで来て無駄骨とは…」 魔導士は小さく舌打ちをするとそう呟いた。
(我の封印を解かんとする者よ、ペンダントを高く掲げよ!) 突如として何者かの声が魔導士の頭の中に直接語りかけて来た。
「声?誰もいないのに頭の中に直接語りかけて来た…それにペンダントを高く掲げろって言っていたな。もしやシャルゼート様ですか。今、私が自由にしましょう!全知全能の魔神よ、今此所に我が主を永き眠りから覚ませ!@%*&※∽!」 魔導士はペンダントを高く掲げ何かの呪文を呟いた。すると石像の目が赤く光だし重い口を開いた。
「人の子よ、よくぞ我を永き眠りから覚ました。しかし我は血で封印されている故にそれだけでは身動きが取れない。そう忌まわしき五人の人間の子孫を抹殺して血を絶たない限り封印は完全に解けない。我が僕の封印は解かれているから其処ら辺に転がっているであろう水晶玉を使い自分の力にあった魔物を呼び出し奴等の抹殺に役立てるといい。先ず手始めにレンダーと言う北西の村に住む青年から刈るといいだろう。そしてこの呪文を汝に伝授しよう。」 青白い光が魔導士に降り注ぐ。
「おお!素晴らしい、力がどんどん湧いて来るぞ。」 「汝はそれで炎球を放つメラミの呪文と瞬時に記憶している場所に行けるルーラの呪文を使う事が出来る。」 「ありがたき幸せ。」 魔導士はそう言うと足元に転がる水晶玉を拾い上げてルーラの呪文を使い北西の村へ飛んだ。どうやら北西の村は彼の知る土地の様だ。
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そしてその頃北西の村では…
木々に囲まれていて大きな山の麓にある豊かな自然に囲まれた温な何処にでもある村だが誰一人として惨劇が起こる事等知らずに今日も平穏に過ごしていた。
「アル!アルグレイス!」 「母さんどうしたの。」 アルグレイスと呼ばれた青年は年は17、8くらいだろうか髪と目の色は茶色く綿で作られたシャツとズボンを着ていてサンダルを履いていて本当にラフな村人の服装と言える。そして彼は母親に呼ばれた様だ。
「アル、レンダーの家に薬草を届けて来てくれるかい。アタシゃ手が離せないから頼むよ!」 「分かったよ。」 アルは母親から薬草の入っている布袋を受け取り家を後にした。家を出てレンダーの家は近所だから直ぐに着いてしまう様な距離である。アルは思った、こんなに近いなら自分で行けばいいのにと。そして歩いていると近所のおじさんとすれ違った。
「おはようございます。」 「やぁ、おはよう、アル。相変わらず気の抜けた挨拶だな。ま、それの方がアルらしいけどな。って忘れる所だった、そう言えば今、怪しいローブを着た魔導士風の男が来ていて何かを探しているみたいだったぞ。村の者は怖がって誰も近付かないしアルもレンダーに薬草を届けに行くなら気を付けなさい。」 「分かりました。」 アルは彼の言っている事が的中するとは知らずにレンダーの家の前まで来ていた。ドアをノックしようとしたが後ろから聞き覚えのない不気味な声がし、油の差してないからくり人形の如く首をゆっくりと後ろに向けた。
「すまないがレンダーの家は何処か教えてくれるかな。」 ローブを着た魔導士風の男が不気味な声で尋ねた。
「こ、この家がそ、そうです。」 アルは教えてはいけないような気もしたが絞る様な声で魔導士に教えてしまった。
「そうかい。でも君の方が先みたいだから先に用事を済ませて来ても構わないよ。」 「あ、ありがとうございます。」 アルはそう言うとドアをノックすると返事がありドアが開き中へと入った。
「レンダー、薬草持って来たよ。」 先程魔導士と話した時と違い彼は落ち着いた話し方でそう言った。
「いゃあ毎回悪いな。」 「レンダーとは幼馴染みなんだから気にするなよ。それに森の奥に棲む猪を狩る事が出来るのはレンダーしかいないし。」 森の奥に棲む猪は狂暴だが肉は美味いらしく村で肉と言えば猪と言った所である。だから定期的に狩りに行くが常に危険が隣り合わせであるから彼には定期的に薬草が届けられるのである。
「そんな事無いって。お前だってもっと鍛練を積めば出来るって。 「そうかな…」 アルは自信が無さそうにそう言った。
「ああ、出来るとも!お前の頼り無い瞳の奥底から強い闘志を感じる!」 「そ、そうかい。」 「そんな顔するなよ。魔王を封じた英雄の子孫が…」 会話の途中だが遮る様にドアが開けられ先程の魔導士がずかずかと上がり込んできた。
「やはり魔王様の封印を司る英雄の子孫レンダーは此所に居たか…」 「お前誰だよ!」 「教えるまでも無い!貴様は此所で■ぬのだからな。」「ヘッ!細身の魔導士に何が出来る。外に出て相手してやる!さぁ来い!」 「良かろう。その大言壮語に免じて相手してやろう。だが後悔はするなよ…」 二人は外に出て向かい会う様に立っている。 僕ならそんな事言えない。彼奴はどんな奴も恐れない態度で接する事が出来るのは何故だと怯えながらそう思い目を二人の方から反らした。
「おや?友達が困っているのに助け無いとは随分薄情だな。」 「いや彼奴は俺を信じているんだ!だから負けやしない!」 レンダーはそう言いながら斬りかかったが遅かった。 「メラミ!」 レンダーが斬りかかるよりもメラミの呪文の方が早く、右足にメラミの呪文が命中し怯んでいる所にもう一発飛んで来た。痛みのあまりに声も出ない様だ。
「もう終わりか。先程までの威勢はどうした?」 まだ息はあるが虫の息状態のレンダーを魔導士が持っている杖で突いた。 ど、どうしよう。このままじゃレンダーが■んじゃう。はぁ、でも怖いな…
「や、や、止めろ。」 声にもならない声でアルは声を発したが魔導士には聞こえていなくまだレンダーを突いている。
「や、止めろ!」 アルは勇気を振り絞りやっと出たのはこの一言だったが魔導士を止めるには充分だった。
「止めろだと?薄情な裏切り者が。だがその勇気に免じてお前も友達と一緒に天国へ逝かせてやろう。
「…来…ちゃ…駄…目……だ…アルグ……」 「ふん、虫の息だと言うのにそれでも友達を庇うと言うのか。そう言うの見ていると吐き気がするんだよ!」魔導士はそう言うとレンダーを蹴り飛ばし地面に転がした。
「ア…ル……逃…げ……」 「しぶとい奴だ。さっさと■ぇ!メラミ!」 魔導士は先程よりも強い魔力でメラミの呪文を唱えた。アルは走ったが間に合わずバスケットボールの二回り程大きな火球は虫の息のレンダーを直撃しレンダーは悶え苦しみ断末魔を上げるとピクリとも動かなくなった。
「…許さない。お前だけは絶対に許さない!ああ!」 アルは恐怖で堪らなかったが彼の中で何かが切れた。体は自然に檜の棒を手に取り魔導士の方に走り出していた。
「怒りは人を変えると言うのか。ん、今何かを閃いた気がするな…。よし、此だ。」 魔導士は何かを閃くと何かを詠唱し始めた。アルは何が起こるとも知らずにひたすら向かって行く。
「メラストーム!」 拳大の火球が数発飛ばされ、アルは一、二発は回避出来たが残りは小手先や肩等に命中したが気にもせずに向かって行き檜の棒で殴り掛かったが杖で受け止められそのまま弾かれ尻餅をつき後方に倒れた。
「所詮、餓鬼は餓鬼だ。それ位で倒せるとでも思ったか。分からないなら教えてやろう大人の常識と言うものをな!」 怒りに満ちた魔導士の指先に火の玉が浮かび次第に大きくなって行く。
(させない!)
急に何処からともなく声がしたが村人のものではなく確実に聞き覚えのない声である。そして次の瞬間、空間がパカッと開きぐにゃぐにゃ蠢き、収まると盾だけが飛び出し、徐々に人の姿を現した。完全に姿を現すと空間の切れ目は閉じ出て来た人物は二十代前半だろうか黒髪で白金に輝く鎧と盾と剣を身に付けていて突如としてアルの前に立ち塞がり盾を使いメラミの呪文を受け止めた。
「ふぅ、間に合った。所で君、大丈夫かい?」 「は、はい…」 アルは何が何だか解らず頭の中が整理出来ずに取り敢えず返事をする事で精一杯であった。
「小癪な。何人増えようとも焦がしてくれる。って、あれ?」 「おや、慌てているみたいだがどうかしたのかい?」 「き、貴様何時の間にマホトーンを…」 「いや、今さっきだけど。」 「畜生!なら此でどうだ。出でよ僕!シャルゼート様の邪魔をする者に裁きを!」 魔導士は水晶玉を高く掲げそう言うと水晶玉が光り、中から一匹の魔物が出て来たが其は銀色に輝く体毛、黒い羽根、猿の様な体型をした魔物である。
(シルバーデビルか…)
歴戦の強者である黒髪の男には見た目でどう言う敵なのかを見分ける事が出来るようだ。
「この魔物は君が戦っていいような相手では無い!さぁ、早く逃げろ!」
「そうはさせるか。シルバーデビルよ、あの餓鬼を狙え!」 魔導士はアルの方を指差しシルバーデビルにそう命じた。すると軽い身のこなしで逃げようとしているアル目掛けて飛び掛かろうとしていた。
「させるか!」 黒髪の男が盾で攻撃を受け止め、剣で反撃しようとしたがシルバーデビルは回避し距離を取った。
(そう言えば魔導士は大人しいな。シルバーデビルも厄介だがあの魔導士も油断できないな…) 黒髪の男はちらっと見渡したが魔導士の姿はなく気配も消えていた。そしてシルバーデビルは暫く様子を伺っていたが突然腕を突き出すと掌が微かに光る。
(いかん、ベギラマで焼き尽すつもりか…)
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おおっ - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月16日 (日) 15時49分 [1028]
魔王復活フラグ。 続きが楽しみですね^^ シルバーデビルとは何者なんでしょう。
では
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わお☆ - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月16日 (日) 16時26分 [1030]
新しいやつですね☆ しかもオリドラ!!
続きを楽しみにしています。
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シルバーデビルに関して - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月18日 (火) 16時40分 [1035]
皆さん感想ありがとうございます。
シルバーデビルに関してですが此はドラクエ2とドラクエ5に実在する猿みたいな悪魔みたいな魔物です。
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時を超えて - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月18日 (火) 16時45分 [1036]
(いかん、ベギラマで焼き尽すつもりか…)
黒髪の男はとっさにそう判断すると掌から蒼白い光が発せられシルバーデビルに放たれた。すると蒼白い光はシルバーデビルを締め付け、紋章の様なものが浮かび上がる。
「キキー!」 シルバーデビルは呪文を発動させようとしたがぷすっと言う虚しい音だけがして不発に終わった。其所に空かさず黒髪の男が斬り掛かり回避しようとしたが避けきれずに腕をかすった。
(あっちゃあ、逃げろって言ったのに未だ近くに居るとは…) 黒髪の男は手の甲を額に押し付け、アルの方に一瞬、目をやったがシルバーデビルはその一瞬を逃さなかった。シルバーデビルはその一瞬の油断を突き、飛び掛かって来たが黒髪の男は気付いているのか気付いていないのか一応剣を握っている腕は剣を振り回し、視線はアルに注がれていた。
(あんなに熟練した人でも手こずるなんて、僕にもっと力があればなぁ…)
「いいかい!こいつは私が何とかするから、君は安全な所に逃げるんだ!」 男は相変わらず視線だけアルの方を向きながらシルバーデビルの攻撃を受け止めているがアルは少し離れた所にいて首を横に振っていた。
(ありゃあ、動かないな。「あれ」を試させるか…)
黒髪の男にはある考えが脳裏を過ったのか盾を地面に一旦置き、空いた腕は腰に掛かっている袋を掴みアルの方目掛けて投げると袋はアルの足元まで少しと言う所で止まった。
(…袋?) 何故このタイミングで袋を自分の所へ投げられたか分からずアルは取り敢えず袋を開け中身を取り出す事にした。
(い、石…。投げて攻撃しろって事なのかな。でも一個しか無いから慎重に使わなきゃ。)
袋から取り出された石は拳一つ分位の大きさでアルは石を握りしめ投げるタイミングを伺っていた。
(彼は瞳の奥から得体の知れない力を感じると思ったから使わせたがやはり彼も不適合者だったか…)
黒髪の男はアルの方を一瞬見て視線をシルバーデビルの方へ戻し心の中は溜め息をついていた。
(僕は友達を助ける事が出来なかったけどあの人や村の人を助けたい。神様、僕に力を…)
アルはそう思いつつ今だ!と言わんばかりに石を投げようとしたが手に何か違和感を感じ、振り上げようとしている腕に視線をやるとその手には石ではなく弓が握られていた。
(ゆ、弓なんて何時の間に持っていたんだろう。さっきまで石を握っていたのに…。けど弓だったらお祖父さんに使い方を教わった事があるから何とかなるかもしれないな…)
アルは弓に矢をセットし集中し狙いを定め矢を引き絞り力強く矢を射る事が出来、シルバーデビルの右足に命中した。シルバーデビルは苦しそうな表情を浮かべ矢を抜き、矢の飛んで来た方を向こうとしたが腹部を激しく斬りつけられ、鮮やかな赤色の血液ではなく、どす黒い血が流れ滴り落ちていた。
(ん?今、奴の足に刺さっていたのは矢だよな…。しかし誰がやったんだ。)
黒髪の男は辺りを見渡したがアル以外の村人は皆家の中にいるから村人がやったとは考え難い。そしてもう一度アルの方に目をやると確かに弓を持っていた。
(弓!?彼はさっきまで丸腰だったのに急に弓を持っているなんて有り得ないよな。もしや、彼こそが「あれ」の適合者で「あれ」を弓に変化させて奴の足に矢を命中させたと言うのであれば説明がつく。)
シルバーデビルは右足の痛みが原因で動きが鈍っていて攻撃を仕掛けても黒髪の男に回避されその流れで再び斬りつけられた。
(はぁ、はぁ、何とか当たった…。一発しか無かったからこれで良かった…って、さっき撃ったからもう無い筈なのに矢がある!?きっとこれはあの人を助けろって言う神様のメッセージに違いない!)
アルはそう思い、再び狙いを定め矢を引き絞り矢を射る。矢は見事にシルバーデビルの背中に刺さり一瞬、苦しそうな表情を浮かべるも空かさず黒髪の男が斬りつけ表情を元に戻す隙すら与えず更に連続で斬りつけ次に斬り上げ、斬り降ろした。すると鳴き声を上げ前方に倒れうつ伏せの状態となった。
(す、凄い…)
アルは駆け寄ろうとしたが…
「近寄るな!」 黒髪の男は凄い剣幕でそう言うとアルは戸惑いながら後ろに下がった。そう、それはシルバーデビルは未だ息があり虫の息に近いが危険な事には変わり無いと言う事である。黒髪の男は剣で大きく振り被って力強く斬り降ろし、シルバーデビルは断末魔を上げ仰向けに倒れるとピクリとも動かなくなった。
「ふぅ、やったか…」 黒髪の男はそう言うと剣に付いた血を払い、剣を鞘に収めた。そしてアルの方へ近付いて行く。
「えっ…」 「君、名前は?」 「アルグレイスです。」 「そうか。私はグロウだ、宜しく。」 「あの、助けてくれて有り難うございます」 アルは深々と頭を下げそう言った。
「大したこと事はしていない。当たり前の事をしたまでだよ。」 「凄いですね。どうしたらそんなに強くなれるんですか。」 「…黒焦げになった彼はどうしたんだい?」 アルが質問しているのにグロウは横たわっているレンダーの亡骸に目を投げ逆に質問をした。
「怯えている僕を魔導士から庇ってくれました。けど、僕のせいで…」 「そうか。いや責めたくて言ってる訳じゃないんだ。彼はどうして亡くなったのか真相が知りたかっただけなんだ。けれども君を庇って死んで君が生き延びる事が出来たのなら彼は後悔していないと思うよ。」 彼はアルを元気付けようとしてそう言ったがアルは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「厳しい事を言うかも知れないがそんな顔をしていたら亡くなった友人も浮かばれないよ。さぁ、彼の墓を作り弔おう…」 グロウもアルにそう言ったが彼の表情もまた暗くなっていた。
「はい…」
そしてアルとグロウはレンダーの家の横に穴を掘る事にしたが二人共何も喋らずに無心で穴を掘りレンダーの亡骸を掘った穴の中に寝かせた。
「アルグレイス、最後に別れの言葉をかけてあげるといい。」 「はい。…今までありがとう、そしてさようなら…。」 「…では土を被すとしよう。」 「はい。」 グロウは相変わらず暗い顔をし、アルは細く光る涙をたらりと流しながら土を被せて行く。最後にその上に盛り土を盛ってレンダーの剣を其所に突き立てた。
「この村に神父は居るか?」 「いいえ。」 「全知全能の神よ、この者に安らかな眠りを、そして此所に冥福を願わん事を。」 グロウは突然跪き祈りを捧げた。
「今のは何をしていたんですか?」 「いや、この村には神父がいないと言うから代わりに私の国の作法で祈りを捧げたのだがやはりおかしいかな。」 「おかしいだなんて、僕は神父さんとかが祈りを捧げる所を見た事が無いので驚きました。」 「そうか、私に付いて行くと言うのならもっと知らないものに出逢える。しかしそれは荊の道になるけれど君が本当に強くなりたいと思えば止めはしないがどうする?」 「…強くなりたいです。」 「なら決まりだ。さぁ行こうかと言いたい所だが君にも親御さんがいるだろう。親御さんに心配をかけてはいけないから私も同行するから相談しに行こう。」 「はい。」 アルは自分の家の方へ向かって歩き出し、グロウもそれに付いて行った。
「あの、この石お返しします。」 「ああ、此かい。此は自分から持ち主を決める変わった石で、先程の君を見る限りでは君を持ち主と断定したようだしあげるよ。」 「ありがとうございます。けれども持ち主を決めるとはどう言う事なんですか?」 「そいつはただの石ころではなく『受念石』と言う希少価値のある石で書いて字の如く持ち主と決めた相手の念を受けて状況に応じて武器や盾に変化する。逆に持ち主と認めない相手が持っていても変化は起きる事なくただの石ころにしかならない。つまり君は石に認められたと言う事だ。」 「石に認められた…微妙ですね。ところでグロウさんはこの石を使えるんですか?」 「いや、恥ずかしい話だが私は持ち主ではないようだ。」 グロウは思わず苦笑いをした。
「あの、着きました。」 「そうかい。」 アルは家のドアを静かに開け先に入り「ただいま」と言うと後ろからそっとグロウが入りドアを閉めた。
「おかえり。やけに遅かったけどどうしたん…ってその後ろの方はどうしたんだい?」 「…命の恩人。」 アルは口を開きボソッとそう言った。
「命の恩人って、何かあったのかい?」 アルの母親はアルに尋ねたがアルは下を向き黙っていた。
「その先は私が話しましょう。」 グロウは口を開きそう言った。
「立ち話も難ですからどうぞお座り下さい。」 アルの母親は二人に椅子に座るよう促した。二人は椅子に座り、グロウが話し始めた。
「アル君は友人の家に行きその帰りに魔導士風の男に襲われたみたいですがその友人の方が最後の最後まで庇ってお亡くなりになりました。しかし魔導士風の男は彼を殺害するだけでは飽き足らずにアル君を再び襲おうとしていたので私が急いで駆け付けたと言う訳です。」 「そうだったのかい。」 「それでアル君は私にこう漏らしていました。『強くなりたい』と。」 「アル、アンタ、その方にそんな事言ったのかい。」 「うん…」 「アル君は今は悲しみに暮れていますがその悲しみを乗り越えて強くなると言う意思表示をしてくれました。其所で相談なんですが…」 グロウが話しているがアルは突然口を開き言った。
「グロウさん、自分で言いたいのでいいですか?」 「あ、ああ…」 「母さん、僕はレンダーが死んだ時に彼奴の分まで強くなりたいって思ったんだ。そしてグロウさんに助けてもらった時にこの人に付いて行きたいと思ったんだ。だから旅に出たいんだ!」
「とそう言う訳なんでアル君を私に預けさせては頂けないでしょうか。」 「…構いませんよ。それにアル、アンタは本当の子じゃないんだ、何処へなりと好きな所へお行き!」 アルの母親はそう言うと近くにあった布袋をアルの方へやった。アルが袋の中を覗くと幾つかの薬草と冒険者が着るような服とブーツと銅製の剣が入っていた。 この中身からして予め用意されていた感じがしアルは母親が本心であんな事を言った訳じゃないと感じた。そして側にいたグロウも何か言いたげだったが淋しそうに遠くを見つめているアルの母親を見てあれは本心ではないと感じ何も言えなかった。
「行きましょう。」 袋に入れてあった服やブーツを着用し着替え終わりグロウにそう言った。
「ああ。」 二人はそのまま何も言わずに家を後にした。
「アル君何も言わずに出てきたがいいのかい?」 「はい、かえって口を開いて何か言えば名残惜しくなるだけですので…」 アルは強がってそう言ったが無理をしているなとグロウは感じた。
「そうかい。」 「ところでグロウさんってさっき突然現れて助けてくれましたが一体どう言う事か説明していただけますか?」 「君の母親にはああ嘘を言ったが実は私は神創歴3600年の世界からこの世界に不良品のからくり魔導士を追う為に来たのだが君が奴に襲われているのを見て焦ったよ。」 「し、神創歴3600年!?今は2500年ですよ。冗談を言うならもっと上手い冗談を言って下さいよ。」 「ああやはりな。しかし千年後には文明が発達して戦争の為にいろんなタイプのからくり兵が生産される。話を戻せばその為に造られた魔導士タイプの一体が暴走し時空の壁を超えてこの世界に紛れ込んだようだが私も奴が破った時空の壁を超えて此処まで来たと言う訳だ。」 アルはには俄に信じがたい話だがグロウの真剣な顔からは嘘は一切感じられ無かった。
「じゃさっきの魔導士もからくりですか!?」 「そうだ。しかもシャルゼートとか呟いていた。私の時代にはそんな単語は一切無かったから不思議に思ったのだがもしかしてとは思うのだがアル君は聞いた事あるかい?」 「はい、レンダーが自慢の様に『俺は魔王シャルゼートを封印した英雄の子孫』だと言っていたのを覚えています。」 「魔王シャルゼート、そして其を封印した英雄、暴走したからくり魔導士か…」 「それらがどうかしましたか?」 「いや、何か繋がりそうだが今一つ何かが足りない気がする。アル君、私はこの時代に知らない事が沢山ありそうだ。知る限りの事でいいからその時は頼むよ。」 「はい!喜んで。」
二人は村を出てまだ見ぬ地目指して歩き出す…
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