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こんな白雪姫に王子はいない - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 11時46分 [1039]
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「今度こそ白雪姫はのたれ死んだかしら」 女王はまた鏡に向かった。鏡の中の青年はげんなりした顔で現れた。 「また何か用ですか?」 「白雪姫が今度こそ死んだかどうか見に来たのよ」 鏡はじっと明後日の方を見て答えた。 「あ〜、何か小人の家で匿われてるみたいですね」 「なんですってェェ!? をのれ、なんて強かな女よ!! こうなったら実力行使よ!!」 女王はまた玉座の階段を開け、高笑いをしながら降りていった。今度は左側の部屋を開けると、そこには大きな釜と薬品棚。女王はそっと戸棚を開け、はっとした。 「そういえば・・・ここの奥にケーキを置いたんだったわね・・・。あら!! 今日が消費期限!? 早く食べなきゃ!!」 女王はケーキを引っぱり出し、ティーを煎れた。 「あら、そういえばここにシ○トレ○ゼのクッキーが・・・。これ安物の割においしいのよねぇ」 と女王は実験室で優雅にティータイムをすごし、更にクッキーを一囓り。ケーキとティーを平らげたところでボーっと釜を眺め始めた。 「そう言えば・・・あたくしは何しにここへ来たんだったかしら?」 しばらく釜を眺めたあとで女王ははっと気づいた。 「そうだったわ!! 白雪姫を殺す毒を作らないと!! えっと・・・」 女王は薬品棚を漁り初め、いくつか瓶を取りだし釜に入れてぐつぐつと煮えたぎらせた。 「オーフォルトゥナ ヴェルート ルーナ! スタトゥ ヴァリアビリス!!」 女王が呪文を唱えると、女王の姿は醜い老婆に変わっていった。 「あとはこれをリンゴに塗って・・・できたわ!! 今に見ておれ白雪姫!! イ〜ッヒッヒッヒ!!」 その様子を眺めながら鏡はぼそっと漏らした。 「あ〜あ。とうとう美貌が落ちたな。顔だけはまだよかったのに・・・」
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こんな白雪姫に王子はいなくていい - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 12時00分 [1040]
「それじゃ出かけてくるから、怪しい人が来ても中に入れちゃダメだよ」 「承知した」 小人が出ていったので、白雪姫は鼻歌混じりにクッキーを頬張ってくつろいでいた。そこへ扉を叩く音が聞こえる。 「もし、お嬢さんや」 「新聞なら間にあっておるぞよ」 「新聞じゃないんじゃよ。リンゴはいらんかえ?」 「リンゴじゃと? 今はそんな季節じゃなかろうに。果物と野菜と魚は旬じゃないと高いことぐらい常識じゃ」 しかし魔女も食い下がる。 「今ならタダじゃ」 白雪姫の耳がぴくりと動いた。 「タダ!? それを早く言え!!」 慌てて白雪姫は玄関まで出るが 「しかし・・・こんな人里離れた山奥にリンゴ売りとは怪しいのぉ・・・」 と、魔女をジト目で見始める。 「(ギクッ!)た、たまたま通りかかっただけじゃよ」 「ほお・・・。それじゃなぜ中に『お嬢さん』がいると分かったのじゃ?」 「(す、鋭い!)ま、窓から見えたのじゃ」 なるほど、と白雪姫はリンゴを眺めた。 「表面が妙にツルツルしておるのお? ワックスか何か塗ってないか?」 「(いちいち鋭い!)大丈夫じゃよ!」 「それじゃ食うてみるがよい」 魔女はこんなこともあろうかと、毒を塗っていない部分を囓った。 「今場所を選ばなかったか?」 「(こ、こやつ!!)何でも良いからさっさと食いな!!」 「あぐっ!?」 魔女は白雪姫の口に無理矢理リンゴを押し込め、 「うぐっ!!」 白雪姫はのどに詰まらせて倒れた。 「これで世界一の美女の座はあたくしのものよぉ〜!! ほ〜っほっほっほ!!」 と魔女は箒に乗って帰っていった。
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こんな白雪姫の王子の目に涙 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 12時17分 [1041]
「だから中に人を入れちゃいけないって言ったのに・・・」 小人は白雪姫の死体を発見し、棺桶に詰めて泣いていた。そこへ通りかかる白馬に乗った青年。彼は道に迷っていた。 「あれ〜? ここはどこだ?」 そこへ、泣きながら葬儀を行う小人の泣き声を聞きつけ、やってきた。 「何だ、誰か死んだのか?」 「そうなんです。白雪姫がぁ〜っ!!」 彼はその亡骸を見て言った。 「う、美しい・・・」 小人が油断している間に、彼は白雪姫にくちづけを施した。刹那 えろえろえろ・・・ 白雪姫はリンゴを吐き出し、起きあがった。 「ふあ〜あ。よく寝たわ。ん? そなたは誰じゃ?」 先ほどの光景に顔が引きつりながらも、青年は挨拶を始めた。 「は、初めまして白雪姫。私は向こうの国の王子で・・・」 その時、女王が突然現れた。 「ちょっと!! なんてことしてくれるんですのよ!! せっかく世界一の美女の座を手に入れたのに・・・白雪姫を復活させたら・・・殺すぅぅぅぅぅぅ!!」 女王は突然巨大な竜に変身した。 「あ〜あ。とうとう世界一ブサイクになっちゃった」 様子を見に来た鏡がぼそりと呟く。 「うっせぇよ、ババア」 王子は剣を抜いて竜を刺した。 「あたくしの美は・・・不滅ぅぅぅうぅぅ!!」 竜はそのまま消え失せた。 「あ〜あ。とうとうランク外に・・・!」 その時鏡が光り出した。一同はまぶしさに目を閉じ、光がなくなると、中にいた青年がそのままの姿で現れた。 「よく外に出してくれた。礼を言おう。それにしても美しい限りだ」 「そんな・・・わらわは・・・」 「その美しい姿を私は鏡の中からずっと見ていたのだ。是非とも添い遂げたい」 「そんな・・・二人の殿方に挟まれて・・・わらわは一体どうすれば・・・」 赤い顔で困る白雪姫。鏡にいた青年ははっきりと言い放った。 「愛し合おう、王子!!」 はた、と白雪姫は眉間に皺をよせて固まった。そして青年と王子を交互に眺める。王子は答えた。 「・・・はい・・・」 「こらああああああああああっ!!」 森の中を、白雪姫の叫びがこだました。
めでたくなし めでなくなし。
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いつも王子様は・・・ - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 12時21分 [1042]
はい。まさかのオチがこうでした。 と同時にあっちのルーヌの方がとりあえず書けましたので、今度書きます。 ただ、かなり内容が重くなってしまいましたーー;
では☆
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……。 - ティファ・ロックハート (女性) - 2009年08月19日 (水) 15時44分 [1043]
童話では白雪姫は生きていると思いますよ。 毒リンゴを食べて、眠りについたのは聞いた事ありますね。 中々、良いお話です。 頑張って下さい!
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