| |
第3章 1節:見習い殲滅者の旅立ち - 翼無き天使 (男性) - 2007年12月25日 (火) 17時57分 [736]
| | |
少年の名はアルト=ナイトウォーカー。世界を救う殲滅者になるべく、殲滅者アデルの下で修行を積む見習いターミネーター。 アルトの母は約6年前に暗黒知的生命体、通称『DIC』によって殺害された。 それを切っ掛けにアルトに宿る神の力、エターナル・フォースが覚醒。彼はDICと戦う力を得た。 DIC殲滅がアルトの使命。そしてそれが、アルトの意志。
「アルト」 「はい」 ここは南国の島、インドネシアのとある場所。よく晴れた蒸し暑い日だった。 そんな天気の中で服の上も下も、髪までも黒い男が一人。 長身で髪は若干のウェーブがあり、借りた宿の一室で足を組んで座っている。タバコをふかしながらアルトに話しかけた。 「何ですか師匠」 その男はアデル=キースロード。アルトにターミネーターとしての道を示してくれた人。そしてアルトの師匠。尊敬はしていた。しかし――……。 「お前が俺の下で修行を始めてもう6年以上経つ。お前ももう14歳だ」 「15です」 「…そうだっけ?まぁそこはいいんだよ。この6年間の俺の実践的かつ効果的な猛特訓のおかげで、お前の殲滅者としての力もお粗末ながらなんとか形になってきた」 アルトは思い出すだけで冷や汗がにじみ出た。世界中を回りながらこなしてきた修行の数々。何度死にかけたことか。 明らかに無意味と思われる内容も多々あったが、アルトは全てやり遂げた。 「それでだ、お前もそろそろ一人前・・・いや0,8人前だな。ターミネーターを名乗ってもいい頃だと俺は思う」 「本当ですか!?」 遂にターミネーターになれると思うとアルトは嬉しくてたまらなかった。遂に人々を救う殲滅者になれるのだ。 「ああ。だがそのためには俺と一緒に総本部に行かなくちゃならん。正式な手続きが必要だ」 「なるほど」 総本部。WPKOの最高意志決定機関。 「ふふふ……」 「……師匠?」 嫌な、とてつもなく嫌な予感がした。 アデルがこういう笑い方をするのは、思いつきのとんでもない修行方法を考えついたとき、なにかしら都合の悪いことに対してとんずらを決め込もうと目論んでるときなどなど、とにかくアルトにとってあまり良いことがない。 「お前、総本部の場所は知ってるな?」 「ヴァチカン、ですか?」 「そうだ。そこに行け。元老院には俺が推薦状を出しといてやる」 「へ?師匠も行くんじゃないんですか?」 「あんな遠いところまで戻ってられるか。元帥は極秘任務で忙しい。それに、俺は元老院のジジイどもが嫌いなんだよ」 「まさか師匠、またとんずら決め込む気ですか…?」 だいたい、アデルがDICを消去する以外の任務らしき行動をしているのを、アルトは見たことがなかった。 本当に殲滅者のトップに君臨する5人の元帥の一人なんだろうか?この身勝手ぶりを見るとなんだか怪しく思えてくる。 「…お前今、俺が元帥なの疑っただろ」 「えぇ!?い、いえ!まさか!」 確かにアデルは強かった。半端ではない。アデルのエターナル・フォースは無慈悲で、破壊的で、圧倒的だ。なぜそんなに強いのかと尋ねたら、 「天才だからな」 と言った。身勝手な上にかなりの自信家だ。でもその自信は、実力に裏付けられていた。 「さてアルト。実に、実に名残惜しいがここで別れよう。総本部へ行って正式なターミネーターとなり、DIC殲滅に努めろ。修行は終わりだ」 そういうと師匠はアルトに握り拳程度の球体を放ってよこした。 「…何ですか?」 アデルはニヤッと不気味に笑っている。つまり、この球体は絶対確実にアルトに不利益を被るということだ。 そんなことを考えていたら、球体はボンという小さな爆発音を立てて煙を噴き出し始めた。 「うわっ、煙幕!?」 「目が覚めたらヴァチカンへ発て。さらばだ、我が弟子よ」 だんだん、眠くなってきた。鬼畜め。睡眠ガス入りの煙幕とは……。 アルトの師匠、アデル=キースロード。尊敬はしている。でも、変人だ。
約5時間後、アルトは目覚めた。陽が西に傾きかけてる。アデルはきれいさっぱり、完全なる失踪を遂げていた。 前々から、アデルは隠れんぼをしたら絶対最後まで隠れきるタイプだとアルトは確信していた。探したってまず見つからないだろう。 アルトは荷物をトランクにまとめて宿を出た。案の定、アデルはチェックアウトをしておらず、全額アルトが払う羽目になった。 「なんだかなぁ……」 思わずため息が出た。 目的地はヴァチカン。WPKO総本部。地球の約3分の1の距離だ。まずは船を探す必要がある。今から乗れる船があるだろうか。 アルトは眠気の取れないボーッとした頭で、正式なターミネーターになるべく、ヴァチカンに向けて歩き出した。
|
|