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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


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チャット代わりに使われますと、せっかく一生懸命小説等を書いた方の内容がすぐに流れて見れなくなってしまいます。
ここは小説やストーリー、詩、日記などを書くところですので、チャットはこちらにてお願いいたします。

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  第4章 4節:屈辱の捜査委託 - 翼無き天使 (男性) - 2008年01月18日 (金) 14時33分 [740]   
   見れば見るほど怪しい少年だった。銀髪に薄紫の瞳、明らかにこのあたりの人間ではない。
身分証明書なし。同伴者なし。財布には子供が持つには多すぎる程の現金。
「名前は」
「…アルト=ナイトウォーカーです」

 何だかおかしなことになってしまった。どうやらアルトはこの事件の容疑者らしい。
アルトが銃で撃たれたら銃弾が食い込むことぐらいわかってもよさそうなものだが。
 警察署の狭い取調室に連れてこられた。目の前には厳つい中年の警部。彼の眼がもうアルトを犯人だと決めつけていた。
席に座るよう指示され、形式的な質問が始まった。まずは名前だ。
「年齢は」
「…15です」
「住所」
ぶっきらぼうな質問は続く。
「…あの、生まれはドイツで、9歳までカナダで育ちました。それからは世界中を旅していたので、今現在住んでるところは、ないです」
「住所不定、無国籍の未成年者。本当にドイツ人か?変わった髪と目だな」
「生まれたのがドイツなだけで、ドイツ人なわけじゃないです。人種が何なのかは自分でもよくわからなくて…」
本当にわからなかった。そんなことを気にしたこともなかった。
「ずいぶんギリシャ語がうまいな」
「はい、まぁ特技というか趣味みたいなものでして。言語を覚えるの得意なんです」
「9歳で世界中を旅だと?」
「…はい」
「なら保護者か何かいるだろう」
「師がいますけど、3ヶ月前にインドネシアで失踪しちゃって……」
「…………」
「…………」
非常に気まずい空気が漂う。このままでは怪しさに拍車をかける一方だ。
「この金はなんだ。ガキが持つにしてはずいぶん多いな」
痛いところを突かれた。ギリシャではギャンブルで稼いだと言ったら、犯罪になるのだろうか。
「それは…師が残した、旅費です……」
若干、というかかなり苦しい嘘をつく。
「…ギリシャに来たのは今日が初めてなのか?」
「はい。今日の日暮れにこの町に着きました」
「船でか?」
「…いえ、陸を進んできました」
船で来たと言えば、乗船記録を調べられて一発で密航だとバレる。そうなれば確実に逮捕だ。
「今日初めてギリシャに来た奴が、なんで殺人現場に来たりするんだ」
「それは、えっと、ちょっと気になりまして……」
「ちょっと気になりましてだぁ?お前が犯人だからなんじゃないのか!?おぉ!?」
警部は机をバンと叩いて身を乗り出した。
「そんな!僕は人殺しなんかじゃありませんよ!」
「ロバート警部!落ち着いてください!」
アルトに任同をかけた若い刑事が宥めた。
ロバートは再び座り直して腕を組む。
「…ふん、まぁいい。お前勾留。みっちり取り調べてやるからな」
「えぇっ!?そんな!僕は行かなくちゃいけないところが……」
「フランツ、こいつを勾留室へ連れてけ」
人生初の留置所体験をするかと思ったとき、一人の男が取調室に入ってきた。50歳くらいか。同じく刑事のようだ。
「ロバート、その子を釈放しろ」
「署長!?」
「警察はこの件から手を引くことになった」
思いもよらぬ発言にロバートは面食らった。
「…手を引く?いきなりどういうことですか!?そんなの納得できるわけないでしょう!!」
「私もわからんのだ、ロバート。上からの指示だ。この事件は、別の捜査機関に委託されるらしい」
とうとうWPKOが動いたのだ。
WPKOは国を動かす政府からDIC殲滅を依頼されている。DICを内密に消去するために国が警察のトップに、警察のトップが所轄警察の捜査に圧力をかけることくらいわけないのだ。
「別の捜査機関…?何ですかそれは?」
「わからん。私も国際的な特殊捜査機関としか聞かされてない。一応容疑者を一人取り調べていると報告したが、犯人ではないから釈放していいとのことだ。とにかく、これは命令だ。その子は釈放、事件からは手を引く。以上」
「署長!!」
署長は取調室を出てどこかへ行ってしまった。
「くそっ、いったいどういうことだ!?この町で6人も人が殺されてるんだぞ!それを特殊捜査機関だかなんだか知らんが、手を引けだと!?」
「あの……」
「なんだ!!」
「僕、帰ってもいいですか…?」


  第4章 5節:殲滅者派遣 - 翼無き天使 (男性) - 2008年01月18日 (金) 14時38分 [741]   
 一時はどうなることかと思ったが、晴れて容疑も解消されてアルトは警察署を後にした。危うく留置所で一夜を明かすところだった。
 イタリアとギリシャは近いから、3〜4日もあればヨーロッパ地域本部からターミネーターが到着するだろう。
彼らに任せておけば問題ないと思ったが、乗りかかった船というやつで。さっき事件が起きたばかりだから、次にDICが行動を起こすまでもう少しあるだろう。
アルトは宿を探して歩き始めた。

 いったいどうなっいるのかさっぱりだった。
「国際的な特殊捜査機関?なんだそりゃ!犯人ではないから釈放していい!?見てもない奴になにがわかる!!」
ロバートは警察署内で怒鳴り散らした。
「まぁしょうがないですよ。上の命令なんだし」
「国際組織といえど、一国家の捜査機構に圧力をかけるなんて相当な規模と権力を持ってやがる。いったいどんな組織なんだ?向こうにはもう容疑者が挙がってるのか…?」
「上は下っ端には何も教えてくれませんからねぇ」
部下の一人が悲しき縦社会の摂理を呟く。
「くそっ、ここまで来て引き下がれるか!警察には警察の意地ってもんがある。たとえ命令違反になろうとも、俺がこの殺人鬼を捕まえる!」
一人意気込むロバート。
「いいんですか?そんなことしたら減俸じゃ済みませんよ?懲戒免職になるかも」
「構うものか!人の命の方が大事だ!よし、そうと決まれば張り込みだ。奴が昼に動くことはない。毎晩毎夜、徹底的にこの町を見回ってやる。地元警察の意地をなめんなよ!!」
ロバートは燃えたぎる闘志を胸に一人、冷えた夜の都会へと駆けだした。

「あ〜、疲れた。さすがにフィンランドは遠かったわ…」
一人の女性が呻くように呟いた。
「たしかにフィンランドはヨーロッパだけど…、モスクワのロシア地域本部の方が断然近いじゃない。なんであっちで派遣しないのよ……」
キャリーバッグを引きずりながら文句を垂れる。
「ほんと、忙しすぎて嫌になるわ・・・」
 そんなやや過労気味で、彼女は陽の沈もうとしている、巨大なWPKOヨーロッパ地域本部に帰ってきた。
任務完了報告書は後回し。休むために速攻で自室に向かった。しかしそんなときに限って、任務というのは入ってくるものなのだ。
「マイヤ=キリサワく〜ん、お仕事が入っておりますのでぇ、至急ボクのオフィスまで来てくだっさ〜い」
この少し半狂乱気味なのではと思ってしまうような館内放送の主は、ライアン=クランツ。ヨーロッパ地域本部本部長、つまりはマイヤの上司にあたる。
また任務か。マイヤは舌打ちした。そもそもなぜ帰ってきたのがもうすでに本部長に知れているのだ?
「入りますよ本部長」
返事を聞く間もなく、マイヤはドアを開けて司令室に入った。
まず目に入るのは大きな一面ガラス張りの壁。しかし今は夕日を遮るためにブラインドが下ろされてた。
ここのトップが居座るにはふさわしい広い空間は、散乱している大量の書類のせいでだいぶ狭く見えた。
部屋の奥のデスク上にもまた山と積まれた書類。その書類の山に隠れるようにして本部長、ライアン=クランツが椅子に座りながらコーヒーを飲んでいた。
(まったく、どんだけ溜め込んでんのよ)
ライアンは今日もYシャツの上から白衣を着込んでいた。長身のルーマニア人。手入れの行き届いた髪と、いかにも知的そうな眼は明るいブラウンだ。
初対面の人なら「素敵な人」だと思うもしれない。27歳にしてすでにヨーロッパ地域本部本部長にまで登りつめた実力はかなりのもので、WPKO内で尊敬の視線を集めているのも事実だ。しかし、彼のやる気があるのかないのかわからないヘナっとした言動に、マイヤはときに殺意を覚えた。
「いや〜、任務から帰ったばかりでお疲れのところ悪いね〜」
「任務完了報告書の作成があるんですけど」
和やかに切り出す本部長に、凍てつかんばかりに冷たく切り返す。
「報告書は今回の任務の後で一緒に提出してくれればいいよ」
(どうせろくろく目も通さずに捺印するだけの書類でしょ!?だったら書かせないでよね!)
心の叫びが口から出そうになるのを何とか押さえ込む。
「誰か他の人いないんですか?」
「それがみんな出払っちゃっててね〜。キミしかいないのよ。仕事が早くて優秀なのも考え物だね、はははははは」
これは一応、お誉めの言葉を授かったわけだが、ライアンに言われるとなんだかイラッとくる。
「ヨーロッパは他の地域よりDICの数が多いんですから、もっとこっちに人員を集中するべきじゃないですか?」
「それがね〜、そうもいかないのよ。殲滅者の数は各地域本部に均等分散ってのが総本部の意向なんだよね〜。ボクらはそれに逆らうことはできないの。おわかり?」
「だったら、次に見つかった『適合者』は必ずこっちに引っ張ってきてくださいよ!?」
「はいは〜い。頑張りますよ〜」
全くもって頑張る気が伝わってこない。
「・・・で?今回の任務はどこなんですか?」
「マイヤくんには嬉しいことに、近場のギリシャ」
ギリシャ。船で行けば3、4日で着ける距離だ。
「これがその資料ね。詳しいことは全部それに書いてあるから、道々読んどいて〜」
そう言いながら何枚かの紙をマイヤに寄こす。
「被害者は今のとこ5人。DICの行動は典型的だね〜。一定の狭い範囲内、活動は夜、死体を残さない。まぁキミほど優秀な殲滅者なら楽勝だと思うから、ササッと行ってきて〜」
ここまであからさまに誉められると本気で腹が立ってきた。
(ササッと!?行く方の身のもなれっての!!)
「ギリシャ政府にはもうこの件の捜査中止命令を出して警察の介入は防いであるから、心おきなく殲滅してくれちゃっていいよ〜」
「わかりました。じゃあこれから向かいます」
ため息混じりにそう言って司令室を出ようとドアに向かった。
「ちょ〜っと待った〜」
「……何ですか?」
面倒くさそうに振り返る。
(一度に言え、一度に!これ以上イラつかせるな!)
「お疲れのマイヤくんに、とっておきの餞別があるんだよね〜」
そう言ってライアンが書類に山の中から引っ張り出したのは、小型の機械だった。私に放って投げる。平べったくて液晶画面がある。先端には伸縮性のアンテナ。画面のついた小型ラジオみたいだ。
「…これは?」
「よくぞ聞いてくれました。ボクの知識と経験と天才的閃きに、開発部門のみなさんのささやかな協力を加えて完成したのがそれ。名付けて『ディテクター』」
「ディテクター…?」
「その機械を中心とする半径3q以内なら、どんな微細なダークマターでも探知しちゃう優れ物!でもそれにはエターナル・フォースの力を媒介とする必要があるんだけどね〜。つまり、使えるのはターミネーターだけ」
「ふ〜ん……」
ライアンは以前は開発部門にいて、天才科学者と呼ばれた程の頭脳の持ち主なのだ、一応。
本部長となった今でも、ときどき仕事を放っぽりだして研究室に籠もり、謎の実験を行ったりしては開発部門のみんなを困らせている。書類が溜まる原因の一つだ。
「あれ、意外に味気ない反応だね。これでDICの探索がグンと楽になるのに。夜更かしの時間も少なくなってお肌に優しい、WPKO始まって以来の大革命だよ?ボクの名が歴史に刻まれるんだよ?」
まぁそれは、見方によっては人類の汚点ともなり得る。だいたい、WPKOに関することが歴史に刻まれるわけがない。
「つまり、探知できるのは擬態を解いて人間を襲うときだけなんですね?」
人間に化けているときは、ダークマターは体外に干渉しない。よって探知もできないだろう。
「うんまぁそういうことになるかな〜。不満?」
「いいえ別に。ありがたく使わせてもらいます。他に何か言うことはありますか?」
「いいえ別に。お仕事頑張ってくださ〜い」
さっき自室に置いてきたばかりのバッグをそのまま持って、マイヤは重い足取りでギリシャに向けて発った。


  第4章 6節:寄り道殲滅戦 開幕 - 翼無き天使 (男性) - 2008年01月18日 (金) 14時40分 [742]   

 警察に誤認逮捕された日から6日目の夜。天気はくもり。このままだと一雨来るか。
DICに未だ動き無し。一応毎晩町を見回っているが、ダークマターは感じなかった。
アルトはDICの体から放たれるダークマターを感知することができた。意識を集中すればわずかに一定範囲内のダークマターの有無を判別できる。
 この能力に気づいたのは、アデルとの修行が始まって1年目が過ぎた頃だった。

「DICの居場所が何となくわかる、だと?」
「はい。本当に何となくですけど、DICが擬態を解いたときに放つダークマターを感じます」
「…それがお前のシックスセンスか」
「はい?」
シックスセンス。殲滅者に視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感に加えて希に現れることがあるという特殊な力、第六感。
「エターナル・フォースの適合者は、DIC殲滅能力に加えて何らかの特殊な力を発現することがある。お前のそれはシックスセンスによるものだな」
「へぇ…」
「便利で助かる。以後DICの捜索はお前に一任するか」
「えぇ!?っていうか師匠の場合はただ探すのが面倒くさいだけじゃないですか!」
「だから探す能力を得た優秀な愛弟子にこの重要な仕事を任せようと言ってるんだ。こんな光栄なことはあるまい」
「…………。じゃあ、師匠にもシックスセンスがあるんですか?」
「…ふふふ、知りたいのか…?」
「…いえ、知りたくないです。絶対」

 アデルのシックスセンスはいったい何だったのか。今でも時々気になるが、触らぬ神に祟りなしである。あの笑いは明らかに危険な匂いがした。
今日もDICを探すべく、エターナル・フォースを発動して意識を集中する。
武器を錬成するほど力を解放しすぎても駄目だし、弱すぎても感知はできない。この力加減に慣れるまでが難しい。
ダークマターが感知できても、その時はすでにDICが擬態を解いて人を襲おうとしてるわけだから、間に合わないことだってある。
迅速探査・確実消去がアルトのモットー。
これはアデルの受け売りなのだが、アデルが「迅速」の面に関してこのモットーを実践したことは少なくともアルトは見たことがない。
「……!!」
ダークマター捕捉。北西に約1q。犠牲者がさらに増える前にDICを消去しなくては。

 手に持つ小型機械の画面に小さな光が点滅してる。
マイヤから放たれる、超音波のように拡散させた微弱なエターナル・フォースは、ダークマターに接触すると打ち消し合うから、そこからDICの居場所がわかるといういう寸法だ。さすが天才科学者と言われただけのことはある。あれでもう少し自分の仕事にやる気を出してくれれば、少なくとも「まとも」な上司にはなるだろうに。
「天は二物を与えず、か」
 北東に約2,8q。
「さぁて、さっさと終わらせて休暇にしよっと」
空は暗雲に覆われ、星一つ見えない漆黒の夜だった。
「一雨来るかな。楽勝ね」

――殲滅戦、開幕。




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