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夢魔 - ベールゼブブ (男性) - 2009年01月18日 (日) 14時34分 [853]
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「なんなんですか、あいつ!?」 フォルクがミリアの後ろにまた隠れて、黒翼の女性を指さす。マゼンダは頭を掻きながら、じっと女を睨み据えていた。 「よく似た悪魔は知ってるんだけど、変ね。あいつらは決して人間に危害は加えないはずなんだけど・・・・・・。いや、加えるわよ。でも人間を殺すような真似はしないはず」 「サキュバス、ですね」 アーサーが横目で女を睨みながら呟いた。 「夜な夜な修道士のもとに現れてたぶらかす夢魔にして淫魔。禁欲生活を強いられた修道士には修行の邪魔ともいえる悪魔ですね。確か父の神官修行中の時にも現れて、『大層困った』と言っていましたっけ」 「よく知ってるわね。っていうか、あんた男だったの。ターゲットが増えた」 サキュバスの言葉に違和感を覚えつつも、ルークが尋ねた。 「でもサキュバスがこんな真っ昼間に、しかも人間を狩るなんてことあるのか?」 サキュバスが翼を羽ばたかせ、ルークの方に突進してくる。そして顔スレスレのところで止まった。 「あんたたち人間が知らないだけ。ほんの少し気づかれにくいところに爪を入れて血を飲んでるわ。悪魔に昼も夜も関係ない。油断していたらいつ襲われるとも分からないわよ、ボウヤ」 サキュバスがそっとルークの頬に手を触れた。寒気がするほど、冷たい手だ。そのまま悪魔はケラケラ笑いながら飛んでいった。 「ボウヤ・・・・・・?」 ルークは違和感を感じて頭を捻っていた。 「あれ? もしかして私、初めて男扱いされた?」 「ルーヌ、ニヤニヤしてる場合じゃないわよ!」 「あ、はい先生、すみません」 そう言いながらも、ルークの顔は喜びで溢れていた。 「とりあえず、お前が私たちの邪魔をするのなら、この場で斬らせて貰う!!」 「殺れるもんなら殺ってみなさい。人間の男には私は斬れない。それを証明してあ・げ・る」 そういってサキュバスは髪を掻き上げ、悩殺的な視線をフォルクに向ける。目があったフォルクはつるはしを落とし、ミリアの後ろから進み出た。 「ああ・・・・・・なんて美しい・・・・・・!!」 「ちょっとフォルク!!」 ミリアがフォルクの腕を引っ張るが、夢見心地な目線はずっとサキュバスに釘付けだった。 「そんな・・・・・・酷い!! あたし以外の女に目移りするなんて!!」 「あれが夢魔の魔力よ!! 異性を魅了し、自らの僕にしてしまうの! 彼を救うにはあの女を倒すしかないわ!!」 またサキュバスが甲高い笑い声をあげた。 「出来るわけないじゃない!! あんたたち女はあたしが殺さない程度に痛めつけて、知り合いのインキュバスに売ってあげるわ」 「一生ゴメンだわ!! ルーヌ、ルル、アーティー、行くわよ!!」 『はい!』 アーサーが黙り込んでいるが、気にせず飛びかかっていく。 「そうは行かないわ!!」 サキュバスはアーサーに向かい、ウィンクを放った。 「!!」 アーサーは暫く動きが止まったが、また走り始めた。 「相手が女だからって・・・・・・揺らぐものかぁぁぁっ!!」 そう叫んでアーサーはまた、巨大な閃光呪文を手から放った。 「機嫌が悪りぃ時にまとわりつく女ほどウゼぇもんはねえよ!! 失せろ!!」 「きゃああああああぁぁぁあぁあぁ!!」 閃光に灼かれながら、サキュバスはあちこちを飛び回る。火が消えると同時に、サキュバスは地面に降り立った。 「ま、魔法使うなんて聞いてないわよ・・・・・・っ!! 仕方ないわね・・・・・・ならこっちも!」 サキュバスは素早く手で印を結び、 「マヒャド!!」 強烈な冷気を呼び出した。 『わあああああっ』 激しい冷気呪文が容赦なくルーク達に襲いかかる。大きな氷の塊が遮るように生えだした。 「キャハハハっ!! 人間が苦しむ様子っていつ見ても楽しいわね!」 「せいっ!!」 マゼンダが炎を纏わせた鞭で氷を撃ち破る。 「これでも喰らいなさい!!」 さらにマゼンダは鞭に雷を宿わせ、サキュバスをはたく。 「きゃあああああああっ!!」 サキュバスは倒れ込み、辛うじて息がある程度の重傷を負った。 「なんなの・・・・・・よっ! あんた・・・・・・たち!!」 そこへ、ルークがそっと歩み寄る。 「残念だったな」 そう言って剣の切っ先を悪魔に向ける。 「助けて・・・・・・」 サキュバスは性懲りもなく潤んだ魅惑の眼差しをルークに向けた。ルークはその様子を笑い飛ばす。 「そんなものは私には効かん。残念だがお前を倒す」 「ふっ・・・・・・聞いて・・・・・・なかった? 人間の男に・・・・・・私は斬れない・・・・・・。男の、夢に、生きるから・・・・・・」 その言葉を聞き、今度はルークが高らかな笑い声をあげた。 「気づかなかったのか? これまでの魔物と違ってて嬉しかったぞ。私は身なりは男だが、生まれも戸籍も歴とした女だ。最も、私自身は女に生まれたくはなかったがな」 サキュバスの顔が凍り付いた。 「うそ・・・・・・!!」 ルークが剣を振り上げたそのとき、不意にルークに何かがぶつかった。 「わあっ!!」 咄嗟にルークは受け身の態勢をとり、ぶつかった張本人を睨んだ。 「フォルク!!」 「サキュバス様を、殺させはしない!!」 「こいつ・・・・・・!! エキストラのくせに生意気なっ!!」 フォルクはつるはしを持ち、ルークに襲いかかる。ルークはすんでの所で剣でそれを受け止めた。 「ふっ・・・・・・どう? あんたの仲間、それでも倒せる?」 「卑怯者!!」 そのときだった。ルルがそっとサキュバスに近寄り、にこりと笑う。 「あら? 今度は、お嬢ちゃんが相手?」 ルルはそっと、ルークに目配せをした。気づいたフォルクが振り返った隙にフォルクを羽交い締めにし、つるはしをその手から落とす。 「怪我見せてくれない?」 そう言ってルルはサキュバスの怪我に手を当てる。 サキュバスはしばらくふっと笑っていたが、すぐさま苦悶の表情へと変わっていった。 「きゃああああああああっ!!」 体中の穴という穴からまばゆい光が放たれ、サキュバスはのたうち回って部屋中を動き回る。最後には、灰となって消えた。 「・・・・・・そうだったわね。あんた、ちょっと触っただけでアンデッドと悪魔を浄化する力があるんだったわね」 だんだんとフォルクの目も平常に戻っていく。 「あれ? 僕はどうなって・・・・・・? サキュバスは!?」 ミリアが怨みがましそうにフォルクを睨んでいたが、マゼンダに宥められ、彼を許すことにしたいう。
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夢魔 - ベールゼブブ (男性) - 2009年01月18日 (日) 15時51分 [854]
ルルは改めて石を眺める。しかし、また、ルルの邪魔をする声が聞こえ始めた。 「サキュバスがやられたか・・・・・・。だが、お前達はここで終わる」 現れたのは、長髪の美男子。同じく黒翼を持ち、露出度の高い衣装だが、サキュバスと違い、金色の三角帽が緊張感を台無しにしていた。 「なんですか? あれ」 ルークがあっけにとられる。 「・・・・・・インキュバス。夜な夜な女性の寝所に現れる夢魔にして淫魔。頭のマヌケな金の三角帽を被ると古の宝の在処が分かるとされてるわ」 「マヌケとは心外ですねえ、マダム。財産が欲しいなら私に協力して頂けますか?」 マゼンダは鼻で笑った。 「マダム、とは心外ね。マドモワゼルと呼んでくれない? それにあんたに協力して宝をもらうより、強奪した方が手っ取り早いわ」 「そうですか。残念だ」 そう言ってインキュバスは翼を広げ、辺りに息を吹きかけながら部屋中を飛び回る。 「!! なんなの? このいい香りは・・・・・・!!」 「皆さん・・・・・・あたしもうダメ!!」 ミリアが恍惚の表情を浮かべながら座り込んだ。 「ミリア!! 大丈夫か!?」 ミリアはキッとフォルクを睨み、 「あんたなんかに心配して貰う筋合いはないわ!! さっきなんかあんな変な女に肩入れしたくせに!!」 と平手打ちを喰らわせた。 「そんな・・・・・・ミリア!!」 「・・・・・・」 ルークも辛うじて立ち上がっている状態だが、鼻と口を押さえながらもだんだん匂いにやられてきているようだった。 「先生・・・・・・っ!!」 「これは・・・・・・インキュバスの誘惑の吐息・・・・・・。女性を虜にする・・・・・・魔性の・・・・・・香り・・・・・・。あたしももうダメ!!」 インキュバスはルークの前で降り立った。 「屈しなさい。これに反応するということはあなたも一人の女性。何を抗う必要があります?」 「屈するわけには・・・・・・いかない!! 後が怖いからっ!!」 そう言ってアーサーの方を見やった。 「ほう、彼ですか」 アーサーは無表情でインキュバスを眺めている。 「それならこうしたらどうでしょう?」 インキュバスは爪を一瞬で長く伸ばし、アーサーに飛びかかった。 「やめろ!! アーサー!!」 アーサーは寸前のところで手をかざし、 「ベギラゴン!!」 得意の閃光魔法を放った。 「ぐわぁっ!!」 インキュバスは怯み、よろけた。 「よいしょっと」 その後ろを、ルルが支える。 「お嬢ちゃん、支えてくれたんだね」 ルルはにこりと笑うが、インキュバスは気づいた。少女に触れられた部分が焼けるように熱いことに。 「わあああああっ!!」 インキュバスはその部分を押さえてうずくまる。 「あたしには魔の力は効かないんだから。馬鹿ね」 そして踊るように兄の元へ舞い戻る。 「ふっ・・・・・・してやられましたねえ・・・・・・。なら共に死になさい!!」 インキュバスは掌に爆発元素を集め始めた。 「イオナズン!!」 凄まじい大爆発はアーサーとルルの体を吹き飛ばし、壁に叩きつけた。 「ぁぐっ!!」 「くぁっ!!」 そして瓦礫が二人の頭上に落ちてくる。 「遺跡がぁぁ!! 僕の遺跡がぁぁっ!!」 フォルクが瓦礫を拾い集めて大事そうに抱え出す。 「ふはははは! どうだ? 悪魔の魔力は素晴らしい。最強の力なのだ!!」 アーサーはゆっくりと立ち上がり、夢魔を睨み据える。 「どうした? 人間よ。手も足も出ないだろう」 夢魔はまた爆発呪文を唱えたが 「・・・・・・マホカンタ」 突然青年に貼られた対呪文結界が夢魔の呪文を跳ね返す。 「ぐああああぁあぁぁぁぁああぁぁあぁぁ!!」 夢魔の体も豪快に吹っ飛ばされ、壁を伝って瓦礫と共にずり落ちる。 「なかなかやるな・・・・・・キサマ・・・・・・!!」 「最近頗る機嫌が悪いものでしてねえ・・・・・・そろそろ限界が近づいてるところなんですよ。さっきからちっとも話が進まなくてもうどう言ったらいいか分からなくてですねえ・・・・・・」 夢魔はアーサーの大魔王のような目に気づいていなかった。含み笑いをしながら 「だが魔法が当たらなくとも、攻撃はできる!!」 と、天井に爆発呪文を放った。瓦礫が容赦なくアーサーの体を襲う。 「お兄ちゃん!!」 ルルが駆け寄ろうとするが、落ちてきた瓦礫と舞う砂埃に阻まれてしまった。砂埃が収まると、ゆっくりと立ち上がる兄の姿があった。ほっとしたのも束の間、ルルは目を疑った。 そこにいたのは、兄の姿ではあるが、顔がいつもの穏やかな青年と大きくかけ離れ、最近の虫の居所が悪かった表情よりも冷たく、どことなくルルに、家で祖母に見せて貰った魔王の素顔を思い起こさせた。 「いい加減にしやがってくれないかな・・・・・・?」 青年は辛うじて笑顔を保とうとするものの、そうするほどより、鬼に近い顔になっていった。ルルは恐ろしさに足が動かず、インキュバスの魔力にやられたルークとマゼンダもその事実を忘れていた。 「さっきから黙ってりゃ調子に乗りやがって・・・・・・五月蠅い蝿が人間様に・・・・・・逆らおうなんざ100年早えぇんだよ!!」 直後、アーサーの魔力が荒れ狂う波となって解き放たれた。 「ぐあああああああああああっ!!」 魔力の熱に灼かれ、インキュバスは屈み込む。しかしアーサーの魔力の波は止まらない。 「ヒャハハハハハ!! 苦しめ!! キサマの苦しむ姿がオレサマの慰み物!! 文字通りの地獄の苦しみを味わえ!!」 狂ったように笑い出すアーサーの姿に、その場にいた仲間全員が凍り付いた。インキュバスはのたうち回り、断末魔の叫びを、いや、そんな生やさしいものではありえない。兎に角今まで経験することのないような、耳を裂くような悲鳴をあげていた。 「まずは右足から消してやろうか!?」 アーサーが右手を横に動かすと、インキュバスの右足が、つま先からゆっくり灰になっていく。 「次は右腕!!」 アーサーが右手を上に動かすと、悪魔の右手の指先からだんだんと消滅していく。 その間も、インキュバスの凄まじい悲鳴は、後のルーク達の耳に残るほど高くあがっていた。 この後もアーサーは左足、左手とインキュバスの体を拷問にかけていき、顔と胸部を残してその様子を眺めていた。 「ケッサクだな!! さてどうしようか。このままさっさと消えたいか? それともじっくりとまた攻め立ててやろうか。どっちがいい?」 インキュバスは胴体だけが残った今、口をついて出るのは悲鳴だけだった。 「無様だな。あ? なまじオレサマを怒らせたばかりにこんな屈辱を受ける。全ての報いだ。そうだろ?」 アーサーがインキュバスの顔に手をかざすと、顔が醜く爛れていった。 「それじゃ、ラクにしてやろうか」 そう言ってアーサーは左手を押すように下ろした。 声にならない声が聞こえたような気がする。ルーク達が気づいた頃には、悪魔の姿は完全に灰と消え、アーサーが一人立ちつくしていた。静まり返って、物音一つ聞こえない中、アーサーがゆっくりと振り返る。 「あ〜、スッキリした!」 と、いつもの笑顔を見せながら。
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ヒャハハハハ!! - ベールゼブブ (男性) - 2009年01月18日 (日) 16時01分 [856]
大魔王アーサーの真骨頂の恐怖、如何でしたでしょうか(笑)今回ややグロで申し訳ありませんーー;
ではレス返し
お二人とも予想ハズレでした☆ 夢魔です。 まあ、普通夢魔が血を吸うって話はないんですけど、悪魔契約に当たって血の提供は当たり前なんで、まあ、こういうロマン(?)もいいじゃないですか☆
クロネコ様>
ヴァンパイアとか化け物の話なら私も結構五月蠅いです^^ でも基本恐がりなんで遊園地のお化け屋敷にも入れません。何だ? この矛盾。
天使様>
キャハハの次はヒャハハですが、誰か思い出しますか?(笑) 私はスーパーリアルRPG思い出します。
ところで「レスリー・ニールセンのドラキュラ」(原題:Dracula 〜Dead and Loving It 〜)はご存知でしょうか?VHSしかないんでもしかしたら見れないかもですが、英語がある程度聞き取れたらつべに落ちてます。聞き取れなくても雰囲気で分かると思います。よろしければどうぞ☆ まじ笑えますんで。
では☆
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悪魔の弱点 - クロネコ (男性) - 2009年01月18日 (日) 16時35分 [859]
アーサーがまるで、一瞬、某メタルギア・ソリッドの 拷問マニアの「リボルバー・オセロット」のように見えてきました。 サキュバスは男では倒せないっていうのは初耳です。 俺の作っているゲームでは幽霊にもヴァンパイアにもサキュバスにも 全ての敵に普通の武器が効きます。
さて、ナーティス物語のキャラからのメッセージです。
ライ 「僕達の世界のサキュバスは普通に男の人でも倒せるけど、 虜にされるとチャーム状態になって、しばらく行動が出来ない んだよねー、僕達の世界の悪魔(サキュバス達も含めて)や 幽霊、ヴァンパイア、ワーウルフ(人狼)には普通の武器や 弾丸が全く効かないんだ。弱点は銀の武器や銀の弾丸、 光属性の攻撃魔法などだよ」 ルビィ 「ライ、やっぱりよく勉強しているだけあって詳しいな、 悪魔なんざ俺の銀パイプでボコボコにしてやるぜ!インキュバス だって倒して見せるぜ!」 リーナ 「私達、魔族の容姿は人間に悪魔の翼がはえて、エルフのように とんがった耳を持っているけど、人間と同じ人種族だから普通の武器 や弾丸でもダメージを受けてしまうのよ」 ケルス 「対悪魔用の武器の材料の「聖銀」はコストは高いが、買う価値は あると思うぜ!それがないと幽霊や悪魔に対抗出来ない!」
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ほほう - 翼無き天使 (男性) - 2009年01月19日 (月) 01時52分 [862]
サキュバスでしたか。 しかし兄妹そろって怖いですね^^; 石からはいったい何がわかるんでしょうか・・・。
ヒャハハにはあまり思い当たるキャラがいないですね〜(笑) っていうかイカレ笑いの典型なんで、けっこういっぱいいるかも知れませんね、この笑い方^^; では^^
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