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薔薇薔薇なやつら・夏編 - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月23日 (火) 21時07分 [925]
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夏というより梅雨時の某大学。愛の相談室・薔薇部の部室にて、太田は自身のメモ帳を眺めながらニヤついていた。端から見ていればその美顔のせいでニヤついているようには見えない。さしずめ「今日はどこで誰と遊ぼうかな」といった、無邪気なことしか考えていないと思われるだろうが、彼女が考えているのは先輩を対象とした「萌えシチュエーション」である。 突然牧野が現れたため、彼女は慌てて手帳をしまった。 「お疲れさまです、牧野先輩」 「こんにちは。あれ? 一人? サボリ部長とガキんちょ大学生はともかく、ホスト先輩と妙にノリが軽い先輩はいないの?」 口が悪いな、と思いつつ太田は答えた。 「まだ来てないみたいです。でもお客さんも来てないから大丈夫なんじゃないですか?」 「そうか。まあいつものことだからいいけどさ。俺もサボってやろうかな」 その矢先だった。ノックの音が聞こえてきたのは。 「はい、どうぞ」 入ってきたのは恐らく留学生だろう、いかにもな金髪のヨーロッパ人だった。 「Can I enter here? (入ってもいいですか?)」 二人の表情が固まった。 「Here, you speak English or...... any European language, I heard. (ここで英語か・・・・・・ヨーロッパの言語を話せるって聞いたんですけど)」 「えっと・・・・・・太田さん、こういう場合どうしたらいいと思う?」 「えっと・・・・・・そういえばここインターナショナルがウリでしたね。先輩とりあえず英語で聞けばいいんじゃないですか?」 牧野は眼鏡を突き破るかといった勢いで目を丸くした。 「無理無理無理!! 俺英語とかマジ無理!!」 「コンピューターなんて横文字ばかりじゃないですかっ!!」 「あれは別に単語の頭文字の羅列がほとんどだし!! 単語一個一個の意味なんて分かんないし!」 来客はしどろもどろになっている。 「えっと・・・・・・う、ウェイト ア ミニット、プリーズ。アー、メイビー イングリッシュ スピーカー ウィル カム(ちょっと待って下さい。英語喋る人が来ると思いますので)」 「Sure, thank you.(分かりました。ありがとうございます)」 彼女はとりあえず椅子に座り、俯いて待っていた。 「っていうか太田さん英語出来ない?」 牧野が太田の元に舞い戻り、すがるように尋ねた。 「・・・・・・やるだけのことはやってみます」 胸を張って外国人に近づく太田に、牧野は小さく拍手を送った。 「アイ キャント ヘルプ ラビング ユー(意味はヤバいので自主規制)」 「Huh? (は?)」 「し、シルバーケイオス(同じく自主規制)」 「Pardon?(何?)」 「ストラグルビローミー(はたまた自主規制)」 「What do you want to say ? (何が言いたいの?)」 太田は牧野の元に戻り、きっぱりと言い放った。 「やるだけのことはやりました」 「そうかー・・・・・・」 二人が落胆していると、岸田が相変わらず飄々とした様子で入ってきた。 「よっ! 今日は二人だけか。邪魔したな」 帰ろうとする岸田を牧野の手が阻止し、客人の前に据えた。 「先輩! 英語話せませんか!? 俺も太田さんも全然ダメなんです!」 その太田はその様子に笑みを浮かべながら、手帳を取りだしてメモを取り始めた。 「英語? なるほど」 岸田はポンと手を打ち、そのままドアに向かっていった。 「なんとかがんばれ後輩! 俺は逃げる」 「逃がすかぁっ!!」 牧野は岸田の足を掴み、はり倒して部屋の奥へと引きずっていった。 「痛てえよ、牧野くん〜、これ拉致だよぉ〜」 「一人だけ逃げようったってそうはいきませんよ。お客様じゃないですかっ!!」 「そんなの、真田っちに任せればいいじゃん〜。それか金城ー」 牧野ははっとした。 「そうだ、真田を電話で・・・・・・」 そういいつつも牧野は電話をかけながら、パソコンのコードで岸田を椅子に縛り付けていた。 「・・・・・・出ない・・・・・・」 牧野が青ざめた瞬間だった。 「とりあえずメールだ!!」 その矢先、薔薇を背負って金城が豪華に現れた。 「今日もエレガントに行こうぜ〜」 「先輩っ!!」 金城は嫌な予感がしていた。目の前で眉毛を八の字にしている外国人と、椅子に部長専用パソコンのコードでぐるぐる巻きにされている岸田、すがるような顔の牧野と太田の視線に。 「先輩、英文学専攻ですよねっ!?」 「あ、ああ」 「大学院行くんですよね?」 「あ、うん。一応」 「それじゃ、よろしくお願いします」 牧野にドアを塞がれ、逃げ場を失った金城は引きつった笑顔で外国人の方を向いた。美人だとは思ったが、彼はかつて外国人女性と話したことは一切なかった。金城は目を泳がせながら、女性に語りかけた。 「ウェッカットゥアークラッ(Welcome to our club、ようこそ我々のクラブへ、のつもり)」 「What ? (え?)」 金城は更に顔が引きつってきた。 「ウェッカットゥアークラッ!」 「Sorry, I don't understand you. (ごめんなさい、あなたの言っていることが分からないわ)」 金城はヤケになり、 「ウェッカットゥアークラッ!!」 と怒鳴ってしまった。 「Please speak English or Spanish ! I heard that you speak any language, but you don't ! OK, I'll go ! (英語かスペイン語で話してよ! あなたたちどんな言語も話せるって聞いたのに、話せないじゃない! もういいわ。私行きます)」 帰りかけようとした彼女を引き止めつつ、牧野は金城の腕を引っ張った。 「先輩、なんなんですか? 今の」 「俺英語の文学作品は読むけど、リスニングと発音が出来るなんて言ってないぜ?」 牧野は金城に大外刈りをかました。 「何でもいいから真田早く来いよ〜!!」 牧野は真田に「早く来い」メールを連続で何通も何通も送りつけながら、血の涙を流す勢いだった。
一方そのころ真田は図書館でドイツ語の文献に読みふけり、時間が経つのを忘れていた。彼の携帯は語学勉強の時は集中するため電源が落ちており、一切の連絡拒否状態なのである。彼に連絡がつくのは、勉強に飽きたときのみ。 一番嫌われるタイプだ。
「さなだぁ〜〜〜〜!!」
部室で牧野の悲鳴がこだまする。
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薔薇薔薇なやつら・夏の章 - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月23日 (火) 22時18分 [926]
絶望。牧野は燃え尽きたように座り込んで現実逃避を始めた。 「あはは〜☆ お星様が飛んでるよ、飛んでるよ〜」 「あれは末期だな。とうとううちのブレインが壊れてしまった」 金城にコードをほどいてもらいながら(当然その様子に太田は萌えていた)、岸田が呟いた。 「っていうか中村は何してんの?」 「今更ユーレイ部長の心配なんかするなよ。どうせ今日もサボリだろ?」 「それじゃあの子、やっぱり帰らせた方が・・・・・・」 客はしきりに時計を気にしている。全ての部活の活動時間だから授業はそうそうないはずだが、とどめて置くのも悪い。 「それじゃ『やっぱり帰っていい』って、なんて言えばいい? ・・・・・・ってお前の発音じゃ聞いても分からんな」 「ここは筆談するか」
「帰っていい」の一般的な書き方→You can go out, sorry. 金城の書き方→ If she wants to, before the sun sets, a butterfly can fly to her favorite flower following the wind. (望んだことであるならば、日が沈む前に蝶は風に乗り、最も愛する花のもとへ飛ぶことができる) 「What do you want me to do with it ? (これがなんだっていうの?)」 「岸田、ダメだ。彼女には俺の詩の意味を理解できるほどの知能がない」 「お前の文章能力の問題だと思うが」 「やはり俺の詩的センスは天才的すぎて凡人には理解できないか。やれやれ・・・・・・」 金城は牧野のように座り込んで落ち込み始めた。 「どうします? もうまともに考えられるの私たちだけみたいですけど」 「だな。真田っちどこで何を・・・・・・」 その時ドアの開く音がした。二人は目を輝かせて目をやったが、現れたのは中村だった。二人は落胆する。 「何だ? 珍しく来てやったのに歓迎されてないじゃん。ってかこれどういう状況?」 もの悲しそうな顔をする外国人女性と、座り込んで頭がどうかなっている牧野、同じく座り込んでぶつぶつと呪文のように独り言をしている金城、そして立ったまま落ち込んでいる岸田と太田。 「いや、いいんだ。真田じゃなかったのが残念だっただけで・・・・・・」 「真田? あいつなら図書館でカリカリやってたけど」 しばしの沈黙。 そして罵声。 『だったら呼んでこい!!』 「え? 俺が?」 「早く!!」 と言っている間にまたドアの開く音。入ってきた主は一瞬のけぞった。憂いを帯びた表情の外国人女性と、座り込んであっちの世界へ行っちゃっている牧野、同じく座り込んで暗い世界へ入り込んでいる金城、そして鬼の形相でこちらを睨み付ける岸田と太田に胸ぐらを捕まれている中村を見て。 「・・・・・・間違えました〜」 「いや待て!!」 帰りかける真田を、岸田が引き止めて部屋へ引っ張り込んだ。
「あ〜、そういうことだったんですか〜。それは大変でしたね〜」 「他人事ですか〜? 真田君〜?」 復活した牧野は真田のこめかみを、中指の第二関節でグリグリ痛めつけた。 「痛い痛い! やめろよ牧野〜!」 「お前がちっとも電話に出ないからこっちは死ぬような思いだったんだぞ〜?」 金城まで真田の頬をつねりだしている。 「やめてくださいよう〜、痛いよう〜、誰か止めてよう〜」 真田が泣きそうになったため、中村が二人を止めた。やはり太田が過剰反応。 「とりあえず通訳頼む」 岸田の言葉に真田は頷く。 「Forgive us for having left you waiting. They don't speak English, then, I will help you. What's your favor? (待たせてしまってごめんなさい。この人達英語が話せないから、俺が聞きます。どうかしましたか?)」 「I heard that here I can speak english or spanish, but it doesn't seem to be the place. (ここで英語かスペイン語が話せると聞いたんだけど、違ったみたいね)」 ここで真田が言語を変えた。 「ア、スィ? タルベス エス オトロ クアルト。アキ エス エル クアルト デ ヌエストロ クルブ。ペロ スィ キエレス、ジョ プエド アブラール コンティーゴ エン エスパニョール(あ、そうなの? 多分違う部屋だね。ここは俺らの部室なんだ。でも良かったら一緒にスペイン語で話せるけど)」 女性は笑顔で答えた。 「スィ? プエデス? グラシアス、ペロ テンゴ ウナ スィタ コン ミス アミーガス。ロ スィエント。(ホントに? 話せるの? ありがとう、でも友達と約束してるの。ごめんなさい)」 「ノ アイ プロブレマ。 ノ テ プレオクーペス、グラシアス(いや問題なしだよ。気にしないで。ありがとう)」 「プエス、アスタルエゴ(それじゃ、さようなら)」 「アスタ ラ ビスタ(さようなら)」 そう見送った後で、部室内に拍手が湧き起こった。 「すげ〜! 今の何語?」 「え? スペイン語。あの子スペイン出身だよ。知らなかった?」 「でも英語通じましたよね。なんだったんですか?」 えっと、と真田は思いだして言った。 「なんか外国語喋れるところと勘違いしてたみたい。でも英語も通じるのに誰も喋れなかったの?」 「全くだな」 部長の横やりに、真田以外が目を見張った。 「それじゃ部長、喋れるんですか?」 牧野の怨みの籠もった視線を涼やかに返し、中村は言った。 「俺、英検2級持ってるけど」 真田も頷く。 その他は皆、呻きながら座り込んだ。
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ふわ〜 - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月23日 (火) 22時27分 [928]
最初から部長さんに頼めば良かったオチ。 文中スペイン語をカタカナで書いているのは特殊記号が出せないからです。ハテナマークの逆さまとか、アクセントとか。 あと、間違っても腐女子・太田の英語を訳してはいけません。訳しても間違えて訳して下さい。 あと、ルーヌの方がちっとも進まないのは許して下さい。グラスの倒し方が浮かばないんです。気分的にはボスを倒すのに手間取るRPGゲーマーです。
いつかはドイツ語とかフランス語にも挑戦したいです。真田君を依り代に。
では。
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Re; - ティファ・ロックハート (女性) - 2009年06月24日 (水) 22時25分 [930]
うーん、最後まで読みましたが全然知らないですね。 これって、どういうアニメなんですか? いつも、私の小説にコメントして頂きありがとうございます。 初めてのコメントで申し訳ありませんが、引き続き 宜しくお願いします。
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ありがとうございます - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月25日 (木) 21時43分 [931]
すみませんが、完全オリジナルです。 あともう一本こちらでオリジナルのドラクエも書いてますし、かつてはハロウィン限定ゴシックコメディも書いてました。
それでは♪
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