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Masquerade 仮面舞踏会 - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月28日 (日) 19時20分 [934]
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「どうした? ここで終わりか?」 グラスの猛攻にルーク達は為す術もなかった。 「オレサマも倒せずに父上を倒そうとは片腹痛いぜ!」 そう笑いながらグラスは大爆発を引き起こす。 「ちょっとカトリーヌ!! なんだってあんな物騒な輩を連れてきたのよ!?」 あまりに錯乱しており、エルフの女王は丁寧語を忘れて玉座の後ろから怒鳴りつけた。 「わらわも知らなんだ!! グラスが魔王の血筋のものだったとは!!」 カトリーヌはお付きとともにエンタシスの後ろを取り合っていた。その柱も爆風で吹き飛ぶ。 「エルフの女王! そこをどくのじゃ!! わらわがそこに隠れる!!」 「馬鹿言わないで!! アンタが蒔いた種でしょうが!!」 エルフの女王はカトリーヌを蹴り飛ばして追い出し、そこへ玉座に火炎が飛んできた。 「キャーーーーー!!」 その瞬間、二人の女王を庇って、ガイル公爵が盾を持って火炎を跳ね返した。 「ご無事ですか、陛下! 遅れてしまい大変申し訳ありません!!」 「何やってたのよ馬鹿!! 怖かったじゃないの!!」 そう言いながら女王はガイルに飛びかかり、泣きじゃくりながらその胸に拳を打ち付けた。 「まず陛下はニンフの女王と兵、そして私の部下とともに避難して下さい。私はルーク殿に加勢致します」 「・・・・・・分かりました。カトリーヌと一緒なのは不本意ですが、必ずやあのものを成敗するのです。そしてこの国を守るのが兵士を統率する貴男の役目。必ずや成し遂げるのです! っつーかがんばれ」 ガイルは連れてきていた部下に指示を出し、お互いにつっけんどんに振る舞う女王二人を案内させた。そして自分はグラスの方へ踵を返す。 「ガイル」 そこで女王から声がかかった。 「生きて帰るのです。いつものように。っつーか死ぬな」 ガイルは振り返らずに頷いた。
「人間は大したことねえなあ! もっと楽しませてくれよ! じわじわといたぶって殺したかったのに、これじゃ早く終わっちまうじゃねえか」 ルークはぼろぼろになりながらも、剣を杖に立ち上がった。マゼンダも引きちぎられた鞭を切り傷だらけの手で持ち、口に溜まった血を吐き出した。 「こんなところで、終わってたまるか!!」 「その通りよルーヌ。こいつを倒して、ゲルグマイアスを倒しに行かないと」 グラスはまた笑い始めた。 「無駄な願望だな。お前達は揃いも揃って弱すぎる。父上を封印した巫女とお付きの力はそんなものか! 幻滅だな」 アーサーは血まみれになりながらも杖によりかかり、そのまま頽れた。 「アーサー! 大丈夫か!?」 ルークは足を引きずって駆け寄り、彼を介抱した。 「ルーヌ・・・・・・」 荒い呼吸を繰り返しながら、アーサーは自分の顔を覗き込む少女の目を見返す。 「僕よりも、ルルを・・・・・・」 見ればルルも血まみれのサーベルを片手に頽れながら、恐怖で顔が引きつり、がたがた震えている。 アーサーはルークの手を振り払って立ち上がり、よろよろとしながらもグラスを睨み据えた。 ルークはルルの元に行き、震える肩を抱いた。 「みんな・・・・・・死んじゃうの?」 ルルが焦点の定まらない目でルークに尋ねる。 「ここで終わっちゃうの? あ、あたしたちもみんなもあいつに殺されて、この国の人たちも・・・・・・みんな・・・・・・」 「落ち着け、ルル」 そんな言葉を聞いてか聞かずか、ルルの怯えは止まらない。 「あたしがいるから? あたしが伝説の巫女だから? あたしのせいなの? みんな死んでいくのはあたしのせいなの?」 「落ち着くんだルル」 ルルはルークの手を振り払い、錯乱して泣き始めた。ルークはルルをそっと抱きしめてやり、子供をあやすように背中を軽く何度も叩いて落ち着けていた。 「まるで親子みたいだねえ、嬢ちゃん達」 グラスが嫌な笑みを浮かべてルーク達に近づいてきた。 「安心しろ。まとめて地獄へ連れていってやる」 「それはどっちだか!」 声のした方へ全員が振り向く。 「ガイル公爵・・・・・・」 長い銀髪と白く端正な顔立ちはしっかりと魔王子を見据えていた。 「ルーク殿はその子を連れて外へ避難を。やはり子供には荷が重い」 「いえ。私は武人です。祖国とここを守るためにも、敵に背を向けるわけにはいかないのです」 傷と血にまみれながらも鋭い目つき。武人としてのプライドを失わない少女の姿にガイルは心を打たれ、鼻を鳴らしながら一本の杖を出した。 「これで傷を癒すといいだろう。私の足だけは引っ張るなよ」 そう言ってガイルは剣を構えてグラスに飛びかかった。 ルークは全員の傷を杖の祝福で回復した後、ルルをマゼンダに預けた。マゼンダは何も言わないルークの目を見、頷いた。 「アーティー、行くわよ」 アーサーははっとしてルークの顔を眺めた。 「どこへ? 敵はそこにいるじゃないですか!」 「あとは私と公爵に任せろ。お前は先生とルルと一緒に逃げるんだ」 アーサーは腕を引こうとするマゼンダの手を振り払い、抵抗した。 「嫌だ!」 「アーサー! いいから行け!」 アーサーは涙を浮かべながら、マゼンダに引かれてその場を離れた。何度も振り返りながら。 「嘘つき!」 と叫んで。 「うまく逃げて、みんな」 少女は剣と杖を携え、ガイルと剣を交えるグラス目がけて一気に駆けだした。
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Masquerade 仮面舞踏会 - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月28日 (日) 19時20分 [935]
マゼンダは錯乱して独り言を呟いているルルを抱えながら、時折爆音のする城の方を振り返った。アーサーは俯きながらとぼとぼとマゼンダの後ろをついて歩く。 「ルーヌ・・・・・・無事でいて・・・・・・」 「マゼンダさん・・・・・・」 不意にアーサーが声をかけた。 「酷い話ですよね。どこまでもついていくって決めたのに、なにかしら理由つけて人をのけ者にして」 声が震えている。怒りとも悲しみともとれる、声だった。 「しかも人の水浴びとか覗いたから最後まで責任取ってくれるって言ってた、その舌の根も乾かないうちに他の男と共同作業なんて・・・・・・」 マゼンダは何か言おうとしていたが、アーサーの涙に言葉を失った。 「許されることですか!? 許されて然るべきことなんですか!?」 それだけ大声を出して彼はそのまま踵を返した。 「ちょっとアーティー! どこ行くの!?」 アーサーはマゼンダの制止を振り切って走っていき、マゼンダの視界から消えた。 「あの子ったら・・・・・・!!」
「どうした? やっぱりもう終わりか? 口ばっかりだな、人間もエルフも」 ルークもガイルもぼろぼろだった。少女の顔は血のないところを探すのが難しい。公爵の美顔も血と火傷で爛れてきている。それでも目から失われない光にややグラスは不満げだった。 「何だ? その目は。これから死にゆく者は絶望に打ちひしがれた目をしているもんだぜ? 命を乞いながらな」 そう言いながらグラスは、ルークが振り上げようとする杖を蹴落とし、扉付近まで蹴り飛ばした。 「命を乞う相手は杖じゃねえだろ? 言ってみろよ。『命ばかりはお助け下さい』ってよ」 「お前なんぞに頭を下げるくらいなら、死んだ方がマシだ!」 グラスは口笛を吹きながら、おどけた様子で感服した、と嫌味を言った。 スキをついて斬りかかろうとしたガイルをグラスは回し蹴りで倒し、剣を落としたその腕を踏みつける。 「面目丸つぶれだな、ガイル。これでエルフ界一の剣豪とはよく言えたもんだぜ。幻滅したな」 グラスはガイルの襟を掴み、ルークの隣へ投げつけた。 「それじゃ楽にしてやろうか」 グラスは二人に向けて手をかざした。 「仲良く死ぬがいい。地獄はこれほど冷たく暑い所なんだぜ」 冷気がグラスの片手に集まる。もう片方の手には巨大な炎が渦を巻いて現れた。扉から入ってくる来訪者に気づかず。 「舞踏会は終わりだ!」 両手を振り下ろしたのとほぼ同時に、二人は目をつぶった。 しかし、自分たちのものではない叫び声が聞こえてきた。二人が目を開けると、そこには見慣れた後ろ姿と、のたうち回るグラスの姿。背中を向けていた人影は大きくため息をつき、振り向いた。 「アーサー・・・・・・!」 ルークがその名前を呼んだ。アーサーは扉までグラスに蹴飛ばされたはずの杖を二人に振りかざした。二人の傷がみるみる回復していく。 「なぜ、戻ってきた? 先生とルルと逃げろって言っただろ!」 アーサーはしゃがみこみ、ルークの頬をはたいた。 「嘘つき!!」 その目には涙。ルークは何も言えなかった。 「どこまでもついていっていいって言ってくれたのに! 最後まで責任取ってくれるって言ったのに! 何でそうやってのけ者にするんだよ! なんで自分だけで背負おうとするんだよ! ちょっとばかり腕っ節が強いってだけで!」 「アーサー・・・・・・」 「これは君だけの戦いじゃない!! 僕だって、君に守られるばかりなんかじゃないんだから!」 泣きじゃくるアーサーを、ルークはそっと受け止めた。その頭を撫でながら。 「なかなか・・・・・・泣かせるねえ」 アーサーに跳ね返されたらしい魔法を喰らって倒れていたグラスは、ぼろぼろになりながらも笑みを浮かべ、起きあがった。 「だが残念だ・・・・・・。ここでお前達は死ぬ! 舞踏会は血の宴で終焉を迎えるんだ!」 ルークとアーサー、ガイルは立ち上がり、それぞれ武器を拾う。 「杖の扱いなら僕に任せて。二人を援護します。危なくなったら来て下さい」 「分かった」 「感謝する」 ガイルは拾った剣を構え、グラスに斬りかかった。ルークも同じく剣を構えながら言った。 「無理をするなよ。自分の身が危なくなったら、私たちに構わず逃げていい」 「そんなこと、するわけないでしょう? 散るときは一緒」 ルークはふっと微笑み、グラスのほうへ向かっていった。
マゼンダはルルを抱えながら一人困っていた。アーサーは追って行きたい、だが錯乱して今にも自殺しかねない少女を置いても連れても行けない。一人でその場をぐるぐる回っていると、声が聞こえた。 「・・・大体貴女が騙されるのが悪いのではございませんの!? 明らかに怪しい男に騙されて、こんな事態にまで発展したのでしょう!? っつーか責任取れ」 「それでわらわにどうしろと申すのじゃ!? 確かにグラスが魔族と見抜けなかったのはわらわの非じゃ! それは認める! じゃがあやつがそもそも近づいて来なければこんなことにはならなかったのじゃ! 従ってわらわのせいではない!」 「それでも国家元首ですか!? っつーか女王失格!」 二人の女王は相変わらずで、マゼンダはほっとしたのと同時に二つの種族の行く末が不安になっていた。マゼンダは二人のもとに来る。 「ご無事でしたのね、女王様方」 エルフの女王はマゼンダに生返事をした。 「あら? 他のお二人は? まさか・・・・・・!!」 「ええ、未だあのお城に。私はこの子を連れて避難するのに精一杯で」 エルフの女王はルルを見るや、様子がおかしいことに気づいた。 「どうしてこんな風になるまで戦いを? この子はまだ子供じゃないですか。可哀想に、死を目前にして心を痛めつけられたのだわ。っつーか自失」 「ええ、話せば長くなるのですけど」 その時、また城の方から爆音が聞こえた。マゼンダは女王の方を向き直し、早口で言った。 「今は話している時間がありません。私も行かないと! この子をお願いします!」 そう言ってマゼンダはルルを女王に半ば押しつけ、立ち去ろうとした。 「お待ちなさい」 女王に呼び止められ、マゼンダは足を止めた。 「そんなちぎられた鞭を持って戦うつもりですか? それよりもこれをお持ちなさい。ってゆーかもってけドロボー」 そう言って女王は持っていた三つ叉の鞭を差し出した。 「これは昔数々の英雄達が使ったとされるものです。貴女になら使いこなせるかも知れません」 マゼンダはそれを受け取り、礼もそこそこに足早に去っていった。 「良いのか? 家宝だと言って居ったじゃろうに?」 カトリーヌがそれとなく尋ね、エルフの女王は頷いた。 「わたくしには戦いは向かないことが分かったのです。いざというときのためにそなえ、あの鞭を持て、という先祖代々の教えでした。ですが、もし彼女たちが平和をもたらすことがあるならば、必要はないものです。っつーか宝の持ち腐れ」 「じゃが、もしあの者達にそこまでの能力がなかったら? ただの人間じゃぞ!?」 エルフの女王は被りを振った。 「あの者達に出来ないのなら、わたくしにも出来ません。そんな気がするのです。っつーか絶対無理」 そういうものかのう、とカトリーヌはため息をついた。
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セ・ラ・ヴィー ラ・ヴィー・アン・ローズ - ベールゼブブ (男性) - 2009年06月28日 (日) 19時25分 [936]
やっと続きが書けたと思ったら長引きそうなグラス戦。 終盤で突然強くなっちゃいました。ってことはラスボスこれ以上に引っ張らないといけないのか・・・・・・。どんだけ〜!?
オリジナルドラクエの弊害と諸々を実感しつつ続きます・・・・・・(-_-;)
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