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こちら超常現象対策室! - 翼無き天使 (男性) - 2010年03月27日 (土) 15時08分 [1090]
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【第10話】京都!花と怪奇の都!
「…………暑っ!」 土曜日、午前11時。 京都府、空港。 俺こと二界堂煉治は、夏休みの前に立ちはだかる灰色のテスト週間を目前に、週末の土日を利用して真夏の京都に参上した。 もちろん、観光などという暢気な用向きではない。仕事だ。まぁ、正確にはバイトなんだが。 何を隠そう俺は、日本国が極秘に設立した防衛省の特務機関、「超常現象対策室」でアルバイトとして雇用されている。 通称ASUと呼ばれるこの組織は、日本中に存在する悪霊・妖怪・化物・エトセトラ、ありとあらゆる超常的霊的厄災から日本国民を守ることを至上任務とするオカルト機関だ。 嘘だと思うか?いや、超マジだ。 日本の国防費の実に30%強は、このASUのために費やされているらしい。 日本国民の納めた税金は、みんなが知らないところでしっかりと、「悪霊退治」に使われている。 信じられないだろう。俺だって決して信じたいわけではないのだが、残念ながら厳然たる事実である。 目に見えるもの、耳に聞こえるもの、手に取れるものがこの世の全てでは、決してないのだ。 見えない聞こえない触れない。それは認知できないだけで、存在しないことの証明にはならない。 怪奇は、存在するのだ。どこにでもいるし、どこにもいない。どこにもいないけど、確かにいる。解る奴には解るし、解らない奴には解らない。 そんな面倒くさいかつ厄介なモノから日本を守るのが、どうやら俺たちらしい。 俺がASU、超常現象対策室の存在を知って、今日で6日目。まだたったの6日だ。 この6日で俺の人生は大きく動いた。大きく前進したのか、大きく軌道が逸れたのかは定かではないのだが、移動した確かだ。 そんなこんなで今、京都の地を生まれて初めて踏んだ次第である。 バイト、つまりは悪霊退治だ。 「うわぁ〜、京都だ〜!」 俺の横で、コンクリートの照り返すむわ〜んとした暑さをものともせず、はしゃぎ回る女が一人。 天宮美言だ。 右肩に布袋に入った愛刀・連舞鴉を引っさげ、左手でボストンバッグを持って、露出度の高めな服装で透き通るような白い肌を惜しげもなく太陽光線に曝しながら、空港前の広場のど真ん中でクルクル回ってる。 やめろ!恥ずかしいから! 「じゃ、とりあえず関西支部に行くぞー」 俺と美言にそう声をかけたのは安倍明晴。ASU本部上級処理班にして情報収集班主任で、陰陽師。 すごそうだろ?いや実際すごい奴なんだろうけど、騙されちゃ駄目だ! こいつは人の私生活、プロフィールから成績から恋愛関係に至るまで、ありとあらゆる情報を暴き出して楽しむ、プライバシーの保護なんて概念は欠片も持ち合わせていない変態なんだ! しかも変態のくせに、男の俺から見てもかなりカッコイイ部類に入るであろうルックスだから余計に腹が立つ。 「はーい!」 「お前、元気だな……」 夏の京都は暑いとは聞いていたが。しかも今日はまるで図ったかのような炎天下。ゲンナリだ。 「え?だって京都だよ!?花の都だよ!?日本の歴史がいっぱい詰まってるんだよ!?」 「どうせ歴史なんて大して知らねぇだろ」 なんたってクラークとマッカーサーを混同するような奴だ。まともな日本史の素養があるとは思えない。 「むっ、失礼な!あたし日本史得意なんだから!」 「ほほう、何点だ?」 まさか、俺より高いなんてことないだろうな……。 こいつに学問で劣るというのは、高校生として致命的な気がする。もっとも、俺もそこまで成績が良いというわけではないのだが。 ちなみにこの前の中間テスト、日本史は64点だった。会心の出来だ。 「ふふふ、あたしの日本史のテストの点は、ズバリ――」 くっ、この自信……! こいつ、まさか本当は秀才で、あの数々のボケは天然ではなく人為的で計算し尽くされたボケだったとでも言うのか……!? この浅学非才な俺にあえてレベルを合わせていただけだとでも!? そうだ、こいつは裏の世界とは言え一応、良家のお嬢様なのだ。高校生の勉強など、取るに足らない些末な教養なのか!?
「――43点!!」
「赤点ギリギリじゃん!!」 ……話を戻そう。 そもそもなぜ、俺たちが遠方の京都にまで足を運んできたのか。そこから話して然るべきだろう。 時間軸は今日の午前8時に戻る。
◇
「すでに聞いてると思うが、お前たちにはこれから京都へ飛んでもらう」 午前8持。 東京都東京市、ASU本部。 中小企業の事務室のように庶民的でこぢんまりとした処理班の待機室で、立ちながら朝のコーヒーをすする源田が言った。 部屋には俺と美言、安倍に源田しかいない。俺は未だにこの4人以外の処理班の人を見たことがない。みんな任務で出払っているらしい。 朝の朝礼とか、みんなで集まる機会はないのだろうか。 「わ〜い!京都京都〜♪」 両手を挙げて喜ぶ美言。朝からテンション高いな〜この子。 「ついに俺も左遷ですか」 椅子の背もたれの方を前にして座っている安倍が冗談を言う。 「残念ながら違う」 まぁ出張だな、と源田。 「京都にある関西支部から応援要請が来た」 「応援要請……?珍しいな。京都の連中がウチに助けを求めるなんて」 安倍が驚いたような声をあげた。 「そうなのか?処理班は人数不足だって言ってたじゃん」 「まぁそうなんだが」 源田はコーヒーカップをデスクに置いて続けた。 「確かにこっちが本部ではあるんだが、人員では関西支部の方が多いんだ。ASUが発足する前は、京都の陰陽連という一団が日本の除霊組織を引っ張っててな。その名残だ」 「へぇ」 まぁ昔の都だし、霊的な場所は東京なんかよりもたくさんありそうだし。それも当然かもしれない。 ところが、と安倍が引き継ぐ。 「ばあさんたち御門ヶ原家が、国の支援を取り付けて40数年前にASUを設立すると、他の組織もどんどんASUに加わり、やがてその陰陽連もASUに追随せざるを得ない形になった」 国の支援は大きいだろう。税金という半無限の資金があるし、警察の介入を防いだりと国家権力は色々役に立ちそうだ。 「で、その陰陽連っていう一大勢力がASUになった後もそのまま京都に残ってるわけか」 「そういうことだ。京都だけじゃない。それぞれの地域に元々あった除霊組織は、ASUに吸収された後もその地域をずっと守り続けてきた。それが今の各支部だ」 ここで話し手がまた源田に変わった。 「まぁしかし、昔の本丸だけあって、元陰陽連の奴らはプライドが高くてな。特に過激派の連中は伝統だの縄張りだの、そういうのにうるさい」 「じゃあなんで応援要請を?」 「それがわからん。関西支部が応援要請を出すなんてことはここ十数年起きていない」 それに、と源田が続ける。 「人員派遣は早急かつ、くれぐれも極秘に、だそうだ」 「……どういうことだ?」 安倍が怪訝な顔をする。 「わからんが、向こうもだいぶ退っ引きならない状況なのかもしれん。加えて指名付きだ」 「指名?」 「天宮美言、安倍明晴、プラス1名の計3人を送って寄越せと」 なるほど。俺はその「プラス1名」なわけね。 別に僻んじゃいませんよ?どうせボクはしがないアルバイトですし?実力もまだ大した事ありませんし? 「……どうも妙だな。ばあさんは何て言ってんだ?」 「断る理由もないから送ってやれと」 「あっそ」 「ということで、少々気になる点があるが、向こうに行けば説明があるだろう。これよりお前たち3人に極秘任務を与える」 椅子に座っていた安倍が立ちあがって俺と美言の横に並ぶ。 「安倍明晴、天宮美言、二界堂煉治の3名はこれより京都に向かい、以降は2日間、関西支部の指揮下で任務をこなすこと。リーダーは安倍。煉治はこれが初任務になるが、何事も経験だ。悪霊の本場に乗り込んで一皮剥けてこい!」 「……はぁ」 「精々死なないように気をつけろ〜。京都の化け物は怖いぞ〜」 安倍がニヤニヤしながら脅しをかけてくる。 「大丈夫だよ♪いっぱい特訓したんだし!」 この状況、明らかにおかしいよな!? RPGで言ったら初期装備でいきなりラストダンジョンに乗り込むようなもんじゃね!? 「まぁそう憂鬱になるな。向こうにお前へのプレゼントを用意してある」 と源田。 「プレゼント?」 「ま、向こうに着いてからのお楽しみだな」 「バイト代もちゃんと出るし、出張手当も付くぞ。おまけに向こうに行けばプレゼントと化け物が待ってる。良いこと尽くめじゃないか」 と安倍。 「じゃあ早く行こう♪」 とルンルンの美言。 「……ははは」 そしてスーパー鬱な俺。 「そうだよな。いくら美言とお泊まり旅行だからって、任務だもんな。つーか安倍も一緒かよ……」 「ん?なんか言ったか?」 「いーや、なんにも。精々生き残れるように頑張りますよ」 「煉ちゃんなら大丈夫だよ♪」 「……俺、お前の性格が羨ましいわ」 「へ?」 というわけで、俺、美言、安倍の3人は東京第二空港から京都へ飛び立った次第である。
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どーもー^^ - 翼無き天使 (男性) - 2010年03月27日 (土) 15時17分 [1091]
約半年ぶりくらいの続編です。 なんという不定期っぷり笑 まぁ就活やなんやで微妙に忙しかったりするんで・・・ 私の小説もひどいですが、今日の求人の少なさもひどいもんです。 仕事がみつかればいいんだが・・・笑 次がいつになるかわかりませんが、また暇を見つけて投稿したいなと考えております。 暇な人は読んでみてくださいな^^ ではでは
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どんも〜 - ベールゼブブ (男性) - 2010年04月01日 (木) 21時52分 [1092]
私もここに顔を出すのは久々です。
最近ブログに全部書いちゃってるってのと、こっちから転用して書いてるのが多いってのとで。
あ、安心して下さい。ルークのほうは全然書いてません。
そろそろ続き書くかな〜。ちょっと暇だし。
でも前の内容忘れた・・・・・・。
探そ・・・・・・。
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