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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


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ドラゴンクエストやファイナルファンタジーまたはその他(アニメ、ドラマ)などでも、楽しそうな小説やストーリー、
詩、日記などがあったらとにかく書き込もう。
他人が見ておもしろいと思った内容、自分が思いついた内容があったら、とにかくどんどん投稿してみてくれい。

(注)最近ここをチャット代わりに使われている方がたくさんいます。
チャット代わりに使われますと、せっかく一生懸命小説等を書いた方の内容がすぐに流れて見れなくなってしまいます。
ここは小説やストーリー、詩、日記などを書くところですので、チャットはこちらにてお願いいたします。

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  ガント編3 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月07日 (金) 14時14分 [664]   
  ケイトはスプーンをルルから受け取った。彼女はスプーンを台車に乗せて厨房まで運ぼうとしていたが、
「あの、ケイトさん。」
ルルに呼び止められ、振り返った。
「何?」
「その・・・王女様があなたに部屋へ来るように伝えて来いと仰ったものですから・・・。」
ケイトは盛大にため息をついた。
「また?これで一体何回目よ?文句つけてやるわ!ちょっとスプーンよろしく!」
ケイトは腕を大きく回しながら恐ろしい形相で王女の部屋へ向かった。
とりあえずルルはスプーンだけ厨房に持っていき、彼女の後を追った。
そして王女の部屋にべったりと貼り付き、聞き耳を立てる。
「あんた本当いい加減にしなさいよ!?一体これで何回目だと思ってんのよ!?たかだかアルキスが欲しいためだけに仕事中にいちいち呼びつけて、『別れろ』ですって!?おふざけも大概にしたらどうなの!!」
「王女に向かってその口のききかたはなんですの!!貴女がさっさとアルキスと別れないから、あの方は貴女に気を使ってちっとも私に振り向いてくれないのですわ!」
ダン、とテーブルを叩く音がする。
「王女らしく扱って欲しかったらあんたも王女らしく振る舞いなさいよ!!っていうかあんた、自惚れるのも大概にしたら!?気を使ってるんじゃなくてハナから相手にされてないのよ!!いい加減気づいたらどうなの!!そもそも人の男に手を出すなんてサイテーだわ!!」
「なんですって!?なんならこの場で貴女に暇を与えてもよろしくてよ!?」
ケイトが大声で笑い始めた。
「クビにできるんならやってみなさいよ!アルキスもあたしの後を追ってこんなとこ辞めることになるわよ!?それでいいんならね!むしろあたしの方から辞めてもいいぐらいだわ!そしたらアルキスも当然辞めることになるでしょうね!それでもあたしのクビを切れる!?それとも彼ごとあたしを追放する!?処刑する!?いずれにしてもアルキスはあんたの元に戻っては来ないわ。よく考えてモノを言ったらどうなの!?」
ケイトはまた大声で笑っていた。まるで悪の魔女のように。
「それじゃ、あたしは仕事に戻るわ。よく考えることね。自分の行動が果たして正しいのかどうか。横恋慕が純粋な愛の形か。それが納得できないってのなら、いつ辞めてもいいのよ。こんな国だって、出ていってやる。もちろんアルキスと一緒にね!ま、でも当分はアルキスを側に置きながら苦しむのね!」
ケイトは笑いながら王女の部屋から出た。ルルはどこに身を隠そうか迷っているうちにケイトに見つかってしまった。
「何アンタ、聞いてたの?」
「いえ・・・その・・・ちょっと心配になっちゃって・・・。」
ふ〜ん、とケイトは廊下を歩きだした。ルルもそれに続く。
「あんたも詮索好きなのね。あたしに似てる。」
ケイトは怒るでもなく、むしろ笑いながらそう言った。
「いえ・・・そんなつもりじゃ・・・。」
本当はそんなつもりだけど、とルルは心の中で付け加えた。
「でも酷いと思うでしょ!?あんたも!人の男に横恋慕した挙げ句、正規の恋人を仕事中に呼びつけて『別れろ』ですってよ!?理不尽も甚だしいわ!」
「でも貴女をクビに出来ないんですね。姫様は。」
当たり前よ、とケイトは胸を張った。
「アルキスは言ったのよ。あたしがこの仕事辞めるんなら、彼も辞めるって。あたしが国を追い出されたら彼も出ていくって。だから、あの女もあたしには手出しできないのよ。・・・まあ、彼のこと信用してないわけじゃないけど、万が一姫に振り向いちゃったり、あの男好きの王妃に手を出されたら絶対嫌だから、近々本当に辞めようと思うの。この国も出ていくつもりよ。」
「出ていくって・・・!アテはあるんですか!?」
ないわ、とケイトは平然と言い放った。
「だからアルキスとまだ相談中なの。やっぱり、それなりに稼いでからじゃないと路銀が危ないじゃない?・・・全く・・・。さっさとグースの王子と結婚しちゃえばいいのよ。」
「グースと結婚・・・?」
ケイトは驚いた顔を見せた。
「あら、有名な話じゃない。王がグースに話を持ちかけたんだけど、王子と姫が反対している上に、グースにまで断られたんでしょ?・・・全く・・・。さっさと結婚しちゃった方があたしもスッキリするのに・・・。」
「それほどアルキスさんが好きなんですね・・・。王子は何故結婚を断ったんですか?」
「ん〜・・・あの王子のことだからねえ〜・・・。なんていうか、基本的に自分以外の人間が嫌いなんじゃない?・・・まあ、他に恋人がいるって噂もちょっとばっかしあるけどね。」
恋人・・・か。ルルは少し考えた。

王子の窓をコンコンと叩く、一人の陰。
王子は窓を開けた。
「・・・ミーナか・・・。どうした?」
黒髪の少女はじっと王子の顔を眺めていた。
「・・・急に寂しくなっちゃって・・・。今、大丈夫?」
王子は部屋の扉を開け、辺りを見渡し、誰もいないことを確認した。
「・・・大丈夫だ。入りなさい。」
少女は王子の手を借りて、窓から入ってきた。
そしていきなり王子に抱きついた。
「私・・・いつになったら貴男と一緒になれるの?私・・・私・・・!」
「ミーナ、落ち着け。まだ、その時じゃないんだ。もし、時が来たら・・・駆け落ちしよう。」
駆け落ち!
少女はその言葉を聞いて途端に慌てだした。彼女は王子の顔を見上げる。
「ダメよ!駆け落ちなんて、卑怯じゃない!?私達の関係をお父様とお母様に認めてもらいたいの!!駆け落ちなんて嫌!!」
少女の豹変ぶりに王子は驚いたが、特に何の疑問も持たなかった。それほど彼は人の気持ちに疎かったのだ。
「だが、父上は俺をグースの王女と結婚させるつもりでいる。お前のことなど認めようとしないだろう。」
「そこをなんとか説得するの!駆け落ちは本当に最後の手段にして!!まだ説得しないうちから諦めちゃダメよ!!」
王子は少女を抱きしめて言った。
「そうか・・・分かった。それほどお前が強いと思わなかった。・・・そうだな。父上と母上には俺からうまく言っておく。」
少女は笑って頷いた。
あどけない笑顔ではなく
不敵な笑みで。

  グース編3 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月07日 (金) 15時34分 [665]   
ルークは兵士長と睨みあっていた。
剣を上段に構えながら。
先に動いたのはルークだった。
兵士長はルークの剣を受け止めた。
ルークの方が背が低い分、受け止められたときの分が悪い。
ルークは思いっきり兵士長の剣を弾いた。
そしてすかさず一回転しながら水平に斬りつける。
しかしこれも兵士長に受け止められた。
「メイド・・・どこで剣を覚えた?」
「お前に語る必要はない。」
そう言ってルークは切っ先を持ち上げ、回転させた。
カンッ!
兵士長の鎧に一筋の大きな傷ができた。
「!小娘・・・!」
「本気で来い。それとも今のがお前の本気か?」
「ナメたマネを・・・っ!」
兵士長は剣を大きく振りかぶり、一気に下ろした。ルークは振りかぶった瞬間に兵士長の横をすり抜けた。
兵士長がその場で倒れる。
「剣を振りかぶりすぎだ。馬鹿者め。そんなに大きく振っていたら大きくスキが出来てしまうだろう。・・・安心しろ。今のは峰打ちだ。」
そう言ってルークは剣を鞘に納めた。
「・・・参った・・・・。」
兵士達は一斉におおおおおおおっと歓声を上げた。
「兵士長が負けを認めたぞ!!」
「メイドが兵士長をうち負かした!!」
「すげええ〜!!」
ルークはまた兵士達に囲まれた。
「・・・あの・・・仕事あるんで帰りたいんですけど・・・?」
「ねえ!ここで兵士長やってよ!!」
「女兵士長かぁ〜・・・。かっこいい〜!!」
「一生ついていきます!!姐さん!!」
ルークは盛大にため息をついた。
「・・・私の訓練は辛いぞ。本当についてこられるのか?」
兵士達は一斉に頷いた。ところが、ルークがやる気になったところで、とんだ邪魔が入ったのである。
「あっ!!ルーナこんなところにいた!」
振り返ると、そこにはメイド服姿のアーサー、「アミンタ」が掃除道具を持って訓練場に入ってきていた。
「ア・・・アミン・・・タ・・・?」
兵士達の目線が一斉に「アミンタ」に釘付けになる。
「ねえ・・・あのむちゃくちゃ美人なメイド・・・知り合い?」
「ええ・・・まあ・・・。」
ルークは頬をぽりぽりと掻いた。
「アミンタ」は呆れ顔でルークに近寄る。
「貴女まだお仕事たくさんあるでしょうが!なかなか配管修理の手伝いが来ないって、配管工のマリオさん怒ってましたよ!こんなところで油売ってないでさっさと仕事に戻りなさい!!ほら!!」
「痛い!!耳を引っ張るなアー・・・・ミンタ!!」
「アミンタ」に耳を引っ張られ、ルークはずるずると引きずられていった。
兵士達は唖然とその様子を眺めていた。
「わあ・・・美人だけど結構怖いな・・・あのメイド・・・。」
「ああ・・・。剣が強くてもあのメイドだけには敵わないんだな・・・。『ルーナちゃん』だっけ?」
「美しいバラには棘がある、ってのは本当なんだな。『アミンタちゃん』だっけ?」
『かっこい〜!!』
兵士達はそこに落ち着いた。

「痛い痛い!!離せアーサー!!」
アーサーは引っ張っていたルークの耳を離した。
「貴女ねえ・・・。今の僕たちの仕事分かってるんでしょうねぇ?何仕事サボって兵士達と楽しそ〜〜にお喋りしてるんですか?」
「いや・・・違うんだ!あいつらの剣の扱い方があまりにも下手すぎてつい・・・。」
「つい・・・何ですか!?まさか剣を教えてたんですか?とんだ大馬鹿ですね貴女!!」
ルークは流石にアーサーをキッと睨み据えた。
「大馬鹿とはなんだ大馬鹿とは!!」
アーサーは掃除道具を叩きつけた。
「大馬鹿だから大馬鹿だ!!逆ギレしてる暇があったらちったあ考えやがれ!!お前が剣を教えようもんならそのぶんルドンまで危うくなるっつーことだろうがよ!!前に説明しただろうが!忘れたか!?この国はルドンを狙ってるっつった!場合によってはルドンに戦争をしかける可能性もあるって言わなかったか!?ルドンの兵はお前が鍛えたお陰でそれなりの国力をもってるから大して戦争の心配はしてなかったがな、お前が敵になるかも知れない国の兵を鍛えてどうする!!お前ルドンを裏切る気か!?」
アーサーがいつになくルークを怒鳴り散らしているのを見て、ルークは全身が凍り付いた感覚がした。
これまでに見たことのないアーサーの姿に、彼女は恐怖で頭が真っ白になった。
「・・・で、剣の手ほどきはしてたのか?どうなんだ。」
「直接はしてない・・・。ただ、ちょっと剣の扱いが酷かったから、私が代わりに人形を斬って・・・ここの兵士長に勝負を挑まれたから、戦って勝って・・・・。」
「要するに手本を見せた挙げ句道場破りか。・・・ったく・・・剣のこととなったら見境無くなりやがって・・・そんなんだからお前は馬鹿なんだ!それだけやって気が済んだらさっさと帰ってこれば良かっただろうが!なんで帰ってこなかった!?」
ルークは泣きそうになりながら、小声で答えた。
「・・・あいつらに・・・囲まれて・・・つい・・・。」
「ああ!?聞こえねえ!!」
ルークは本当に泣き出した。
「あいつらに・・・囲まれて・・・道塞がれて・・・帰るに帰れなかった・・・。」
アーサーははあ、とため息をついた。
「んなの、つっぱねて帰れば良かったじゃねえか。お前らしくない。それとも囲まれて英雄気取りでいたかったのか?」
「・・・・分からない・・・・。」
かといって、彼女にはその気持ちがあったことも否めなかった。
アーサーは無言で掃除道具を拾った。
「・・・兎に角、これ以上マリオさんを待たせるわけにもいかないから、地下室に行って来い。ついでに何かこの国について知ってることはないか聞いてこい。こっそり何か聞いていることがあるかもしれない。僕は王子の部屋掃除しながら色々聞いてこようかと思う。分かったな?」
ルークは啜り泣きながら頷いた。
「あー分かったからもう泣かない。怒鳴ってごめん。」
そう言ってアーサーはルークの肩を抱いた。

  家政婦は見た(コメ)3 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月07日 (金) 15時41分 [666]   
え〜・・・前作のカルマン並の悪女が現れた感じです^^;
そしてやはり兄妹です。アーサーがルル並に変貌を遂げましたーー;
そしてこのところマゼンダさんの出番が少ないために今鞭でいたぶられてます。誰かタスケテ・・・。(阿呆)

ではレス返し
>天使様
免許取得おめでとうございま〜す^^私まだ車校すら行ってませんーー;

折角の見せ場も結局アーサーにド叱られてございます^^;
彼女の本当の見せ場はやっぱり戦闘中だけ・・・?

では☆

  おぉ^^; - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月07日 (金) 16時00分 [667]   
アーサーのぶち切れシーンは恐怖を覚えつつも爆笑でした^^
ルークはやっぱり女の子ですね^^
オレが抱きしめてやりたくなっちゃいましたよ。
頑張って欲しいですね〜^^
では


  第8章 8節 潜入 - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月06日 (木) 22時47分 [661]   
  DICの根城は、意外にも市街地の中に位置していた。もう誰の使っていない古びた廃ビル。
木を隠すなら森、そんなところだろう。
支部で天峰が手配した図面によると、上は10階、下は5階まである。だいぶ古くなっているらしく、近々取り壊される予定らしい。
なるほど確かにコンクリートはあちこち剥がれて鉄筋が顔を覗かせている箇所もある。窓もガラスがはまっている方が少ない。
フロアはゴミだらけ。タバコの吸い殻、空き缶、空き瓶。壊れたラジオ。酷い有様だ。
きっと夜は若者の溜まり場になっているのだろう。獲物を捕らえるには絶好のポジションだな。
十中八九、DICのアジトは日の光が入らない地下で、昼にDICがアジトの外に出てくることはまずないだろう。
だから明るいうちに廃ビルをガサ入れしようという寸法だ。最低でもビル内でのアジトの正確な位置は把握しておきたいし、調査、今回のようなケースでは盗聴になるが、その位置も確定させておきたい。
とりあえずは1階の捜索だ。手当たり次第にものをひっくり返す。これだけ散らかってれば誰も気づくまい。
「そうそう、天峰がツカツカ先に支部を出ちゃうんで、本部長には僕が報告しておきましたよ」
廃ビルの中を物色しながら思い出したようにアルトが言う。
「明日か明後日にはマイヤが応援に来るそうです」
「…あぁ、あの五月蝿い女か」
天峰が放置されたデスクの引き出しを下から順に調べながらボソッと呟いた。
「知り合いなんですね」
アルトはゴミ箱を倒して中身を探る。やはりゴミばかり。
「何度か会ったことはある」
「そうですか。……天峰はいつからWPKOに?」
「聞いてどうする」
「いえ、ちょっと気になっただけで」
「…お前に関係ない」
「そりゃまぁ、そうですけど」
予想通りの返答に苦笑しながら、アルトは不自然にちょこんと置いてある植木鉢に目を置いた。
茶色い安物の植木鉢。水の受け皿に乗っている。中の土は乾燥しきって植物は枯れ果てていた。
まさかこんな初歩的なことが……。
そう思いながら植木鉢を持ち上げると案の定、受け皿の上には真鍮性の鍵があった。
「おい、どこかに鍵があるはずだ。探せ」
いつの間にか姿を消していた天峰が戻ってきた。
「地下に行く扉に鍵がかかってる」
「鍵ならここに」
そう言って天峰の方へ鍵を放る。
「今回のDICは、知性が高い割にはレトロな思考回路みたいですよ」

地上とは打って変わって、地下の方の内装はかなり整備されていた。取り壊し寸前のビルとは思えない。
薄暗いが照明もちゃんとあるし、何より電気が通っていることがそもそもおかしい。ここは廃ビルなのだから。
「鍵が閉まってるってことは、みなさんお出かけですかね」
人に擬態したDICがぞろぞろと街中を徘徊しているかと思うとゾッとする。
地下1階から徐々に下へ。最初は特に何もなかったが、地下4階から様子が変わってきた。
パソコンが置いてあるし、テーブルにイス、テレビまである。
生活感が出てきたのだ。あんな化け物たちが人間同様の生活を送っているとは。
「アジトはここで間違いなさそうですね」
「ああ」
天峰がパソコンの置いてあるデスクの引き出しを開ける。
アルトはテーブルやイスの下、見つかりにくい場所に米粒よりも小さい高性能盗聴器を設置していく。
「見ろ」
天峰が書類の束をテーブルに放る。
「これは……」
「人間を狩るマニュアルだ」
方法、場所、時間帯、その後の処理、組織内の連絡方法など、細かなことが指示されている。
「この組織は、何者かの命令で動いている…?」
書類から目を離さないままアルトが呟く。
「かもな」
「それしかないでしょう。でなきゃこんなもの作ったりしませんよ」
「決めつけるな。証拠はまだない」
天峰がパソコンの電源を入れる。
「…ちっ、パスワードが要るな」
「ちょっと貸してください」
そう言ってパソコンを自分の方へ向けてキーボードをカタカタ叩く。
「ハッキングして侵入します。2分ください」
「殲滅者の上にハッカーだったとはな」
「悪用はしてませんよ?昔ちょっと銀行の預金口座を水増ししただけです」
師匠の借金を消すための苦肉の策だった。だからマフィアはやめておけと言ったのに。
「充分犯罪だ」
「逮捕するならアデル師匠にしてくださいね。でも天峰は警察じゃないですから大丈夫です」
「殲滅者は任務遂行上必要であるなら民間人・機関員を問わず最大3ヶ月拘束する権限がある」
「ははは、まさか。……本当ですか?」
コンピューターへの侵入成功。
「メールを調べろ」
受信メール、やはり何者かからの指示が送られてきてる。
差出人は「Dhurt」。何者だ…?人間か、それともこいつもDICか。
「証拠が出たな」
「そうですね」
「組織の目的がわかるようなものはないか?」
「え〜と、指示を伝えるメールばかりですね。日時、場所、目標とする人間、その人のデータ。差出人は全て『Dhurt』」
何かのコードネームだろうか。このデュートも組織の一員だろうか?だとしたらこいつがリーダー。それとも全く未知の存在なのか。
「かなりの情報網を持ってるみたいですね、このデュートは」
かなり綿密な計画の下にこの2年間の犯行は行われてきたらしい。
デュートが詳細な指示を組織に行う。組織がそれに従って計画的に人々を襲う。それを2年間。200件以上。
いったい何のために……?
「送信メールは、その報告です。その他にルーマニアに点在すると思われる仲間と連絡を取ってます」
「位置を割り出せるか?」
「はい、出来ますけど僕がやるより本部にデータを転送してやってもらった方が早いと思います」
「そうか。場所を特定したら各場所に暇な殲滅者を派遣するように伝えとけ。その方が犠牲者の数が少なくなる」
「わかりました」
「俺は下を見てくる」
言い終わるや否や天峰が足早に去って行った。
アルトは携帯電話を出してヨーロッパ地域本部にかける。
呼び出し音が2回。
「WPKOヨーロッパ地域本部です」
受付の女性の声が出た。どこかで聞いたような…。
「殲滅部門のアルト=ナイトウォーカーです。至急本部長へ取り次いでもらえますか?」
「アルト?久しぶりね」
「…ニコールですか?」
「覚えててくれたんだ!ちょっとカンゲキ」
彼女はニコール。WPKOヨーロッパ地域本部の受付嬢で、初めて地域本部を訪れたときに本部長に取り次いで案内してくれた人だ。
「最近顔みせないけど、任務中なの?」
「はい」
「へ〜、やっぱ忙しいのね〜。あんたたちって」
「あの、ニコール。本部長に取り次いでもらえます?」
「あら、ごめんなさい。いちおうIDコード教えてくれる?規則なの」
「え?あぁはい」
急いで身分証明書を取り出す。そこに記載されている英字と数字の羅列を読み上げた。
「a417sb26です」
「確認したわ。ちょっと待っててね」
数秒の沈黙の後、今度は聞き慣れた男の声が聞こえてきた。
「やぁアルトくん。なにか進展あった?」
「はい、まぁ色々と。アジトは報告した廃ビルの地下4階です。目的はまだ掴めていませんが、この組織は何者かからメールで指示を受けて行動してるようです。指示内容は綿密で、かなりの情報網を持っていますね。メールの差出人は全て『Dhurt』という者です」
「デュート……」
「送信メールからルーマニア各所に散らばったDICの居場所がわかりそうなので、そっちにデータを転送します。場所を割り出したら出来るだけ早急に殲滅者を派遣して欲しいんです」
「オッケー。じゃあ情報管理部門の端末に送ってよ。今何人か任務から戻ってきてるから、割り出し次第派遣するよ」
「ありがとうございます」
「アルトくん」
「はい」
「まだ確証はないからこれはボクの推論になるんだけど…」
本部長はやや声をひそめて言う。
「今回の任務は、敵の罠かもしれない」
「罠…ですか?」
「そう、あまりにことが簡単に運びすぎている。今まで存在すら気づかなかった組織がひょっこり現れ、アジトはあっさり見つかり、その隠密性の高い行動とは逆に情報の管理はずさんだ」
「確かに、そうですね。本部長は罠の可能性が濃いと?」
「まだ、わからない。でも妙だ」
「それで、どうしますか?」
「今は何も。ただ用心して行動してちょうだいよ」
「はい、わかりました。それじゃあ」
アルトは電話を切ってポケットにしまった。
「罠、か」
確かに国一つの規模となったら普通はもっと多くの殲滅者で当たってもいい。
本部長があえて2人に絞ったのはそういう理由があったのか。
「な〜んだ。やっぱ気づいてんじゃねぇか」
突然後ろから声が聞こえた。振り向くと部屋の入り口に若い男が寄りかかって、サングラスを左手で弄んでいた。
誰だ?いつからそこに…?
カジュアルな今風の服装、DICのそれと似ている深紅の瞳、銀のピアスがキラリと光る。腰からはチェーンが半円型に垂れ下がっている。
「ここに探しに来た連中はもう戻って来ないぜ?」
「あなたが…デュートですか?」
そう聞くと若い男は吹き出した。
「おいおいおい、あんな堅物と一緒にすんなよ。って見たことねぇか」
「じゃあ、あなたは何者ですか?」
「…さぁ、誰でしょうか…?」
男の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。



  あと少し^^; - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月06日 (木) 22時54分 [662]   
やっとあの1節に繋がりそうな予感^^;
ついにティックとの戦闘、なんですかね〜。わかりません(ォィ)

アルトはいけない子ですね。ハッカーだったなんて。
いったいどういうティーンエイジャーですか。

そういえば天峰はまだ1回も戦闘してない^^;
そろそろ彼の活躍が出てくる・・・はず^^;
では

  “Dhurt”を“ダート”と読んでたワタシ^^; - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月07日 (金) 13時35分 [663]   
銀行の口座の水増し!?あの・・・ちょっとやり方を教えて(核爆

やはりあのおちゃらけの読みが当たっていたか!やはりおちゃらけは(以下同文)

それでは(^^)/


  1話しの予告 - ひかん (男性) - 2007年09月06日 (木) 09時50分 [660]   
  ゆうきは絶望したのか。なにをやっていたのか。


  ガント編2 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月05日 (水) 13時39分 [656]   
  ルルは王子の部屋の扉をコンコンとノックした。
中からは返事一つ返ってこない。
ルルが再度ノックすると、若い男性の声がぼそっと聞こえた。
「・・・どうぞ・・・。」
ルルはそっとドアを開けて入った。
「お食事が出来ました。」
短い銀髪の王子は窓枠に座りながらゆっくりとルルの方に振り返った。
かなりの美形だ。憂いを帯びた深いマリンブルーの瞳に、ルルは暫く見とれてしまった。
「・・・見ない顔だな・・・。新人か?」
「あ、はい・・・。今日配属されたばかりでして・・・。」
「・・・そうか・・・。」
王子はゆっくりと窓枠から降りた。
ルルは急いで毒味用のスプーンを取りだしたが、王子に止められた。
「毒味はしなくていい。俺を殺したところでメリットはこの国にはないからな。誰も俺を殺そうとは思わぬ。」
「ですが・・・王妃様は仰いました。王族たるもの、常に命の危険に曝されている、と。ひとたび道を誤れば、敵は命を奪いに来る、と・・・!」
王子は小さいテーブルまでスープを自分で運び、椅子に腰掛けた。
「母上の話を真に受けるな。母上はセバルムス公国出身でここに嫁いだからバッシングが酷かっただけだ。」
なるほど・・・。ルルは思った。
「つまり、身分違いの結婚のせいで『財産目当て』とか、『この王国の“乗っ取り”を公国が企てている』とか、そういう考えを持った人間がいるということですね?」
「・・・そういうことだ。母上の噂は聞いているか?」
「噂?」
王子はルルからスプーンを受け取り、少し口に運んだ。
「母上は無類の男好きだ。父上の目の届かないところで何人もの男を手玉に取っている。おかしいと思わないか?そんな無類の男好きが、どうしてあの父上を好きになれる?」
ルルは国王の容貌を思い出していた。
かなり身長が低く恰幅がよいひげ面で、愛嬌はあるがひょうきんで、一体何を考えているかよく分からない。ルルは思わず吹き出しそうになった。
「だから、それぐらいのバッシングはあって当然だということさ。」
王子はスープをまた口に運んだ。
「お陰でこの城の使用人の殆どが女だ。只一人、ミランカのお気に入りを除いてはな。母上はその男の存在を知らない。主にミランカの身の回りをしているからな。その分ミランカの方が心配だ。」
何故、といいかけてルルは止めておいた。
王子のもの悲しそうな顔を見ては。

「妹の方が心配・・・・?どういうことかしら・・・?」
そう言いつつルルは王女の部屋まで王女の食事を運び、ドアをノックした。
また返事がない。全く・・・兄妹そろって・・・と思いながらルルはまたノックした。中から何か声が聞こえる。ルルはそっと耳を澄ました。
「誰か来たようです・・・。お入れ下さい。」
若い男の声と
「誤魔化そうったって、そうは参りませんわよ!」
凛とした品のある、若い女性の声。
「貴男はそうやって私から逃げようとなさるわ!私の気持ちに気づいていらっしゃってるくせに・・・!ねえ、もう一度・・・もう一度だけでいいの!考え直して下さらない?」
「いけません、ミランカ様。私は・・・」
ルルは更に耳を澄ました。
「やっぱり・・・あの女のことが・・・!?ケイトが好きなのね・・・?」
ケイト・・・・?
ルルの聞き覚えのある名前だった。
そうだ・・・毒味用スプーンの回収係だったわ・・・。
「・・・はい。そうです。私は彼女とともに過ごすことを誓い合いました。誰よりも彼女を愛しております。私のことはお忘れ下さい。」
「嫌よ、アルキス!!どうして私の気持ちを踏みにじるんですの!?待って!!どちらへ行かれるおつもりですの!?」
ルルはドアから耳を離した。
そして王女の料理の乗っているカーに戻る。
「貴男はそうやっていつも逃げるんですのね!?見てなさい!!貴男の大事なケイトがどうなっても知りませんわよ!!」
ゆっくりとドアが開いた。
淡いグリーンの長髪の青年が中から出てきた。男はルルに気づき、一瞬戸惑った。
「・・・聞いていたのか・・・?」
「い、いいえ!何も・・・。ただ、ノックしてもお返事が無かったのでどうしようかと思ってまして・・・。」
青年は王女に呼びかける。
「・・・お食事のお時間のようです・・・。やはり外で待ってました。」
「お入りなさい!」
王女は扇子でパタパタと扇ぎながら、つっけんどんに答えた。
「失礼します。」
ルルは給仕と入れ違いに入っていった。
「お食事が出来ました。お召し上がり下さい。」
そういいながら、ルルは毒味用のスプーンを取りだし、毒味をした。
「・・・あら。ケイトじゃないの。あの子はどうしたの?」
王女は面白くなさそうに尋ねた。
「今ダイニングで毒味用のスプーンを回収してます。この後で私もスプーンを渡しに行きますけど。」
「あらそう・・・。」
王女は窓の外を眺めた。
「あの女・・・毒味中に死んじゃえばよろしいのですわ・・・!」
「何かございましたか?」
王女は振り返った。
「何でもございません。兎に角早く出ていって頂戴。それと、ケイトに言って置いて。この部屋に来るように!」
王女の目は野獣のようにギラついていた。

  グース編2 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月05日 (水) 14時28分 [657]   
「しっかしなァ・・・。」
ルークは王女の部屋から出て心底困っていた。
「あの棚の目的が“アンドス王子人形”を置くための棚だったとは・・・・。別にそれだったら木製でもいいじゃねぇか・・・。」
ルークはふぅとため息をついた。
「しかし・・・どっから先に手をつけようか・・・。やることが多すぎてどれを優先したらいいか・・・。アーサーと接触するか。どこで掃除してるんだ?」

「お掃除に上がりました。国王陛下。」
王は快くアーサーを部屋に入れた。
かなり身長が低くて恰幅がよいひげ面で、愛嬌はあるがひょうきんな顔で、アーサーは思わず吹き出しそうになったが、なんとか掃除に取りかかった。
「ほお〜。綺麗なお嬢さんじゃのう〜。背が高くて羨ましいわい。」
アーサーは笑いながら心の中で「僕は男です」と言った。
「うちの息子の嫁に来て欲しいくらいじゃ。ヴィルラマスも年頃じゃし、考えてくれんかのお?」
「ご冗談を。」
「そのハスキーボイスは息子好みじゃ。きっと気に入ってもらえるぞい。」
アーサーは笑いながら、ちょっと困惑していた。
「ほんに・・・・ヴィルラマスはいつまでああなのか・・・。心配じゃ・・・。」
「?どうかなさいました?」
王はアーサーの方をしっかりと見つめた。
「息子はいつも女どもの尻を追い回してばかりで、次期国王の自覚が全くないのじゃ!妻を取れば少しは変わるやもしれぬ。だから・・・息子に会うだけで良い!なんとか考えてくれんか!?」
はぁ、とアーサーは生返事をした。

一方、ルークも力仕事に何回も呼ばれ、全くアーサーと接触できなかったのである。
メイドがなかなか開けられないジャムの瓶の開封から傷んだ城の壁の補正まで、かなりひっぱりだこだった。
今度の仕事は兵士の訓練場の訓練用の人形の補修である。
「ひえ〜!君、メイドなのに力あるね〜。」
「日々トレーニングの毎日ですから。」
人形が完成し、一同は沸き上がった。
ルークはその場をあとにしかけ、兵士の訓練をふっと眺めた。
あまりの兵士達の剣の扱いの酷さに、彼女の武人の魂が揺さぶられてしまった。
「じれったい!!」
ルークは一人の兵士の剣を横から奪い、人形に向かって鋭い剣の一撃を浴びせた、更には素早く何度も人形を斬りつけ、折角作ったばかりの人形がボロボロになって倒れた。
兵士達は一気に沸き上がり、ルークに盛大な拍手を送った。
「すごい!!一体どこで覚えたんだそんな剣技!?」
剣を奪われた兵士が拍手を送りながら賛辞を述べる。
ルークは一斉に兵士達から囲まれてしまい、立ち去ろうにも立ち去れなかった。
「・・・あの・・・仕事がありますんで!」
「ちょっと教えてよ〜!女の子なのにどうやってあんな風に剣が使えるようになったの!?」
「どうしてあんな風に剣が上手なのにメイドなんかやってるの!?やっぱりメイドの方が女の子として憧れ?」
「女兵士として働いてもいいんじゃない!?」
ルークは一番嫌いな言葉を言われ、とうとう怒りが爆発した。
「私を女扱いするな!!」
辺りはしんと静まり返った。ふと気まずくなってルークは俯いてしまった。
「かっこい〜!!」
兵士達は彼女の表情を読みとることなく、一斉に拍手を送った。
「何を騒いでいるんだ!」
ふと野太い男の声が響き、兵士達は振り返った。
「兵士長!!」
「何メイドなんか相手に大はしゃぎしておる!!さっさと訓練に戻らんか!!」
「こんな訓練じゃ、いつまで経っても強い国家にはなれません。」
ルークが毅然と言い放った。
「・・・ほお・・・小娘・・・。一介のメイドが兵力の何を分かるというのかな?」
「ですが兵士長、このメイドかなり剣の扱いがなされてます!!もしかしたら元女剣士だったかも知れませんよ!?」
ルークは全く大正解の兵士の言葉に少しどきっとした。
「ほお・・・。だがそれは俺が決めることだ。お手合わせ願おうか、メイド!」
ルークは胸を張った。

  家政婦は見た(コメ)2 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月05日 (水) 14時38分 [658]   
ルークったら・・・・。
ちょっと色々とドロドロしてきました^^;
ドロドロで飯3杯はいけます。ワタシ。

レス返し>天使様
ちょっと私自身までこの後の展開が楽しみになってきたのは自画自賛でしょうか??

それでは☆

  頑張れルーヌ・・・じゃないやルーク! - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月05日 (水) 20時24分 [659]   
今日車の免許取りました^^

まぁそれはさておき、やっとルークにもまともな「見せ場」が回ってきましたね^^
今までいじられっぱなしでしたもんね〜^^;

では次回も期待してます。


  二つの国 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 17時40分 [651]   
  ガント国。
元々隣のグース国とは一つの国であったが、前の王、つまりは今の両国の王の父親が領土を二分して双子の兄弟に与えたのだという。
ところが
最近この二つの国にある問題があるのだという。
その話をしてくれたのは酒場のマスターだった。
マゼンダはワイングラスを傾けながら聞いていた。
「・・・なるほど・・・。両国の政略結婚を、ガントの殿下二人とグースの王族が嫌がってるってわけね。」
「そうなんです。」
マスターはカクテルのシェーカーを振りながら答えた。
つまりこういうことである。
ガントの王子、アンドスに従妹であるグースの王女を娶らせ、妹のミランカ王女をグースの王子のもとに嫁入りさせることにより、両国の統合を図ろうということである。
「でも統合したところで一体なんのメリットがあるのかしら?元首が二人いることになるのよね?しかも兄弟姉妹従兄妹同士が同じ城に住むってこと?政治的混乱を招くことになるわよ。」
「そうなんです。実は・・・これは噂なんですけどね・・・?」
マスターは出来立てのカクテルを出しながら小声で言った。
「実はガントの王子と王女は、他に恋人がいるんじゃないかという話なんです。あくまで噂ですが。更には、グースの方ではルドンの王子を養子にとって、ルドンを統合する気らしいです。」
マゼンダはカクテルをくいと飲み干し、にやりと笑った。
―――まだルーヌにプロポーズしてないのに―――
クレメント王子の洩らしたつぶやきを思い出しながら。
「・・・いいカクテルだったわ。名前はなんだったかしら?」
「パラシオ・デ・ムヘレスです。」
「“女の宮殿”・・・いい名前ね。」

「というわけで、あなた達にはお城で働いてもらうわ。」
「どういうわけでですか?」
ルークが教師に尋ねる。
「まず私達がしなければならないことは、この石版の一部を探すこと。市長さんの話によれば、この国のどこかにあるはずよ。」
「・・・ハァ・・・。」
「そしてまだすべきことは二つ。」
マゼンダは指を二本立てて言った。
「一つは、この国とお隣のグースに潜り込んでロイヤルファミリーの内情を把握する!もう一つは、グースのルドン統合を止める!何か質問は?」
ルークとアーサーが手を挙げた。
「何?アーティー。」
無視されたルークは少し眉をしかめるが、とりあえず黙っておいた。
「どうやって二つのお城に潜入するんですか?二手に分かれるんですか?」
ルークが目を丸くしてアーサーの方を向く。
違う!!そこじゃないだろ!!と言いたげな目だった。
「そうね。その方が動きやすいわね。いざというときの連絡も取りやすいわ。ルルは?何か聞きたいことある?」
ルルはちょっと驚いたが、聞いた。
「また、ドジっ娘メイドやるんですか?」
「良い質問ね。今回は全員メイドやってもらうわ。」
『全員!?』
アーサーが思わず口を挟んだ。
「僕一応男ですよ!?」
「分かってるわよ。でも、女の子として入ってもらった方が相手も油断しやすいのよ。まあ、幸いアーティー違和感無いからうまく誤魔化せるんじゃない?」
アーサーは顔を赤くしながら俯いた。
「っていうより、いっそのこと全員同じ格好にした方が服の仕入れが楽じゃない。」
「でも・・・僕ぐらいの背丈の女性なんているんですか・・・?」
「アナタそれ自慢?別にいいわよ。アーティーの分ぐらいあたしが作るわ。裁縫だって得意なんだから。」
マゼンダはコホンと咳払いをした。
「それじゃ、そういうことでよろしく。」
「ちょっと待って下さいよ先生!!根本的なことがまず解決できてません!!何で親戚同士の国に首を突っ込まなきゃいけないんですか!?それと、グースがルドンを統合するってどういうことですか!?」
「じゃ、あんたとアーティーはグースに行ってきなさい。私は石版の欠片を探しつつガントの内情を探るわ。もちろんメイド服着るのよ〜♪」
「嫌だ〜〜〜〜〜!!」
ルークが頭を抱えて大声で抵抗した。

  ガント編 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 18時52分 [652]   
「まずは、ルル。今回はドジっ娘じゃなくていいから、なるべく内情をうまく探るのよ。あたしはあちこちを調べ回って石版の欠片を探してみるわ。何か気になるのよ。これ・・・見たことがあるようなないような・・・。」
また例の薬で二人は同じくらいの年齢の少女になっていた。不意にルルがにやりと笑った。
「マゼンダさん。やっぱりなんだかんだ言ってメイド楽しんでるでしょ?」
マゼンダはレナからもらった石版を仕舞いながら、笑った。
「やっぱり分かる?今回はアドラスの家より楽しくなりそうよ。」

ルルは厨房に配属された。料理を運びがてら、もしかしたら国王に接触できるかもしれない。ルルにとっては好条件であった。
マゼンダは城の掃除を任された。幸い石版の欠片はレナの記憶通り城の倉に入っていた。しかし外から中の様子は確認はできるものの、鉄格子に厳重に鍵がかかっていて入ることは難しそうであった。
「・・・なんとかバレないようにこっそり開けましょうか・・・。やっぱりあたしって盗賊かしら・・・?」
「どうかしまして?」
不意に後ろから女性の声がかかり、マゼンダはぎょっとして振り返った。
上品にウェーブがかかった、長い亜麻色の髪に銀のティアラを戴き、淡いピンク色の豪華なドレスを着た少女。一目でこの国の王女と分かる出で立ちに、マゼンダは慌てて跪いた。
「いえ、なんでもございません!ミランカ王女様。」
王女は倉の中を覗き、右へ左へと目線を送った。
そして一点に視線を集中させる。そして彼女はつまらなそうにため息をついた。
「貴女変わってますわね。あんな石の板に見とれるなんて。」
マゼンダは内心ドキドキしながらはい、と頷いた。
「あれは父のガントミットが旅の行商人から大枚をはたいて買ったもの・・・。なんでも、大昔の魔王を封印する秘策が書いてある魔道書の一部なんですって。全く・・・。お父様も物好きで困りますわ。」
魔王の・・・・!?マゼンダは息を呑んだ。
「あんなたかだか石の板の欠片にそんなご大層な力があるわけないじゃない。・・・貴女もここには近づかない方がよろしくてよ。お父様の怒りを買う、というより時間の無駄ですから。」
王女はそのまま立ち去っていった。
魔王を封印する・・・!?それは重要じゃない!?
マゼンダはじっと石版の欠片を眺めた。
「飛んだ収穫だったわよ・・・ルーヌ!」

この国ではダイニングで食事をするのはもっぱら王ガントミットと王妃のミリーナだけであり、王子と王女は自室で採るようにしているという。
隣国のグースとの政略結婚の話が持ち上がってから、王子と王女は極力両親と顔を合わせるのを避けているらしい。
ルルは王にスープを出し、二つ用意してあるスプーンのうちの一つで毒味をする。大丈夫なのを確認し、未使用のスプーンを王の右側に置いた。そして毒味用に使ったスプーンを近くのメイドに渡し、新しいスプーンを受け取った。続いて王妃のスープにも同様に毒味をする。
王妃はにこやかに話しかけた。
「貴女、若い割に手際がいいわね。ここに来て何年?」
「今日配属されたばかりです。でも、毒味をさせるなんて、何か毒を盛られるような思い当たる節でもあるんですか?」
その瞬間、ダイニングの空気が凍り付いた。
メイド頭のリタが大慌てでルルの手を引いた。
「いいのよ、リタ。気にしないで頂戴。新人さんなんだから・・・。面白いこと言うのね、貴女。でも、覚えておきなさい。王族たるもの、常に命の危険に曝されているの。ひとたび道を誤れば、それだけで敵は命を奪いに来る・・・。もし王族が居なくなれば、国は一瞬で滅びてしまうわ。そうならないためにも、信頼できる使用人が必要なの。」
王妃のエメラルドグリーンの瞳に、ルルの顔がしっかりと映りこんでいた。
「・・・本当はイケメンの男の子に毒味をさせたいんだけどねえ・・・・。この国にはメイドしかいないんだもの〜。ま、原因はアタシなんだけどさ。」
そういいつつ王妃はため息をついた。
「・・・はい?」
「あ、アンドスとミランカにも運んでやって頂戴。多分部屋にいると思うから。・・・・本当に何やってるのかしら・・・。あの二人は・・・。」
ルルはとりあえずお辞儀をして、厨房で王子と王女の食事を受け取った。
そしてそれらを運びながらにやりと笑った。
「・・・本当だ・・・。マゼンダさん。面白くなってきましたよ・・・。」

  グース編 - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 19時51分 [653]   
「なりゆきでこうなってしまいましたが・・・とりあえずどうすればいいんでしょう・・・?」
「私の知ったことか!!」
ルークとアーサーは慣れないメイド服に身を包み、困惑していた。まだアーサーは背が高いながらも端整な顔立ちと品のある気質のお陰で違和感がないものの、ルークの方は二の腕や足が思いの外筋骨隆々で、端から見ていれば少し無理があった。
「・・・・とりあえず僕たちがしなければいけないのは、この国のルドン統合を止めることです。・・・でもメイドの姿でどうやって・・・?」
「大体ルドン統合ってどういうことだ!?」
アーサーは考えてる最中にルークに横やりを入れられ、ややため息をついて向き直った。
「ルーヌ、分からない?グースがルドンを統合するということは、要するにグースの王女と、ルドンのクレメント王子を政略結婚させて実質ルドンを乗っ取る、っていうことだ。もしルドンが従わなければ、恐らく国同士の争いが起こるだろう。それと、前にマゼンダさんから聞いたんだけど、ガントはどうもグースを統合したいらしい。つまりは従兄妹同士の政略結婚だ。ところが、ガントの王子と王女はそれを快く思ってはいないから、ずっと自室に引きこもってる。だから、マゼンダさんとルルでガントの内情を探って、何故グースをそこまで統合したがるのか、何故王子と王女が政略結婚に納得できないのか、その真相を掴むんだ。で、僕たちはグースで内情を探って、何故ルドンを統合したがるのかを探って、あわよくばそれを止める必要がある。そうでなければ僕たちの帰る家がなくなっちゃうかもしれないよ?」
「で、だから私達にどうしろと言うんだ?ついでに言うと私はルークだ!!」
「だからそれを今考えてるんじゃないか。・・・とりあえず城に入ろう・・・。」

この国では新しく入ったメイドは何故か王子の目の前に出されることになっているらしい。
そういうわけでアーサーとルークも王子・ヴィルラマスの目の前に出された。
短い銀髪で、なかなか端正な顔立ちの王子は、品定めをするような目で二人を迎えた。
「ふむ・・・。なかなかスタイルが良くて綺麗なお嬢さんと・・・ちょっと体つきが逞しい割に幼さの残る顔つきのお嬢さんか・・・。名前を聞かせてもらおうか。」
王子の光る目に少し嫌なものを感じたが、アーサーは無理矢理笑顔を作って答えた。
「アミンタと言います。よろしくお願いします。」
「ルー・・・」
ク、と言いかけたところでアーサーからさりげなく背中を強くつねられ、
「ナ、です・・・。」
と心の中で泣きながら答えた。

「ねえ、見た?あの王子の嫌らしい目つき・・・!」
王子との面接が終わった後でアーサーがルークに小声で話しかけた。
「・・・・お前につねられた所が未だに痛くてそれどころじゃなかった・・・。」
「気をつけた方がいいよ・・・。あの目は獲物を狙うハイエナに近いから。」
アーサーはそう忠告を残し、掃除道具を持ってさっさとどこかへ行ってしまった。
ルークは鉄鋼と一通りの大工道具を持って王女の部屋へ向かった。
「・・・何に使うんだ・・・?これ・・・。」

「すっご〜い!!はっや〜い!!ルーナ、すごいのね!!」
王女・ミラルカはルークに拍手を送った。
「このお城に鉄鋼を扱えるメイドどころか、給仕もいないんだもの〜。お陰で全然できなかったの。」
「・・・で、この鉄の棚、何に使うんです?」
ルークは道具を仕舞いながら尋ねた。
「もう〜、ルーナったら〜!・・・でも、教えちゃおっかな♪」
王女は窓から隣の城を眺めた。
「ガントのアンドス王子って知ってる?」
「ハァ・・・。」
「彼、お兄さまにちょっとそっくりなんだけど、全然似てないの。すごくクールでカッコイイの!」
同い年かちょっと上、にしては幼い喋り方をするなぁ、とルークは思った。
「私、ガントの王子と結婚するって話を立ち聞きしちゃったの。叔父様がお父様と話しているのを聞いたのよ。その話が持ち上がったときはとても嬉しかったわ。・・・・でも・・・。」
王女は青い髪を後ろへ追いやり、頬杖をついた。
「私・・・ルドンの王子と結婚するんですって・・・。」
「何故?」
王女はくるっと振り返った。
「分からないわ。でも私、嫌よ!他の人と結婚するなんて、絶対嫌!ねえ、ルーナ、なんとかならない?一緒にお父様を説得して!!」
王女の涙の懇願に、ルークは思わず頷いてしまった。

  家政婦は見た!!(コメ) - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 19時54分 [654]   
ふい〜・・・長かった・・・。
あ。ガントの王子出してねえ。ま、そのうちでてきます^^;
まあ、ちょっとギリギリはまたあるんですけど、「あらいやだ。死んでる。」(家政婦のあの人風に)とか、年齢規制が入るような内容にはならないので、安心して下さいーー;

では。

  ついに^^; - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月04日 (火) 20時15分 [655]   
ついにみんなメイドに〜^^;

なかなか複雑になって、きたのかな?
今後の物語の進展に期待大です^^

では







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