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第8章 7節 疑惑 - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月04日 (火) 14時48分 [648]
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――ヨーロッパ地域本部。 「そう、根城はもう見つかったの。さすが、早いね〜」 司令室で低反発の高級特注イスに寄りかかり、コーヒーを飲みながら本部長、ライアン=クランツは受話器に向かって話す。 「これから天峰と一緒に潜入して調査を行います」 受話器の向こうからアルト=ナイトウォーカーの声が聞こえてくる。声からは少し疲労が感じられた。 「疲れてない?」 「え?ああ、大丈夫です。心配しないでください。任務に支障はありません」 「初任務なのにこんな大きな仕事を任せちゃって悪いね〜。本当はもっと人員を増やそうと思ったんだけど……」 「…けど、なんです?」 「まぁ、色々あってね。2人に任せちゃう結果になったのよ。1日か2日後にはマイヤくんが応援に行けるから」 「そうですか。でもアジトは見つかりましたから、何とかなりそうです」 「…気をつけるんだよ」 「はい。それじゃあ」 電話が切れた。 窓の外を眺める。その顔にはどこか判然としない表情が浮かんでいた。 ――コンコン 誰かが司令室のドアをノックする。 「ど〜ぞ〜」 入ってきたのは開発部門部門長、アーヴィン=サンダースだった。 「本部長」 「やぁアーヴィンくん。どうかした?」 アーヴィンを見るとライアンはまた窓へ視線を投げた。 「あの、俺が言うのも何なんですけど、ルーマニアの任務、やっぱりもっと人員を増やすべきですよ」 「…そう?」 「そこらへんの街一つならまだしも、規模は一国ですよ?それに、『ジハード』との関連性だって完全には否定できないし……」 ライアンはアーヴィンの方へ向き直る。 「具体的にどの程度の人員が必要だと思う?」 「最低でも、10人は」 しばらくライアンはまた窓の方を見ていたが、唐突に切り出した。 「……おかしいと思わない?」 「…?何がですか?」 「ボクらはこの組織の存在に気づかなかった。つい最近まで。全くね。この組織はWPKOの情報網に引っ掛かりもしてなかった」 アーヴィンは黙ったままだ。 「存在に気づいたのは、ここ最近の行動が煩雑で向こうがボロを出したから。もしこれがなければ過去2年間の事件も明るみに出ることはなかっただろうね」 「本部長、何が言いたいんすか?」 「まぁ詰まるところ、どうもはめられてる気がしてならないんだよね」 「罠ってことですか?なぜ?」 「この組織の隠密性はほぼ完璧だったんだよ。だからこそボクらに発見されることなく2年間も存在してきた。それがつい最近になって『たまたま』ボロを出して、殲滅者を2人送ったらたった1週間でアジトまで探り出した。これを疑わない人間がいるかい?」 よくよく考えてみたら確かにその通りだ。みんなDICの組織を発見したことに浮かれてそんなことにも気づかなかったのだ。 「つまり、DICが俺たちを誘き寄せているってことですか?」 「その可能性もあるかもしれないと思って、人員は2人の精鋭に絞ってみたわけ」 「このことは2人に?」 「いや、まだ伝えてない。確証もないしね。妙な猜疑心で調査に支障が出るのは好ましくないからね。調査がもう少し進んでから、話すかどうか決めるよ」 「やっぱり『ジハード』が裏に絡んでるんじゃ…?」 「それもまだわからない。総本部には報告しておいたんだけどね。返答は未だになし」 「……大丈夫なんすか?本部長の期待もわかりますけど、強いって言ってもあいつらはまだ10代の子供ですよ?」 「殲滅者に年齢は関係ないよ。大事なのは心の強さだ。彼らはその切っ掛けこそ違え、世界を救いたいという強固な精神を持ってる。きっと切り抜けるよ」
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さすがは本部長^^ - 翼無き天使 (男性) - 2007年09月04日 (火) 14時53分 [649]
しっかり勘付いてます^^ ライアンはともかくアーヴィンは下っ端ですが、訳ありで『ジハード』とかけっこう核心の方まで知ってます。
次回も頑張ります。
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Wow ! - ベールゼブブ (男性) - 2007年09月04日 (火) 16時27分 [650]
おちゃらけは仮の姿だったか^^;ライアンさん。 そしていいこと言う〜^^ おちゃらけた切れ者キャラは結構見ていて好きです。
それでは☆また続き楽しみにしてます^^
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