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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


ここは小説投稿掲示板だ。
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーまたはその他(アニメ、ドラマ)などでも、楽しそうな小説やストーリー、
詩、日記などがあったらとにかく書き込もう。
他人が見ておもしろいと思った内容、自分が思いついた内容があったら、とにかくどんどん投稿してみてくれい。

(注)最近ここをチャット代わりに使われている方がたくさんいます。
チャット代わりに使われますと、せっかく一生懸命小説等を書いた方の内容がすぐに流れて見れなくなってしまいます。
ここは小説やストーリー、詩、日記などを書くところですので、チャットはこちらにてお願いいたします。

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  こちら超常現象対策室! - 翼無き天使 (男性) - 2009年09月04日 (金) 01時30分 [1055]   
  【第8話】二界堂煉治の奮闘!

 「幽霊部員のお前が、いったいどういう風の吹き回しだ?」
俺の横で正座している涼太が、視線は前に向けたまま尋ねてきた。
 「……別に。なんとなくだ」
俺も正座のまま答えた。
ここは学校の剣道場。
俺は約1年ぶりの部活動に汗を流していた。この真夏日に防具なんてつけたら、そりゃもうグッショリだ。
 「メーンっ!!」
竹刀が防具を打つ音。気迫のこもるかけ声。道場の匂い。全てが懐かしい。
そう、俺は剣道部に籍を置いている。
まぁ実際のところは所属しているだけで、練習に出たことなんて数えるくらいしかない。1年の夏前にはパッタリ行かなくなり、完全に幽霊化していたのだ。
 「ほう。なんとなくで部活に来て、なんとなくで部長に実戦形式の総当たり戦を提案して、なんとなくで全勝したのか?」
自分で言うのも何だが、高校生レベルなら俺はけっこう強いと思う。
と言うのも、小さい頃から親父に剣を握らされて育ってきたから、という理由がある。
 「まぁ、そんな感じ」
俺の親父は剣術家だ。
なんとも素晴らしく胡散臭い職業だが、その世界ではかなり有名だとか。道場を営む師範に剣術を指南する、つまりは先生の先生というわけだ。
そんな剣術オタクが親父なもんだから、俺も物心がつくかつかないかの頃から剣に触れ、当時はかなり熱中していたと思う。
自宅の道場で毎日のように竹刀を握って親父と手合わせ、という名のお遊びをし、小学生に上がる頃には居合にも手を出していた。
本当にスポーツ気分で、ただ剣を振ってるのが楽しくて、剣の道なんてものはこれっぽっちも志すことはなかったのだが。
そんなある日、俺の親父は母親と一緒に海外に移り住むことになった。
 「この国際化の時代に乗じて、剣の道も“いんたーなしょなる”に展開するべきだと思わないかい!?はははははっ!」
とかなんとか言って、フラ〜っと海外へ消えていった。目標は剣道をオリンピックの公式種目にすることだそうだ。
それを境に、遊び相手のいなくなった俺の剣への情熱も、なんとなくフラ〜っと薄れていき、昨日に至る。
 「……理由は、あの転校生か?」
でも、今日からは違う。
理由が出来た。強くならなければならない理由が。
どうしたら強くなれるのかを検討した結果、取りあえず過去に蓄積した貯金を増やすことくらいしか思いつかず、今この剣道場に座っている次第だ。
あまりに久しぶりだったので、カンを取り戻すのにだいぶ手間取ったが、取りあえず部の連中に勝てるくらいには力が戻った。
でも、こんなんじゃ全然ダメだ。
火車のスピードはこんなもんじゃなかった。打ち込みも火車のそれと比べたら……。
どうすれば……。どうすれば強くなれる?
悪霊を倒せるだけの力を。美言を守ってやれるだけの力を。
どうすれば手に入れることができる――?
 「……ああ、そうだ」
俺は観念したように頷く。
 「お前は友達だからな、話しておく。でも詳しくは言えない。国家機密なんだ」
 「……恋の病は人を狂わせるとは言え、お前のは少し重症だな」
俺は涼太に、対策室には触れない部分だけ掻い摘んで話した。
美言にも幽霊が見えること。彼女は悪霊退治を生業とする家系であること。偶然出会った俺がそれを手伝うことになったこと。
彼女を手伝うために強くなる必要があること。
 「――なるほど。ただの女の子ではないと、なんとなく感じてはいたが。まさかオカルト除霊少女だったとはな」
 「ああ。俺もビックリだよ」
 「しかし、なんでウチの高校に引っ越してきたんだ?」
 「え〜と、つまり、彼女は、その……向こうの高校で理解ある友人に出会えなくてだな。それで……」
 「それで、理解あるお前を追いかけてわざわざ転校してきたってわけか」
 「……まぁ」
俺は昼休みの劇的な対面の後、美言を屋上に引っ張って問い詰めた。

 「なんでウチの高校にいるんだよっ!!つーか同じクラス!?」
 「うん、転校してきちゃった♪」
 「してきちゃったって、いきなり過ぎだろ!」
 「言ったでしょ?向こうの学校には友達いないんだもん」
 「でもお前、同じクラスって……」
 「迷惑……だったかな……」
 「……っ!!……そ、そんなこと、ねぇけど……」
 「ホント!?よかった〜!よろしくね、煉ちゃん♪」

といった具合で、結局またいい感じにやり込められた次第だ。
 「お前今、青春学生ラブストーリーのフラグが立ってるのに気付いてるか?」
 「は?」
 「いや、なんでもない」
涼太は一人でニヤニヤしている。
 「ところで煉治。悪霊を倒すための強さを得たいなら、その道の者に教わるのが一番じゃないのか?」
 「え?」
 「だから、こんな汗臭い所で竹刀なんか握ってないでさ、美言ちゃんから教えてもらえばいいじゃないか。彼女強いんだろう?」
――そうか。
その手があったか!
今まで美言を助けることばかり考えていて、彼女から教えてもらうなんて考えつきもしなかった。
あの火車の胴体を一撃で真っ二つにしたんだ。形にとらわれない実戦剣術は俺より遙かに強いはず。
 「……涼太、悪いけど俺――」
 「ああ、わかってる。行けよ」
俺はザッと立ちあがる。
 「部長!今日はこれで上がらせてもらいます!お疲れ様でした!」
 「……お、お疲れ」
呆然とする部長。俺は一礼して道場を後にした。
 「ふっ、恋は盲目とは、よく言ったものだ」
 「津島先輩、あの人誰なんですか?」
 「あぁ、そうか。1年生は知らないんだな」
 「部長や津島先輩より強い人がいたなんて驚きです。余裕で全国行けますよ、あの人」
 「なに、かつて神童と呼ばれ、一人の少女に心奪われた、ただの天才剣士さ」
 「……?」

     ◇

 「室長、入りますよ」
安倍がノックの後、室長室のドアを開けて入ってくる。手には数枚の書類を持っていた。
 「や〜っと調べがつきましたよ」
 「そうか、間違いないか?」
千代子はタバコを片手にパソコンから安倍に目線を移した。
 「ええ。間違いありません」
そう言って書類を千代子に向けてデスクに置く。
 「二界堂煉治は、明月厳達(Akatsuki Gentatsu)の嫡子です。本名は二界堂秋昂(Nikaidou Akitaka)。まさか厳達が偽名だなんて思わなかったんで、苦労しましたよ」
 「ご苦労」
 「現在は夫婦で海外、主にヨーロッパ諸国を放浪しながら剣術を布教して回っているそうです」
 「ふん、あの道楽小僧め……」
千代子はタバコを灰皿に押しつけて書類を手に取る。
 「しかし、煉治があの厳達さんの息子とはねぇ。世の中、妙な因果で繋がってるもんですね」
 「……これも宿命、か」
 「まぁ、煉治は見込みあると思いますよ。調べたところ、中学までやってた剣道と居合の実力はかなりのもんです」
 「大方、おもしろ半分で厳達にしごかれたんだろう」
 「でも、所詮はお遊びスポーツ。実戦でどこまで活かせるかはわかりませんが、美言も気に入ってるみたいですし、成長すれば突っ走りがちなあいつのいいサポート役になるんじゃないですかね」
千代子はまたタバコを咥えて火を点ける。今日はこれで3箱吸いきった。
 「……安倍、京都本家に紫電が完成し次第、こちらに届けるよう連絡しておけ」
 「紫電計画は、かなり難航してますよ。霊魂の定着が上手くいかない上に、完成しても使い手がいないってんで凍結案まで持ち上がってます」
 「馬鹿な、凍結など許さん。使い手もたった今見つかったから完成を急がせろと、本家の腰抜けどもに言っておけ」
 「……煉治に持たせるんですか?今のあいつに扱えるような代物じゃないですよ、紫電は」
 「棚に飾っておくよりは役に立つ」
 「了解しました」

     ◇

早々に部活を切り上げ、更衣室でシャワーを浴びた後に美言を探すと、彼女は教室で数人の女子と笑いながら会話を楽しんでいた。
意外、だった。
友達がいないという彼女の言葉から、一人で寂しそうにしている美言を勝手に妄想、もとい想像していた俺は、その光景に甚だしく意表を突かれた。
ガラッと教室のドアの開ける音に、美言とその取り巻きの視線が集まる。
取り巻きの構成要素を分析した結果、4組の女子2人と2組の女子1人ということが判明した。
 「あれ、煉ちゃん!もう部活終わったの?」
 「お、おう」
どうする!こいつが他の奴と一緒にいるのは予想外だった。
ここで俺が美言を連れて教室を去ってみろ!転校前に偶然知り合い、彼女が困っているところをちょっと手助けしてあげたという、あながち間違いでもないが極めて無難で自然な現在の設定が崩れてしまうのは必然だ!
明日にはここにいる女子によって、俺が放課後に転校初日の純真無垢な美少女を呼び出した、なんて噂が広まってしまう!
そんなアクティヴな行動は断じて俺のキャラクターではない!
いや、確かに美言を異性として意識していないと言えば嘘になるがしかし!それは現段階では保留事項であるわけで!
どうする!?なんとか当たり障りのない理由をつけて、美言をこの場から……。ダメだ!転校初日の女の子にもちかける用事っていったい何だ!?
一般的学園生活に基づく想像に則って話を進めるなら、まず間違いなく一目惚れからの告白とかそんなことに発展するに決まってる!
あぁ、いったいどうしたらいいのだ。ここは一旦退いて、帰り際に捕まえるか?
しかしこいつらと一緒に帰ったらどうする。どうする?どうする!?
――以上の脳内論争。時間にして約1.5秒。

 「そっか。じゃあ一緒に帰ろ!」

 「はっ?」
 「えっ?」
俺と取り巻きの女子の両サイドが一斉に驚きに一文字を口にした。
 「じゃあみんな、また明日ね!今日は話せて楽しかった!バイバイ!」
鞄を持ってタタッと俺の方に駆け寄ってくる。
お前……!
俺が今、必死に無難で誤解のない連行方法を模索していたというのに!なに思いっ切り水の泡にしてくれてんだよ!
おまけに偶然の顔見知りという設定まで見事に完全破壊してくれたなこのやろう!
取り巻きの女子3人の介意の視線が俺に浴びせられる。彼女らの言わんとしていることは、言葉にしてもらわなくても顔を見れば大方想像できた。
右から順番に、「この二人、どういう関係なの?」、「なに?この二人付き合ってんの?」、「二界堂くんってそんなキャラだったっけ?」だ。
そんな彼女らをよそ目に美言は俺の腕を掴んで引っ張っていく。
俺はこれ以上無駄な抵抗を思慮するのを諦めた。どんなに俺が普通の関係を装っても、こいつが全て、無自覚に、しかも満面の笑みで破壊してしまう。
 「わ、悪い。じゃあ、また、明日」
俺はぎこちなく引きつった苦笑いを顔に貼り付けて教室を後にした。
 「……ねぇねぇ、あの二人って付き合ってるの?」
 「さぁねぇ。でも明らかにただの友達じゃないよね。転校初日だし」
 「転校前から知り合いだったらしいよ。なんでも、美言ちゃんが不良にナンパされてるところを二界堂くんが助けたんだって」
 「え?あたしは事故に遭いそうな美言ちゃんを二界堂くんが間一髪で救ったって聞いたよ?」
 「……二界堂くんってそんなキャラだっけ?」
 「……う〜ん」
     (第8話完)



  お久しぶりです。 - 翼無き天使 (男性) - 2009年09月04日 (金) 01時40分 [1056]   

そうでもないかな?
第8話になります。
幽霊嫌いの煉治が幽霊になっているという、ギャグ半分の前半と、相変わらず美言に翻弄されっぱなしの後半です笑
中継ぎとして、なにやら煉治の新しい武器が登場する予感……。
いったいどんな武器なんでしょう。
オレにもサッパリです笑

では、9話も追々。




  なんつーか - ベールゼブブ (男性) - 2009年09月05日 (土) 14時29分 [1057]   
相変わらず涼太君は面白いな☆
っていうかミコトちゃんたら^^;
レンジ君、いろいろガンバレと思う今日この頃でした。

では☆


  疑惑 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月20日 (木) 21時36分 [1044]   
   少女は目を覚ました。寝かされている簡素なベッドともども、よく見れば即席のテントの中。傷ついた体も未だ完治とはいかないが、とりあえず動ける体にはなっていた。
 ルークはそっとテントから出る。
「あ、起きられたんですね」
 エルフかニンフか彼女には区別がつかないが、妖精の少女が話しかけてくる。
「すごいですね。お連れさんまだみんな寝込んでるのに。ガイル兵士長から聞きましたよ。地獄の雷にやられたんですってね。よく動けますね」
 よく喋る子だな、と思っていると彼女は突然謝りだした。
「ごめんなさい。私エルフの女王の侍女です。実は陛下からおことづけがありまして」
「おとこづけ?」
 エルフの少女は笑い出した。
「いやあだ。ルーヌさんたら。おことづけですよ、お・こ・と・づ・け!」
 ああ、そうか、と未だボーっとする頭をこつんとたたき、少女の案内のもと、ひときわ大きなテントへルークは入っていった。どうやら女王はルークに話があったらしい。
 そこにはエルフの女王とニンフの女王の姿。二人はルークの突然の来訪に驚いた。
「まあ! もう治られたのですか!? 予想では治療に三日は要するところでしたのに。 っつーかアンタ何なの?」
「いや、もしもさっきわらわが申したことが真であったとすればあり得ぬ話ではあるまい」
 エルフの女王はカトリーヌの言葉にため息をついた。
「しかし、わたくしには俄には信じがたいのです。あの神魔法を操る者がいるなどと。っつーかありえねー」
「何を融通の利かないことを申しておる!! そなたも見たじゃろう! 城跡に落ちる白い天の怒りを!!」
「あの、さきほどから何の話を・・・?」
 エルフの女王はふんと鼻を鳴らした。
「ルーヌさん、と仰ったかしら?」
「いや、ルークとお呼び下さい」
「っつーかンなのどっちでもいーし。あなた、一体どういう方なのです?」
 返答に困る質問に、ルークの眉間に皺が寄った。
「どういうって・・・。私は人間の国で兵士長を・・・」
「それだけ? あなたのご両親はどんな方? っつーか喋れ」
「両親・・・?」
 そういえば彼女は両親の話など何も聞かされてはいなかった。そもそも彼女は物心がついたころには城にいて、幻術をマゼンダに習い、兵法を身につけるべく学習していた。その上彼女は女性に生まれてきた自身の運命を呪い、女性として生んだ両親を恨んでいた。何一つとして両親に関心もなかった。
「何も知らぬのか? 生きておらぬのか?」
 ルークの困惑を察知してか、ニンフのカトリーヌ女王が尋ねた。ルークは何も言わずにただ頷いた。二人の女王は互いの顔を見合わせ、改めて尋ねた。
「本当に何も聞いていらっしゃらないの? っつーかマジ?」
「今まで疑問にも思わなかったのか?」
 ルークはややむっとした表情で答える。
「私は、女に生まれてきたこの身を恨んで今まで生きてきました。そんな運命に投げ下ろした両親を恨んだこともあります。だからこそ、両親の話は避けてきたのです。私は興味もありませんし、周りも話してくれることはなかったですから」
 二人の女王は大きくため息をついた。
「そう・・・。あなたがそれでよろしければわたくしは何も申し上げることはございません。ですが、お考えなさい。普通の人間に、あの魔法を使うことはできません。っつーかそんなの絶対無理」
「あの魔法? 私は魔法など・・・」
「使ったじゃろうが。あの神聖なる神の雷を。あの後物音ひとつしなくなったので行ってみたら、倒れておったそなたたちの身体と、グラスの身体が完全に崩れ去っていたのを確認した。あれは間違えようもない。歴とした神魔法じゃった。わらわも見るのは何百年ぶりじゃろう?」
 ええ、とエルフの女王が言葉を続けた。
「あれは神に選ばれた、天の血を引く者だけが扱うことのできる魔法。あなたはあれを扱うことができた。これではっきりしたのではなくて? っつーかもう言い逃れ不可」
 エルフの女王はルークの前で跪いた。
「あなたのご両親は紛れもなく天の力を持った方。そしてあなたも、天の力を受け継いだ尊い存在なのです。あの魔法がその証拠。天の怒りを雷として宙より呼び寄せる神魔法。魔と対極に位置し、魔を退ける光の魔法。ギガデイン。しかし」
 女王はそのまま続けた。
「あの威力は正直驚きました。あれほどの巨大な雷は見たことがありません。もしかしたら、あなたは・・・」
「あの、私、みんなを見ていたいので、これで失礼いたします!」
 ルークは挨拶もそこそこに、逃げるようにその場を去った。
 女王はそっと立ち上がり、それを見送る。
「きっと・・・あなたは・・・」

  困惑 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月20日 (木) 21時37分 [1045]   
 ルークは戸惑っていた。自分が、顔も知らない両親が天の血を引く存在? そんなことあり得るはずがなかった。自分は紛れもなく人間だ。だから人間の住む世界に生きて、一人の人間を愛し、重い運命を背負った“妹”を助けているにすぎない。だが、彼女ははたと気付いた。こんなとき、先生はなんて言うのだろう?
 ルークはマゼンダのいるテントに大急ぎで向かっていった。
「ちょっと! 中の方はまだ・・・」
 ルークはエルフの制止を振り切り、中へと入っていった。マゼンダは痛々しく顔の半分にまで包帯を巻かれてベッドで寝かせられてはいたが、意識はあるらしく、そっと来訪者の方へ顔を傾けた。
「困りますよ!! まだ治っていらっしゃらないんですから!」
「いいわ。入れてちょうだい。先生の心配をするのは生徒としていい心がけだわ」
 エルフは何も言えず、ため息をついてテントから出て行った。
「・・・何か迷いがあるようね。顔に書いてある」
「先生」
 ルークは俯きながら、マゼンダの枕元に座った。
「私の両親のことは、知ってますか?」
 マゼンダはふうとため息をつく。よく見ると唇がほころんでいるのが見て取れた。
「珍しいわね。あんたが親のことに興味持つなんて」
「二人の女王に言われました。私が神魔法を操ったと。私も両親も、天の血を受け継いだ者だと。一体私の両親はどんな人だったんですか?」
 マゼンダはじっとルークを見、ほほえんだ。
「なるほどね。でも、残念ながら私は直接会った訳じゃないからどんな人かは分からないわ。あなたはコロリスの修道院の前で泣いていたのよ。16年前にね」
 ルークは俯いたまま、じっと聞いていた。
「あのときは寒さも温んできた春の初め頃。手がかりはおくるみに挟まれた『ルーヌ』という名前だけ。ルドンから派遣された自警団も必死に両親を捜索したけれど見つからず仕舞いだったわ。マザーが、赤ん坊だったあなたに洗礼を施して、修道女として育てるつもりだったところを、あたしが引き取ったの」
「何故?」
「何故かしらね。ただ、あたしあなたに興味があったのよ。あたしって旦那もいない独り身で、子育てなんてしたことなかったけど、何故かあなたを育ててみたい衝動にかられたの。運命ってそういうものだったのね」
 マゼンダはずっと俯いているルークに続けた。
「そうして娘として育てながら、特に厳しくあなたに幻術を指導していたわ。ま、全く意味をなさなかったけど」
「・・・すみません」
「いいのよ。今にして思えば、あなたには幻術を教えるべきではなかったと思ってる。あなたが脳筋だから言ってるんじゃないのよ。勘違いしないでね」
 ルークは続きを促した。
「そう思ったのはあなたが13歳になったころ。分かるわよね?」
「13っていうと・・・志願兵になったころですか」
 マゼンダは頷いた。
「『私は女に生まれたくなかった!』ってだだをこねてあなたは剣の道を進んだ。最初は『馬鹿なことを』と思ったのは事実よ。剣を持つ女なんて女じゃないって思ってたし、あなたがあんな野蛮な道に入ったら、どこでどうしてるか分からないご両親に申し訳が立たないって思ってた」
 ルークはまだ俯いたままで、続きを促した。
「だけどあなたの剣を見ていたら、とてつもない才能を感じた。事実あなたはたった3年で兵士長にまでのしあがった。王の寛大さには感心したと同時にはらわたが煮えくりかえったものよ。『いくら剣の才能があるにしても、どうして親代わりの私の意見を無視して、むざむざ女の子に危険な道を歩ませるのか』って。幸い人間同士の戦争はなかったけど、私は情けないやら申し訳ないやらで、一人でひっそりと涙したこともあったものよ。でも」
 マゼンダは自嘲気味に鼻で笑った。
「あなたの剣の才能を否定するわけにもいかなかった。3年で国一番の剣の腕前になるほどの実力が備わったあなたに、これ以上幻術を教えるのは野暮というものだわ。だから、あたしはあなたに本格的な幻術の指導をするのをやめて、最低限の常識だけを教えることにしたの。ま、そっちも全然意味をなさなかったけど」
 ルークの反応がないのでマゼンダは少し心配になってきたが、そのまま続けた。
「まあ、そんな感じよ。あなたの両親の消息は未だ掴めていない。何故あなたを修道院に置き去りにしたのかも分からないし、どこの人だったのかも分からない。この旅の過程で見つかればいいとも思ってたけど、結局今の今まで見つかることはなかったわね」
「・・・何で黙ってたんですか?」
 マゼンダはふっとほほえみかけた。
「あなたが聞こうとしなかったんじゃない。ちょっとご両親の話をするとすぐ『私を女に生んだ両親のことなんて知りません!』の一点張りだし。っていうのと」
 ルークはややマゼンダの方に顔を向けた。
「ただでさえ『私を女に生んだ両親が憎い』と言ってはばからないあなたに、『あんたは捨て子だ』なんて言ったらどうなるかしら? より憎しみが強くなるんじゃないかしら?」
「・・・でしょうね」
 はあ、とマゼンダは大きくあくびをした。
「あたしなんだか眠くなってきたから寝るわ。外の人に言っといて」
 分かりました、とだけ言い、ルークはマゼンダのテントを後にした。
 私は捨て子だった・・・? 私の両親は一体・・・?

  やっと進展 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月20日 (木) 21時42分 [1046]   
やっとこっちが書けました。
いや、長かった。さすがに一発ネタでごまかしごまかしやってるとちょっとずつ話が進むものですねぇ☆

ではレス返し

ティファ様>

子供向けの童話ではそうでしょうね。でも原作及び解釈本ではちゃんと死んだことになってます。しかも白雪姫は3回ぐらい死んでたかな? っていうか、正しくは「仮死状態」でしょうか。
ああいう童話って、本当は怖いんですよ☆
よろしければ私が読んだ原作及び解釈本バージョンでここに書きましょうか? まあ、手元に無いので自分の言葉で書くことになりますけど。著作権のこともあるし。

それでは。

  ルーヌ〜!! - 翼無き天使 (男性) - 2009年09月04日 (金) 01時21分 [1054]   
ついに天上人になっちゃいましたか(笑
いやいや、次の天界が、おっと展開が気になりますね^^
期待してますよ〜!

では


  SSテニプリ小説【氷帝学園】【日吉若目線】 - 日吉#wakasi (男性) - 2007年06月04日 (月) 19時24分 [517]   
  いつもの部室とは違った

先輩の目、なんとなくいつもの先輩とは違った


その仕草に怖くて、俺はつい先輩に口を開いてしまった

    「あの・・・どうかしました・・・・?」

俺の声が弱弱しくて小さかったらしく、芥川先輩の耳には聞こえなかったらしい。

いつもの五月蝿い声はなかった
ま、そんなのは別にいいのだが・・。

五月蝿くなくて俺は良かったかもしれない

俺の甘い考えは効かず、油断をした瞬間ーー

芥川先輩の口から衝撃の言葉が

「俺、日吉のこと好き」
たった一言なのに顔を紅くする自分がはらただし
い。
先輩は照れてはなく真顔なので、余計にきにくわない
だが、心と体は真逆だった。
心はきにくわないのに・・・
体は紅くなっている・・・・。
  「どうなの・・?」
先輩は俺に声をかけた

そして、俺はーー
      「俺で、良ければ・・/」


先輩の一言と俺の一言で     俺達の仲は


不器用であるがお互いに深まった


  こんな白雪姫に王子はいない - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 11時46分 [1039]   
  「今度こそ白雪姫はのたれ死んだかしら」
 女王はまた鏡に向かった。鏡の中の青年はげんなりした顔で現れた。
「また何か用ですか?」
「白雪姫が今度こそ死んだかどうか見に来たのよ」
 鏡はじっと明後日の方を見て答えた。
「あ〜、何か小人の家で匿われてるみたいですね」
「なんですってェェ!? をのれ、なんて強かな女よ!! こうなったら実力行使よ!!」
 女王はまた玉座の階段を開け、高笑いをしながら降りていった。今度は左側の部屋を開けると、そこには大きな釜と薬品棚。女王はそっと戸棚を開け、はっとした。
「そういえば・・・ここの奥にケーキを置いたんだったわね・・・。あら!! 今日が消費期限!? 早く食べなきゃ!!」
 女王はケーキを引っぱり出し、ティーを煎れた。
「あら、そういえばここにシ○トレ○ゼのクッキーが・・・。これ安物の割においしいのよねぇ」
 と女王は実験室で優雅にティータイムをすごし、更にクッキーを一囓り。ケーキとティーを平らげたところでボーっと釜を眺め始めた。
「そう言えば・・・あたくしは何しにここへ来たんだったかしら?」
 しばらく釜を眺めたあとで女王ははっと気づいた。
「そうだったわ!! 白雪姫を殺す毒を作らないと!! えっと・・・」
 女王は薬品棚を漁り初め、いくつか瓶を取りだし釜に入れてぐつぐつと煮えたぎらせた。
「オーフォルトゥナ ヴェルート ルーナ! スタトゥ ヴァリアビリス!!」
 女王が呪文を唱えると、女王の姿は醜い老婆に変わっていった。
「あとはこれをリンゴに塗って・・・できたわ!! 今に見ておれ白雪姫!! イ〜ッヒッヒッヒ!!」
 その様子を眺めながら鏡はぼそっと漏らした。
「あ〜あ。とうとう美貌が落ちたな。顔だけはまだよかったのに・・・」

  こんな白雪姫に王子はいなくていい - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 12時00分 [1040]   
「それじゃ出かけてくるから、怪しい人が来ても中に入れちゃダメだよ」
「承知した」
 小人が出ていったので、白雪姫は鼻歌混じりにクッキーを頬張ってくつろいでいた。そこへ扉を叩く音が聞こえる。
「もし、お嬢さんや」
「新聞なら間にあっておるぞよ」
「新聞じゃないんじゃよ。リンゴはいらんかえ?」
「リンゴじゃと? 今はそんな季節じゃなかろうに。果物と野菜と魚は旬じゃないと高いことぐらい常識じゃ」
 しかし魔女も食い下がる。
「今ならタダじゃ」
 白雪姫の耳がぴくりと動いた。
「タダ!? それを早く言え!!」
 慌てて白雪姫は玄関まで出るが
「しかし・・・こんな人里離れた山奥にリンゴ売りとは怪しいのぉ・・・」
 と、魔女をジト目で見始める。
「(ギクッ!)た、たまたま通りかかっただけじゃよ」
「ほお・・・。それじゃなぜ中に『お嬢さん』がいると分かったのじゃ?」
「(す、鋭い!)ま、窓から見えたのじゃ」
 なるほど、と白雪姫はリンゴを眺めた。
「表面が妙にツルツルしておるのお? ワックスか何か塗ってないか?」
「(いちいち鋭い!)大丈夫じゃよ!」
「それじゃ食うてみるがよい」
 魔女はこんなこともあろうかと、毒を塗っていない部分を囓った。
「今場所を選ばなかったか?」
「(こ、こやつ!!)何でも良いからさっさと食いな!!」
「あぐっ!?」
 魔女は白雪姫の口に無理矢理リンゴを押し込め、
「うぐっ!!」
 白雪姫はのどに詰まらせて倒れた。
「これで世界一の美女の座はあたくしのものよぉ〜!! ほ〜っほっほっほ!!」
 と魔女は箒に乗って帰っていった。

  こんな白雪姫の王子の目に涙 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 12時17分 [1041]   
「だから中に人を入れちゃいけないって言ったのに・・・」
 小人は白雪姫の死体を発見し、棺桶に詰めて泣いていた。そこへ通りかかる白馬に乗った青年。彼は道に迷っていた。
「あれ〜? ここはどこだ?」
 そこへ、泣きながら葬儀を行う小人の泣き声を聞きつけ、やってきた。
「何だ、誰か死んだのか?」
「そうなんです。白雪姫がぁ〜っ!!」
 彼はその亡骸を見て言った。
「う、美しい・・・」
 小人が油断している間に、彼は白雪姫にくちづけを施した。刹那
 えろえろえろ・・・
 白雪姫はリンゴを吐き出し、起きあがった。
「ふあ〜あ。よく寝たわ。ん? そなたは誰じゃ?」
 先ほどの光景に顔が引きつりながらも、青年は挨拶を始めた。
「は、初めまして白雪姫。私は向こうの国の王子で・・・」
 その時、女王が突然現れた。
「ちょっと!! なんてことしてくれるんですのよ!! せっかく世界一の美女の座を手に入れたのに・・・白雪姫を復活させたら・・・殺すぅぅぅぅぅぅ!!」
 女王は突然巨大な竜に変身した。
「あ〜あ。とうとう世界一ブサイクになっちゃった」
 様子を見に来た鏡がぼそりと呟く。
「うっせぇよ、ババア」
 王子は剣を抜いて竜を刺した。
「あたくしの美は・・・不滅ぅぅぅうぅぅ!!」
 竜はそのまま消え失せた。
「あ〜あ。とうとうランク外に・・・!」
 その時鏡が光り出した。一同はまぶしさに目を閉じ、光がなくなると、中にいた青年がそのままの姿で現れた。
「よく外に出してくれた。礼を言おう。それにしても美しい限りだ」
「そんな・・・わらわは・・・」
「その美しい姿を私は鏡の中からずっと見ていたのだ。是非とも添い遂げたい」
「そんな・・・二人の殿方に挟まれて・・・わらわは一体どうすれば・・・」
 赤い顔で困る白雪姫。鏡にいた青年ははっきりと言い放った。
「愛し合おう、王子!!」
 はた、と白雪姫は眉間に皺をよせて固まった。そして青年と王子を交互に眺める。王子は答えた。
「・・・はい・・・」
「こらああああああああああっ!!」
 森の中を、白雪姫の叫びがこだました。

 めでたくなし めでなくなし。

  いつも王子様は・・・ - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月19日 (水) 12時21分 [1042]   
はい。まさかのオチがこうでした。
と同時にあっちのルーヌの方がとりあえず書けましたので、今度書きます。
ただ、かなり内容が重くなってしまいましたーー;

では☆

  ……。 - ティファ・ロックハート (女性) - 2009年08月19日 (水) 15時44分 [1043]   
童話では白雪姫は生きていると思いますよ。
毒リンゴを食べて、眠りについたのは聞いた事ありますね。
中々、良いお話です。
頑張って下さい!


  時を超えて… - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月16日 (日) 13時24分 [1025]   
   太古の昔突如として現れた「それ」は空から降ってきたとも元々住んでいた種族とも言われている。「それ」は自らを魔王と名乗り、魔王と呼ばれる存在が人々を支配し恐怖に陥れていました。勇気ある戦士達は果敢にも挑むも誰一人として生きて戻って来た者は居なかったと言う。やがて五人の若者が現れ魔王に挑みました。魔王の力は若者達を苦しめたが彼らは最後の力を振り絞り辛うじて封印する事しか出来なかった。しかしその封印も遠い未来で一人のある魔導士によって解かれようとしていた…


此所は塔なのだろうかローブを着て頭からスッポリとフードを被った魔導士らしき人物が入り口で何かを呟くと重い扉がそれに反応して開いた。扉が開くと中は漆黒の闇に包まれていて其所には奇妙なレリーフが施された壁と部屋の真ん中には厳つい魔物の像が安置されていてよく見ると像の土台の下部に何かを嵌め込む窪みがある。

「確か書の伝承によればこの像の何処かに窪みがあって其所にこのペンダントを嵌めるんだな…」
魔導士は漆黒の暗闇の中を手探りで窪みを探した。

「…あった、此だな。」
魔導士はそう言いながら手探りで見つけた窪みとペンダントの形状を確認し、ペンダントを窪みに嵌め込んだ。すると嵌めたペンダントが赤く光り、光が大きくなり閃光の如く迸りまるで道を示すかの様である。赤い光は階段の遥か上までを照らしていた。

「この光、此を辿って行けばいいのか…」
魔導士は赤い光に目を投げそう言うと階段を登り始めた。階段は螺旋状になっており登っても登っても目的地が見えて来ないし自分が何処まで登ったのかすら分からなくなる程の階段である。
大分汗をかきへとへとになりながら長い長い螺旋階段を登りきり一つの扉が眼前に飛び込んで来た。余りにも疲れていて幻影を見ているのかと錯覚を引き起こしてしまいそうだが一歩ずつゆっくりと近付き扉に触れる。扉は固く重く冷たいと言う感覚が指先を伝って感じる事が出来、扉が本物である事が証明されたのである。

「扉が開かん。此所にも窪みか…」
魔導士は面倒臭そうにペンダントを窪みに嵌め込むと扉が開き中へと進んで行った。中へ進むと翼の生えた人間の様な像があり、まるで生きているかの様な姿勢で今にも動き出しそうな程の躍動感溢れる姿勢であった。

「おぉ、これがかの時代に生きたと言われている『魔王』か…!」
魔導士は思わず興奮し声を上げた。

「いかんいかん。私とした事が…」
魔導士は冷静さを取り戻し像を眺めると台座の部分に何か字が彫られているが此ばかりは触っただけでは何て書いてあるのか分からないので何か呪文の様な言葉を唱えると掌が白く光り翳すと闇を照らし其所に彫り込まれた字を読む事が出来た。

そこにはこう書かれていた。

「我々五人は魔王シャルゼートを完全に倒す事は出来なかった。しかし最期の力を振り絞り力を合わせて奴を石の中に封じ込めた。我々五人の子孫が封印の鍵を持つ限りシャルゼートの封印が解かれる事は未来永劫訪れる事は無いだろう。」

「っ!此所まで来て無駄骨とは…」
魔導士は小さく舌打ちをするとそう呟いた。

(我の封印を解かんとする者よ、ペンダントを高く掲げよ!)
突如として何者かの声が魔導士の頭の中に直接語りかけて来た。

「声?誰もいないのに頭の中に直接語りかけて来た…それにペンダントを高く掲げろって言っていたな。もしやシャルゼート様ですか。今、私が自由にしましょう!全知全能の魔神よ、今此所に我が主を永き眠りから覚ませ!@%*&※∽!」
魔導士はペンダントを高く掲げ何かの呪文を呟いた。すると石像の目が赤く光だし重い口を開いた。

「人の子よ、よくぞ我を永き眠りから覚ました。しかし我は血で封印されている故にそれだけでは身動きが取れない。そう忌まわしき五人の人間の子孫を抹殺して血を絶たない限り封印は完全に解けない。我が僕の封印は解かれているから其処ら辺に転がっているであろう水晶玉を使い自分の力にあった魔物を呼び出し奴等の抹殺に役立てるといい。先ず手始めにレンダーと言う北西の村に住む青年から刈るといいだろう。そしてこの呪文を汝に伝授しよう。」
青白い光が魔導士に降り注ぐ。

「おお!素晴らしい、力がどんどん湧いて来るぞ。」
「汝はそれで炎球を放つメラミの呪文と瞬時に記憶している場所に行けるルーラの呪文を使う事が出来る。」
「ありがたき幸せ。」
魔導士はそう言うと足元に転がる水晶玉を拾い上げてルーラの呪文を使い北西の村へ飛んだ。どうやら北西の村は彼の知る土地の様だ。



 ━━━━



そしてその頃北西の村では…

木々に囲まれていて大きな山の麓にある豊かな自然に囲まれた温な何処にでもある村だが誰一人として惨劇が起こる事等知らずに今日も平穏に過ごしていた。

「アル!アルグレイス!」
「母さんどうしたの。」
アルグレイスと呼ばれた青年は年は17、8くらいだろうか髪と目の色は茶色く綿で作られたシャツとズボンを着ていてサンダルを履いていて本当にラフな村人の服装と言える。そして彼は母親に呼ばれた様だ。

「アル、レンダーの家に薬草を届けて来てくれるかい。アタシゃ手が離せないから頼むよ!」
「分かったよ。」
アルは母親から薬草の入っている布袋を受け取り家を後にした。家を出てレンダーの家は近所だから直ぐに着いてしまう様な距離である。アルは思った、こんなに近いなら自分で行けばいいのにと。そして歩いていると近所のおじさんとすれ違った。

「おはようございます。」
「やぁ、おはよう、アル。相変わらず気の抜けた挨拶だな。ま、それの方がアルらしいけどな。って忘れる所だった、そう言えば今、怪しいローブを着た魔導士風の男が来ていて何かを探しているみたいだったぞ。村の者は怖がって誰も近付かないしアルもレンダーに薬草を届けに行くなら気を付けなさい。」
「分かりました。」
アルは彼の言っている事が的中するとは知らずにレンダーの家の前まで来ていた。ドアをノックしようとしたが後ろから聞き覚えのない不気味な声がし、油の差してないからくり人形の如く首をゆっくりと後ろに向けた。

「すまないがレンダーの家は何処か教えてくれるかな。」
ローブを着た魔導士風の男が不気味な声で尋ねた。

「こ、この家がそ、そうです。」
アルは教えてはいけないような気もしたが絞る様な声で魔導士に教えてしまった。

「そうかい。でも君の方が先みたいだから先に用事を済ませて来ても構わないよ。」
「あ、ありがとうございます。」
アルはそう言うとドアをノックすると返事がありドアが開き中へと入った。

「レンダー、薬草持って来たよ。」
先程魔導士と話した時と違い彼は落ち着いた話し方でそう言った。

「いゃあ毎回悪いな。」
「レンダーとは幼馴染みなんだから気にするなよ。それに森の奥に棲む猪を狩る事が出来るのはレンダーしかいないし。」
森の奥に棲む猪は狂暴だが肉は美味いらしく村で肉と言えば猪と言った所である。だから定期的に狩りに行くが常に危険が隣り合わせであるから彼には定期的に薬草が届けられるのである。

「そんな事無いって。お前だってもっと鍛練を積めば出来るって。
「そうかな…」
アルは自信が無さそうにそう言った。

「ああ、出来るとも!お前の頼り無い瞳の奥底から強い闘志を感じる!」
「そ、そうかい。」
「そんな顔するなよ。魔王を封じた英雄の子孫が…」
会話の途中だが遮る様にドアが開けられ先程の魔導士がずかずかと上がり込んできた。

「やはり魔王様の封印を司る英雄の子孫レンダーは此所に居たか…」
「お前誰だよ!」
「教えるまでも無い!貴様は此所で■ぬのだからな。」「ヘッ!細身の魔導士に何が出来る。外に出て相手してやる!さぁ来い!」
「良かろう。その大言壮語に免じて相手してやろう。だが後悔はするなよ…」
二人は外に出て向かい会う様に立っている。
僕ならそんな事言えない。彼奴はどんな奴も恐れない態度で接する事が出来るのは何故だと怯えながらそう思い目を二人の方から反らした。

「おや?友達が困っているのに助け無いとは随分薄情だな。」
「いや彼奴は俺を信じているんだ!だから負けやしない!」
レンダーはそう言いながら斬りかかったが遅かった。
「メラミ!」
レンダーが斬りかかるよりもメラミの呪文の方が早く、右足にメラミの呪文が命中し怯んでいる所にもう一発飛んで来た。痛みのあまりに声も出ない様だ。

「もう終わりか。先程までの威勢はどうした?」
まだ息はあるが虫の息状態のレンダーを魔導士が持っている杖で突いた。
ど、どうしよう。このままじゃレンダーが■んじゃう。はぁ、でも怖いな…


「や、や、止めろ。」
声にもならない声でアルは声を発したが魔導士には聞こえていなくまだレンダーを突いている。

「や、止めろ!」
アルは勇気を振り絞りやっと出たのはこの一言だったが魔導士を止めるには充分だった。

「止めろだと?薄情な裏切り者が。だがその勇気に免じてお前も友達と一緒に天国へ逝かせてやろう。

「…来…ちゃ…駄…目……だ…アルグ……」
「ふん、虫の息だと言うのにそれでも友達を庇うと言うのか。そう言うの見ていると吐き気がするんだよ!」魔導士はそう言うとレンダーを蹴り飛ばし地面に転がした。

「ア…ル……逃…げ……」
「しぶとい奴だ。さっさと■ぇ!メラミ!」
魔導士は先程よりも強い魔力でメラミの呪文を唱えた。アルは走ったが間に合わずバスケットボールの二回り程大きな火球は虫の息のレンダーを直撃しレンダーは悶え苦しみ断末魔を上げるとピクリとも動かなくなった。

「…許さない。お前だけは絶対に許さない!ああ!」
アルは恐怖で堪らなかったが彼の中で何かが切れた。体は自然に檜の棒を手に取り魔導士の方に走り出していた。

「怒りは人を変えると言うのか。ん、今何かを閃いた気がするな…。よし、此だ。」
魔導士は何かを閃くと何かを詠唱し始めた。アルは何が起こるとも知らずにひたすら向かって行く。

「メラストーム!」
拳大の火球が数発飛ばされ、アルは一、二発は回避出来たが残りは小手先や肩等に命中したが気にもせずに向かって行き檜の棒で殴り掛かったが杖で受け止められそのまま弾かれ尻餅をつき後方に倒れた。

「所詮、餓鬼は餓鬼だ。それ位で倒せるとでも思ったか。分からないなら教えてやろう大人の常識と言うものをな!」
怒りに満ちた魔導士の指先に火の玉が浮かび次第に大きくなって行く。

(させない!)

急に何処からともなく声がしたが村人のものではなく確実に聞き覚えのない声である。そして次の瞬間、空間がパカッと開きぐにゃぐにゃ蠢き、収まると盾だけが飛び出し、徐々に人の姿を現した。完全に姿を現すと空間の切れ目は閉じ出て来た人物は二十代前半だろうか黒髪で白金に輝く鎧と盾と剣を身に付けていて突如としてアルの前に立ち塞がり盾を使いメラミの呪文を受け止めた。

「ふぅ、間に合った。所で君、大丈夫かい?」
「は、はい…」
アルは何が何だか解らず頭の中が整理出来ずに取り敢えず返事をする事で精一杯であった。

「小癪な。何人増えようとも焦がしてくれる。って、あれ?」
「おや、慌てているみたいだがどうかしたのかい?」
「き、貴様何時の間にマホトーンを…」
「いや、今さっきだけど。」
「畜生!なら此でどうだ。出でよ僕!シャルゼート様の邪魔をする者に裁きを!」
魔導士は水晶玉を高く掲げそう言うと水晶玉が光り、中から一匹の魔物が出て来たが其は銀色に輝く体毛、黒い羽根、猿の様な体型をした魔物である。

(シルバーデビルか…)

歴戦の強者である黒髪の男には見た目でどう言う敵なのかを見分ける事が出来るようだ。

「この魔物は君が戦っていいような相手では無い!さぁ、早く逃げろ!」

「そうはさせるか。シルバーデビルよ、あの餓鬼を狙え!」
魔導士はアルの方を指差しシルバーデビルにそう命じた。すると軽い身のこなしで逃げようとしているアル目掛けて飛び掛かろうとしていた。

「させるか!」
黒髪の男が盾で攻撃を受け止め、剣で反撃しようとしたがシルバーデビルは回避し距離を取った。

(そう言えば魔導士は大人しいな。シルバーデビルも厄介だがあの魔導士も油断できないな…)
黒髪の男はちらっと見渡したが魔導士の姿はなく気配も消えていた。そしてシルバーデビルは暫く様子を伺っていたが突然腕を突き出すと掌が微かに光る。

(いかん、ベギラマで焼き尽すつもりか…)

  おおっ - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月16日 (日) 15時49分 [1028]   

魔王復活フラグ。
続きが楽しみですね^^
シルバーデビルとは何者なんでしょう。

では

  わお☆ - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月16日 (日) 16時26分 [1030]   
新しいやつですね☆
しかもオリドラ!!

続きを楽しみにしています。

  シルバーデビルに関して - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月18日 (火) 16時40分 [1035]   
皆さん感想ありがとうございます。

シルバーデビルに関してですが此はドラクエ2とドラクエ5に実在する猿みたいな悪魔みたいな魔物です。

  時を超えて - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月18日 (火) 16時45分 [1036]   
(いかん、ベギラマで焼き尽すつもりか…)

黒髪の男はとっさにそう判断すると掌から蒼白い光が発せられシルバーデビルに放たれた。すると蒼白い光はシルバーデビルを締め付け、紋章の様なものが浮かび上がる。

「キキー!」
シルバーデビルは呪文を発動させようとしたがぷすっと言う虚しい音だけがして不発に終わった。其所に空かさず黒髪の男が斬り掛かり回避しようとしたが避けきれずに腕をかすった。

(あっちゃあ、逃げろって言ったのに未だ近くに居るとは…)
黒髪の男は手の甲を額に押し付け、アルの方に一瞬、目をやったがシルバーデビルはその一瞬を逃さなかった。シルバーデビルはその一瞬の油断を突き、飛び掛かって来たが黒髪の男は気付いているのか気付いていないのか一応剣を握っている腕は剣を振り回し、視線はアルに注がれていた。

(あんなに熟練した人でも手こずるなんて、僕にもっと力があればなぁ…)

「いいかい!こいつは私が何とかするから、君は安全な所に逃げるんだ!」
男は相変わらず視線だけアルの方を向きながらシルバーデビルの攻撃を受け止めているがアルは少し離れた所にいて首を横に振っていた。

(ありゃあ、動かないな。「あれ」を試させるか…)

黒髪の男にはある考えが脳裏を過ったのか盾を地面に一旦置き、空いた腕は腰に掛かっている袋を掴みアルの方目掛けて投げると袋はアルの足元まで少しと言う所で止まった。

(…袋?)
何故このタイミングで袋を自分の所へ投げられたか分からずアルは取り敢えず袋を開け中身を取り出す事にした。

(い、石…。投げて攻撃しろって事なのかな。でも一個しか無いから慎重に使わなきゃ。)

袋から取り出された石は拳一つ分位の大きさでアルは石を握りしめ投げるタイミングを伺っていた。

(彼は瞳の奥から得体の知れない力を感じると思ったから使わせたがやはり彼も不適合者だったか…)

黒髪の男はアルの方を一瞬見て視線をシルバーデビルの方へ戻し心の中は溜め息をついていた。

(僕は友達を助ける事が出来なかったけどあの人や村の人を助けたい。神様、僕に力を…)

アルはそう思いつつ今だ!と言わんばかりに石を投げようとしたが手に何か違和感を感じ、振り上げようとしている腕に視線をやるとその手には石ではなく弓が握られていた。

(ゆ、弓なんて何時の間に持っていたんだろう。さっきまで石を握っていたのに…。けど弓だったらお祖父さんに使い方を教わった事があるから何とかなるかもしれないな…)

アルは弓に矢をセットし集中し狙いを定め矢を引き絞り力強く矢を射る事が出来、シルバーデビルの右足に命中した。シルバーデビルは苦しそうな表情を浮かべ矢を抜き、矢の飛んで来た方を向こうとしたが腹部を激しく斬りつけられ、鮮やかな赤色の血液ではなく、どす黒い血が流れ滴り落ちていた。

(ん?今、奴の足に刺さっていたのは矢だよな…。しかし誰がやったんだ。)

黒髪の男は辺りを見渡したがアル以外の村人は皆家の中にいるから村人がやったとは考え難い。そしてもう一度アルの方に目をやると確かに弓を持っていた。

(弓!?彼はさっきまで丸腰だったのに急に弓を持っているなんて有り得ないよな。もしや、彼こそが「あれ」の適合者で「あれ」を弓に変化させて奴の足に矢を命中させたと言うのであれば説明がつく。)

シルバーデビルは右足の痛みが原因で動きが鈍っていて攻撃を仕掛けても黒髪の男に回避されその流れで再び斬りつけられた。

(はぁ、はぁ、何とか当たった…。一発しか無かったからこれで良かった…って、さっき撃ったからもう無い筈なのに矢がある!?きっとこれはあの人を助けろって言う神様のメッセージに違いない!)

アルはそう思い、再び狙いを定め矢を引き絞り矢を射る。矢は見事にシルバーデビルの背中に刺さり一瞬、苦しそうな表情を浮かべるも空かさず黒髪の男が斬りつけ表情を元に戻す隙すら与えず更に連続で斬りつけ次に斬り上げ、斬り降ろした。すると鳴き声を上げ前方に倒れうつ伏せの状態となった。

(す、凄い…)

アルは駆け寄ろうとしたが…

「近寄るな!」
黒髪の男は凄い剣幕でそう言うとアルは戸惑いながら後ろに下がった。そう、それはシルバーデビルは未だ息があり虫の息に近いが危険な事には変わり無いと言う事である。黒髪の男は剣で大きく振り被って力強く斬り降ろし、シルバーデビルは断末魔を上げ仰向けに倒れるとピクリとも動かなくなった。

「ふぅ、やったか…」
黒髪の男はそう言うと剣に付いた血を払い、剣を鞘に収めた。そしてアルの方へ近付いて行く。

「えっ…」
「君、名前は?」
「アルグレイスです。」
「そうか。私はグロウだ、宜しく。」
「あの、助けてくれて有り難うございます」
アルは深々と頭を下げそう言った。

「大したこと事はしていない。当たり前の事をしたまでだよ。」
「凄いですね。どうしたらそんなに強くなれるんですか。」
「…黒焦げになった彼はどうしたんだい?」
アルが質問しているのにグロウは横たわっているレンダーの亡骸に目を投げ逆に質問をした。

「怯えている僕を魔導士から庇ってくれました。けど、僕のせいで…」
「そうか。いや責めたくて言ってる訳じゃないんだ。彼はどうして亡くなったのか真相が知りたかっただけなんだ。けれども君を庇って死んで君が生き延びる事が出来たのなら彼は後悔していないと思うよ。」
彼はアルを元気付けようとしてそう言ったがアルは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「厳しい事を言うかも知れないがそんな顔をしていたら亡くなった友人も浮かばれないよ。さぁ、彼の墓を作り弔おう…」
グロウもアルにそう言ったが彼の表情もまた暗くなっていた。

「はい…」

そしてアルとグロウはレンダーの家の横に穴を掘る事にしたが二人共何も喋らずに無心で穴を掘りレンダーの亡骸を掘った穴の中に寝かせた。

「アルグレイス、最後に別れの言葉をかけてあげるといい。」
「はい。…今までありがとう、そしてさようなら…。」
「…では土を被すとしよう。」
「はい。」
グロウは相変わらず暗い顔をし、アルは細く光る涙をたらりと流しながら土を被せて行く。最後にその上に盛り土を盛ってレンダーの剣を其所に突き立てた。

「この村に神父は居るか?」
「いいえ。」
「全知全能の神よ、この者に安らかな眠りを、そして此所に冥福を願わん事を。」
グロウは突然跪き祈りを捧げた。

「今のは何をしていたんですか?」
「いや、この村には神父がいないと言うから代わりに私の国の作法で祈りを捧げたのだがやはりおかしいかな。」
「おかしいだなんて、僕は神父さんとかが祈りを捧げる所を見た事が無いので驚きました。」
「そうか、私に付いて行くと言うのならもっと知らないものに出逢える。しかしそれは荊の道になるけれど君が本当に強くなりたいと思えば止めはしないがどうする?」
「…強くなりたいです。」
「なら決まりだ。さぁ行こうかと言いたい所だが君にも親御さんがいるだろう。親御さんに心配をかけてはいけないから私も同行するから相談しに行こう。」
「はい。」
アルは自分の家の方へ向かって歩き出し、グロウもそれに付いて行った。

「あの、この石お返しします。」
「ああ、此かい。此は自分から持ち主を決める変わった石で、先程の君を見る限りでは君を持ち主と断定したようだしあげるよ。」
「ありがとうございます。けれども持ち主を決めるとはどう言う事なんですか?」
「そいつはただの石ころではなく『受念石』と言う希少価値のある石で書いて字の如く持ち主と決めた相手の念を受けて状況に応じて武器や盾に変化する。逆に持ち主と認めない相手が持っていても変化は起きる事なくただの石ころにしかならない。つまり君は石に認められたと言う事だ。」
「石に認められた…微妙ですね。ところでグロウさんはこの石を使えるんですか?」
「いや、恥ずかしい話だが私は持ち主ではないようだ。」
グロウは思わず苦笑いをした。

「あの、着きました。」
「そうかい。」
アルは家のドアを静かに開け先に入り「ただいま」と言うと後ろからそっとグロウが入りドアを閉めた。

「おかえり。やけに遅かったけどどうしたん…ってその後ろの方はどうしたんだい?」
「…命の恩人。」
アルは口を開きボソッとそう言った。

「命の恩人って、何かあったのかい?」
アルの母親はアルに尋ねたがアルは下を向き黙っていた。

「その先は私が話しましょう。」
グロウは口を開きそう言った。

「立ち話も難ですからどうぞお座り下さい。」
アルの母親は二人に椅子に座るよう促した。二人は椅子に座り、グロウが話し始めた。

「アル君は友人の家に行きその帰りに魔導士風の男に襲われたみたいですがその友人の方が最後の最後まで庇ってお亡くなりになりました。しかし魔導士風の男は彼を殺害するだけでは飽き足らずにアル君を再び襲おうとしていたので私が急いで駆け付けたと言う訳です。」
「そうだったのかい。」
「それでアル君は私にこう漏らしていました。『強くなりたい』と。」
「アル、アンタ、その方にそんな事言ったのかい。」
「うん…」
「アル君は今は悲しみに暮れていますがその悲しみを乗り越えて強くなると言う意思表示をしてくれました。其所で相談なんですが…」
グロウが話しているがアルは突然口を開き言った。

「グロウさん、自分で言いたいのでいいですか?」
「あ、ああ…」
「母さん、僕はレンダーが死んだ時に彼奴の分まで強くなりたいって思ったんだ。そしてグロウさんに助けてもらった時にこの人に付いて行きたいと思ったんだ。だから旅に出たいんだ!」

「とそう言う訳なんでアル君を私に預けさせては頂けないでしょうか。」
「…構いませんよ。それにアル、アンタは本当の子じゃないんだ、何処へなりと好きな所へお行き!」
アルの母親はそう言うと近くにあった布袋をアルの方へやった。アルが袋の中を覗くと幾つかの薬草と冒険者が着るような服とブーツと銅製の剣が入っていた。
この中身からして予め用意されていた感じがしアルは母親が本心であんな事を言った訳じゃないと感じた。そして側にいたグロウも何か言いたげだったが淋しそうに遠くを見つめているアルの母親を見てあれは本心ではないと感じ何も言えなかった。

「行きましょう。」
袋に入れてあった服やブーツを着用し着替え終わりグロウにそう言った。

「ああ。」
二人はそのまま何も言わずに家を後にした。

「アル君何も言わずに出てきたがいいのかい?」
「はい、かえって口を開いて何か言えば名残惜しくなるだけですので…」
アルは強がってそう言ったが無理をしているなとグロウは感じた。

「そうかい。」
「ところでグロウさんってさっき突然現れて助けてくれましたが一体どう言う事か説明していただけますか?」
「君の母親にはああ嘘を言ったが実は私は神創歴3600年の世界からこの世界に不良品のからくり魔導士を追う為に来たのだが君が奴に襲われているのを見て焦ったよ。」
「し、神創歴3600年!?今は2500年ですよ。冗談を言うならもっと上手い冗談を言って下さいよ。」
「ああやはりな。しかし千年後には文明が発達して戦争の為にいろんなタイプのからくり兵が生産される。話を戻せばその為に造られた魔導士タイプの一体が暴走し時空の壁を超えてこの世界に紛れ込んだようだが私も奴が破った時空の壁を超えて此処まで来たと言う訳だ。」
アルはには俄に信じがたい話だがグロウの真剣な顔からは嘘は一切感じられ無かった。

「じゃさっきの魔導士もからくりですか!?」
「そうだ。しかもシャルゼートとか呟いていた。私の時代にはそんな単語は一切無かったから不思議に思ったのだがもしかしてとは思うのだがアル君は聞いた事あるかい?」
「はい、レンダーが自慢の様に『俺は魔王シャルゼートを封印した英雄の子孫』だと言っていたのを覚えています。」
「魔王シャルゼート、そして其を封印した英雄、暴走したからくり魔導士か…」
「それらがどうかしましたか?」
「いや、何か繋がりそうだが今一つ何かが足りない気がする。アル君、私はこの時代に知らない事が沢山ありそうだ。知る限りの事でいいからその時は頼むよ。」
「はい!喜んで。」

二人は村を出てまだ見ぬ地目指して歩き出す…







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