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アークブレード - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月08日 (土) 15時54分 [977]
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今度はアレンの視点で行きます。
車は市街地へ入り駐車場に停車している。朝の日差しが眩しい時間帯だがツァイベルは疲れているのか静かな寝息を立てて眠っている。
「やれやれやっと市街地まで入ったか。それにしてもツァイベル、彼奴は俺が寝ている間に何か熱弁を奮っていたような気がするが気のせいか…」
俺は車から降り体を伸ばしながらそう言った。
「目覚めの一杯はやはりあれしかないな。自販機、自販機自販機は何処だ。」
ツァイベルももう少し気の利いた所に止めて欲しいと思うぞ。
「仕方無い、コンビニで買うか…」 俺は仕方無く2〜30メートル離れた所にあるコンビニまで歩く事にした。車の中に非常用の缶詰や水があるけれどもバカスカ消費する訳にもいかないだろう。それに彼奴も相当疲れている筈だ、此所は俺の奢りで何か買いに行くとしよう。
朝のこの時間帯はサラリーマンや学生やらが通勤通学する時間帯だな。俺はこう言うのは苦手だ、人混みを避けながら行った。その中に一瞬集団から浮いている服装をしたピンクのワンピースを着た女とすれ違った様な気もするが気のせいだろと思いさっさとコンビニの中に入る事にした。
それにしてもコンビニは夏は涼しいけれど朝から冷房がきき過ぎて肌寒い。
(そんな事より缶コーヒーと栄養ドリンクはと…) 俺はかごを取り中へ進むと飲料を取り扱うコーナーに寄り缶コーヒーと栄養ドリンクをかごに入れた。そして次は弁当のコーナーで手頃なものを二つかごに入れた。
「合計で大体1500ギルか…」 コンビニの弁当は様々なレパートリーがあるがスーパーマーケットに比べればやはり高いな…。と思いつつレジカウンターに並び会計を済ました。 だが高いだけあって弁当類温め、買った商品を袋に入れてくれ、笑顔の接客が付いてくるのだから仕方無いか…。
会計を済まし店を出たが出た所で先程見掛けたピンクのワンピースを着た女が待ち伏せていた。よく見ると髪の色はメイプル色だったがどうせツァイベルの事だ態々女装して迎いに来たとしか思わずシカトしそのまま行こうとしたが…
「貴方が噂のアレン大尉ですよね?」 何だこの女は、馴れ馴れしいな。それでも俺はシカトを決め込もうとしたが…
「アンタ、無視するなんてヒドイんじゃない!」 ったく面倒臭いな。仕方無いから振り向いたはいいが振り向き様に回し蹴りはないだろう。 俺も一応ソルジャーだからあんな民間人の回し蹴りは回避できたが悩殺されて一瞬よろめいた。あれはただの回し蹴りじゃない!"悩殺回し蹴り"に違いない。
「流石、ソルジャー。いいわ!剣を抜きなさい!」 「嫌だな。」 別に魔物を斬る訳でもないしましてや狂暴女とは言えど女を斬り刻む趣味等持ち合わせてはいない。だがそんな事はお構い無しに女は槍を構えて襲って来やがった。
所詮民間人、動作的には熟練した動きを見せるがかわすのは容易だ。けどたまにやる回し蹴りは勘弁して欲しい、そろそろ回避するのも限界に達しそうだ… だがよく見ると女の方が大分疲れている様に見える。
「俺はアンタと戦う気は無い!俺が悪かった!」 シカトした俺にも落ち度があるが何よりも女に気を使って言っているのに聞く耳すら持たないだと!
「仕方無い…」 仕方無く俺は剣を抜き構え様子を伺い攻撃を掻い潜り女に接近し距離を縮めて行く。しかし武器を使えば勝負が着かないしできれば女は斬りたくない。精々薙ぎ払う程度で終わらせれればいいのだがなかなか隙を見せないから難しい。いや、待てよ。相手が隙を見せないなら此方が隙を見せればいいまでか… 俺は早速構えず剣の切っ先も下に向けた状態で呆然と立ち尽くした。と言うか空腹だから気を抜いていたら自然とこの姿勢になりそうだ。案の定女は用心する事なくそのまま向かって来やがった。よし!来い、来い来たー!今だ!
俺は女が薙ぎ払おうとした時に斬り上げ攻撃で槍を吹っ飛ばした。金属同士がぶつかり凄い衝撃と乾いた音がし、手が痺れている。そして女は吹っ飛ばされた槍を眺めたかと思うと再び向かって来た。
「さっきも言ったが俺はアンタと戦う気は無い!」 「まだ、これからよ!」 はぁ、まだやるってのか。普通、武器が手元から離れたら大人しく降参するだろう。 仕方無い、剣を収めて俺も素手で戦うか。最も突き飛ばす為にな…
「よし!来い!」 距離を取り構えると何故か分からないが柄にもない台詞を吐いたな。女は挑発に乗ったのか乗っていないのか不明だが膝蹴り、回し蹴り、ハイキック、飛び蹴り等の蹴り技でラッシュをかけて来た。回避できるものは回避してできないものは防御してやり過した。けど攻撃が止む気配等なく再び蹴り技のラッシュが続き膝蹴りが来た。やるなら今しか無い!其処だ! 俺は膝蹴りをガードすると今だと思い腕を突き出し力強く女を突飛ばした。見事に上手く行ったのか女はよろめいたかと思うと体勢を崩し後方に倒れた。全く手間を掛けさせやがって… よく見ると女は起き上がりまだやるつもりらしい。しかしタイミング良く誰かの腹の鳴る音がしたが俺のものではなくどうやら女の腹の音だ。
「アンタ腹減っているだろう。コンビニ弁当で良ければ食べるか?」 左手に持っている袋を差し出しそう言ったが黙っていた。はぁ、襲って来なきゃ今度は黙りか…
「…いらない!ってか、いきなり襲って来たのに何で親切にするのよ!アンタ馬鹿?」 何で親切にするのと言われてもな、死んだ親父に口癖の様に『可愛い娘なら何があっても助けてやれ』と言われていたから体が自然にそうしてしまっていた。それに放っては置けない気がしたしな…
「こんな所では難だ、詳しい事は落ち着いた場所で聞いてやる。さぁ、来い!」 俺はそう言い槍を拾い、先に行こうとしたが女は付いて来ない。不本意だが女の手を引き落ち着いて話が出来る場所を探す事にした。これがデートだったらどんなに良かったか。けれど実際にデートしていたら緊張して手を握るなんて出来ないだろうな… 暫く行くと広い公園がありベンチだけでなくテーブルも備えられてある。そう言えば此所の公園は若いカップルがよく使うデートスポットの一つだったな。俺としたことが… 又々不本意ではあるが女をその公園のベンチに座らせ、そして俺は向かい合う様に座った。
「アンタが正真正銘クレア=カトレーンか。さっきは済まなかった。また何処ぞのツァイベルが変装しているかと思って…」 「ツァイベル!アンタ彼奴と知り合いなの!?」 泣きそうな顔をしていたかと思えば急にその態度か。
「知り合いと言ってもたった数時間前に知り合ったばかりだから彼奴の事はよく分からない。食べながらでいいから話聞かせてくれないか。」 やはり空腹だったんだな。弁当のビニールを剥がして蓋を開けたら貪る様に食べ始めやがった… しかも口一杯に頬張って慌てて飲み込んで喉詰まらせたか。世話が焼けるな。
「ったく、しょうがねぇな。」 見るに見兼ねて缶コーヒーを開けて渡してやると具に流し込み安堵の表情を浮かべていた。
「私はクレア=カトレーン。この御時世働き口が無くてツァイベルがやっている探偵事務所に拾って貰ったんだけど彼奴はただの経営者じゃないみたいで何処かの大企業の御曹子らしいのよ。だから当然金も暇も有り余っていて金持ちの道楽でやっているかと言えばそうじゃなくて皆の役に立っているって言うからビックリよ。」 「御曹子…か。あまり興味をそそらないな。」 「感想はいいから続けるわよ。ただの御曹子じゃなくて兵器開発会社『アルティメットウエポナー』の御曹子で父親は創始者にして文武両道の器を持つリッチマン。その父親からツァイベルに武器を支給されているから私達は情報収集だけでなく悪いカメリカ兵や魔物を撃退する事も可能よ。」 親子連携プレーか…。羨ましいな、そう言うの。そう言えば親父は戦争に行ったまま帰って来なかったな…
「遠くを見つめてどうしたの。」 「いや何でもない。」 「そう。じゃ続けるわよ。ツァイベルはカメレオンみたいに変装は完璧で知識も相当なもので私はよく分からないけど『魔法』の事には詳しいらしいのよ。」 「確かにそうかもしれないな。俺もアンタのもどきを魔物から守った時にそのもどきがツァイベルで風を発生させて攻撃している所を見られた。そして先程も魔物と戦闘したのだが魔物に手も足も出せない所に彼奴が登場して魔物を足止めしながら俺に魔物の弱点教えてくれたから俺はリジェネと言う継続回復魔法を使い何とか倒す事ができた。」 「ってアンタ魔法使えるの。ってか何で使えるのよ。教えなさい!」 魔法を使える事は言ったら面倒なのは百も承知だが今言わなくてもいつかは話さないといけないからな。 と言うかいつの間にか使えてたから何故使えるか正直分からないし。
「何故使える様になったかは分からないが使えた時は全身に力が湧いてくる感じがして掌が仄かに光り次の瞬間風が発せられた。」 「そう、でも何故アンタだけ使えるのか不思議よね。」 「…嘘か本当か知らないが一説には太古の昔、人は魔法と言うものを編みだし火を起こしたり怪我を治療したりするのに使い始めたがやがてそれを私利私欲の為に使い支配しようとした者が現れ戦争になった。戦争が終結した時にそこに残っていたのは焼け野原と死骸の山だけだったと言う。そして魔法は過ちの産物だと言う事に気が付いた人々は未来永劫使われる事の無いように何等かの方法で魔法そのものを封印し存在自体も封印したと言われている。現代で使えるとすれば俺は何かに選ばれたのか或は誤って古代人がかけた魔法の封印の一部が解かれたのかも知れないな。」 「長かったけどそんな説があるんだねぇ。」 「あくまでも仮説の域だがな。けど封印の解除が出来ればアンタやツァイベルも魔法を使えるかもな。それに使えたらこれから魔物との戦闘が楽になる筈だ。」 「これからってまだ彼奴らいる訳!?私相当数倒したのよ。」 「いいから落ち着け。自称魔物研究の第一人者ルイナート=ケビンの話によれば遥か昔に空から降って来た侵略者がいてそれは人々によって倒されたがそいつは完全に死んでいなくて何処からか魔物を呼び寄せているのではないかと言っていた。それで更にルイナート=ケビンは人間が魔物の親玉である侵略者を探し出す為にある実験を日夜行っているようだ。」 「ある実験って何よ。」 「とてもグロテスクな内容になるがそれでもいいなら話すがどうする。」 「そう言われたら気になるなぁ。話して。」 「所でアンタは魔物に変化する人間と戦った事はあるか。」 「え?いきなり何よ。ってかそんな奴いるの?」 はぁ、やっぱりな…
「無いみたいだな。ある実験と言うのは魔物を探査できる人間を確保する為に死んだ兵士や囚人をベースに魔物の細胞を埋め込み生き返らせて魔物の殲滅を図る事が目的らしい。しかしリスクがあって実験で生き返った人間は感情が高ぶり極度の興奮状態になると覚醒と言って心身共々魔物になる現象を引き起こし物凄い力で見境なく命あるものを滅ぼそうとしてくる。」 「じゃ、リスクさえ無かったらそのルイナートって言う人は凄いじゃないの。」 「だが奴の実験は何れも失敗に終わっている。結果俺達ソルジャーは奴の傑作を何体始末した事か…。先程ツァイベルに助けられた時も戦ったのは奴の傑作の一つだ。アンタも気が付かない内に奴の傑作の一つを魔物に変化しない内に始末しているかも知れないぞ。」 「悪いカメリカ兵や荒くれ、魔物は始末しているけど更に面倒なのを増やされたって事!?」 「そうだ。だからアンタが心配で俺とツァイベルは急いで此所まで戻って来たが大丈夫そうだな。俺はてっきり魔物の大群が街に襲来したと思った。勘違いならいいけどな。」 「そんな事ある訳無いよ。」 「いや、俺は昨日の夜にルイナートの研究所を見学しに行き先程話した事を聞いた。そしてその帰り道に奴はヘリコプターで来て強力な魔物を置いて帰った。その魔物は俺とツァイベルを足止めするかのような強さで此が囮で別の何かひた隠しにしていたものを披露する為の時間稼ぎのような気がしたからそう言っているのだ。」 「そう。でもアンタや仲間のソルジャーがいっぱいいるから大丈夫よ。」 「…だといいけ……」
ウゥゥゥ……
此は役所の緊急時の警報の音…一体どうした。しかしこのタイミングで鳴るとはもしや又魔物か。
「行くぞクレア!」 「えぇ、行くわよ!」
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はい - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月08日 (土) 18時34分 [979]
なかなか複雑になってきましたね。 一時期雲隠れしてた時のは改めて眺めました。 魔法か〜・・・。いつだって夢見なかった日はなかったっ!!
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おお。 - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月09日 (日) 01時46分 [983]
新たな戦いの始まりですかね。 そして置いてけぼりのツァイベル……(笑) アレンにはクールな印象を持ってたんですが、意外に女にも興味あるんですね^^
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お久し振りです。 - ティファ・ロックハート (女性) - 2009年08月09日 (日) 07時12分 [987]
コンビニの値段は、それぞれですからね。 私は安い方しか興味ないので、勿体ないですが…。
これからの話にも期待してます。 頑張って下さい!
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ありがとうございます - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月09日 (日) 10時01分 [988]
どうも漆黒の騎士です。 皆さんこんなにも感想を寄せていただいてありがとうございます。 これからもよろしくお願いします。
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