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ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー小説投稿掲示板


ここは小説投稿掲示板だ。
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーまたはその他(アニメ、ドラマ)などでも、楽しそうな小説やストーリー、
詩、日記などがあったらとにかく書き込もう。
他人が見ておもしろいと思った内容、自分が思いついた内容があったら、とにかくどんどん投稿してみてくれい。

(注)最近ここをチャット代わりに使われている方がたくさんいます。
チャット代わりに使われますと、せっかく一生懸命小説等を書いた方の内容がすぐに流れて見れなくなってしまいます。
ここは小説やストーリー、詩、日記などを書くところですので、チャットはこちらにてお願いいたします。

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  Lulure 〜幻の人〜 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 13時43分 [959]   
   朽ち果ててきた城。もとあった城の原形はまるで留まっていなかった。かろうじて残ったのは、崩れたエンタシスが数本と床の石、そして最早一枚板となってしまった外壁が数ヶ所だけ。
「全く、手間かけさせやがって。さっさと■ねばいいのによ」
 杖の回復も間に合わない。二人の戦士と、魔導士がだんだんとぼろぼろになっていく。
「ようやっとこれで■んでくれるかな」
 グラスはまた、両手から巨大な炎と冷気を生み出す。
「・・・間に合わない・・・・・・っ!!」
 その時だった。カツカツと固い足音が聞こえ、そちらに目をやれば、いつものウェーブがかった髪をなびかせ、身長より長い鞭を振り回すマゼンダの姿だった。マゼンダは鞭をブンブン振り回しながら、グラスに向かっていく。
「何人束になろうが一緒・・・・・・!」
 と言うのも束の間、マゼンダの足は思いの外速く、更には鞭に気圧されて思わずグラスの足が揺らいだ。
「何ボサっとしてるの!? この間にさっさと回復しちゃいなさいよ!」
 あ、はい、とだけ返事をし、アーサーは順繰りに杖を振りかざしていった。
「また邪魔が入ったか!」
 グラスは両手から火炎と冷気を出そうとするが、ついぞマゼンダの鞭に邪魔された。
「これいいわね。思い通りに素早く動いて」
 とうとう一枚板の壁まで追いつめられ、グラスは逃げ場を失った。
「このアマ!」
 グラスは剣を構え、それに鞭が絡みつく。
「それでどうするつもり? エルフの鞭は簡単にはちぎれないわよ?」
「剣を捨てても手は使える!」
 そう言って右手を離し、火炎が生み出される。
「!!!」
 流石に素早い鞭も間に合わなかった。
「あああああああああっ!」
 炎に灼かれながら、マゼンダは頽れる。アーサーが慌てて杖を持って駆け寄るも、グラスの剣に止められた。
「それ以上近寄るな。杖を置いてもらおうか、坊主」
 でなけりゃ、と、黒く焦げ付いたマゼンダの首に剣の切っ先を当てる。
「この女の首が飛ぶ」
「先生!!」
 ルークが歩を進めるのを、ガイルが腕を掴んで止めた。ルークは歯を食いしばりながら、もどかしさに気持ちが落ち着かなかった。そうしている間にも、グラスの手からは炎と冷気がまた生まれてくる。
「年貢の納め時だな。覚悟しやがれ」
「待ちなさい」
 グラスはまたか、と声のした方を睨むと、目を見開いた。
「な・・・・・・!!」
「ルル・・・・・・?」
 長い髪と愛らしい顔によく似合う赤の法衣。さきほどまで錯乱し、落ち着きをすっかり無くして今にも■なんとしていた幼い少女の姿があった。
「しばらくぶりね、グラス」
 ルルを知る者は、きょとんとした顔でルルを眺める。グラスは狼が唸るような表情でルルを睨み据え、言葉を発した。
「親父ともども貴様ら姉妹に封印されたとき以来だな、ルルア」
 ルルはゆっくりと歩みだし、その上に、かつて具象気体として遺跡に現れた少女の・・・ルルにそっくりな少女の姿が現れた。
「ここは鳳凰の塔の鍵を司る神聖な場所。あなたの来るようなところではありません。立ち去りなさい」
「だからだろうが! ここを滅ぼせばお前とお付きが親父を封印しに来ることもできない。だろ?」
「そうですか。ならば私ができることは果たさねばなりませんね」
 具象気体の少女は右手を上げ、そこから白い光があふれ出した。一同はまぶしさに目を閉じるが、体の痛みや疲れが全く感じなくなるのと同時に、グラスの叫びが聞こえる。
「力が・・・・・・力がぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ルルアはそっと、右手を下ろして語りかけた。
「そろそろ『ルル』としてこの体が目覚めるころでしょうか。私は全てを忘れてしまいますが、感覚がずっと覚えています。だから、今こそ魔王子グラスを滅ぼすのです」
 ルルアの姿が消え、ルルの体ががくっと崩れた。少女は目覚め、ゆっくりと起きあがる。
「あれ? あたし何でここに・・・・・・?」
「ルル!」
 アーサーが不意にルルを抱き寄せる。
「よかった・・・・・・落ち着いてくれて」
「え? 何? 何? お兄ちゃ・・・・・・」
 そのときルルは、なんとか立ち上がってこちらを睨み据えるグラスに気づき、他もそっと武器を手に立ち上がる。
「お遊びはここまでだな、グラス」
 荒い呼吸を繰り返しながら、グラスは両手から炎と冷気を生み出そうとした。しかしそれも、先ほどの半分ほどの大きさでしかなかった。
「前線はガイルさんと私と先生で。一気に殴りかかる! アーサーとルルは援護と回復を。調子は本当に大丈夫か? ルル」
「もう大丈夫。ごめんなさい」
 ルークはふっと笑いかけた。

  雷鳴と電光 〜聖と魔〜 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 13時44分 [960]   
「いくら力が出なくても、オレサマは魔族の王子だ・・・・・・! ナメんなよ!」
 そう言って炎と冷気を一度に投げつけるも、ルルのはったバリアの前にはそれほどの威力が出てこなかった。
「バイキルト!」
 アーサーもそれぞれに腕力を上げる魔法をかけていった。
「おらぁぁぁぁぁぁっ!」
 ルークが剣を思い切り振り落とし、力が減退したグラスは避けきれずに肩を斬られた。
「せいっ!」
 二度打たれた鞭の先の刃もグラスを切り裂く。
「はっ!」
 ガイルの剣もしっかりとグラスをとらえた。
「小五月蠅え蝿どもが・・・・・・調子に乗るな!!」
 ガイルの掌で大爆発が起こり、前線が崩れた。
「ぐぁっ!!」
「がっ!」
「いっ・・・!!」
 ある者は残った壁に叩きつけられ、ある者は放物線を描いて地面に落ち、またある者は床を擦って転がった。
「しっかりして!!」
 ルルとアーサーがそれぞれで回復を施す。3人は順繰りに攻撃を仕掛け、時折アーサーが手から強力な火炎呪文を放つ。弱体化させられてしまった魔王子は思わぬ猛攻撃にひるむ。魔族の王家出身の者にはこの上ない屈辱だった。
「許さねえ・・・・・・!」
 グラスの背から現れる、3対の黒い翼。それと同時に強い風が巻き起こった。
「まとめて殺す!!」
 地面に「刺さった」腕。そこから黒い穴が電磁波を帯びながら広がっていき、中から紫色の光る球体がぬっと姿を現した。球体は電磁波を放出しながら収縮し、まばゆい光を放ちながら一気に拡散した。電磁波は放った本人を除く全員を貫き、貫かれた者たちは叫び声をあげる暇すらなかった。
「地獄の雷はどうだ? これに耐えきれる奴は魔界にもいない。もっと苦しめてやろうか?」
「い・・・げんに・・・ろ」
 ぼろぼろになって今度こそ倒れていたはずのルークが剣を杖にゆっくり立ち上がった。俯きながら。
「馬鹿な! これに耐えられる人間がいるわけ・・・・・・!!」
「いい加減に・・・しろよ・・・!!」
 その目はいつになく怒りに満ちていた。
「私は・・・今2人の主人に仕えてるようなもんだがな、いや、ある意味3人か?」
 グラスは少女の周りに何か力を感じ、たじろいだ。
「その主人が傷つくのは護衛たる私の不覚が理由としてあるにしても」
 少女は剣を構え、グラスを睨んだ。彼女の体が金色に輝く。
「これ以上主人を傷つけるのは止めて頂こうか? 喧しい蝮が!」
 少女が剣を真上にかざすと、辺りに暗雲が立ちこめた。集まった暗雲が電気を帯び、音を立てて暗さを増す。
「る、ルー・・・ヌ?」
 アーサーが焦げだらけの顔をなんとか上げ、少女のまばゆく光る体を眺めた。
「まさ・・・か・・・・・・」
 ルークは剣の切っ先を一気に振り下ろし、それと同時に雷光がグラスの体を貫いた。その音が余りにも凄まじく、グラスの悲鳴は彼の体もろとも消え去った。
 ルークの体が頽れた。

  お久しぶりでございます。 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 14時13分 [963]   
皆様この度復活して参りました。
いや、試験だったり旅行だったりと、何かと忙しかったので。
っていうのとぉ〜・・・最近ファンタジー世界観のインスピレーションが薄くなってきちゃって、続きが浮かばないってのが何より大きくて〜・・・・・・。

というわけで復活して早々ですが、プチ休止宣言です。これからはせいぜいコメに回るぐらいかと思います。期限は話の続きが浮かぶまで、とさせて頂きますです。ハイ。

ってかそれ、結局いつもと変わらんじゃんww

まあ、これからは出現率は増えると思いますが、書くのは激減すると思われます。

それでは☆

  おおっ - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月06日 (木) 16時57分 [966]   
お久しぶりです^^
それと試験お疲れ様です。お互い単位が取れてるといいですね^^;

っていうかルーヌがつええぇぇ!!
ついに魔王子グラスも破れましたか……。

案に詰まるのは誰でもよくある話ですんで、まぁ気長にいきましょう^^
とか言いつつ続きが気になるオレ(笑)


  こちら超常現象対策室! - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月04日 (火) 15時11分 [956]   
  【第3話】信じて!煉ちゃん!

源田勝征と安倍明晴は、任務出立前の装備チェックをしていた。
無線、GPS、除霊式を施した霊退拳銃、マシンガン、バズーカ、結界用の杭や札、その他諸々。
 「なぁ、そもそもなんで美言は消えちまったんだ?」
源田がマシンガンの調整をしながら安倍に尋ねる。
 「あ〜、なんでも天宮家当主、まぁ美言の父ちゃんと大喧嘩したとかしてないとかって聞いたけど」
安倍はタバコを咥えながら筆で札に字を書き綴っている。
 「天宮家当主と喧嘩?そりゃまた、恐ろしいことをするもんだ」
 「全くだ。そんで、争いに争って家出に至りましたとさ」
 「なるほど。だが家出したからって、ここにまで来なくなる必要はないだろ」
 「年頃の女の子だ。家の宿命から、任務の重責から、あらゆるしがらみから逃れたくなったって誰も責められやしないさ。親との喧嘩もそれに起因するものだろ。天宮家に生まれたばかりに、優れた霊退師であるばかりに、あいつは普通の女の子が手にする楽しみや幸せを手にできない。色々積もり積もるものがあったんだろ」
 「室長も顔には出さないが、内心かなり心配してるしな」
 「千代子ばあさんは美言がまだ赤ん坊の頃から見てきたからな。心ではあいつの幸せを願っても、立場上そうもいかない。あの人もつらいところだ」
 「全く情けない話だ。あんな幼い娘が抜けるだけで、任務成功確率が10%も低下するんだからな」
ガチャン、とマシンガンを完成させ、スーツケースにしまい込む。
 「正に霊退師になるために生まれてきたと言わんばかりの天賦の才。普段は何でもない風に笑ってるけど、その才能があいつを傷つけてる」
 「ふふふ」
 「……なんだよ、気持ち悪いな」
 「お前、天宮家の戦力は貴重とか言って、本当は美言には闘って欲しくないんだろ。俺もお前も、あの子とはもう7年以上の付き合いだ」
安倍も札を書き終え、筆をしまう。
 「……当たり前だろ。誰が好き好んであんないい子に、こんな悲惨で果てしない戦いを押しつけられる?出来るなら代わってやりたいさ。でも出来ない。おそらく、あいつは霊退師という宿命からは逃れられないだろう。いくらあいつが逃れたいと願っても、周囲の期待がそれを許さない。そしてあいつはそんな周りの奴らを見捨てることが出来ない。だから、だからこそ――」
 「――ああ。だからこそ、俺たち大人がもっと強くならないと駄目だ。あの子が安心して甘えを見せられるくらいにな」
 「期待してるぜ、おっさん」
 「ふん、任せとけ」
二人はゴツンと拳をぶつけ合った。
 「で、獲物はどこにいるんだ?」
 「東京市第13外郭区だ」

     ◇

俺こと二界堂煉治と、謎の自称霊退師・天宮美言は、東京市第13外郭区に潜んでいるらしい悪霊を探して彷徨い歩いていた。
人の下心、もとい良心を弄ぶ卑怯極まりない作戦に乗せられて協力するとは言ったものの、いったい何をどう協力すればいいものやら。
近くに霊がいれば感知ぐらい出来ると思うが、あくまでそれは目の届く範囲程度のレベルだ。
レーダーみたいに広範囲で悪霊の居場所を探し出すなんて都合のいい能力は、生憎と持ち合わせていないのさ。
そう考えると、この自称霊退師・天宮美言が俺に協力を要請した理由もいまいち判然としないものがある。
俺くらいの能力なら彼女だって持ってるだろうし。そりゃ、ここは俺の住む区の隣だから、地理感覚は俺の方が多少優れているという話はわかるが。
なにせこの東京市って街は、世界で3番目にデカイ。巨大な二重円の超近代型都市で、外側の外郭区と内側の内郭区に分かれ、さらに内郭区は上層と下層に分かれる。
生まれも育ちも東京市の人でも、全ての街の地理を把握している人は希だ。おまけに外郭区は未だに拡大を続けてるときた。
内郭区と違って外郭区はさらに、さながらバームクーヘンのように12個の区画に分けられ、第13外郭区は俺の住む第12外郭区の横に出来た拡張区画第1号だ。
 「ねぇねぇ煉ちゃん」
 「煉ちゃん呼ぶな!」
 「ポッキー食べないの?美味しいよ?」
天宮は一本は口に咥え、残りの入った箱を俺に差し出す。
 「……甘いもの、っていうかチョコがあんまり好きじゃない」

 「え〜っっ!!!」

突然の絶叫に俺はビクッと彼女から一歩遠のく。
つーか口のポッキー地面に落ちたぞ。
 「チョ、チョコが嫌い!?」
 「嫌いって程じゃない。好んで食べないだけだ」
 「そんな……!なんて不幸な人生……!」
 「……おい」
オーバーリアクションだ。
チョコを食べた後の、あの口にいつまでも残ってるような感覚がいまいち好きになれない。
 「それより天宮」
 「もう!あたしのことはみーちゃんって呼んでよ」
 「断固拒否する」
 「え〜、じゃあせめて名前!天宮って名字、あんまり好きじゃない」
好き嫌いが発生するような名字じゃねぇだろ。
 「ね、天宮って聞いてピンとくるものないの?」
 「なんだそりゃ。別にないけど?割とどこにでもありそうな名字じゃんか」
 「……そっか。そうだよね!」
 「そっちも煉ちゃんってのやめろ」
 「え〜、かわいいじゃん!」
 「かわいくなくていいの!」
 「だって二界堂くんじゃ長いし、煉治くんじゃ家電製品みたいだし」
 「…………っ」
この野郎、俺が気にしていることをよくも抜け抜けと。
 「だから煉ちゃん!ね、いいでしょ?」
くっ、まただ。今までその絶対強制スマイルでどれだけの人間を屈服させてきたんだお前は。
 「……勝手にしてくれ。つーか、そんな話をしたいんじゃなくてだな」
俺は会話を正しい方向へ持ち直す。
 「悪霊を探すんだろ?どんな場所に悪霊が溜まりやすいのかとか、なにかしら情報がないと案内しようがない」
ついでに天み、み、美言自身のことも、色々聞いてみたいぞ、なんて心の中で呟いてみたりする。
何者なんだこの女は。なんで霊退師なんて危ない仕事してるんだ。そういう家系か?
だったら付き添いくらいいてもいいもんだ。まだ俺と同年代、未成年だろ。しかも女の子。
その辺りまで突っ込んで聞いてみていいものか。
いやしかし!そんなところまで根掘り葉掘り聞いてしまうと、気が付いたら後戻りできないところまで引きずり込まれていたなんてことに!
そうだ、俺はあくまで悪霊の発見に一時的に協力するだけ。
いくら可愛くても美言は悪霊退治を生業にする人間。俺とは住む世界が違う。
悪霊を見つけて無事に倒したら、その後はどうなるんだろう。
手伝ってくれてありがとうそれじゃあさようならお元気でアディオス、って後腐れなく終わってしまうのか?
……いやいや待て待て!今なんか俺、このままあっさり美言と別れてしまうのを残念だ的なニュアンスで話を進めてないか!?
俺は幽霊とか悪霊とか、そんなものには関わりたくないのに。平和に暮らしたいのに。
なのに……。
 「――ちょっと煉ちゃん、聞いてる?」
 「……――あぁ?」
 「あぁ?じゃないよもう!今あたしの話全っ然聞いてなかったでしょ!そっちから聞いたのに!」
 「お、おう。悪い」
 「もう!だからね、悪霊は人の負の感情、嫉妬とか憎しみとか、まとめて怨念って言うんだけど、その怨念を吸収したり、妖気を取り込んだりして強くなっていくの」
 「なるほど」
 「つまり、人の怨念が溜まりやすい場所や妖力の強い場所に悪霊は住み着くってわけ」
 「具体的にはどんな所だ?」
 「うーん、妖気が強い場所っていうのは限られてるから、東京市内なら怨念が溜まりやすい場所に的を絞った方が得策だね。例えば、自殺の名所とか、殺人現場とか。他には使い捨てられた廃屋とか廃駅とか廃工場とか。それに地下は障気が溜まりやすいから下水道もチェックポイントだね。あとは悪霊の種類によって特定の場所を好んだりもするかな。海とか山とか」
要約すれば、暗くてジメジメして薄気味悪い所ってことか。まぁ大方予想通りだ。
 「そうだな。俺の知る限りこの13外区に自殺の名所はないし、殺人、自殺ともにここ最近耳にしたことがない」
 「ふむふむ。じゃあそれは外していいね」
 「下水道は東京市内中の地下に張り巡らされてるから、可能性としては考えられるかも知れない。廃駅は、ないな。廃工場なら1つ2つ心当たりがある」
 「おっけー。じゃ、一つ一つ調べて行こ!やっぱり煉ちゃんに頼んで良かったよ〜!」
 「その前に一つ聞いておきたいんだけど」
 「ん?なに?」
 「よしんば悪霊を見つけたとして、その後どうするんだ」
 「どうするって、そりゃ除霊するけど」

 「――その背中にしょってる刀でか?」

出会ったときから気になってはいたが、極力気にしないようにしていた。
布袋に包まれた細長い荷物。美言との会話と経験から、それは日本刀、もしくはそれに類するものだと見抜いたからだ。
 「驚いた。煉ちゃん、日本刀とか好きなの?」
 「見慣れてるだけだよ。昔、剣道と居合をかじってたからな。最初は木刀か竹刀だと思った。でも霊退師となれば話が違ってくるだろ」
背中にしょってるのは悪霊を倒す武器だと考えるのが妥当な発想だろう。
 「へぇ〜!煉ちゃん剣道と居合やってたんだ〜!」
いや、今メインはそこじゃねーから!
 「帯刀許可は持ってんのか?」
 「うん、大丈夫だよ」
 「……本当に?」
 「本当だってば!今は、持ってないけど」
 「……美言、歳は?」
 「え?17だけど」
まさか、そんな。
美言は大きな矛盾に気付いていない。
 「東京市条例で、未成年はいかなる理由があっても真剣を所持できない。お前が日本刀を所持できるはずがないんだよ」
この状況だと、彼女は許可の有無か年齢のどちらかに対して嘘をついていることになる。
 「一体どうなってる。どうして嘘をつくんだ」
 「嘘じゃないよ!あたしは本当に17だし、許可証も本物!」
 「いや、だからそれじゃ矛盾してるぞ」
 「うう〜」
美言は説明するか否かを逡巡するような困った顔をする。

 「……わかった。悪霊を除霊したら全部話す。だから、それまであたしを信じて。絶対に、煉ちゃんを裏切るようなことはしないから」
 「…………」

――ああ。

ひょっとしたら俺は。

悪霊も霊退師も一切関係なく。

まだ出会って2時間足らずの彼女に。

完全に惚れてしまったのかも知れない。

だって俺は。

絶対に裏切らないという彼女の言葉を。

一瞬だって疑わなかったから。

 「……わかった。信じるよ」
 「煉ちゃん。ありがとう」

     ◇

 「こちら状況処理班。異常観測点周辺の住民の避難は完了したか?」
源田が車に備え付けてある無線に向かって話す。
 「こちら状況補助班。周辺住民の避難完了。現在、異常観測点の周囲50mに簡易結界を展開中」
 「了解した。こちらはあと10分で現場に到着する。結界完成後は結界の外で待機」
 「了解」
 「いよいよだな」
助手席の安倍がタバコに火を点ける。
 「ああ、今度こそケリをつける!」
     (第3話完)


  えっと… - ティファ・ロックハート (女性) - 2009年08月06日 (木) 06時58分 [957]   
すごいリアクションしてますね、彼女は。
もしかして、甘い物好きじゃないの?と思いながら読ませて頂きました。
面白いです、ボソっ…私の方にもコメント頂けたら嬉しいです。
頑張って下さい。

  久々ですねぇ - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 13時50分 [961]   
わお! なんかまた新しい面白いのが!!
とりあえず全部読みました。
なんか世界観もそうですけど、美言ちゃんが面白すぐるww

それでは☆


  こちら超常現象対策室! - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月02日 (日) 15時27分 [950]   
  【第2話】あたし、天宮美言!

メールが届く。
マウスを動かして「新着メール」をクリックすると、メールの内容は調査班からの定時報告だった。
「目標は未だ捕捉できません。引き続き捜索を続行します」
という短い文面だった。
「ちっ」
御門ヶ原 千代子(Mikadogahara Chiyoko)は舌打ちして本日数十本目のタバコに火を点けた。
「室長」
ノックの後、そう言って入って来たのは源田 勝征(Genda Katsuyuki)。
「源田か。何だ」
「観測班から連絡で、霊力場に異常観測点が出たそうで。この規模からすると10日前に取り逃がした例のカテゴリーBの奴ですかね」
「ちっ、こんな時に限って現れるとは。至急状況処理に向かえ。奴はかなりの数の怨霊を吸収している。霊災に発展する前に片付けろ」
「了解」
「美言がいないんだ。油断するなよ。今度こそ必ず討て」
「任せてください。毎度毎度あんな年端もいかない娘っ子にばかり頼るわけにはいきませんからね」
「しかし、最近ウチら処理班は慢性的な人員不足。天宮家の娘の戦力は貴重でしょ、源田のおっさん」
新たに部屋に入って来たのは安倍 明晴(Abe Akiharu)。
「安倍か」
「美言はま〜だ見つからないんですか」
「ああ。かれこれもう2週間だ。一体どこをほっつき歩いてるんだ」
「まぁ、あいつに限って死んでるなんて事はないでしょ。ここんとこずっと任務漬けだったし、いい休養になるんじゃないですか?」
「ふん、休み過ぎだ」
「とにかく俺たちは現場に向かいます」
「ああ、頼んだ」
「行くぞ安倍」
「へいへい」
源田は安倍と共に部屋を出て行った。
「何をやっとるんだあの莫迦チョコ娘……」

     ◇

その美少女は、全くもって完全に俺の意表を突いた。
年齢は俺と同じ、もしくは±1くらい。学生か?
デニムのショートパンツにタンクトップ、下はブーツのいかにも夏ですねって感じの服装。何やら細長い荷物を肩にかけている。
腰に届かないくらいの黒髪は後ろの方だけ縛ってポニーテールっぽくしてる。むむむ、なかなかの高ポイント。
……って。
そんなこと考えてる場合じゃねぇ。
「あなた、幽霊が見えるんでしょ?」
彼女はもう一度同じセリフを繰り返す。今度は語尾に疑問符をつけて。
おいおいおい、今日はまだ一回も幽霊に遭遇してないぜ?なんで俺に霊感あること知ってんだよ。
「あ、別に隠す必要なんて全然ないよ?あたしも見えるし、もちろん触れるし、話せるし」
「な、なんで俺が幽霊見えるって知ってんだよ。誰から聞いた」
「聞かなくても、見ればわかるよ」
そう言って彼女は覗き込むように俺を見上げてくる。
か、顔が近い!つーかそのポーズ!む、胸が!谷間がぁぁぁあ!
「あなたの霊感、かなり高いね。それにあなたの魂が放つ霊力、こっちもなかなか。うん、センスあるかも」
そんなこと呟きながらしげしげと俺の顔を眺める。
俺は目のやり場に困る視線を、何とか彼女の顔に固定した。
「れ、霊力?」
「そう、霊的体力。知ってるでしょ?」
「…………」
いや、そうじゃなくて。つーか知らねーし。
「フリーの人?始めて何年?制服ってことは、高校生?年いくつ?どこの高校?」
マシンガンクエスチョン。
「待て待て、そんな一気に質問するな。つーか最初の質問、意味わかんねぇぞ。なんだフリーって」
「え?まさか、あなた民間人!?」
「まさかじゃなくても民間人だ。いったい何の話をしてるんだ。全く見えん」
「あぁ、そっか。なるほど、ふーん」
いや、だから勝手に納得するなって。

「ねぇ、霊退師に興味ない?」

「……なんだって?」
また新出単語だ。きっと辞書にも載っていまい。
「だから、霊退師。悪霊を除霊する専門家のこと。あなただってそんだけ霊力があるんだから、悪霊の1体や2体倒してるでしょ?」
なんという理不尽な先入観。俺が自身の霊力なる存在を知らされたのはほんの数秒前だというのに。
「悪霊なんて恐ろしいもん1体だって倒したことはないし、霊退師なる職業にも興味はないよ」
「え〜!もったいない!」
彼女は頬をふくらます。そんなちょっと怒ったような顔もまたカワイ……。
違う!間違っているぞ二界堂煉治!なんだかよくわからんが、俺は今明らかに危ない道に勧誘されてる!
取りあえず今までの会話でわかったのは、彼女にも霊感があって、おそらく霊力とやらもあって、そしてたぶん彼女は霊退師とかいう職種の子なのだろう。
こんな女の子が?悪霊をバッタバッタと倒すのか?
にわかには信じがたい。つーかありえねぇだろ。
普通、悪霊と闘うって言ったら、お札とかを持った厳ついおっさんが念仏みたいなのを唱えたりするんだろう?
「えっと、君もその、霊退師とかいうのなのか?」
「うん、そうだよ」
あっさり。それも極上スマイル。
「そうか。それで、取りあえず話を戻したいんだが」
俺はオホンと咳払いする。
「俺にいったい何の用?」
「え?」
彼女はほんの数秒、黙考した。
「あ、思い出した!」
忘れんなよっ!
「あたし今、その悪霊を追ってるの。ほんっとちょこまか逃げる奴で、この街に逃げ込んだのは確実なんだけど。そこからの足取りが掴めないからどうしたもんかな〜ってブラブラしてたら、たまたま霊感強い人を見つけて、あ、それあなたね、それで何か知らないかな〜って思って話しかけたってわけ」
「……それマジ?」
「え?マジじゃなく聞こえる?」
彼女は純粋な疑問の顔を俺に向ける。疑う理由がどこにあるの?と言わんばかりだ。
まさか。そんな。
そんなタイムリーで悪霊がこの街に潜伏してるなんて。
危険だ。一刻も早く帰宅しよう。悪霊?冗談じゃない。誰が好き好んでそんな奴らに関わったりするものか。
「そ、そうか。じゃあ悪霊退治頑張って」
俺はぎこちない笑顔で彼女からジリジリ後ずさる。
しかし。
立ち去ろうとする俺の手を彼女がキュッと捕捉する。小さくて柔らかい。少し冷たい手。
「なっ!?」
「……ねぇ、手伝って?」
正直に告白すると、俺の心の撤退命令はこのとき相当揺らいだ。マグニチュード10くらい。
「ううっ」
「あたし、この街よく知らないの。地理的にも曖昧だし、悪霊が溜まりやすいポイントもいまいち把握してないし」
「いや、でも……俺は」
どうする俺!?生存本能は全軍撤退命令を告げている!でも良心という名の鎖がぁぁあ!それに困ってる女の子を見捨てて一人危険なところに送り込むのは男としてどうなんだ!?
でも一緒に行ったら死ぬかも!悪霊だよ悪霊!?人を呪い殺しちゃったり取り憑いちゃったりするんだろ!?
「迷惑……かな」
彼女は俺の手を握ったままうつむき加減に呟く。
これが、トドメだった。
くそっ、なんて!なんて卑怯な作戦……!この手を振りほどける男がいたら手を挙げろ!俺がぶっ飛ばしてやるぜこんちくしょうっ!

「…………はぁ。わかったよ、付き合ってやる」

「ホント!?ありがとう!」
パッと顔をあげて満面の笑み。小悪魔っぷり3乗のスマイルは俺の心臓に深く深く刺さった。
「ただし!さっきも言ったとおり俺は霊退師とは縁もゆかりもない、超のつくかどうかはちょっと怪しいけどとにかく一般人だ。あんたはプロの霊退師なんだろ?だったら俺の命はあんたが保障してくれ。それを条件に、悪霊の捜索に協力する」
「うん、いいよ。まっかせなさい!」
軽っ!
「それじゃさっそく行こ!」
彼女は俺の手を握ったまま歩き出す。
「おい、そろそろ手を離せ」
いや!本当は満更でもないんだけどしかし!ここは周りの目を考慮して泣く泣く。ここ商店街だし。
「あ、ごめん。そういえば、名前まだだったね」
「あぁ?ああ、そういえば。二界堂煉治だ」
「ふーん。にかいどうれんじ。じゃあ煉ちゃんだね!」
「はぁ!?」
「よろしくね、煉ちゃん!あたしは天宮 美言(Amamiya Mikoto)。みーちゃんって呼んでね!」
「呼ばねぇよっ!」
「あ、ポッキー食べる?親睦の証に」
「いらんっ!」

ああ、幽霊なんて関わりたくなかったのに。
どうしてこんなことなったんだろう。

天宮美言。

きっとこいつに振り回される星の下に生まれたんだ、俺は。
     (第2話完)


  語りが上手です。 - ティファ・ロックハート (女性) - 2009年08月02日 (日) 19時05分 [951]   
完璧にオリジナル小説ですね、それは。
最後まで読みましたが、興味深い話です。
私の作品も、引き続き宜しくお願いします。

翼無き天使さん
私もまだまだですね、貴方のを参考に私も頑張ります。

  コメどうもです^^ - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月02日 (日) 22時06分 [953]   

まぁ一応オリジナルということになるのかな?
モチーフになった漫画はいくつかあります。
FF、DQ要素は一切ありませんが^^;
まぁこれからもヒマがあれば読んでみてください。
では


  素晴らしいです - 漆黒の騎士 (男性) - 2009年08月03日 (月) 09時55分 [954]   
どうも漆黒の騎士です。
全部拝読しましたがオリジナルで話の展開、人物のやりとり等全てにおいてバランスが取れていて素晴らしいです。

ド素人同然の自分は足下にすらも及びませんがこれからも宜しくお願いします。

  どうもです^^ - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月04日 (火) 00時29分 [955]   
コメありがとうございます^^
素晴らしいだなんてもったいない言葉^^;

漆黒の騎士さんのアークブレイドも楽しく読ませてもらいましたよ。
特に総司令が実は反政府組織のリーダーだった、のくだりはちょっと「おっ」と思う展開でした^^
リジェネの魔法が出てくるということは、FFっぽい世界観を想定してるんですかね。
近代技術と魔法の共存は、私のかなり好きな部類の世界ですね^^

続きを是非とも読みたいです^^
私も頑張ります。


  こちら超常現象対策室! - 翼無き天使 (男性) - 2009年07月30日 (木) 16時58分 [945]   
  【第1話】なんなんだこの女!

俺は二界堂煉治(Nikaidou Renji)。東京都内の高校に通う普通の、ごく普通の高2だ。別におかしいとこなんて断じてない。どこにでもいる普通の高校生。

――ただ少し、幽霊が見えるだけの。

日曜日。
その日は俺の人生でトップ3、しかもそのてっぺんにランクインするであろう正念場の日だった。
そう、人生で初めての彼女と、人生で初めてのデート!
その日のために俺の今までの人生があったと言っても過言ではない。必ずやこのデートは成功させねばならない。
髪型も完璧。歯も磨いた。口臭ケアも抜かりなし。服も地味過ぎず派手過ぎず、クールに決めた。部屋も掃除した。アレもいざって時のために財布の中にしっかりと入れてある。
あとは彼女と笑顔で楽しい一時を過ごすだけだった。それで俺のバラ色の人生が拓けるはずだった。
ヤツさえ現れなければ……。

     ◇

駅前で待ち合わせ、彼女の希望でまずは映画館へ行った。
いいぞ俺。固くない順調な滑り出しだ。彼女の表情も緊張した風もなくにこやかだ。
券を買ってシアターの中に入る。人はそこそこで、俺たち、俺と彼女と彼女は中央列の真ん中ちょい前の席に座った。
俺の左には「私これずっと見たかったんだよね〜」と楽しそうにパンフレットを見る彼女。
俺の右には千切れた服に血まみれで左腕のない彼女。じっとこっちを見てる。
「…………」
耐えろ!耐えろ俺!
ここで幽霊がいるなんて彼女に言ってみろ!念願のデートが一気におじゃんだ!
無視!無視!無視!シカトだ!
俺の右隣に女の幽霊なんていない!何もいない!そこは単なる空席だ!
集中しろ!左の彼女とスクリーンに!

そうして俺は拳を握りしめ、歯を食いしばり、約2時間を耐え抜いた。映画館が薄暗いことにこれほど感謝したことはない。
俺と彼女が席を立つと、もう一人の彼女も席を立つ。
「…………っ!」
まさか。
ついてくる気か!?浮遊霊!?てっきり地縛霊かと。
この女!俺のデートを邪魔する気か!?
いや、落ち着くんだ俺。ここでこの幽霊をぶん殴ったりしてみろ。
彼女は俺の奇行を大いに怪しむことこの上ない。ここは首尾一貫して当初の作戦を続行するべきだ。
無視するんだ。空気のごとく。この女の存在を無視するんだ。
女は左腕からどくどく血を滴らせながらついてくる。もちろん実際に地面に血が付くはずもない。
彼女に気付かれない程度によくよく見ると、右脚も妙な方向に曲がっている。
事故か?自分の死を受け入れられずに成仏できない。そんなところか。
何を考えてるか知らんが、俺にあんたを救ってやることなんて出来ないんだよ。
とっとと**

正午を少し過ぎたあたりだったのでそこら辺のファーストフード店で昼食をとることにした。
彼女と向かい合わせで座って昼ご飯。
こんな夢に見たシチュエーションであるにも関わらず、オレの心がドキドキしないのは何故だろう。
理由はもちろん。
彼女の真横に突っ立ってるもう一人の彼女のせいだろう。
「どうしたの二界堂くん。あんまり食べてないね」
「あ?あぁ。うん、なんかあんまり腹減ってない、かも」
そりゃそうだ。
眼前に左腕から血を流した幽霊がいれば誰だって食欲がなくなる。
「そう?じゃ、ポテトもらっていい?」
「あぁ、どうぞ」
しっかりしろ!ここで彼女を退屈させるな!
会話だ!何か話題を!映画の感想とか、これからどうするかとか!何でもあるだろう!
口を開け!声を出せ!しっかりしろ俺!
「ちょっとトイレ」
そう言って俺はガバッと立ちあがり、出来るだけ目立たないように、素早く、女の右腕を引っ掴んでトイレに引っ張っていった。
バタンと扉を閉め、鍵をかける。そして女の胸ぐらを掴んで壁に叩き付けた。
実際にはそう見えるだけで壁には何の衝激も伝わらない。
女は「ひっ」と小さく悲鳴をあげた。
「いったい何なんだあんた!俺に何のようだ!幽霊に友達扱いされるほど俺の交友関係は広くねぇぞ!」
女はおどおどした口調でぼそぼそ話す。
「あの、その。お話相手が、欲しくて」
「話し相手だぁ!?そんなもん成仏してあの世でゆっくり探せばいいだろうが!」
「あの、その。成仏ってどうやったら出来るんですか?」
「……っ!んなこと、俺が、知るかぁぁぁあ!」
女はまた「ひっ」と悲鳴をあげる。なんだか、これじゃ俺が悪者みたいだ。
俺は手を離して女にビシッと指さした。
「とにかく!俺は今デート中なんだ!あんたの話し相手になってる暇はない!デート中じゃなくてもない!わかったらとっとと成仏してあの世へ逝け。あんたはもう死んでんだ。成仏の仕方がわからんなら霊媒師なり除霊師なりを探せ」
そう言って俺はトイレを出た。
「わるい」
「お腹の調子でも悪いの?」
「いや、大丈夫だよ」
俺は笑顔で席に着いて残りを食べ始める。
よし。これで問題はクリア。こっからがデート本番だぜ。
「ねぇねぇ。この後どうする?」
「そうだな。この近くに最近出来たショッピングモールがあるらしいから、午後は、そこ、に……」
俺の視線は彼女から外れ、その横に動く。
「?」
彼女は俺の視線を追うも、そこに何かを見留めるはずもなく。
「どうしたの?」
たぶん。
俺のボルテージも限界に到達しつつあったんだと、思う。
女は言った。

「あの、除霊師ってどこに行ったら会えますか?」

何かがプツンと、切れた。きっと俺の脳内ヒューズだ。
なんなんだこの女……!

「俺が知るかあぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

気が付けば、俺はその女を渾身の一撃でぶん殴っていた。

     ◇

「で?その後どうなったんだ?」
俺の前の席に座っているクラスメイトの津島涼太はニヤニヤ笑いながら聞いてくる。
俺は机に突っ伏したまま、体中から負のオーラを発していた。
「……会話の流れ的に、俺が彼女の発言にキレたような状況になって、行動的に俺が彼女を殴ろうとしたが空振りに終わったような状況になって、彼女が泣き出して、ごめんなさい……」
彼女は大粒の涙をこぼしながら「ごめんなさい」と消え入るような声を残して店から出て行った。
その日の俺の記憶はそこで終わってる。
気が付けば今日の朝になってた。
「つまりは破局」
涼太は事の顛末を残酷な一言で締め括る。
「……もう死にたい」
きっと俺の言葉は彼女の心を深く傷つけたに違いない。罪悪感で身体が重い。
「彼女に話せばよかったじゃないか。幽霊のこと」
そう、涼太は俺が幽霊を見れるし触れるし話せるという事実を知っている数少ない人物だ。
「……話せる状況じゃなかった。つーか無理だろ。誰が年中幽霊に付きまとわれるような男を好きになるんだよ」
「その後電話してみたのか?」
「……今日の朝。でも着信拒否」
終わった。完全に。
「そうか。可愛かったのにな、彼女」
「どーせ俺には一生恋人なんてできやしないんだあぁもうダメだ死のう」
「まぁそう落ち込むな。また可愛い子いたら紹介してやるよ。オカルト好きそうなのを」
この男は俺の心の落ち込み具合をいまいち理解していない。
いや理解している上で俺の大自爆を楽しんでいるのか。なんて友達甲斐のない奴だ。
「……帰る」
「おいおい、まだ1限だって終わってないぞ」
こんな気分で授業なんて受ける気にならん。俺は涼太の言葉を無視して教室を出た。
「ふっ、ありゃ相当な重症だな」
ドアを閉めるときに、背中にそんな声が届いた気がした。

     ◇

「くそっ、全部あの幽霊女のせいだ。幽霊なんか大っ嫌いだ」
大失恋の悲しみは、教室から玄関へ行くまでの間に幽霊への憎しみに転化されていた。
なぜ俺ばかりこんな目に遭わねばならんのだ!世界の人口は60億を優に超えているというのに!
幽霊が見える人間がこの世に何人いるか知らんが、とりあえずマイノリティーであることは間違いない。
そこになぜ俺が入るのだ。両親も姉も祖父母も親戚も、俺の親族には誰一人として霊的な何かを持っている人間はいない。
いったいなぜ!理不尽だ!不幸だ!不条理だ!不運だ!
などと思案しながら商店街を荒々しく歩いていたら、後ろから肩をトントンと叩かれた。
「…………」
またか。この手の嫌がらせじゃもう驚かんぜ。
どうせ振り向いたら顔がツルツルの奴とかゾンビみたいな奴とか舌が異様に長い奴とかが、愚かな人間ちゃんを驚かそうと今か今かと待ち構えてるんだ。
誰がそんなもんに付き合うかバカめ。無視だ無視。スルー。何もいないんだ俺の後ろには。
俺は構わず歩き続けた。
「ちょっと!いくら何でも振り向くくらいしてくれてもいいんじゃないの?」
肩をトントンした主は憤慨した様子で俺を呼び止める。女の声だった。
また……!
また女……!
「ちょっとってば!」
女は俺の肩をグイッと引っ張る。
「うっせぇ!俺は幽霊女は大っ嫌いなんだよ!!」
そう言って肩に触れた手を振り払う。
そこには。

どえらい美少女がいた。

…………あれ?
「失礼な!あたしまだ死んでないよ!」
待て待て待て!
落ち着け二界堂煉治!誰だこの美少女は!?めっちゃ可愛いぞ!
じゃなくて!なぜこんな見ず知らずの美少女が俺に話しかけるんだ!
しかも後ろから肩をトントン!?なにその超フレンドリータッチ!
つーか向こう俺を知ってる!?じゃなきゃ話しかけないよな普通!
でも俺知らないぞ!?どこで会った!?いつあった!?
「……え〜と。誰?」
だぁ〜!なぜこんな間抜けな質問しか出来んのだ俺は!
「幽霊疑惑は晴れた?」
「あぁ、はいまぁ」
美少女はニコッと笑う。
か、可愛い……!なんだこの悩殺スマイル!

「あなた、幽霊見えるでしょ」

「…………はい?」
今、なんつった。

なんなんだこの女!
     (第1話完)


  アークブレード講座 - ツァイベル・ラディン (男性) - 2009年07月29日 (水) 09時22分 [944]   
   ごきげんよう、僕はツァイベル。素直でないアレンは爆睡していて話し相手は誰も居やしないし、正直一人で長距離車の運転と言うのも意外にハードなものさ。

ん、そう言えば僕はただの軍事オタクとは言ったけれども実はこう見えてもレギュウムの国で五本の指に入るセレブなのさ。けれども他の能無しのボンボン達とは一味も二味も違って有り余るお金を少しは世の中の為に役立たせているのだよ。

ま、諸君が気になっているのはその先だろう。今、順を追って説明するから焦らずに待ちたまえ。

先ず有り余るお金は自身の心身の鍛練、様々な場所に行く為に使うのだよ。しかしそれだけでは一人で豪遊していると勘違いすると思うが心身を鍛えるのは行く先々で色々な事を嗅ぎ回っているせいか変な輩に目を付けられて挙げ句の果てに暴力を振るわれて散々な目に遭ったからそれ以来心身の鍛練は欠かさずにしているのだよ。

そして何を調べているかと言うとカメリカの動向を探る為なんだが詳しく言えばカメリカの軍事、発明品。軍事に関しては皇帝が何を考えているのかいつレギュウムに攻めて来るかと言う事で発明品については新たに戦争の為に開発されたモノがないかチェックし、もしも見つかったら秘密裏に設計図ごと抹消するのだよ。けれども僕一人でやれる事にも限りがあるから其処で部下の登場だ。僕が手を離せない時は部下達に命じて任務を遂行させているのだよ。

おっと得体の知れないヤバい事していると思うかも知れないが実は『風紀委員会』と言う名前の僕と数人の部下が経営している表向きは探偵事務所なのさ。
そう表裏一体探る仕事だから普段は失踪したペットや人を捜索したり浮気調査をするのだよ。

決して誤った正義感を持つ輩とは違い「正義」とかと言った理念で活動する訳でもなく自分達の利益にならない事は何一つやらないよ。例え下らない依頼でもこなさなければ信用も顧客も付かないし平々凡々とした彼らが重要な情報を知っている可能性もない訳ではないからね。

それと今、"誤った正義感を持つ輩"と口走った気がするな、折角の機会だ彼らについて僕の調べた成果を話そう。

彼らとはレギュウムのポリスオフィサーの事で皆が俗に言うポリス、ポリ、警官の事だよ。
正直真面目にやっている極少数の人間には悪いが「組織」とかに縛られているから事件が起きないと動けないとか緊急事態にも関わらず融通が利かなかったりして救える筈の命も救えないとかふざけているとしか考えられないよ。下らない事に躍起になる前にもっと優先すべき事に目を向けて欲しいよ。

おっと、僕とした事がこんな下らない所で熱くしまった、失敬。

続きだがそんな彼等は数年前にソルジャーの組織と合併したが体質的なものは何一つ変わらないが唯一変わった点と言えばできる事の範囲が広がった事だね。
彼等は合併して皆同じ看板を背負っているが部門分けされている。そしてどの部門の人間でも逮捕ができるようになった事と実力次第では警官もソルジャーになれる事のこの二点さ。

さて、ついでにアレン達ソルジャーの事も知る限りの事を話そう。

彼等は陸・海・空の3つの部隊に分けられていてアレンがこの中で属しているのは陸軍で彼等の特徴は「白兵戦」つまりナイフやダガー、グローブ、素手で戦う戦法の一つでこれ等に関しては右に出る者は少ない筈だよ。
かと言って重火器系統は使えないとかそう言う事ではなく「機動鎧」と言う高速で動ける鉄の塊を装備してアームに対戦車ミサイルを撃ち込む装備を装着して実戦では相手側の歩兵や強固な戦車を軽く吹き飛ばしたりアームの装備を変えるとガトリングやライフルも扱えるらしい。

そして海軍は言うまでもなく海上での戦闘に強く母艦の上や海浜で戦闘をすればあらゆる方法で相手を海中に引き摺り込み一気に畳み掛け倒すそうだよ。因に彼等も「機動鎧」を装備して戦闘をするけれど陸軍のとは仕様が違って海水に浸かっていても錆びない特殊な素材を使用していて海中を突き進める様にモーターボートみたいにスクリューが付いているそうだよ。

空軍だが彼等は戦闘機の操縦でき尚且空からの奇襲攻撃が得意な戦闘集団で陸軍や海軍の様に「機動鎧」を装備せずに軍服かその上に軽装の鎧を装備して戦闘をするらしい。

今までに何回か出てきた「機動鎧」も浅い部分しか触れていないみたいだからこれについても説明しよう。
機動鎧は素材に関しては企業秘密らしいが戦車の砲撃にも耐えられる装甲重視の「ドンガメタイプ」と言うのは重量は200sで動力と冷却用のモーターが搭載されているがあまり速く動けないのが欠点で例えて言うなら人が速く走る速度と同じくらいだよ。

もう一つ「コブラタイプ」は機動性重視で最高速度が160q/hで重量は80s。鎧自体が分厚くなく拳銃の弾位なら防げる程度だから歩兵ばかりの時はいいかも知れないが戦車が何台もある戦闘ではアウェイかも知れないね。

3つ目に「ジャッカルタイプ」と言うのがあって此は先程の二つの弱点をある程度補った万能型で最高速度は80q/hで重量が140s。戦車の砲撃以外の全ての銃撃は防げる仕様で上の階級のソルジャー専用の機動鎧らしい。

そして此らの機動鎧を考案し試作型を製造したのはブラウン氏なのだがその彼も今は消息が分からない。彼が居れば新しい武器や機動鎧が開発されてレギュウム軍が負ける事はないのだがやはりそれに目を付けられて何処かに幽閉されたのだろうか。しかし彼はガードマンに護衛されていたと言うし此は内通者がいたとしか考えられないな。
僕がどんなに最善を尽くしても足取りは掴めない、ブラウン氏を誘拐した輩が居たとすればかなり此処が切れる連中なんだろうな…

ツァイベルは頭を指差しそう言った。

最も信頼できる部下に彼の捜索を頼んであるから僕はルイナート=ケビンについてもっと調べなければ魔物や半身半魔についても調べようがない。けれどその前に彼について知る限りの事を諸君達にお話ししよう。
彼も最初はただの純粋な化学者で新種の菌を発見したりして色々な賞を貰っていたらしいね。だが彼はありとあらゆる事を研究し尽くし何時しか「化学に取り憑かれた狂気の悪魔」と呼ばれるようになったらしい。それもその筈、魔物襲撃の頻発の度合いが多くなり政府は彼に魔物の真相究明を求めた事も要因の一つかも知れないよ。
 けれど魔物の研究に関しては国家機密らしく霧のベールが掛かっているかの如くで最善を尽くしても何一つも解らなかったよ。
彼の研究所は意外にもセキュリティが厳しくこっそりと忍び込んで調べる事すら敵わなくて政府関係者の誰でもいいから調査してくれる人物を集った訳さ。
そこで総司令官殿に偽名を使い調査の事を依頼した所、数ヶ月後にルイナートから軍事施設のパソコンにメールが届いたらしく此はチャンスだと思ったよ。
どうせそこら辺の兵士が行くかと思いきや腰抜けばかりで残っていたのは数々の戦歴を持つ男、陸軍大尉アレン=エクスターとは意外中の意外だったよ。
それで彼に研究所を見学して貰ったお陰で様々な事が解ったよ。ルイナートが魔物の細胞を使い人体実験を行い「半身半魔」と言う名の存在を創り出した事とそれらが魔物の細胞を持つが故に魔物の発見に役立つと言う名目で創り出されたがそれは口から出任せと言う事とそれらは理性に乏しく「覚醒」と言う半身半魔が保てなくなり心身共々完全に魔物になる現象がある事を。

そして先程戦った腕が沢山ある骸骨も最初は二人の人間だったが覚醒により魔物になった所までは何となく理解できたが一瞬光に包まれたかと思うと一体の魔物になっていて直前にはルイナートは「儀式は完成した」と意味不明な発言をしていたな。

全く分からない事だらけでこれからは忙しくなりそうさ。おっともうこんな時間か、さてとそろそろアレンを起こすとしよう。



 諸君、次回はきちんと話を進めるから安心したまえ。








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