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Lulure 〜幻の人〜 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 13時43分 [959]
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朽ち果ててきた城。もとあった城の原形はまるで留まっていなかった。かろうじて残ったのは、崩れたエンタシスが数本と床の石、そして最早一枚板となってしまった外壁が数ヶ所だけ。 「全く、手間かけさせやがって。さっさと■ねばいいのによ」 杖の回復も間に合わない。二人の戦士と、魔導士がだんだんとぼろぼろになっていく。 「ようやっとこれで■んでくれるかな」 グラスはまた、両手から巨大な炎と冷気を生み出す。 「・・・間に合わない・・・・・・っ!!」 その時だった。カツカツと固い足音が聞こえ、そちらに目をやれば、いつものウェーブがかった髪をなびかせ、身長より長い鞭を振り回すマゼンダの姿だった。マゼンダは鞭をブンブン振り回しながら、グラスに向かっていく。 「何人束になろうが一緒・・・・・・!」 と言うのも束の間、マゼンダの足は思いの外速く、更には鞭に気圧されて思わずグラスの足が揺らいだ。 「何ボサっとしてるの!? この間にさっさと回復しちゃいなさいよ!」 あ、はい、とだけ返事をし、アーサーは順繰りに杖を振りかざしていった。 「また邪魔が入ったか!」 グラスは両手から火炎と冷気を出そうとするが、ついぞマゼンダの鞭に邪魔された。 「これいいわね。思い通りに素早く動いて」 とうとう一枚板の壁まで追いつめられ、グラスは逃げ場を失った。 「このアマ!」 グラスは剣を構え、それに鞭が絡みつく。 「それでどうするつもり? エルフの鞭は簡単にはちぎれないわよ?」 「剣を捨てても手は使える!」 そう言って右手を離し、火炎が生み出される。 「!!!」 流石に素早い鞭も間に合わなかった。 「あああああああああっ!」 炎に灼かれながら、マゼンダは頽れる。アーサーが慌てて杖を持って駆け寄るも、グラスの剣に止められた。 「それ以上近寄るな。杖を置いてもらおうか、坊主」 でなけりゃ、と、黒く焦げ付いたマゼンダの首に剣の切っ先を当てる。 「この女の首が飛ぶ」 「先生!!」 ルークが歩を進めるのを、ガイルが腕を掴んで止めた。ルークは歯を食いしばりながら、もどかしさに気持ちが落ち着かなかった。そうしている間にも、グラスの手からは炎と冷気がまた生まれてくる。 「年貢の納め時だな。覚悟しやがれ」 「待ちなさい」 グラスはまたか、と声のした方を睨むと、目を見開いた。 「な・・・・・・!!」 「ルル・・・・・・?」 長い髪と愛らしい顔によく似合う赤の法衣。さきほどまで錯乱し、落ち着きをすっかり無くして今にも■なんとしていた幼い少女の姿があった。 「しばらくぶりね、グラス」 ルルを知る者は、きょとんとした顔でルルを眺める。グラスは狼が唸るような表情でルルを睨み据え、言葉を発した。 「親父ともども貴様ら姉妹に封印されたとき以来だな、ルルア」 ルルはゆっくりと歩みだし、その上に、かつて具象気体として遺跡に現れた少女の・・・ルルにそっくりな少女の姿が現れた。 「ここは鳳凰の塔の鍵を司る神聖な場所。あなたの来るようなところではありません。立ち去りなさい」 「だからだろうが! ここを滅ぼせばお前とお付きが親父を封印しに来ることもできない。だろ?」 「そうですか。ならば私ができることは果たさねばなりませんね」 具象気体の少女は右手を上げ、そこから白い光があふれ出した。一同はまぶしさに目を閉じるが、体の痛みや疲れが全く感じなくなるのと同時に、グラスの叫びが聞こえる。 「力が・・・・・・力がぁぁぁぁぁぁっ!!」 ルルアはそっと、右手を下ろして語りかけた。 「そろそろ『ルル』としてこの体が目覚めるころでしょうか。私は全てを忘れてしまいますが、感覚がずっと覚えています。だから、今こそ魔王子グラスを滅ぼすのです」 ルルアの姿が消え、ルルの体ががくっと崩れた。少女は目覚め、ゆっくりと起きあがる。 「あれ? あたし何でここに・・・・・・?」 「ルル!」 アーサーが不意にルルを抱き寄せる。 「よかった・・・・・・落ち着いてくれて」 「え? 何? 何? お兄ちゃ・・・・・・」 そのときルルは、なんとか立ち上がってこちらを睨み据えるグラスに気づき、他もそっと武器を手に立ち上がる。 「お遊びはここまでだな、グラス」 荒い呼吸を繰り返しながら、グラスは両手から炎と冷気を生み出そうとした。しかしそれも、先ほどの半分ほどの大きさでしかなかった。 「前線はガイルさんと私と先生で。一気に殴りかかる! アーサーとルルは援護と回復を。調子は本当に大丈夫か? ルル」 「もう大丈夫。ごめんなさい」 ルークはふっと笑いかけた。
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雷鳴と電光 〜聖と魔〜 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 13時44分 [960]
「いくら力が出なくても、オレサマは魔族の王子だ・・・・・・! ナメんなよ!」 そう言って炎と冷気を一度に投げつけるも、ルルのはったバリアの前にはそれほどの威力が出てこなかった。 「バイキルト!」 アーサーもそれぞれに腕力を上げる魔法をかけていった。 「おらぁぁぁぁぁぁっ!」 ルークが剣を思い切り振り落とし、力が減退したグラスは避けきれずに肩を斬られた。 「せいっ!」 二度打たれた鞭の先の刃もグラスを切り裂く。 「はっ!」 ガイルの剣もしっかりとグラスをとらえた。 「小五月蠅え蝿どもが・・・・・・調子に乗るな!!」 ガイルの掌で大爆発が起こり、前線が崩れた。 「ぐぁっ!!」 「がっ!」 「いっ・・・!!」 ある者は残った壁に叩きつけられ、ある者は放物線を描いて地面に落ち、またある者は床を擦って転がった。 「しっかりして!!」 ルルとアーサーがそれぞれで回復を施す。3人は順繰りに攻撃を仕掛け、時折アーサーが手から強力な火炎呪文を放つ。弱体化させられてしまった魔王子は思わぬ猛攻撃にひるむ。魔族の王家出身の者にはこの上ない屈辱だった。 「許さねえ・・・・・・!」 グラスの背から現れる、3対の黒い翼。それと同時に強い風が巻き起こった。 「まとめて殺す!!」 地面に「刺さった」腕。そこから黒い穴が電磁波を帯びながら広がっていき、中から紫色の光る球体がぬっと姿を現した。球体は電磁波を放出しながら収縮し、まばゆい光を放ちながら一気に拡散した。電磁波は放った本人を除く全員を貫き、貫かれた者たちは叫び声をあげる暇すらなかった。 「地獄の雷はどうだ? これに耐えきれる奴は魔界にもいない。もっと苦しめてやろうか?」 「い・・・げんに・・・ろ」 ぼろぼろになって今度こそ倒れていたはずのルークが剣を杖にゆっくり立ち上がった。俯きながら。 「馬鹿な! これに耐えられる人間がいるわけ・・・・・・!!」 「いい加減に・・・しろよ・・・!!」 その目はいつになく怒りに満ちていた。 「私は・・・今2人の主人に仕えてるようなもんだがな、いや、ある意味3人か?」 グラスは少女の周りに何か力を感じ、たじろいだ。 「その主人が傷つくのは護衛たる私の不覚が理由としてあるにしても」 少女は剣を構え、グラスを睨んだ。彼女の体が金色に輝く。 「これ以上主人を傷つけるのは止めて頂こうか? 喧しい蝮が!」 少女が剣を真上にかざすと、辺りに暗雲が立ちこめた。集まった暗雲が電気を帯び、音を立てて暗さを増す。 「る、ルー・・・ヌ?」 アーサーが焦げだらけの顔をなんとか上げ、少女のまばゆく光る体を眺めた。 「まさ・・・か・・・・・・」 ルークは剣の切っ先を一気に振り下ろし、それと同時に雷光がグラスの体を貫いた。その音が余りにも凄まじく、グラスの悲鳴は彼の体もろとも消え去った。 ルークの体が頽れた。
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お久しぶりでございます。 - ベールゼブブ (男性) - 2009年08月06日 (木) 14時13分 [963]
皆様この度復活して参りました。 いや、試験だったり旅行だったりと、何かと忙しかったので。 っていうのとぉ〜・・・最近ファンタジー世界観のインスピレーションが薄くなってきちゃって、続きが浮かばないってのが何より大きくて〜・・・・・・。
というわけで復活して早々ですが、プチ休止宣言です。これからはせいぜいコメに回るぐらいかと思います。期限は話の続きが浮かぶまで、とさせて頂きますです。ハイ。
ってかそれ、結局いつもと変わらんじゃんww
まあ、これからは出現率は増えると思いますが、書くのは激減すると思われます。
それでは☆
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おおっ - 翼無き天使 (男性) - 2009年08月06日 (木) 16時57分 [966]
お久しぶりです^^ それと試験お疲れ様です。お互い単位が取れてるといいですね^^;
っていうかルーヌがつええぇぇ!! ついに魔王子グラスも破れましたか……。
案に詰まるのは誰でもよくある話ですんで、まぁ気長にいきましょう^^ とか言いつつ続きが気になるオレ(笑)
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